シナンジュ (ガンダムシリーズ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

シナンジュは、小説およびOVA機動戦士ガンダムUC』に登場する架空の兵器

ネオ・ジオン残党軍「袖付き」の首魁フル・フロンタルが搭乗するニュータイプ専用モビルスーツ (MS)。

本稿ではOVA版に登場する、シナンジュをコア・ユニットとしたモビルアーマー (MA) ネオ・ジオングに関しても記述する。

機体解説[編集]

諸元
シナンジュ
SINANJU
型式番号 MSN-06S
全高 22.6m
本体重量 25.2t
全備重量 56.9t
出力 3,240kW
推力 128,600kg
センサー
有効半径
23,600m
装甲材質 ガンダリウム合金
武装 60mmバルカン砲×2
ビーム・ライフル×1
ビーム・サーベル×2
ビーム・アックス×2
グレネード・ランチャー×1
シールド
搭乗者 フル・フロンタル
シナンジュ・スタイン
SINANJU STEIN
型式番号 MSN-06S
全高 22.6m
本体重量 23.1t
全備重量 54.2t
出力 3,240kW
推力 128,600kg
センサー
有効半径
23,600m
装甲材質 ガンダリウム合金
武装 60mmバルカン砲×2
ハイ・ビーム・ライフル×1
ビーム・サーベル×2
ビーム・キャノン
ミサイル×2
シールド
搭乗者 フル・フロンタル
ワークラッハ(テストパイロット)

地球連邦宇宙軍再編計画「UC計画」の一環として、アナハイム・エレクトロニクス社が開発した試作MS。かつて同社が開発したMSN-04 サザビー、RX-93 νガンダムと同じく、機体の駆動式内骨格「ムーバブルフレーム」の一部にパイロットの脳波に反応する特殊構造材「サイコフレーム」を採用したニュータイプ専用機である。

ファンネルなどのサイコミュ兵装を持たないが、ニュータイプパイロットの脳内操縦イメージを思考波としてMS内部のサイコフレームに感受させ、機体の挙動へダイレクトに反映させる「インテンション・オートマチック・システム」を搭載しており[1]、MS単体の機体制動・追従性・機動性を極限にまで突き詰めて設計されており、通常の手動操作を凌駕する反応速度と動作精度を誇る。操縦補助の他にも、開発側が意図していなかった機能として、乗り手の意思を汲み取るこのシステムを搭載する「UC計画」によって誕生した三機(ユニコーンバンシィ[2]・シナンジュ[3])は、パイロットのニュータイプ能力に呼応し、サイコフレームが最大共振すると、第二次ネオ・ジオン抗争時のνガンダムと同様に、虹色の光の力場「サイコ・フィールド」を機体から発し、他のMSとは一線を画する驚異的な性能を見せた。

元々はサイコフレームをメインフレームに据えたMSの、一般パイロットの操縦では計測不可能な限界値を取得するべく、機械上での試験運用を目的とした実験機で、驚異的な機動力と追従性を誇るも、発生する加速度によるパイロットへの肉体的負荷は殺人的なレベル[4]で、なおかつ上記のインテンション・オートマチック・システム制御のサイコミュによる精神的負荷もあるため、並のパイロットにはまず乗りこなせない“極めて端的な[5]”MSであった。その限界値を突き詰めた設計ゆえに、人間が乗り込む機動兵器としては欠陥機とも言えるMSであったが、「赤い彗星の再来」と渾名され、ニュータイプとしてもMSパイロットとしても高い能力を誇るフル・フロンタルが操縦することにより、あくまで理論上であったそのポテンシャルを遺憾なく発揮した。

背面と脹脛側面の推力偏向スラスターのほか、全身に多数のスラスターを装備し、いかなる姿勢においても高い機動性を発揮する。背面の推力偏向スラスターは翼を想起させる形状になっており、最大出力時には羽ばたくような挙動を行う。背面の推力偏向スラスターの下部には、サザビーのものよりも大型のプロペラントタンクが配置されており、戦闘ではこれを意図的に切り離すことで囮としても利用した。その高機動性は、インダストリアル7から脱出したネェル・アーガマを攻撃する際に、周りに無数に漂うスペースデブリをまったく意に介することなく高速移動しながら戦闘していることからもうかがえる。

この機体で検証されたデータを基にユニコーンガンダムが開発された経緯があり、言わばユニコーンガンダムとは兄弟機の関係にあるが、U.C.(宇宙世紀)0094年にアナハイム社から「袖付き」に強奪され(実際には強奪に偽装した譲渡であった)、ユニコーンガンダムと刃を交えることとなった。強奪後は「袖付き」によって操縦系統の改良、推力強化が行われ、「袖付き」を象徴するフラグシップ機たるべく、全身の外装をジオン風に一新し、真紅の塗装と金色のエングレーブが施された。

ネオ・ジオン残党軍「袖付き」の首魁であるフル・フロンタルが搭乗し、真紅に染め上げられた機体が、青い残光によって彗星の如く軌道を描きながら戦場を高速移動するその姿から、パイロットのフロンタルと共に「赤い彗星の再来」と渾名され、総帥シャア・アズナブルを失い士気の低下したネオ・ジオンの崇拝と士気高揚の対象となり、地球連邦軍からは恐怖の対象として畏怖されている。

小説版における、バナージ・リンクスの駆るユニコーンガンダムとの最終決戦では、搭乗するフル・フロンタルの高いニュータイプ能力にシナンジュのサイコフレームが呼応し、兄弟機であるユニコーンと同様に、その機体から虹色に輝く光を発する。対峙する二機から放たれるサイコ・フィールドによって、サイコフレームを搭載していないMSでは介入不可能なほどの力場を発生させるなど、超常的な戦闘を繰り広げた。

改修前の純白の機体デザインは、PlayStation 3専用ソフト『機動戦士ガンダムUC』特装版に同梱されたシナンジュ強奪事件を描いた小説、およびダウンロードコンテンツ「エピソード0:戦後の戦争」に「シナンジュ・スタイン[6]」として登場。「袖付き」による改修後と比較して、本来“ユニコーンガンダム0号機”とでも呼べる出自の経緯もあり、連邦系MSの特徴とも言える直線的なシルエット、およびデュアルタイプのセンサー(OVA第3話において、モノアイセンサーが損傷した際、本来ツインアイセンサーがあった位置にサブセンサーが作動している)など、いわゆる“ガンダムタイプ”に近い姿・顔立ちが確認できる。改修前のテストパイロットとして、ワークラッハ少尉が搭乗。ビーム・ライフル、バズーカ、シールド、ビーム・アックスのテストを行なっている。テスト担当者ゴティはワークラッハに秘密裏にして、インテンション・オートマチック・システムのテストも行なっている。OVA第2話にもアルベルト・ビストが提供した、シナンジュへの改修前と思われる機体データ画像が登場するが、スタインともシナンジュともデザインが若干異なる。これは、地球連邦軍の情報部が改修後を予測した、あくまで仮定のデータに過ぎなかったためとされる[7]

武装[編集]

60ミリバルカン砲
スタイン時より頭部左右に内蔵された近接防御機関砲。
ビーム・ライフル
本機専用に開発された長銃身(ロングバレル)型の高出力ビーム・ライフル。腰部背面のラックに取り付け可能。オプションとして銃身下部に中折れ式グレネード・ランチャーかバズーカを、上部にサイトセンサーを取り付け可能。その威力は一般的なビーム・ライフルをはるかに凌ぎ、ロングバレルから放たれる一撃は、ネェル・アーガマのカタパルトデッキを容易に貫通するほど。射程距離にも優れ、長距離狙撃も行える。兄弟機であるユニコーンガンダムのビーム・マグナムに一撃の威力こそ劣るが、継戦能力の観点で言えば優れる。
ビーム・サーベル
スタイン時より前腕装甲内に格納される斬撃装備。前腕部に取り付けたまま使用することも可能。ユニコーンガンダムへと継承される機構の一つ。リゼルのロング・ビーム・サーベルとの鍔迫り合いに片手で押し勝ち、サーベルもろとも機体を両断するほどの出力を持つ。
ビーム・アックス
シールド裏面に2基収納されるビーム斧。シールドに装着したまま使用することもできる。サザビーのビーム・アックスと同様に、出力を上げることでビーム・ソードアックスとなる。また、2基を連結することでビーム・ナギナタにもなるなど多彩な用途が可能。ナギナタ状態で高速回転させることで、簡易的なビーム・シールドの役割を果たす。
シールド
サザビーのシールドを若干細身にした形状をしており、表面にはネオ・ジオンの紋章と金色のエングレーブが施されている。裏側にはライフルに取り付けるためのグレネード・ランチャーとビームアックスが収納される。また、ショルダーアーマーに直結しているスラスターユニットに固定することができる。先端が鋭く尖っており、打突武器としても使用される。状況によっては装備しない場合もある。
バズーカ
ユニコーンガンダムのハイパー・バズーカと同様、銃身の伸縮が可能。腰部背面のラックへの取り付けのほか、ビーム・ライフルやシールドに装着することができる。なおシールドなどに装着時は銃身を縮めているが、この場合弾頭の初速が遅くなるという欠点もある。OVA版ではグレーと白で塗装され、ビーム・ライフルに装着しロングバレルの状態で使用する。

スタイン時[編集]

ハイ・ビーム・ライフル
νガンダムHWS仕様のハイパー・メガ・ライフルに似た形状の大型火器。
シールド
同じくνガンダムのシールドに似た形状で、裏面にビーム・キャノンとミサイルを持つ点も共通する。

ネオ・ジオング[編集]

諸元
ネオ・ジオング
NEO ZEONG
型式番号 NZ-999
全高 116.0m
本体重量 153.8t
全備重量 324.3t
出力 35,660kw~計測不能
推力 28,827,500kg~計測不能
装甲材質 ガンダリウム合金
武装 有線式大型ファンネル・ビット×30
肩部大型メガ粒子砲×6
腰部Iフィールドジェネレーター
大口径ハイメガ粒子砲
サイコシャード発生器
バズーカ×2
60mmバルカン砲×2
ビーム・サーベル×2
シールド
搭乗者 フル・フロンタル

OVA第7話に登場。「袖付き」がフル・フロンタルのために設計・開発した、シナンジュをコア・ユニットとする拠点攻略用巨大MA(モビルアーマー)。一年戦争終盤にシャアが搭乗したジオングの名称と機体コンセプトを踏襲し、脚部を排除した純粋な宙域専用機として完成した。全高100mを超えるハル(外殻)ユニットを組み合わせた独特な機体構成になっており、インテンション・オートマチック・システムを搭載したシナンジュを中枢に据える事で、多数のサイコミュ兵器を備えた規格外の巨体の運用をフロンタルの単独操縦で実現している。よって、ハルユニットはいわばシナンジュ専用に誂えられたサイコミュ増幅器であるとも言える。元々は連邦軍から強奪した機体であるシナンジュを技術基点とし、かつこれだけ巨大な機動兵器を「袖付き」の戦備状況で新たに用意できたことは、多くの矛盾を孕んでいるが、これは一部技術提供、生産をアナハイム・エレクトロニクス社側が行い、「UC計画」遂行における障害を排除するためのカウンターパワーとして「袖付き」へ供給されたとの説がある。コアユニットのシナンジュだけでなく、そのパイロットであるフロンタルの驚異的なニュータイプ能力と卓越した操縦技術まで鑑みて造られた本機は、すべてが成立することで初めて“想像を絶する”力を生み出す[8]

シナンジュのサイコフレームを基点とした新技術のサイコミュ兵器や、本機最大火力を誇る腹部に内蔵された大口径ハイメガ粒子砲などの巨大MA特有の大火力の多彩な兵装を多数備える。アームユニットの先端部はジオング同様に5連装メガ粒子砲や、巨大なマニピュレーターとして敵機体をその豪腕で握り潰すなどの用途だけでなく、いわゆる五指に当たる部分は分離するとそれぞれ有線式大型ファンネル・ビットとなる。遠隔操作によるオールレンジ攻撃に加え、敵機体に直接撃ち込むことでその機体制御を強制的に乗っ取ってしまい、自らの戦力として利用できる「ジャック」機能を持つ。このジャック機能はMSに止まらず、敵拠点要塞の管制システムの掌握までもが可能で、単機で敵拠点を内外から文字通り完全制圧できる。背面の一見ブースターに見える4基のブロックも変形して同様のアームユニットとなり、背後からの襲撃にも対応することができる。他にもスカート前方にランディングギアにもなるサブアームが2基隠されている。下半身には、推進器とプロペラントタンクの機能性を併せ持った長大な「シュツルム・ブースター」が2基接続されており、戦況に応じて自在に切り離すことも出来る。切り離した際には、接続基部が展開しの花のような形状のメインスラスターが出現する。

両肩部の大型スラスターユニット側面とスカート側面にサイコミュ兵器「サイコシャード発生器」を搭載しており、展開時には光の結晶体「サイコシャード」を発生させ、ネオ・ジオングの巨体を囲んでしまうほどの巨大なリングを形成する。それとシナンジュのサイコフレームを共鳴させることで、サイコ・フィールドに限りなく近い現象を意図的に再現することが可能。サイコシャードによるサイコ・フィールド展開時には、操縦者(フロンタル)が望むイメージを具現化できてしまう[9]、敵対する者にとっては恐るべき空間となる。サイコシャードは「袖付き」によって発見された技術ではなく、一説にはフル・サイコフレーム機の試験中に発生した偶然の産物であり、そのデータが流出したとも言われているが、具体的にパイロットが望むイメージをどこまで実現可能なのかなど、未だ数多くの謎を含んでいる[8]。ユニコーンガンダム及びバンシィ・ノルンとの最終決戦においては、敵機体の武装に干渉し自壊に追い込んでいる。これは最終決戦においても、まだフロンタルはバナージの懐柔を諦めておらず、武装を全て破壊して戦意を挫く[10]ことを望んだイメージをサイコ・フィールドが具現化したためとのこと。また、この時ユニコーンガンダムの頭部バルカンのみ、弾切れだったため自壊を免れている。これらの機能から本機は、νガンダムの「アクシズ・ショック」やユニコーンガンダムの「サイコミュ・ジャック」といった、操縦者の意思を具現化させようとサイコフレームが呼応しサイコ・フィールドが引き起こす人智を超えた能力を、「袖付き」が人為的な実用を目指して到達した機体と言われている[11]。また、フロンタルの仮面はサイコミュを用いた遠隔操縦デバイスでもあり、サイコシャード発生器をシナンジュの頭上に展開させ、フロンタルの感応波を受信することで、コックピットに無人のままでもプログラムに則った遠隔操縦が可能で、作中ではメガラニカの管制システムへのハッキングと本機の自衛戦闘を行った。

作中では、その絶対的な力で、立ちはだかったシルヴァ・バレトを圧倒・大破させる。その後も、その多彩かつ圧倒的な火力の武装を用い、ユニコーンとバンシィ・ノルンを2機同時に相手取り追い詰める。その最終決戦の最中、ユニコーンとネオ・ジオングのサイコフレームが共鳴し、かつてのアムロ・レイララァ・スンのように、バナージとフロンタルに“”を形象として垣間見る、という人智を超えた現象まで引き起こした。最後は、ユニコーンが発する“暖かな光”によって、ユニコーンを握り潰そうとしていたアームユニット4基を灰状に分解され、本体にもその“暖かな光”をユニコーンの掌[12]から注ぎ込まれると、搭乗していたフロンタルの中の「残留思念」が浄化され、それに連動してネオ・ジオングも浄化されるように崩壊し灰塵となった。これは、バナージが自身の想いを言葉ではなく“熱”によってフロンタルに伝えようとして取った行動であったが、結果バナージの想いと、その想いを受け容れたフロンタルの心境の変化が、ネオ・ジオングの全身のサイコフレームに作用して、その機体を崩壊に到らしめる結果となった[13]

そのデザインの発端は、原作者の福井晴敏によると、小説版の最終決戦では、シナンジュは亡霊のようなオーラで全身を包み、ユニコーンとバンシィの2機を驚異させたが、映像化に際して、その巨大な亡霊のオーラを巨大な機体として具現化できないかとの案から。 とはいえ福井としては、シナンジュがスカートとスーツの追加装甲を装着したようなイメージで、ここまでの大きさは考えていなかった。だが、古橋一浩監督の、作品の最後を飾る強敵として、挑みかかる若い二人を上から目線の“不動の構え”でいなす“仏様”のような[14]、神々しい「絶対的な存在」にしたいという案と、ノイエ・ジールα・アジールといった“ジオンの系譜”を考えると、これくらいの大きさは必要というメカニックデザインのカトキハジメの案から、全高100mを超える規格外の巨体となった[15]。このおかげで、ユニコーンとバンシィが2機がかりでも苦戦する構図がすんなり出来た事と、最終エピソードを象徴するサプライズ機体になったのでは、とカトキは後に語っている。

脚注[編集]

  1. ^ PlayStation 3専用ゲーム『機動戦士ガンダムUC』「エピソード0:戦後の戦争」より。
  2. ^ OVA版では戦闘中には虹色に発光していない。
  3. ^ 小説版のみ。
  4. ^ 本機体の実証データを基に開発された兄弟機・ユニコーンガンダムの専用パイロットスーツには、このパイロットへの殺人的G負荷を緩和するため、「DDS」とよばれる対G用薬剤投与システムが搭載された。
  5. ^ プラモデル「シナンジュ」組立説明書, 1/144スケールモデル HGUC, バンダイ 
  6. ^ 「スタイン/シュタイン (stein)」はドイツ語で「石」。宝石の“原石”を意味している。
  7. ^ 『月刊ガンダムエース』2013年1月号111頁。
  8. ^ a b プラモデル「ネオ・ジオング」組立説明書, 1/144スケールモデル HGUC, バンダイ 
  9. ^ 『グレートメカニック』DX.29 2014 SUMMER 24ページ。
  10. ^ 『グレートメカニック』DX.29 2014 SUMMER 26ページ。
  11. ^ 『グレートメカニック』DX.29 2014 SUMMER 24ページ。
  12. ^ 『「機動戦士ガンダムUC」の始まりから終わりまで 古橋一浩監督、サンライズ小形尚弘プロデューサーインタビュー 後編』
  13. ^ 『グレートメカニック』DX.29 2014 SUMMER 25ページ。
  14. ^ 『Febri』 Vol.23 8ページ
  15. ^ 『ガンダムユニコーンエース』 Vol.6 UCファイナル福井晴敏インタビュー