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アイヌ語

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アイヌ語
アイヌ イタㇰ
発音 IPA: [ai̯nu itak̚]
話される国 日本ロシア
地域 北海道樺太千島列島
話者数 1991年の調査で日本に15人
言語系統
孤立した言語
  • アイヌ語
言語コード
ISO 639-2 ain
ISO 639-3 ain
SIL AIN
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アイヌ語(アイヌご、アイヌ語ラテン文字表記:Aynu itakアイヌ語仮名表記:アイヌ・イタㇰ)は、日本等に分布するアイヌ民族(アイヌ)言語

話者はアイヌ民族の主たる居住地域である北海道樺太千島列島に分布していたが、現在ではアイヌの移住に伴い日本の他の地方(主に首都圏)にも拡散している。「孤立した言語」とされている。

概説

地理的に近い位置で話され、古くから互いに経済的、文化的な交流があったにも関わらず、大和民族日本語との間には、語彙の借用(例、menoko)を除いてそれほど共通点(例、皮 kapkapa )が見いだせない。

アイヌ語の系統や語族に関しては、学術的に確実なことはいえない状況であり、孤立した言語であると考えられている。

北海道以北のアイヌの民には強力な支配者や中央政府が存在しなかったため、いわゆる共通語のようなものは無い(東北地方には sisam 倭人と組織的に戦闘を行った英雄叙事詩が残っている)。地方によって多くの方言がある。

アイヌ語の現状

現在アイヌ語を継承しているアイヌ民族の数が極めて少ないため、アイヌ語は近いうちに消滅してしまうことが懸念されている消滅危機言語の一つとなっている。1996年の推定では、約1万5000人のアイヌの中で、アイヌ語を流暢に話せる人は15人しかいなかった。[1]さらに別の推定ではアイヌ語を母語とする人は千島列島では既に消滅し、樺太でもおそらく消滅していて、残る北海道の話者も平均年齢が既に80歳を越え、数も10人以下となっている[2]。アイヌ語の消滅危惧のレベルは「おそらく消滅した言語」と「消滅の危機に厳しくさらされる言語」の間の「消滅に近い言語」となっている。2009年ユネスコにより消滅の危機にある言語として、最高ランクの「極めて深刻」の区分に指定される[3]

1980年代以降、萱野茂らアイヌ語を残そうとするアイヌ自身の努力の結果、アイヌ語教室が各地に開設され、2007年現在、北海道内14箇所にアイヌ語教室が設置され、多くの人がアイヌ語を学んでいる。また関東地方にも、関東在住のアイヌまたは和人がアイヌ語を学ぶ集まりがいくつか存在する。

1986年には、田村すゞ子の教え子、北方言語研究会が上智大学学生などと共催で早稲田大学において第一回「アイヌ語祭」を開催し、日本人による全編アイヌ語による演劇などがアイヌ人や元北海道新聞社員でアイヌ語地名研究家などの前で披露された。

アイヌ文化振興財団主催のアイヌ語弁論大会イタカンロー)には毎年多くの人が参加し、アイヌ語による弁論や、口承文芸の披露が行われている。

また、1990年代から、アイヌではない人の中にもアイヌ語を勉強しようとする人が増えてきている。アイヌ語の辞典も各種出版されている。特に東北地方では、アイヌとの歴史的連続性や地名研究の必要からアイヌ語への関心は伝統的に高い。

2000年代になってくると、北海道教育大学旭川校等にて、アイヌ語を刷新する兆しがある。実際「アイヌ語旭川方言会話辞典」では現代に不足している語彙の補完が試験的に行われており、imeru(神が放つ光。転じて電気の意)からimeru inaw またはimeru pasuy(2つとも携帯電話の意。inawイナウpasuyを意味する。)、imeru kampi電子メールkampiは紙を意味する。)等の造語を作り、現代生活で不足している語彙を補完し、「現代の言語として」使える様にする努力が行われている。2008年7月4日に開催された「先住民族サミット」アイヌモシリ2008では、「アイヌ語を公用語とし、義務教育でも学べる言語とすること」を日本政府に提言[4]している。

アイヌ語の研究

アイヌ語の話者は非常に少なかったが、言語学者により活発に研究されてきた。金田一京助とその弟子である久保寺逸彦や、アイヌである知里幸恵知里真志保姉弟らがまず挙げられる。

上に挙げた研究者のあと、田村すず子、浅井亨、村崎恭子魚井一由、キーステン・レフシン(デンマーク人)、中川裕、切替英雄、佐藤知己、奥田統己らの研究者がそれぞれ研究を進めてきた。

文字による記録

元来アイヌ語は音声による口承をもってのみ語り継がれてきたため、言語として特定の文字で表記する方法は定まってはいなかった。アイヌ語の文字による記録は、16世紀以降ヨーロッパ人によってラテン文字キリル文字で書かれたものや、和人によってカナで記録されたものにはじまる。明治以降は、ポーランド文化人類学者ブロニスワフ・ピウスツキイギリス人宣教師ジョン・バチェラー、和人出身の研究者・金田一京助らによって、まとまった形で本格的に記録されるようになった。また、明確に記録をたどれる範囲では、大正時代にアイヌ自身がラテン文字ローマ字)などを用いてアイヌ語を書き残したのが始めといわれている。

発音

アイヌ語の音節はCV(C)(すなわち義務的な声母と義務的ではない韻母)からなり、子音群は少数しかない。

母音

アイヌ語は五つの母音を持つ。

前舌 中舌 後舌
[i] [u]
中央 [e] [o]
[a]

子音

両唇 両唇軟口蓋 歯茎 硬口蓋 軟口蓋 声門
破裂 [p] [t] [k] [ʔ]
破擦 [ts]
[m] [n]
摩擦 [s] [h]
接近 [w] [j]
はじき [ɾ]

母音は 「a」、「i」、「u」、「e」、「o」 の5種。樺太方言では開音節で長短を区別する。子音は 「p」、「t」、「k」、「c」、「n」、「s」、「r」、「m」、「w」、「y」、「h」、「'」の12種が数えられる。

日本語にはほとんど現れない閉音節が多く存在し、北海道方言では音節末にはch,'以外の子音が立つことができる。多来加を除く樺太の方言では音節末に立つ子音は限られ、音節末子音/m//n/との区別を失い、/k/, /t/, /p/, および/r/の一部は摩擦音化し/h/(xとも表記された)になる。例えば北海道のsések(「セセク」のように発音。「熱い」の意)は樺太ではsēseh(「セーセヘ」のように発音)となる。無声音有声音の区別は存在しない。音節構造としては子音+母音+子音の閉音節か子音+母音の開音節のいずれかの形をとる。原則として子音群を含む音節はない。

u は、日本語の「ウ」と発音が異なり、日本語を母語とする者には「オ」のようにも聞こえることもある。そういったこともあり、かつてはaynuアイノkamuyカモイinawイナオと書かれることが多かった。

子音tを伴った音節tuは特に際立って日本語の「トゥ」と違いがある発音で、アイヌ語をカタカナで表記するときtuを表現するために、「ト」に半濁点がついた「ト゚」(ト゜)、あるいは「ツ」に半濁点がついた「ツ゚」(ツ゜)というアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ(括弧内は代用表記、詳細は#文字(カナ表記)参照)を利用することもある。

cはチャ、チなどにあらわれる破擦音で濁って発音されることもある。

sの摩擦音。方言によってはシャと発音されることもある。また、有声で発音されることはない。

'」は声門閉鎖音で、たとえばteetaで母音の連続を回避するために、はっきりと区切ってテエタと発音するときの間に入る音である。

音節tiは存在せず、tiが結びつくと必ずciに変わる(kot + -ihikocihi)。

音節wiはごく少数の擬音語擬態語にしか現れない(siwiwatki風がビュウビュウ吹く。siw-iwは風の音を表す語根の反復)。

音節yi、「wu」を「'i」、「'u」と別の音節として認めるか否かは研究者によって異なる(yairayke/yayiraykeaun/awunya(y)inkarpirkare <yay-inkar-pirkare 自分の・見る(こと)・を良くする)。

開音節の「'i」や「'u」は他の母音の後に来たとき、母音の連続を回避するため軽く発音され、ywとなることがある。表記としてはukoytakのようにywになる。閉音節の場合はこの変化は起きない。

母音iuの後に他の母音が来たときは、母音の連続を回避するため渡り音ywが挿入されることが多い。このywは表記される場合とされない場合がある。例えば、uepekerという語はしばしばuwepekerと書かれる。ただし、uの後にiが来た場合だけは*uwiとはならず、u'iまたはuyとなる。

音節末の子音は日本語にはない音で注意が必要である。音節末のtkpsmはそれぞれ、「」、「」()、「ㇷ゚」()、「」()、「」()のアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ(括弧内は代用表記)で表記される。

音節末のtpk朝鮮語の閉音節のptk と同じく内破音であり、日本語のみを使う者にとっては聞き分けが難しい。たとえばpの場合、「アップ」と言った時の「プ」の直前の「ッ」のような感じの音になる。音節末tも同様に「ハット」の「ッ」、kも「メッカ」の「ッ」音である。

音節末sもシの前で詰まる音に近いが場合によりスの前で詰まる音のように聞こえる場合もあり、アイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ(括弧内は代用表記)では多くの場合「」()と表記するが、発音の状態によって「」()と分別して表記される。

音節末mは、日本語ではマ行やパ行の前に来る場合の「ン」の発音に近い、唇を閉じて発音する鼻音である。音節末でもn(唇を閉じない鼻音)とは区別して発音しなければならない。

音節末のrについては直前の母音の音色が影響することが多く、日本語のラ行子音に近い歯茎はじき音で、且つ舌先が略平らで微妙にしか舌先が上がらない為、 arrは口の中で発音されたあいまいなのように、irrは軽いのような音となることが多い。カナ表記する際には直前の母音に則した書き分けをし、それぞれ「」()、「」 ()、「」 ()、「」()、「」()のアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ(括弧内は代用表記)で分別表記され、他言語話者には聞分け・発音共に難しい音である。樺太方言には音節末のrは無く、hr+母音のいずれかで発音される。例えば北海道方言のutar(人々、〜たち)は樺太でutahまたはutaraと発音される。

アクセントは、語頭に閉音節があればここに付く。語頭の音節が開音節であれば、原則としてその次の音節に付く。例えばpírka(美しい)は最初の音節pirが閉音節なのでここにアクセントが付く。一方kamúy(神、ヒグマ)は最初の音節kaが開音節なので、次のmuyにアクセントが付く。

なお、アイヌ語では文法上他の母音の後のイ、ウも子音ywと見なされ閉音節として扱われる。例えばáynu(人間)はではなくにアクセントが付く。

ただし例外的に最初の音節が開音節であってもそこにアクセントが付く単語もある。例えばyúkarユーカラ)がこれである。

なおアイヌ語のアクセントは高低アクセントで、アクセントのある音節は高く発音される。また、樺太方言で語頭の開音節にアクセントが付いた場合、その母音は長く発音される。例えば先の例のyukarは北海道方言では「ユカラ」に近いが樺太ではyūkara「ユーカラ」に近い。

文法

基本的な文型はSOV(主語目的語動詞)の順で、この点では日本語と同じである。しかし、形態論的には膠着語である現代日本語と異なり、抱合語というイヌイットアメリカ先住民族らの言語(エスキモー諸語、インディアン諸語など)の間でしか見られない、アジアでは珍しい分類に属するとされる。(上代和語には、係り結び、な〜そ、え〜ず等抱合語的用法がある。)これは、動詞に主語および目的語(授与動詞では間接目的語も)の人称および数を示す接辞が付けられ、さらにその他の意味を加える接辞(動詞の、先行名詞との関係を示す関係詞的なものなど)が付加されて、動詞だけでも文に相当する表現が可能なためである。(このような人称マーカー後接等は、タミル語にもある。タミル語#文法)なお名詞でも、体の部分など、特に個人と切り離せない関係にあるものには、所有者を示す所有接辞が必須的に付加される。ウラル語族に多く見られる特徴を持つ。

たとえば1つの例として、

  • usa-oruspe a-e-yay-ko-tuyma-si-ram-suy-pa

これを直訳すれば

  • いろいろ-うわさ 私(主語)-について-自分-で-遠く-自分の-心-揺らす-繰り返し

つまり「いろいろのうわさについて、私は遠く自分の心を揺らし続ける=思いをめぐらす」という意味になる[5]。これは単語としては2つしか含まないが長い文に相当する意味を表している。2番目の動詞は語根suyに主語などを示す接辞副詞、さらには目的語やそれを限定する接辞がついて1つの長い単語になっている。

アイヌ語の方言

アイヌ語の文章

文章化の試み

アイヌ語にはもともと書記言語がなかったが、近年はカタカナやラテン文字(ローマ字)による文章化の試みが浸透しつつある(例えばアイヌタイムズ)。

歴史上、強力な支配者が存在しなかった民族の言語であるアイヌ語には多くの方言が存在しており、文章の規範となる共通語がなく困難が伴っている。現在はアコ イタ北海道ウタリ協会編アイヌ語テキスト)で範示されている文章表記に基づいた、各方言の文章化が多くなされている。

また、日本語に慣れ親しんでいる日本住民は、英語などを通じてローマ字に慣れ親しんでいる人たちを除いて、ローマ字よりはカタカナによるアイヌ語表記を好む。カタカナ表記は、出版物やワープロやパソコン上での表記で、音節末子音を表記するための小さいカタカナを表記する際、わざわざ活字の大きさを小さくしなければならないなど、大きな問題点があった。

文字(カナ表記)

2000年1月にJIS規格としてJIS第三水準漢字(記号類を含む)・JIS第四水準漢字が新規に制定され、このうちのJIS第三水準漢字にアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ(日本語の文章に通常使用される範囲外での小文字カタカナや半濁音付きカタカナ)も含まれている。

ISO規格に採り入れられているUnicodeでは、2002年3月に改定されたUnicode 3.2からJIS X 0213に追随する形でアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナが追加されており、同規格に対応したソフトウェアでアイヌ語カナ表記が扱える枠組みが整えられた。ただし、一部の文字は合成を用いないと表現できないというUnicode特有の問題があり、ソフトウェアによってはきれいに表示できないことがある。

  • アイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ(Unicode 3.2準拠)
代用表記に関しては、小文字カタカナは通常サイズのカタカナの縮小表示、半濁音は通常の全角半濁音記号を付与。
文字 代用表記 文字 代用表記 文字 代用表記 文字 代用表記
ㇷ゚
セ゚ セ゜
ツ゚ ツ゜
ト゚ ト゜

パソコンでアイヌ語カナ表記(Unicode 3.2準拠)を扱う場合、

  • Macintoshでは、2001年Mac OS X 10.1“Puma”以降でのOS標準フォントはアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナにも対応している他、2003年のMac OS X 10.3“Panther”以降でのOS標準文字入力システムことえり4からはアイヌ語入力モードも採用された。
  • Windowsでは、2007年のWindows Vista以降のOS標準フォントはアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナにも対応しており、2001年のWindows XP2003年Windows Server 2003については標準では対応しないものの対応版フォントを無償でダウンロードできる。(JIS2004対応フォント(KB927489))
    • 2008年現在Windowsの標準状態ではアイヌ語カナ表記入力機能を備えていないものの、カナ表記入力を可能にするためのユーティリティなどが有志により作成公開されており[6][7]、アイヌ語カナ表記用の拡張カタカナにも対応する商用フォントやフリーフォントも増えつつある。
      • (対応フォント一覧はainu_exchange[8]の取扱説明書内で記述されている)

文字(ローマ字表記)

基本的にアルファベットの小文字が用いられ、アクセント表記にはアキュート・アクセント付きラテン文字áíúéó を使用する。

場合により、通常アクセントを省略して例外アクセントのみ表記する簡略化表記されたり、全てのアクセントを省略してアルファベットのみで表記する超簡略化表記されることもある。

文学

アイヌ語で文字使用が試みられる以前のアイヌの文学は全て口承のもので、民話神話には非常に富んでいる。アイヌ語の叙事詩ユカまたはユーカと呼ばれる。ユーカの内容は、動物の神があらわれて体験を語るものや、人間の世界の恋愛や戦いを歌うものなど多様である。叙事詩のほかに、いわゆる昔話のような散文による伝承文学もある。

アイヌ語由来の地名

北海道には、アイヌ語由来の日本語地名が多い。大別して、アイヌ語の発音を写し取ってカタカナで表記するもの(ニセコ等)と、それに漢字をあてたもの(札幌:サッポロ、サツポロベサッポロペッ「乾いた=水が少ない・大きい・川」という諸説もある)があり、ほとんどが後者である。

漢字の読みにうまく当てはまらない地名も多く、漢字にあわせて元の読みを変更してしまったもの(月寒チキサプツキサップ→ツキサム)や、アイヌ語の語義をそのまま日本語名にあてた(意訳)もの(長沼タンネトー→細長き沼)もある。

日本の本州以南にも、アイヌ語を起源とする地名が、かつて多数住んでいたアイヌの痕跡として残っているという説がある。本州以南のアイヌ語地名については、山田秀三をはじめ、在野の地名研究家によって研究が進められてきた。しかし、東北南部以南については根拠が乏しい。


アイヌ語の語彙

代表例

  • アイ ‐ 矢
  • アイヌ(aynu) ‐ 人、男
  • アシリ ‐ 新しい
  • アチャポ ‐ 伯父・叔父・小父
  • アトゥイ ‐ 海
  • アトゥシ厚司オヒョウの木の皮の繊維で織った布、着物
  • アマム ‐ 穀物
  • アミプ ‐ 着物
  • アペ ‐ 火
  • イヨマンテ熊送り(の儀式) - アイヌの最大の
  • イウタニ
  • イソポウサギ
  • イタク ‐ 言葉
  • イタタニ ‐ まな板
  • イタンキ ‐ 椀
  • イペ ‐ 食事
  • イヤイライケレ ‐ ありがとう
  • イヨッペ
  • ウェン ‐ 悪い、良くない
  • ウェンペ ‐ 悪い人、愚かな人、怠けもの
  • ウタリ ‐ 仲間
  • ウトマン ‐ 夫婦
  • ウナ ‐ 灰
  • ウパシ ‐ 雪
  • ウポポ ‐ アイヌの民謡歌
  • エカシ長老
  • エサマンカワウソ
  • エタラカ ‐ めちゃくちゃ
  • エペレ ‐ 小熊
  • エムシ ‐ 宝刀
  • エレクシタラ
  • エモ馬鈴薯
  • エパタイ ‐ 馬鹿者
  • オタ ‐ 砂
  • オッカイ ‐ 青年
  • オッチケ
  • オハウ ‐ 汁物、スープ
  • オプ
  • カー ‐ 糸
  • カッケマ ‐ 婦人、奥様
  • カニ ‐ 鉄(日本語の「かね」からの転訛)
  • カパッチリカムイ ‐ (の神)オオワシ
  • カム ‐ 肉
  • カムイ(kamuy)
  • カル ‐ 作る
  • カルシ ‐ キノコ
  • カント ‐ 天空、空
  • カンカン ‐ 腸
  • キトピロ、もしくはプクサギョウジャニンニク
  • キナ、もしくはゴザ
  • キムンカムイ ‐ (山の神)ヒグマ
  • クー ‐ 弓
  • クトロンカムイ ‐ (岩場の神)エゾナキウサギ
  • クワ
  • クンネ ‐ 黒
  • クンネチュプ ‐ 月
  • ケリ ‐ 靴
  • コソンテ ‐ 上等な着物(日本語の小袖からの転訛)
  • コタン(kotan) ‐ 村
  • コタンコロカムイ ‐ (村の神)シマフクロウ
  • コタンコロクル ‐ むらおさ
  • コロ ‐ 所有する
  • コロポックルkorpokkur) ‐ (フキの葉の下の)小人
  • コンル ‐ 氷
  • サク ‐ 夏
  • サパンペ ‐ 冠
  • サマンペ ‐ 女性器
  • サロルンカムイ ‐ (湿原の神)タンチョウ
  • サヨ
  • サンタン ‐ (アムール川流域、沿海州に住むツングース系の民族。アイヌは彼らと山丹交易と呼ばれる交易活動を行っていた。)
  • サンベ ‐ 心臓
  • シアマム ‐ 米(本来の穀物、の意)
  • シサム、またはシャモ ‐ 隣人(和人
  • シト ‐ 団子、餅
  • シュー ‐ 鍋
  • シュンクエゾマツ
  • シリ ‐ 島、峰
  • シンタ ‐ ゆりかご
  • スマリまたはシュマリキツネ
  • スム ‐ 油
  • スルクトリカブトまたは毒
  • セタまたはシタ
  • タシロ ‐ 山刀
  • タンネ ‐ 長い
  • チエ ‐ 男性器
  • チェプ ‐ 魚
  • チカプ ‐ 鳥
  • チキサニハルニレ
  • チセ ‐ 家
  • チセコロクル ‐ 家の主
  • チプ ‐ 船
  • チポロイクラ(イクラ、はロシア語)
  • チュプ ‐ 太陽
  • チライイトウ
  • テイネ ‐ 濡れる
  • テパ
  • またはトー ‐ 湖・沼
  • トイ ‐ 土
  • トイタ ‐ 畑仕事
  • トゥレプオオウバユリ
  • トノ ‐ 上様、役人(日本語の『殿さま』より)
  • トノト
  • トンニナラの木
  • ‐ 木
  • ニシパ ‐ 親方、旦那さま
  • ニス
  • ニセイ ‐ 峡谷
  • ニセウドングリ
  • ニタイ ‐ 森
  • ヌイ
  • ヌプ ‐ 野原
  • ヌプリ ‐ 山
  • ヌペ ‐ 涙
  • ノヤヨモギ
  • ノンノ ‐ 花
  • パスィ ‐ 箸
  • ハポ ‐ 母親
  • パンケ ‐ 川下
  • ピセ ‐ 油入れ
  • ピラ ‐ 崖
  • ピラッカ下駄
  • ピリカ ‐ 美しい、可愛い、良い
  • フシコ ‐ 古い
  • フチ ‐ おばあさん
  • フプトドマツ
  • プヤラ ‐ 窓
  • フレ ‐ 赤
  • フレシサムロシア人
  • フンペ
  • ペコ(東北方言の『ベコ』より)
  • ペツ ‐ 川
  • ペンケ ‐ 川上
  • ポネ ‐ 骨
  • ポロ ‐ 大きい
  • ホロケウ
  • ポン ‐ 小さい
  • ポンペ ‐ 幼児
  • マキリ ‐ 小刀
  • マタ ‐ 冬
  • ミチ ‐ 父親
  • ミナ ‐ 笑う
  • ムカル
  • メノコ ‐ 女の子、娘
  • モユクタヌキ
  • ヤーシ ‐ 網
  • ヤム ‐ 栗
  • ユーもしくはセセキ ‐ 温泉(ユーは、日本語の「湯」より)
  • ユカまたはユーカ(yukar)アイヌの叙事詩ゆかり事
  • ユクエゾシカ
  • ライ ‐ 死ぬ
  • ラッチャコ ‐ 灯明皿。室町時代に蝋燭を表していた言葉「らっそく」の転訛らしい
  • ラヨチ ‐ 虹
  • ラン ‐ 下る
  • ランコカツラの木
  • リムセ ‐ 踊り
  • ルー ‐ 道
  • ルヤンペ ‐ 雨
  • レタル ‐ 白
  • レプンカムイrepunkamuy) ‐ (沖の神)シャチ
  • レラ ‐ 風
  • ワッカ ‐ 水(飲用に適した水)

日本の地名となったアイヌ語

北海道の地名で、アイヌ語に起源を持つ例。

  • 札幌 < サッポロペッ < sat poro pet(乾いた広大な川)または sar poro pet原の大きな川)
  • 札幌市南区真駒内 < マクオマナイ < mak oma nay(奥にある川)
  • 苫小牧 < トマクオマナイ < to mak oma nay(沼の奥にある川)
  • 稚内 < ワッカナイ < yam wakka nay(冷水のある沢)
  • 知床 < シレトシレトコ < sir etok(地の果て)
  • 遠軽 < インカルシ < inkar ush (眺望する所)
  • 紋別、門別 < モペッ < (小さな、または静かな川)
  • 富良野 < フラヌィ < huranuy(臭い匂いのする所)
  • 室蘭 < モルラン(小さな下り坂のあるところ)
  • 鵡川 < ムカッペッ(川尻のたえず動く)または、< ムツクアツ(つるにんじんの多いところ)
  • 沙流川・沙流地方 < サル < sar(葦原)

上記の例のようにアイヌ語の音に漢字を当てたもののほか、意味を漢字で表現したものも含めて北海道中に多数存在する。

北海道以外の地名[要出典]

以下は、アイヌ語が起源という説が存在する地名である。

日本語に溶け込んだアイヌ語

  • 哺乳類
    • トナカイ - tunakayトゥナカイ
    • ラッコ - rakko
    • その他オットセイはアイヌ語onnepオンネプ)が中国語を経由、オットに変化した後、漢方薬としての陰茎の婉曲表現の臍がつきオットセイとなって入ったものであると言われている。
  • 野鳥
    • エトピリカ - etu pirkaエトゥピリカ)嘴・美しい
    • ケイマフリ - kema hureケマフレ)足・赤い cf. 熟語 kema-pase 足・重い→年老いた
  • 魚介類
    • シシャモ - susamスサム)語源はsusu-ham「柳の葉」とされる。
    • ホッキ貝 - pok(sey)(ポクセイ
    • 氷下魚 - komayコマイ) もしくは kankayカンカイ
  • その他

雑学

2004年から北海道で開催されている世界的モータースポーツイベント、世界ラリー選手権のイベントの一つラリージャパンにおいて、コース(SS、スペシャルステージ)の名前は、キムンカムイヤムワッカなど、原則的にアイヌ語で付けられている。

脚注

  1. ^ Ethnologue.com. “Ethnologue report for Japan” (英語). 2007年9月29日閲覧。
  2. ^ Juha Janhunen; Tapani Salminen. “Endangered languages in Northeast Asia/ report” (英語). 2007年9月29日閲覧。
  3. ^ 「八丈語? 世界2500言語 消滅危機——「日本は8言語対象 方言も独立言語」ユネスコ」『朝日新聞』2009年2月20日付夕刊、第3版、第1面。
  4. ^ 「先住民族サミット」アイヌモシリ2008「日本政府への提言」(2008年7月4日)
  5. ^ 知里真志保による。出典:平凡社世界大百科事典
  6. ^ ROM作成物サポートページ - ainu_exchange”. 2007年9月29日閲覧。
  7. ^ アイヌ語入力-試作品その3”. 2007年9月29日閲覧。
  8. ^ ROM作成物サポートページ
  9. ^ 久慈市周辺のアィヌ語系地名

参考文献

入門書

  • 中川裕・中本ムツ子 『CDエクスプレス アイヌ語』 白水社 ISBN 4560005990 2004年
    1997年刊の『エクスプレス アイヌ語』にCDが付いた新装版。
  • 『アコ イタ北海道ウタリ協会 ISBN 4905756219 C0086 1994年
  • 田村すず子 『アイヌ語入門』『アイヌ語基礎語彙』『アイヌ語入門解説』 早稲田大学語学研究所、1983年
    カムイトラノ協会、片山言語文化研究所などがビデオ教材やテキストを作成している。
  • 大修館書店1981年刊、講座言語第六巻『世界の言語』413-445pp 田村すゞ子「アイヌ語」

辞書

解説書、特定分野の辞典

  • 亀井孝・河野六郎千野栄一編 『日本列島の言語』 三省堂 ISBN 4385152071
    『言語学大辞典』(三省堂、1988年)からアイヌ語、日本語、琉球列島の言語の3項目を抜き出して編集。アイヌ語全般に関する詳しい解説を含む。アイヌ語の解説は田村すず子が担当。
  • 知里真志保 『アイヌ語入門 - 特に地名研究者のために』
  • 知里真志保 『地名アイヌ語小辞典』 北海道出版企画センター ISBN 4832888021
    原本は1956年に発行された。地名に出てくるアイヌ語の解説書。

読み物

  • アイヌ神謡集知里幸惠編訳、岩波書店〈岩波文庫〉 赤80-1
    原本は1923年に発行され、アイヌ文学として一般に知られるようになった最初のもの。著者は出版をまたず、19歳3か月で夭折した。

関連項目

外部リンク