カワウソ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
カワウソ亜科
North American River Otters
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネコ目(食肉目) Carnivora
: イタチ科 Mustelidae
亜科 : カワウソ亜科 Lutrinae

カワウソ(獺、川獺)は、ネコ目(食肉目)イタチ科カワウソ亜科に属する哺乳動物の総称である。カワウソ亜科にはニホンカワウソラッコなどが属している。 泳ぎが得意であり、水中での生活に適応している。また、ラッコ以外のカワウソは陸上でも自由に行動している。南極オーストラリアニュージーランドを除く、世界全域の水辺や海上で生息している。

概要[編集]

水かきをもった四肢は短く、胴体は細長い。このような体型は水の抵抗が少なく、敏捷な泳ぎを可能にしている。体は密生した下毛と固くて長い剛毛に覆われており、これらの体毛が水をはじくことにより、水中で体温が奪われることを防いでいる。頭の上部は扁平で、耳、目、鼻が同一線上に並んでいるため、水に潜りながらこれらの感覚器を水面上に同時に出し、外界の様子を窺うことができる。また、水中では耳孔や鼻孔を閉じることができる。

肉食性であり、ザリガニカエルなどを捕まえて食べる。小臼歯が良く発達しているため、骨まで砕いて食べてしまう。バングラデシュなど東南アジアの国では飼いならしたカワウソで魚を網に追い込ませて獲る伝統漁法があるが、2000年代に入っては継承者が減りつつあり一般的ではない[1]

ニホンカワウソ[編集]

ニホンカワウソの剥製

ニホンカワウソ Lutra lutra whiteleyi は、ユーラシアカワウソ Lutra lutra の1亜種(独立した種とする考え方もある)である。かつては北海道から九州まで、日本中に広く生息していたが、乱獲や開発による生息環境の変化で激減。1974年7月に高知県須崎市で捕らえられ、1975年4月に愛媛県宇和島市九島で保護されたのが最後の事例。1975年3月5日に高知県佐賀町(現・黒潮町)の国道56号で自動車に跳ねられた死体を回収した。そして1979年夏の目撃例が人間に目撃された最後の例となっていた。2012年8月、環境省レッドリスト改訂で正式に絶滅が宣言された。[2]

伝承の中のカワウソ[編集]

鳥山石燕画図百鬼夜行』より「獺」(かわうそ)

日本や中国の伝承では、キツネタヌキ同様に人を化かすとされていた。石川県能都地方で、20歳くらいの美女や碁盤縞の着物姿の子供に化け、誰かと声をかけられると、人間なら「オラヤ」と答えるところを「アラヤ」と答え、どこの者か尋ねられると「カワイ」などと意味不明な答を返すといったものから[3][4]加賀(現・石川県)で、城の堀に住むカワウソが女に化けて、寄って来た男を食い殺したような恐ろしい話もある[5]

江戸時代には、『裏見寒話[6]』『太平百物語』『四不語録』などの怪談、随筆、物語でもカワウソの怪異が語られており、前述のように美女に化けたカワウソが男を殺す話がある[4]

広島県安佐郡沼田町(現・広島市)の伝説では「伴(とも)のカワウソ」「阿戸(あと)のカワウソ」といって、カワウソが坊主に化けてに通行人のもとに現れ、相手が近づいたり上を見上げたりすると、どんどん背が伸びて見上げるような大坊主になったという[7]

青森県津軽地方では人間に憑くものともいわれ、カワウソに憑かれた者は精魂が抜けたようで元気がなくなるといわれた[8]。また、生首に化けて川の漁の網にかかって化かすともいわれた[8]

水木しげるロードに設置されている「川うその化け物」のブロンズ像。

石川県鹿島郡羽咋郡ではかぶそまたはかわその名で妖怪視され、夜道を歩く人の提灯の火を消したり、人間の言葉を話したり、18歳-19歳の美女に化けて人をたぶらかしたり、人を化かして石や木の根と相撲をとらせたりといった悪戯をしたという[4]。人の言葉も話し、道行く人を呼び止めることもあったという[9]

石川や高知県などでは河童の一種ともいわれ、カワウソと相撲をとったなどの話が伝わっている[4]北陸地方紀州四国などではカワウソ自体が河童の一種として妖怪視された[10]室町時代の国語辞典『下学集』には、河童について最古のものと見られる記述があり、「獺(かわうそ)老いて河童(かはらふ)に成る」と述べられている[11]

アイヌの昔話では、ウラシベツ(北海道網走市浦士別)で、カワウソの魔物が人間に化け、美しい娘のいる家に現れ、その娘を殺して魂を奪って妻にしようとする話がある[12]

中国では、日本同様に美女に化けるカワウソの話が『捜神記』『甄異志』などの古書にある[6]

朝鮮半島にはカワウソとの異類婚姻譚が伝わっている。李座首(イ・ザス)という土豪には娘がいたが、未婚のまま妊娠したので李座首が娘を問い詰めると、毎晩四つ足の動物が通ってくるという。そこで娘に絹の糸玉を渡し、獣の足に結びつけるよう命じた。翌朝糸を辿ってみると糸は池の中に向かっている。そこで村人に池の水を汲出させると糸はカワウソの足に結びついていたのでそれを殺した。やがて娘が生んだ子供は黄色(または赤)い髪の男の子で武勇と泳ぎに優れ、3人の子をもうけたが末の子が後の朝太祖ヌルハチである。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ “バングラデシュ伝統のカワウソ漁、消滅の危機”. AFP (フランス通信社). (2014年3月24日). http://www.afpbb.com/articles/-/3010886 2014年3月25日閲覧。 
  2. ^ Lutra lutra (環境省絶滅危惧種情報 by 生物多様性情報システム J-IBIS
  3. ^ 柳田國男 『妖怪談義』 講談社講談社学術文庫〉、1977年(原著1956年)、19頁。ISBN 978-4-06-158135-7
  4. ^ a b c d 村上健司編著 『妖怪事典』 毎日新聞社2000年、114頁。ISBN 978-4-620-31428-0
  5. ^ 水木しげる 『妖怪大図鑑』 講談社〈講談社まんが百科〉、1994年、59頁。ISBN 978-4-06-259008-2
  6. ^ a b 柴田宵曲 「続妖異博物館」『柴田宵曲文集』第6巻、木村新他編、小沢書店1991年(原著1963年)、477頁。NCID BN06690927
  7. ^ 藤井昭編著 『安芸の伝説』 第一法規出版1976年、166頁。NCID BN05056551
  8. ^ a b 内田邦彦 『津軽口碑集』 歴史図書社、1979年(原著1929年)、126頁。NCID BA4288829X
  9. ^ 多田克己 『幻想世界の住人たち』IV、新紀元社Truth In Fantasy〉、1990年、124頁。ISBN 978-4-915146-44-2
  10. ^ 村上健司 「河童と水辺の妖怪たち」『DISCOVER妖怪 日本妖怪大百科』VOL.01、講談社コミッククリエイト編、講談社〈KODANSHA OfficialFileMagazine〉、2007年、19頁。ISBN 978-4-06-370031-2
  11. ^ 香川雅信 「カッパは緑色か?」『』vol.0037、吉良浩一編、角川書店〈カドカワムック〉、2012年、34頁。ISBN 978-4-04-130038-1
  12. ^ 知里真志保 「えぞおばけ列伝」『アイヌ民譚集』 岩波書店岩波文庫〉、1981年(原著1937年)、198-200頁。ISBN 978-4-00-320811-3

関連項目[編集]

外部リンク[編集]