十万分の一の偶然

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十万分の一の偶然』(じゅうまんぶんのいちのぐうぜん)は、松本清張の長編小説。『週刊文春』に連載され(1980年3月20日号 - 1981年2月26日号、連載時の挿絵は濱野彰親)、1981年7月、文藝春秋から単行本として刊行された。後に電子書籍版も発売されている。

1981年・2012年にテレビドラマ化されている。

概要[編集]

アマチュア・カメラマンの撮影した一枚の報道写真をめぐって、現代社会の犯罪像を描く、クライム・ミステリー。

あらすじ[編集]

小説中の事故現場となる沼津インターチェンジ周辺の遠望(写真右側、愛鷹山の裾野に位置)
小説中、正平と恭介の対決の舞台となる、東京・品川区の大井埠頭周辺

夜間の東名高速道路下り線・沼津インターチェンジ近くのカーブで、自動車が次々に大破・炎上する、玉突き衝突事故が発生した。アルミバン・トラックが急ブレーキをかけ、横転したことに始まったと推測されるも、事故直後の警察の現場検証では、ブレーキをかける原因となるような障害の痕跡は、まったく発見されなかった。

一方、大事故の瞬間を捉えた山鹿恭介の写真「激突」は、カメラの迫真力を発揮した作品として、A新聞社主催の「ニュース写真年間最高賞」を受賞、決定的瞬間の場面に撮影者が立ち会っていたことは奇蹟的、十万に一つの偶然と評された。

しかし、事故で婚約者・山内明子を喪った沼井正平は、状況に不審を抱き、調査を開始する。「十万分の一の偶然」は作られたものなのか。いったい、どのような方法で?

探索の末、「事故」の正体を突き止めたと思い、正平は行動に出るが…。

主な登場人物[編集]

  • 原作における設定を記述。
沼井正平
東京・祐天寺に住む、元P大学経済学部助手。婚約者・山内明子の死を契機に大学を辞職。
山鹿恭介
報道写真に強い関心を示すアマチュア・カメラマン。本職は、福寿生命保険藤沢支店の外務員。
山内みよ子
山内明子の姉。職業は通訳で、明子の死を知りスイスから帰国。
西田栄三
藤沢のアマチュア写真団体「湘南光影会」の中心メンバーの一人。
米津安吉
事故の際、山内明子の後ろを走っていたライトバンの同乗者。
古家庫之助
報道写真の権威として知られる大家。A新聞社の公募ニュース写真の審査委員長を務める。

エピソード[編集]

  • 藤井康栄によれば、本作のアイデアのきっかけになったのは、1955年5月の紫雲丸事故であり、連載の打ち合わせの時、著者は、同事故の際の報道写真問題を例に出しながら構想を話していたという[1]
  • 本作の担当編集者の鈴木文彦は、作中のトリックが実行可能な、すべての条件を満たす地点を、東名高速上で探すよう、著者から求められ、東京から同道路上をたどり、ようやく見つけたのが沼津インターチェンジ手前であった[2]
  • 本作で描かれる犯罪に関して、劇作家の別役実は、本作刊行後に発生した、韓国のアマチュア・カメラマンが、若い女性をだまして山中に連れ込み、毒を飲ませ、苦悶して死亡するまでの様子をカメラにおさめた事件を取りあげ、「世界は単なる映像に過ぎないと感じ、「死」の映像が必要だったがために、人を殺した」点で、本作のアマチュア・カメラマンと極めてよく似ている、と指摘している[3]

関連項目[編集]

テレビドラマ[編集]

1981年版[編集]

10万分の1の偶然
ジャンル テレビドラマ
放送時間 21:02 - 22:54
放送期間 1981年12月29日
放送国 日本の旗 日本
制作局 日本テレビ
演出 黒木和雄
脚本 田辺泰志
石田芳子
出演者 関根恵子
泉谷しげるほか
エンディング 岩崎宏美聖母たちのララバイ
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1981年12月29日日本テレビ系列の「火曜サスペンス劇場」枠(21:02-22:54)にて放映。恋人の男性を失った女性・山内明子を主人公に設定している。

キャスト
スタッフ

2012年版[編集]

松本清張没後20年 ドラマスペシャル
十万分の一の偶然
ジャンル テレビドラマ
放送時間 21:00 - 23:06
放送期間 2012年12月15日
放送国 日本の旗 日本
制作局 テレビ朝日
監督 藤田明二
脚本 吉本昌弘
プロデューサー 五十嵐文郎(テレビ朝日)ほか
出演者 田村正和ほか
音声 ステレオ放送
字幕 文字多重放送

特記事項:
テレビ朝日開局55周年記念
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松本清張没後20年・ドラマスペシャル 十万分の一の偶然」。2012年12月15日(21:00-23:06)、テレビ朝日開局55周年記念番組第一弾「松本清張没後20年 2週連続ドラマスペシャル」の第一夜として放映(テレビ宮崎は同年12月17日の放映)。視聴率18.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。正平と山内明子を父娘の関係に設定している。

キャスト
スタッフ

脚注・出典[編集]

  1. ^ 『十万分の一の偶然』(2009年、文春文庫新装版)巻末の藤井による解題を参照。紫雲丸事故に関しては、小説中、「反響」の節などで言及されている。
  2. ^ 同上。
  3. ^ 『松本清張全集 第43巻』(1983年、文藝春秋)巻末の別所による解説を参照。

外部リンク[編集]