夜光の階段

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夜光の階段』(やこうのかいだん)は、松本清張長編小説。『週刊新潮』に『ガラスの鍵』のタイトルで連載され(1969年5月10日号 - 1970年9月26日号、連載時の挿絵は御正伸)、加筆訂正の上、1981年12月、新潮社から単行本として刊行された。後に電子書籍版も発売されている。

過去4度テレビドラマ化されている。

概要[編集]

新進青年美容師の野望と、彼を取り巻く女性の打算を軸に発生する犯罪事件を描く、長編ピカレスク・サスペンス。

出版[編集]

新潮文庫

あらすじ[編集]

才能はあるが出世のチャンスが無かった一介の美容師・佐山が、様々な女を利用して、まるで階段を上るかのごとく栄光を掴もうとする。

主な登場人物[編集]

小説前半の舞台となる福岡市の夜景
天拝山山頂から見た福岡市街
  • 原作における設定を記述。
佐山道夫
村瀬美容室勤務の美容師。美容師としてかなりの腕を持っており、客からの評判も高い。目下独立を考えており、将来に向けた布石を打っている。
波多野雅子
波多野証券の社長夫人。以前から佐山に出資し援助していた。すでに40歳近い。
枝村幸子
知性と教養を看板とする一流婦人雑誌「女性回廊」の編集者。
福地フジ子
有名週刊誌の編集者。枝村幸子とは知り合い。
竹崎弓子
赤坂の割烹料理店の女主人。佐山に資金援助するようになる。
波多野伍一郎
波多野証券社長。外に愛人を持っている。
岡野正一
佐山のアパートの隣室の住人。デザイナー志望だが、なかなか芽が出ない。
岡野和子
岡野正一の妻。
村瀬進太郎
佐山の勤務する美容院の店主。
村瀬みな子
村瀬進太郎の妻。
桜田事務官
桑山検事とは以前からの付き合いのベテラン捜査員。
桑山信爾
東京高等検察庁の検事。数年前に九州で起こった殺人事件に関心を持っていたが…。

エピソード[編集]

  • 連載開始当時は、それまで、パーマ屋というイメージで、女性しかいなかったヘアーデザイナーの世界に、フランスなどヨーロッパ帰りの男性の進出が盛んになった時期であった。本作を担当した新潮社の編集者・鍋谷契子は、その点に、著者が興味を持っていたようだと語っている[1]。また当時は、銀座などにファッション性を意識した人気ヘアーサロンが出始め、後の「カリスマ美容師」にあたる人気美容師が注目を集めた(1970年にヴィダル・サスーンが初来日)が、他方、当時の美容師は、中学校を卒業してすぐ美容師に弟子のような形で入り、下積みの厳しい環境で技術を身に付けることがほとんどであり、佐山のように数年で店を持つことは難しかったと、女性モード社の相談役・小沢一郎は、本作の時代背景を説明している[2]
  • 鍋谷の調査の上で、著者は「目黒のある美容院」を取材している。その美容院は、下に喫茶店があり、脇から階段を上がって2階にある店で、入り口を入るとちょっとしたロビーがあり、そこには全身を映し出すロココ調の大きな鏡があり、女性が美しく映ると評判になっていたという[3]
  • 連載時の題『ガラスの鍵』は、成功の扉を開けるガラス製の鍵(ガラス製ゆえ力ずくで開けようとすると折れる)をイメージしたものであったが、単行本化時に、著者は「柔らか過ぎる」として、現在の題へと変更している[4]
  • 本作の取材にあたって著者は二日市温泉に滞在している。宿泊旅館は「大丸別荘」(2014年現在も営業中)。著者と旅館の交流はその後も続き[5]、同旅館には著者の色紙が残されている。なお、小説中にも同温泉が登場する(小説中では「武蔵温泉」)。

関連項目[編集]

テレビドラマ[編集]

1983年版[編集]

松本清張ドラマスペシャル・夜光の階段」。1983年3月9日から3月30日まで、TBS系列で、毎週水曜日の22:00 - 22:54(JST)に4回にわたって放送された。

キャスト
スタッフ
TBS 水曜10時枠の連続ドラマ
前番組 番組名 次番組
男はたいへん
(1983.2.9 - 3.2)
松本清張ドラマスペシャル
夜光の階段
(1983.3.9 - 30)
擬装結婚
(1983.4.13 - 6.15)

1986年版[編集]

松本清張スペシャル
夜光の階段
ジャンル テレビドラマ
放送時間 21:02 - 23:21
放送期間 1986年4月1日
放送国 日本の旗 日本
制作局 日本テレビ
企画 小坂敬(日本テレビ)
監督 松尾昭典
原作 松本清張『夜光の階段』
脚本 大野靖子
プロデューサー 嶋村正敏(日本テレビ)
板橋貞夫(松竹)
林悦子(霧企画)
出演者 古谷一行
辰巳琢郎ほか
エンディング 岩崎宏美25時の愛の歌
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松本清張スペシャル・夜光の階段」。1986年4月1日日本テレビ火曜サスペンス劇場』で、21:02 - 23:21(JST)に放送された。視聴率21.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。桑山検事が主役に設定され、事件を推理し佐山を追いつめていく姿を描く。佐山道夫役は辰巳琢郎と榎木孝明のいずれかで検討されていた[6]

キャスト
スタッフ
日本テレビ 火曜サスペンス劇場
前番組 番組名 次番組

(1986.3.25)
松本清張スペシャル
夜光の階段
(1986.4.1)
震える髪
(1986.4.8)

1995年版[編集]

松本清張特別企画
夜光の階段
ジャンル テレビドラマ
放送時間 21:02 - 23:21
放送期間 1995年9月25日
放送国 日本の旗 日本
制作局 TBS
演出 大室清
原作 松本清張『夜光の階段』
脚本 大野靖子
プロデューサー 吉沢雅治(テレパック)
龍至政美
林悦子(霧企画)
出演者 東山紀之
黒木瞳ほか
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松本清張特別企画・夜光の階段」。1995年9月25日TBS月曜ドラマスペシャル』で放送された。視聴率17.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

キャスト
スタッフ
TBS 月曜ドラマスペシャル
前番組 番組名 次番組
松本清張特別企画
夜光の階段
(1995.9.25)

2009年版[編集]

松本清張生誕100年スペシャル
夜光の階段
ジャンル テレビドラマ
放送時間 毎週木曜 21:00 - 21:54(54分)
放送期間 2009年4月23日 - 6月18日(全9回)
放送国 日本の旗 日本
制作局 テレビ朝日
演出 藤田明二
今井和久
高橋伸之
原作 松本清張
脚本 竹山洋
プロデューサー 藤本一彦
布施等
出演者 藤木直人
木村佳乃
夏川結衣
渡辺いっけい
荻野目慶子
室井滋
小林稔侍
音声 ステレオ放送
字幕 文字多重放送
エンディング CRIME OF LOVE」藤木直人
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2009年4月23日から6月18日まで、テレビ朝日にて、毎週木曜日の21:00 - 21:54(JST)の「木曜ドラマ」枠で、「松本清張 生誕100年スペシャル」として放送された。主演は藤木直人。現在はDVD化されている。

番組途中の第4話から筆頭スポンサー花王の表示方法が若竹色のカラーテロップに変更された。

キャスト
美容界の頂点を狙う若手美容師。その過去は不明なところが多い。
婦人雑誌「女性回廊」編集者。芸能界に強いコネクションを持つ。
週刊誌「フラッグ」編集者で幸子の友人。中性的な格好をしている。
美容室「ムラセ」のオーナー。
美容室「ムラセ」オーナー夫人。
東京高等検察庁事務官。前職は警察官。
桑山信爾の娘。
福岡で起きた天拝山殺人事件の被害者。
道夫を師と仰ぐ美容師。
岡野正一の妻。
赤坂の料亭「すずめ」の女将。関西の大物財界人の愛人。
道夫と同じアパートの隣の部屋に住む商業デザイナー。
東京地方検察庁検事。桑山の同僚。
証券会社社長夫人。夫の金を使って道夫に入れ込む有閑マダム。
東京高等検察庁検事。道夫の過去に疑問を持ち調査する。

※以下、カッコ内は出演話数

スタッフ
サブタイトル
各話 放送日 サブタイトル シナリオ題(ラテ欄) 演出 視聴率
第1話 2009年4月23日 野望 殺人美容師 藤田明二 12.5%
第2話 2009年4月30日 告白 盗聴される女 10.7%
第3話 2009年5月7日 飛躍 1億を貢ぐ女 今井和久 9.7%
第4話 2009年5月14日 策略 失踪した人妻 9.8%
第5話 2009年5月21日 殺意 疑惑の殺意!? 高橋伸之 10.1%
第6話 2009年5月28日 殺害 婚約殺人の罠 藤田明二 9.6%
第7話 2009年6月4日 隠滅 最終章告白!! 今井和久 10.4%
第8話 2009年6月11日 自決 最終章失踪!! 高橋伸之 10.8%
最終話 2009年6月18日 英断 衝撃の結末 藤田明二 12.1%
平均視聴率 10.6%ビデオリサーチ調べ・関東地区)
遅れネット局
テレビ朝日 木曜ドラマ
前番組 番組名 次番組
特命係長 只野仁(4thシーズン)
(2009.1.8 - 2009.3.12)
松本清張生誕100年スペシャル
夜光の階段
(2009.4.23 - 2009.6.18)

脚注・出典[編集]

  1. ^ 『週刊 松本清張』第10号(2010年、デアゴスティーニ・ジャパン)10頁参照。
  2. ^ 『週刊 松本清張』第10号 8-9頁参照。
  3. ^ 『週刊 松本清張』第10号 10頁参照。
  4. ^ 『週刊 松本清張』第10号 10-11頁参照。
  5. ^ この縁もあり、1986年・1995年のテレビドラマ化にあたっては温泉街全体の協力を得ることになった。林悦子『松本清張映像の世界 霧にかけた夢』(2001年、ワイズ出版)62-67頁参照。
  6. ^ 古谷一行が佐山道夫を演じるのは人物設定上難しいと考えられ、1984年のNHK連続テレビ小説『ロマンス』で主役を演じた榎木・辰巳に着目した。最終的には監督の松尾昭典が辰巳を希望した。林『松本清張映像の世界 霧にかけた夢』60-62頁参照。

外部リンク[編集]