聖獣配列

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聖獣配列』(せいじゅうはいれつ)は、松本清張の長編小説。『週刊新潮』に連載され(1983年9月1日号 - 1985年9月19日号)、1986年1月に新潮社から刊行された。後に電子書籍版も発売されている。

概要[編集]

銀座のクラブのママが、日米関係の闇に潜む黒い策謀と渡り合う、長編クライム・サスペンス。

あらすじ[編集]

現在の赤坂迎賓館

「クラブ・シルバー」のママ・中上可南子のもとに、顔馴染みの議員秘書・倉田重三郎が外国人を連れてきた。可南子の窮状を耳にしていた倉田は、驚くべき話を持ちかける。来日予定のアメリカ合衆国大統領・ジェームス・バートンが、可南子との再会を求めている、と。誘いに乗り、大統領の宿泊している迎賓館に、極秘で入った可南子は、再びバートンと夢のような一夜を過ごす。

目覚めた可南子の傍らに、バートンはいなかった。スナップ写真を撮ろうとカメラを持ち部屋を出た可南子は、バートン大統領と日本の磯部首相が廊下を歩いているのを目撃し、カメラで撮影する。何故こんな時間に…極秘会談?

その日から可南子の危機が始まった。自宅を襲撃される可南子だったが、可南子はフィルムのネガを秘密の場所に封印した上で、ネガを武器にバートン大統領と交渉することを思いつく。日米首脳の秘密会談の証拠写真を切り札に、バートンから有利な援助を引き出すのだ…。

バートン大統領の行き先を追って、ロンドンに来た可南子。ネガを回収しようとする対手の襲撃をくぐり抜け、可南子は大統領側近秘書のアーサー・ジェフスンと交渉、前途金の支払いを約束させることに成功する。可南子はスイスのホテル会社社長・ワルター・シュルツの助力を得て、送金ルートを確立、巨額の金を取得する足がかりを作る。

しかし他方、あの秘密会談に同行していた関係者が、相次いで死体で発見された。秘密を知る者が消されている…?。今や西新宿の会社社長となった可南子だったが、国際的な闇取引の存在を知らされて…。

主な登場人物[編集]

中上可南子
銀座八丁目「クラブ・シルバー」のママ。オーナーに見捨てられつつあり、途方に暮れていたが…。
アーサー・ジェフスン
バートン大統領の側近秘書官。元駐日米大使館員。
ジェフスン節子
アーサー・ジェフスンの妻。ワシントン在住。
杉浦雄三郎
通産省官房国際室長。英語力を買われ、磯部首相の臨時通訳となる。42歳。
杉浦美代子
杉浦雄三郎の妻。はきはきして理知的。30歳。
倉田重三郎
国会議員・武藤平吉の秘書。
クミ子
「クラブ・シルバー」の女の子。
小幡浩三
東邦経済新聞の記者。クミ子の恋人。
木内泰久
与党内の非主流派のリーダー。磯部派打倒の機会をうかがっている。謡曲を習い、講談を口ずさむ。
ジェームス・バートン
アメリカ合衆国大統領。かつて上院議員の時に、可南子と二晩を過ごした。日本の磯部首相と会談のため来日する。
ワルター・シュルツ
オテル・ロワイヤル・パラスの社長。同時にスイス民兵旅団長でもあり…。

関連項目[編集]

エピソード[編集]

  • 可南子がママになる前に勤めていた赤坂のナイトクラブ「トロピカーナ」のモデルは、「コパカバーナ」であると推定されている[1]
  • 本作では迎賓館が白金に所在する設定となっている(旧朝香宮邸。実際には1974年に現在の場所・赤坂に移転している)が、内部の描写は現迎賓館に基づくものとされる[2]。その描写が、本物そのままであるとして、機密上総理府の警備当局で問題になった[3]
  • 本作の設定はロッキード事件を意識したものといわれる[4]。本作の連載開始は同事件の第一回公判が開始される時期にあたり、バートン大統領と磯部首相の秘密会談は、ニクソン田中角栄による、1972年の日米首脳会談を想定したものと推定されている(ロッキード事件#不可解なトライスター発注も参照)。ただし、著者の取材ノートによれば、磯部首相のモデルは田中角栄だが、バートン大統領の人物像はカーター元大統領がモデルとされている。
外部リンク

作品の舞台[編集]

フランス東部・リュ
ムオタタールの渓谷地帯
ベルギー
フランス
  • リュモーゼル川源流近くの小集落。作中登場するレストラン「AUBERGE DE LA VALLEE」は、同地区に2014年現在も実在している。
  • ディボンヌ…カジノは「売上げはヨーロッパでモナコのそれに次ぐ」とされている。スイスとの国境近く。
イギリス
スイス

参考文献[編集]

  • T.R.フェーレンバッハ、向後英一訳『スイス銀行』(1979年、ハヤカワ文庫)…本作中に登場する。
  • 『スイス日記抄』(『週刊新潮』1983年8月25日号掲載)…連載開始直前に掲載された著者の取材記。
  • 堤伸輔「スイス取材の松本清張-「ところでおたくの秘密主義は」と二十回-」(『松本清張研究』第9号(2008年、北九州市立松本清張記念館)に収録)
    • 新潮社の同行者による取材記。取材した銀行の地下金庫室が撮影禁止だと聞くや、著者はその場で手早くスケッチし、困ることはなかったという。

脚注・出典[編集]

  1. ^ 『聖獣配列』下巻(2009年、文春文庫)巻末の手嶋龍一による解説を参照。「コパカバーナ」には根本七保子(のちのデヴィ・スカルノ、「デヴィ夫人」)も働いていたが、権田萬治は、本作の導入部は根本七保子が同店でインドネシア大統領・スカルノと知り合った件から着想を得たものと推測している。『聖獣配列』下巻(1988年、新潮文庫)巻末の権田による解説を参照。
  2. ^ 『聖獣配列』下巻(2009年、文春文庫)巻末の藤井康栄による解題を参照。
  3. ^ 「来日『レーガン警備』を刺激した松本清張氏の『小説』」(『週刊新潮』1983年11月3日号掲載)。「松本さんの小説は、大問題になりましてね。資料を提供した協力者がいるから、その協力者を捜し出せ、ということになり、迎賓館内部の人間、建築にかかわった業者、食事等を担当しているホテルなどをシラミ潰しに調べて、”犯人”とおぼしき関係者に厳重注意しました」(迎賓館関係者の証言)。
  4. ^ 以下、『聖獣配列』下巻(2009年、文春文庫)巻末の藤井康栄による解題を参照。
  5. ^ 『聖獣配列』下巻(1988年、新潮文庫)巻末の権田萬治による解説も参照。