「ダム」の版間の差分
2ヶ所に分かれていたダムに関する問題点の統合と加筆 |
|||
11行目: | 11行目: | ||
| 6=堤高が世界第2位の[[ヌレークダム]] |
| 6=堤高が世界第2位の[[ヌレークダム]] |
||
}} |
}} |
||
'''ダム'''({{lang-en-short|Dam}}) |
'''ダム'''({{lang-en-short|Dam}})または'''堰堤'''(えんてい)は、[[水力発電]]や[[治水]]・利水、[[治山]]・[[砂防]]、[[廃棄物]]処分などを目的として、[[川]]や[[谷]]を横断もしくは窪地を包囲するなどして作られる[[土木工学|土木]]構造物。一般に[[コンクリート]]や[[土]][[砂]]、[[岩]][[石]]などによって築く人工物を指す。大規模なダムで川を堰き止めた場合、上流側には[[人造湖]](ダム湖)が形成される。 |
||
人間以外にダムを造る[[動物]]として[[ビーバー]]がおり、また[[土砂崩れ]]や[[地すべり]]によって川が堰き止められて[[天然ダム]]が形成されることもある。また、地上だけでなく、[[地下水|地下水脈]]を堰き止める[[地下ダム]]もある。このほか、貯留・貯蓄の[[比喩]]として用いられることがあり、[[森林]]の保水力を指す[[緑のダム]]という言葉がある。 |
|||
⚫ | |||
⚫ | |||
日本のダムについての詳細は[[日本のダム]]を参照のこと。 |
日本のダムについての詳細は[[日本のダム]]を参照のこと。 |
||
19行目: | 21行目: | ||
== 語源 == |
== 語源 == |
||
<!--日本語としてのダムは英語に由来する。(でOK?)--> |
<!--日本語としてのダムは英語に由来する。(でOK?)--> |
||
英語の dam という言葉は[[中英語]]に既にみられ |
英語の dam という言葉は[[中英語]]に既にみられ、おそらくは[[中世ヨーロッパ|中世]]<!--中期?-->[[オランダ語]]の dam から派生したと考えられている<!-- http://www.etymonline.com/index.php?]]term=dam によると[[古ノルド語]]の dammr かもしれないとのこと-->。[[北海]]に面した低地が多いオランダでは、河川の水位調整と海水浸入防止のためダムや[[堤防]]を築くことが多かった。ダムができるとその地点での渡河が容易となるため、しばしば都市の形成へと繋がった。たとえば、[[アムステルダム]]は[[アムステル川]]に、[[ロッテルダム]]はロッテ川にダムが設けられたことを契機として形成された街である。 |
||
<!-- 検索してみると http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/Jiten/Jiten_09.html にも同様の記述がありました --> |
<!-- 検索してみると http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/Jiten/Jiten_09.html にも同様の記述がありました --> |
||
== 概説 == |
== 概説 == |
||
ダムの定義は各国により異なるが、[[1928年]](昭和3年)に創設され現在88か国が加盟する[[国際大ダム会議]]における定義では堤高が5.0[[メートル]]以上かつ貯水容量が300万[[立方メートル]]以上の堰堤を「ダム」として定めている。そのうち、高さが15メートル以上のものを'''ハイダム'''、それに満たないものを'''ローダム'''という。日本の[[河川法]]でいうダムとはハイダムを指し、これ以外の堰堤についてはたとえ「ダム」という名称が付いたとしても[[堰]]として扱われる。ちなみに、明確な定義が無かった時期は、山に接して設けられるもの |
ダムの定義は各国により異なるが、[[1928年]](昭和3年)に創設され、現在88か国が加盟する[[国際大ダム会議]]における定義では堤高が5.0[[メートル]]以上かつ貯水容量が300万[[立方メートル]]以上の堰堤を「ダム」として定めている。そのうち、高さが15メートル以上のものを'''ハイダム'''、それに満たないものを'''ローダム'''という。日本の[[河川法]]でいうダムとはハイダムを指し、これ以外の堰堤についてはたとえ「ダム」という名称が付いたとしても[[堰]]として扱われる。ちなみに、明確な定義が無かった時期は、山に接して設けられるものや積極的に流水を制御できる堰堤を「ダム」、[[堤防]]に接して設けられるものや常に越水するなど受動的にしか流水を制御できない堰堤を「堰」として分類していた。しかし、堰の中にもダムと同様に[[洪水調節]]・流水機能維持を目的に積極的な流水の制御を行う施設も建設されるようになり、ダムと堰の区別が曖昧になってきた。これにより、明確な定義を定める必要性が生まれたと考えられている。なお、ダムを上流から見た時、右側を'''右岸'''(うがん)、左側を'''左岸'''(さがん)といい、ダムの下流側の面を'''背面'''(はいめん)という。 |
||
ダムの目的は多岐にわたる |
ダムの建設目的は多岐にわたる。主なものとしては[[治水]]([[洪水調節]]・[[放流 (ダム)#不特定利水|不特定利水]])と[[利水]]([[灌漑]]用水や[[上水道]]用水、[[工業用水道|工業用水]]、消流雪用水の供給、[[水力発電]]、[[レクリエーション]]等)がある。治水を目的とするダムを治水ダムといい、利水を目的とするダムを利水ダムという。複数の利水目的を持つ利水ダムや、治水・利水両方を目的とするダムを[[多目的ダム]]という。治山を目的とする[[治山ダム]]や砂防を目的とする[[砂防ダム]]、[[鉱山]]で[[鉱滓]]貯留を目的とする[[鉱滓ダム]]、廃棄物埋設処分を目的とするダム等は[[河川法]]のダムとは別扱いとなる。 |
||
本項では国際大ダム会議で定義されたダムのうち、日本の河川法 |
本項では国際大ダム会議で定義されたダムのうち、日本の河川法、河川管理施設等構造令の基準にも援用されている高さ15.0メートル以上の、いわゆる'''ハイダム'''について説明する。[[堰]]、[[治山ダム]]、[[砂防ダム]]、[[鉱滓ダム]]、[[天然ダム]]、[[地下ダム]]については、それぞれの項目を参照されたい。 |
||
[[日本語]]においてダムの数え方は「基」であり、1基、2基という |
[[日本語]]においてダムの数え方は「基」であり、1基、2基という呼び方で数える。 |
||
なお、2011年時点、世界で最も多くのダムを保有しているのは[[中華人民共和国]]である。その数は8万7千基に及ぶ<ref>[http://www.toyokeizai.net/business/international/detail/AC/2c7542811a749fcea90569fcf01f489e/ 「ダム王国」中国の脅威、半数の4万基が傷んでいる] - 東洋経済オンライン 2011年11月4日</ref>。 |
なお、2011年時点、世界で最も多くのダムを保有しているのは[[中華人民共和国]]である。その数は8万7千基に及ぶ<ref>[http://www.toyokeizai.net/business/international/detail/AC/2c7542811a749fcea90569fcf01f489e/ 「ダム王国」中国の脅威、半数の4万基が傷んでいる] - 東洋経済オンライン 2011年11月4日</ref>。 |
||
36行目: | 38行目: | ||
''日本のダムに関する詳細な歴史は'''[[日本のダムの歴史]]'''を、年表の一覧は'''[[日本ダム史年表]]'''を参照のこと。'' |
''日本のダムに関する詳細な歴史は'''[[日本のダムの歴史]]'''を、年表の一覧は'''[[日本ダム史年表]]'''を参照のこと。'' |
||
=== ダムの黎明 === |
=== ダムの黎明 === |
||
人類史上、初めてダムが建設されたのは[[古代エジプト]]・[[エジプト第2王朝]]時代の[[紀元前2750年]]に建設された'''サド・エル・カファラダム'''(意は「異教徒のダム」) |
人類史上、初めてダムが建設されたのは[[古代エジプト]]・[[エジプト第2王朝]]時代の[[紀元前2750年]]に建設された'''サド・エル・カファラダム'''([[:en:Sadd el-Kafara]]、意味は「[[異教徒]]のダム」)と考えられている。このダムは堤高11.0メートル、堤頂長が106メートルで、[[採石場|石切り場]]の作業員や家畜に水を供給する上水道目的で建設された。その後の発掘調査などから石積みダムであったと考えられているが、洪水吐き([[放流設備]])を持たなかったため建設後40年目にして中央から河水が越流し、[[決壊]]したと推定されている。このため、このダムは現存しない。また[[エジプト第12王朝]]時代の[[アメンエムハト4世]](アンメネメス3世)の治世には[[干拓]]により形成された農地に灌漑用水を供給するためのダムが建設されたとされている。現存する最古のダムは[[シリア]]の[[ホムス]]付近に建設された'''ナー・エル・アシダム'''と考えられている。このダムは堤高2.0メートル、堤頂長2,000メートルのダムで、推定で[[紀元前1300年]]頃に建設されたとしている。現在でも上水道目的で使用されており、建設以来約三千年もの間、修繕を重ねながら稼働している貴重な遺産でもある。 |
||
現在高さ200メートル級のダムが多く存在する[[中近東]]では、[[メソポタミア文明]]時代において[[チグリス川]]・[[ユーフラテス川]]にダムが建設されたという記録が残されている。[[東アジア]]では[[紀元前240年]]頃、[[黄河]]流域で建設された'''グコーダム'''が初見である。[[戦国時代 (中国)|戦国時代]]末期、現在の[[中華人民共和国|中国]][[山西省]]付近にあった[[趙 (戦国)|趙]]の領内に建設された堤高30.0メートル、堤頂長300メートルのダムである。このダムは12世紀初頭までの約1300年間、ダムの高さでは世界一であったとされている。その後[[前漢]]時代には軍事的観点でダムが建設された例が[[司馬遷]]の |
現在高さ200メートル級のダムが多く存在する[[中近東]]では、[[メソポタミア文明]]時代において[[チグリス川]]・[[ユーフラテス川]]にダムが建設されたという記録が残されている。[[東アジア]]では[[紀元前240年]]頃、[[黄河]]流域で建設された'''グコーダム'''が初見である。[[戦国時代 (中国)|戦国時代]]末期、現在の[[中華人民共和国|中国]][[山西省]]付近にあった[[趙 (戦国)|趙]]の領内に建設された堤高30.0メートル、堤頂長300メートルのダムである。このダムは12世紀初頭までの約1300年間、ダムの高さでは世界一であったとされている。その後[[前漢]]時代には軍事的観点でダムが建設された例が[[司馬遷]]の『[[史記]]』に記されており、「[[劉邦]]の三傑」と呼ばれた[[韓信]]が[[項籍|項羽]]との戦いにおいて戦場の近くを流れる河川にダムを建設、意図的に破壊して城塞や項羽軍に大打撃を与えた。[[日本]]では[[616年]]、[[飛鳥時代]]に[[河内国]]([[大阪府]])で[[狭山池 (大阪府)|狭山池]]が建設されたのが初見である。また、多目的ダム(後述)として[[奈良時代]]の[[731年]]に[[摂津国]](現在の[[兵庫県]][[伊丹市]])で治水と灌漑を目的とした'''[[昆陽池]]'''が建設されている。 |
||
=== 技術の進歩 === |
=== 技術の進歩 === |
||
[[File:Roman Cornalvo dam, Extremadura, Spain. Pic 01.jpg|thumb|[[古代ローマ]]のコルナルボダム]] |
[[File:Roman Cornalvo dam, Extremadura, Spain. Pic 01.jpg|thumb|[[古代ローマ]]のコルナルボダム]] |
||
[[ヨーロッパ]]では[[ローマ帝国]]時代に上水道供給を目的としたダム建設が盛んとなり、現在でも[[フランス]]や[[イタリア]]などに堤高20メートル規模のダムが現存、あるいは廃墟として残っている。この頃に初めてダム建設に[[コンクリート]]が使われ、止水用に[[モルタル]]が用いられた。 |
[[ヨーロッパ]]では[[ローマ帝国]]時代に上水道供給を目的としたダム建設が盛んとなり、現在でも[[フランス]]や[[イタリア]]などに堤高20メートル規模のダムが現存、あるいは[[廃墟]]として残っている。この頃に初めてダム建設に[[コンクリート]]([[ローマン・コンクリート]])が使われ、止水用に[[モルタル]]が用いられた。日本においては灌漑用として稲作の発展と共に多数のダムが建設され現存しているが、[[1128年]]([[大治]]3年)に[[大和国]]([[奈良県]])に建設された'''大門池'''は高さ32.0メートルと当時としては世界一の高さであった。14世紀頃になると[[スペイン]]各地でダム建設が行われ、特に14世紀末に建設された'''アルマンサダム'''はそれまで世界一であった大門池の高さを塗り替えて世界一に躍り出た。さらに[[1594年]]に完成した[[アーチ式コンクリートダム]]の'''チビダム'''(別名アリカンテダム)は高さ41.0メートルとアルマンサダムの記録を塗り替え、以後300年間に亘って記録が破られることがなかった。このように中世においてはスペインが、ダム技術で世界屈指を誇っていた。 |
||
この時期まで世界で建設されたダムはおおむね上水道 |
この時期まで世界で建設されたダムはおおむね上水道や灌漑といった利水目的で、[[洪水調節]]を行う治水目的のダムは建設されていなかった。だが、17世紀に入るとヨーロッパ諸国で治水目的のためのダム建設が計画され、さらに洪水に耐えうるだけのダム型式としてダムの自重と[[重力]]を利用して堤体を安定化させる[[重力式コンクリートダム]]の技術が研究・開発されだした。[[フランス]]では[[ナポレオン3世]]により河川開発が強力に推進され、[[1858年]]には[[ロアール川]]に洪水調節用ダムが建設された。[[プロイセン]]では[[1833年]]以降に比較的巨大なコンクリートダムの建設が進められるようになった。日本では遅れること1920年代にコンクリートダムの建設が盛んになり、[[1924年]](大正13年)には当時「世界のビッグ・プロジェクト」と称えられた[[大井ダム]]([[木曽川]])を建設。日本の支配下にあった[[外地]]でも大型ダム整備を進めた。[[台湾]]では[[1930年]]([[昭和]]5年)に[[烏山頭ダム]]が完成して[[嘉南大圳]]([[嘉南平原]]を沃野に変えた水路網)の要となった。[[1937年]](昭和12年)には旧[[満州]]で当時東洋一といわれた[[豊満ダム]](高さ90.0メートル)が、[[朝鮮半島]]の[[鴨緑江]]では[[水豊ダム]](高さ107.0メートル)が[[1942年]]([[昭和]]17年)に竣工し、世界のダム技術に追いついて行くようになった。 |
||
=== 多目的ダムの登場 === |
=== 多目的ダムの登場 === |
||
55行目: | 57行目: | ||
| 4=[[発電用水車]]及び[[発電機]] |
| 4=[[発電用水車]]及び[[発電機]] |
||
}} |
}} |
||
治水を目的としたダムが建設されると、今度は治水と利水双方の機能を組み合わせた''' |
治水を目的としたダムが建設されると、今度は治水と利水双方の機能を組み合わせた'''多目的ダム'''の建設が志向されるようになった。既に[[731年]]日本において僧・[[行基]]が治水と灌漑を目的とした[[昆陽池]]を建設していたが、理論自体は提唱されていなかった。多目的ダムの理論を提唱したのは[[1889年]]、プロイセンのインツェが最初であり、それを[[1902年]]にマッテルンが経済性と技術的理論を結合した形で体系化した。こうしたプロイセンの治水・利水理論は[[1913年]]にプロイセン水法として纏められた。これは治水と利水を総合的に運用する法整備として近代における河川関連法規の模範ともされ、その後[[1918年]]の[[スウェーデン]]水法、[[1919年]]のフランスにおける利水関連法規、[[1920年]]の[[アメリカ合衆国|アメリカ]]連邦水力法、[[1934年]]の[[オーストリア]]水法など諸外国に多大な影響を与えた。 |
||
こうした多目的ダムによる治水・利水の総合的な運用は、'''[[河川総合開発事業]]'''として発展するに至った。一つの河川にダムをはじめ[[用水路]]や[[水力発電]]所を建設し、治水や |
こうした多目的ダムによる治水・利水の総合的な運用は、'''[[河川総合開発事業]]'''として発展するに至った。一つの河川にダムをはじめ[[用水路]]や[[水力発電]]所を建設し、治水や灌漑、水道供給、発電を行うことで農業・工業生産力の向上を図り、雇用を安定化させ国力を高めることを最終目的にした事業であり、流域の広範囲に亘って大規模に実施された。特にアメリカにおいては[[金融恐慌]]の後、雇用の拡大と工業生産力向上を目指して大河川の総合開発を開始した。[[1936年]]には[[コロラド川]]に当時としては世界最大級の[[フーバーダム]]を完成させ、さらに大統領[[フランクリン・ルーズベルト]]は[[ミシシッピー川]]の支流・[[テネシー川]]に多数のダムを建設して洪水調節と水力発電を行う[[テネシー川流域開発公社]](TVA)を設立、[[ニューディール政策]]の一環として総合開発を行った。 |
||
このTVAの成功は諸外国を刺激し、第二次世界大戦後各国で河川総合開発が |
このTVAの成功は諸外国を刺激し、[[第二次世界大戦]]に前後して各国で河川総合開発が加速した。代表的なものとしては[[ソビエト連邦|ソ連]]の[[五カ年計画]]に基づく[[エニセイ川]]([[ブラーツクダム]]や[[クラスノヤルスク]]ダムなど)、[[ヴォルガ川]]、[[ドニエプル川]]<ref>建設計画自体は[[1920年代]]に採用されている。</ref>の総合開発、[[インド]]におけるダモタル川総合開発事業、[[オーストラリア]]におけるスノーウィーマウンテン総合開発事業などがある。日本では[[1938年]](昭和13年)に[[物部長穂]]が「河水統制計画案」として提唱し、その理論は戦後打ち続く洪水に対処するため[[利根川]]や[[淀川]]など主要7[[水系]]において「河川改訂改修計画」の策定へつながり、[[利根川水系8ダム]]などの大規模河川総合開発が行われた。 |
||
=== 大ダムの時代 === |
=== 大ダムの時代 === |
||
[[File:Hoover Dam Nevada Luftaufnahme.jpg|thumb|[[フーバーダム]]]] |
[[File:Hoover Dam Nevada Luftaufnahme.jpg|thumb|[[フーバーダム]]]] |
||
第二次大戦後、ダム建設技術はさらに向上し高さ200メートルを超える巨大ダムが各国で続々建設されるようになった。[[1962年]]には重力式コンクリートダムとしては世界一である'''グランド・ディクサーンスダム'''([[スイス]])が完成 |
第二次大戦後、ダム建設技術はさらに向上し、高さ200メートルを超える巨大ダムが各国で続々建設されるようになった。[[1962年]]には重力式コンクリートダムとしては世界一である'''グランド・ディクサーンスダム'''([[スイス]])が完成。[[1968年]]には[[カナダ]]・[[ケベック州]]において[[マルチプルアーチダム]]としては世界一となる'''ダニエル・ジョンソンダム'''が完成した。そして[[1980年]]にはソ連(現在は[[タジキスタン]])が'''[[ヌレークダム]]'''を建設し、高さ300メートルという既設ダムとしては世界最高のダムを建設した。現在はタジキスタンのヌレークダム上流に高さ335メートルの'''ログンダム'''が建設されており、完成すれば世界一の高さになる。 |
||
貯水容量においても莫大な容量を有する[[人造湖]]が続々と誕生した。[[フーバーダム]]は[[ダム#諸元|総貯水容量]]が348.5億立方メートルと日本にある全てのダム貯水容量を凌駕する容量を有するが、[[ジンバブエ]]と[[ザンビア]]国境にある[[カリバダム]]は総貯水容量が1,806億立方メートルと[[琵琶湖]]の約67倍の容量を誇り人造湖単体としては世界最大の人造湖を生み出した。[[1957年]]に[[ウガンダ]]に建設された'''オーエン・フォールズダム'''が世界最大ともいわれるが、総貯水容量2兆7000億立方メートルの大半は[[ヴィクトリア湖]]の容量であり、ダムによる増量分は2,700億立方メートルである。このほか世界有数の大河川の本流にもダムが建設され、[[1958年]]黄河 |
貯水容量においても莫大な容量を有する[[人造湖]]が続々と誕生した。[[フーバーダム]]は[[ダム#諸元|総貯水容量]]が348.5億立方メートルと日本にある全てのダム貯水容量を凌駕する容量を有するが、[[ジンバブエ]]と[[ザンビア]]国境にある[[カリバダム]]は総貯水容量が1,806億立方メートルと[[琵琶湖]]の約67倍の容量を誇り、人造湖単体としては世界最大の人造湖を生み出した。[[1957年]]に[[ウガンダ]]に建設された'''オーエン・フォールズダム'''が世界最大ともいわれるが、総貯水容量2兆7000億立方メートルの大半は[[ヴィクトリア湖]]の容量であり、ダムによる増量分は2,700億立方メートルである。このほか世界有数の大河川の本流にもダムが建設され、[[1958年]]に黄河で完成した[[三門峡ダム]]、[[1970年]]に[[ナイル川]]で完成した'''[[アスワン・ハイ・ダム]]'''、[[1991年]]に[[パラナ川]]で完成した'''[[イタイプダム]]'''などはダム・人造湖の規模においても世界有数であり、[[2009年]][[長江]]に完成した'''[[三峡ダム]]'''はダム・人造湖のほか世界最大の水力発電所を擁する。 |
||
=== ダム技術の革新 === |
=== ダム技術の革新 === |
||
ダムの建設技術についても、20世紀に入り |
ダムの建設技術についても、20世紀に入り様々な手法が開発・導入されるようになった。20世紀前半はコンクリートが高価であり、工費圧縮のためコンクリート使用を抑制する工法が開発された。代表的なものとしては[[バットレスダム]]があるが、この型式では[[地震]]や洪水に弱いという難点があり、盛んに建設されることは無かった。こうした問題を解決したのが'''[[中空重力式コンクリートダム]]'''であり、重力式コンクリートダム内部に空洞を設け、ダムと基礎地盤との接地面を広く設けることで少ないコンクリートで重力式と同程度の安定性を保つ型式である。これはマルチェロによって理論が纏められ、彼の母国イタリアで盛んに建設されたが日本でも導入され、単体のダムでは世界で最も高い[[畑薙第一ダム]]([[大井川]]、125メートル)をはじめ多くの大ダムが建設された<ref>[[コンバインダム]]を含めたものではイタイプダムが最も高い。</ref>。ただし空洞を形成するための[[型枠]]や人件費が高騰し、現在では施工例を見ることは極めて少ない。 |
||
⚫ | コンクリートを打設する技術については、従来は区画毎に分けてコンクリートを打ち増す「'''ブロック工法'''」が主流であったが、大型機械の導入や組み合わせの試行錯誤によってスムーズなコンクリート打設を図る技術が進んだ。1967年に完成した[[クラスノヤルスクダム]]([[エニセイ川]])ではコンクリート製造プラントからダム現場までを[[ベルトコンベア]]で結び、休みなく連続して打設できる手法を導入した。こうした手法は世界各地のダム工事で採用され、工期の短縮と工費の縮減に貢献し |
||
⚫ | これは超硬練りのコンクリートをベルトコンベアや[[ダンプカー]]で運搬し、[[ブルドーザー]]で敷きならした後[[ロードローラー]]で水平に薄く何層も締め固めるという |
||
⚫ | そして近年では、よりコンクリートの量を減らして工費縮減と工期短縮を図る型式の改良が進み、[[1999年]](平成11年)には日本で'''[[台形CSGダム]]'''という新型式が開発された。これは[[セメント]]と土砂と水を最適な含有量で混ぜ合わせることでコンクリートに近い強度の骨材を作り、[[台形]]に仕上げることで強度を補強するものである。従来は骨材を選別するのに良質のものを選ばなければならなかったが、この型式だと品質に関係なく骨材を使用できるので工費削減と工期短縮に貢献できるとされている。[[2002年]](平成14年)より[[沖縄県]]の'''億首ダム'''(億首川)で本格的な施工が開始されたが、洪水の処理や地震への耐久性が課題として残されている。 |
||
=== ダムの諸問題 === |
|||
⚫ | |||
⚫ | 流域土砂管理を考えた場合、環境問題としては[[ダムと環境#堆砂|堆砂]]の問題と、河川の最大流量をコントロールすることで下流へ砂がフラッシュ(流下)されないという問題もある。また、ダム設置による河川の流量や水温への影響によって、河川生態系を攪乱するという指摘もある。[[三峡ダム]]では[[黄土高原]]から流出する[[黄砂]]が貯水池に堆積、完成から二年で貯水池が埋没してダム機能が麻痺する事態が発生。さらにアスワン・ハイ・ダムでは下流への土砂流下減少によって[[ナイル・デルタ]]縮小という問題が発生してい |
||
⚫ | ダム技術を切り拓いたヨーロッパ各国では、ダムのみではない多様な施策により治水安全度が格段に向上し[[ドナウ川]]や[[テムズ川]]をはじめ多くの大河川で一万年に一度の大洪水に耐えうる(日本では最大で百年から百五十年に一度)だけの治水整備(住宅撤去などによる氾濫 |
||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | また[[第二次世界大戦]]における[[イギリス空軍]]による'''[[チャスタイズ作戦]]'''や[[第四次中東戦争]]におけるアスワン・ハイ・ダムへの[[イスラエル]]空軍によるペイント弾空爆など、戦争や[[テロリズム]]によっては、ダムは攻撃の対象となる。[[朝鮮戦争]]において[[鴨緑江]]に戦前[[大日本帝国|日本]]が建設した[[水豊ダム]](スープンダム・[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]])は[[アメリカ空軍]]による集中爆撃を受けたが、重力式コンクリートダムの特徴が幸いしダムは決壊せずに持ちこたえている。だがリスク管理やテロ対策の面からも十分な対策が求められている。幾つかの国家ではダムは軍事施設にならぶ重要な防衛拠点として、写真撮影を含み立ち入りが禁じられていることもある。 |
||
⚫ | さらなる合理化を図るために開発されたのが'''RCDコンクリート'''(Roller Compacted Dam Concrete)による'''RCD工法'''であった。これは超硬練りのコンクリートをベルトコンベアや[[ダンプカー]]で運搬し、[[ブルドーザー]]で敷きならした後に[[ロードローラー]]で水平に薄く何層も締め固めるという工法である。コンクリートの量を少なく抑える他、ブロック工法のように継ぎ目を設けないので亀裂(クラック)を起こさず、安定性と経済性で従来の工法よりも優れることが確認された。この工法が世界で初めて本格的に手掛けられたのは日本で、[[1972年]](昭和47年)より[[山口県]]において[[建設省]]が施工した'''[[島地川ダム]]'''(島地川)が初例である。この後、RCD工法は大規模なダム建設で採用され、中小規模のダムにおいてはRCD工法を中小規模用に改良した'''拡張レヤ工法'''が取り入れられた。[[ロックフィルダム]]についても大型機械の導入によって原材料の掘削や運搬、締め固め工法の技術が向上したことで大規模な体積を有するダムが多数建設された。 |
||
⚫ | |||
⚫ | そして近年では、よりコンクリートの量を減らして工費縮減と工期短縮を図る型式の改良が進み、[[1999年]](平成11年)には日本で'''[[台形CSGダム]]'''という新型式が開発された。これは[[セメント]]と土砂と水を最適な含有量で混ぜ合わせることでコンクリートに近い強度の骨材を作り、[[台形]]に仕上げることで強度を補強するものである。従来は骨材を選別するのに良質のものを選ばなければならなかったが、この型式だと品質に関係なく骨材を使用できるので工費削減と工期短縮に貢献できるとされている。[[2002年]](平成14年)より[[沖縄県]]の'''億首ダム'''([[億首川]])で本格的な施工が開始されたが、洪水の処理や地震への耐久性が課題として残されている。 |
||
『21世紀は水戦争の時代』と呼ばれる中、水資源開発とその保全は[[油田]]開発に匹敵する重要課題であると指摘する専門家も多い。実際問題として[[国際連合|国連]]は[[水質汚染]]と共に水不足を'''[[水の危機]]'''として警告を発しており、複数の国家間で紛争が発生している。日本を含め、ダムを始めとする河川開発と環境保護の整合性をいかに取るかが大きな問題であり、ダム事業は新たなる岐路に立っている。 |
|||
== 型式別によるダムの種類 == |
== 型式別によるダムの種類 == |
||
102行目: | 89行目: | ||
ダムのタイプ、いわゆる'''型式'''(かたしき)によるダムの分類としては、大別すると[[土]]や[[砂]]、[[岩石]]を積み上げて建設される'''[[フィルダム]]'''と、[[コンクリート]]を主原料として建設される'''[[コンクリートダム]]'''の二種類があり、おのおの細分化した型式が存在する。このほか両者を連結・複合させた'''[[コンバインダム]]'''(複合ダム)や、日本で開発された新型式である'''[[台形CSGダム]]'''がある。いずれも[[アルファベット]]の略号で表されることもある。 |
ダムのタイプ、いわゆる'''型式'''(かたしき)によるダムの分類としては、大別すると[[土]]や[[砂]]、[[岩石]]を積み上げて建設される'''[[フィルダム]]'''と、[[コンクリート]]を主原料として建設される'''[[コンクリートダム]]'''の二種類があり、おのおの細分化した型式が存在する。このほか両者を連結・複合させた'''[[コンバインダム]]'''(複合ダム)や、日本で開発された新型式である'''[[台形CSGダム]]'''がある。いずれも[[アルファベット]]の略号で表されることもある。 |
||
ただしロックフィルダムとアースダムについては世界的に見ると明確な区別がなされてはいない。外観がロックフィルダムであってもアースダムとして分類される([[カナダ]]のマイカダムなど)ことがあり、材料を混成して施工されることが要因となっている。したがって両方の型式を包括して'''フィルダム'''または'''フィルタイプダム'''、あるいは'''エンバクトメントダム'''と呼称される。ロックフィルダムを細分化した亜型で分類するのは[[日本]]が代表的である。 |
ただしロックフィルダムとアースダムについては、世界的に見ると明確な区別がなされてはいない。外観がロックフィルダムであってもアースダムとして分類される([[カナダ]]のマイカダムなど)ことがあり、材料を混成して施工されることが要因となっている。したがって両方の型式を包括して'''フィルダム'''または'''フィルタイプダム'''、あるいは'''エンバクトメントダム'''と呼称される。ロックフィルダムを細分化した亜型で分類するのは[[日本]]が代表的である。 |
||
[[地形]]や[[地盤]]、[[気候]]、[[河川]]流量、さらには[[地震]]の有無などにより採用される型式が異なり、地域によって特性が見られる。一般に[[アルプス山脈]]一帯や[[中近東]]は基礎岩盤が比較的堅固であるためコンクリート量を節減し経済性に優れる'''アーチ式コンクリートダム'''が多く建設されている。一方日本のその他の地域(一部を除く)やアメリカ西海岸([[カリフォルニア州]])のような地震多発地域では地震や洪水に最も強い'''重力式コンクリートダム'''が多い。 |
[[地形]]や[[地盤]]、[[気候]]、[[河川]]流量、さらには[[地震]]の有無などにより採用される型式が異なり、地域によって特性が見られる。一般に[[アルプス山脈]]一帯や[[中近東]]は基礎岩盤が比較的堅固であるためコンクリート量を節減し経済性に優れる'''アーチ式コンクリートダム'''が多く建設されている。一方、日本のその他の地域(一部を除く)や[[アメリカ合衆国西海岸]]([[カリフォルニア州]])のような地震多発地域では地震や洪水に最も強い'''重力式コンクリートダム'''が多い。 |
||
=== 型式一覧 === |
=== 型式一覧 === |
||
170行目: | 157行目: | ||
=== 地下ダム === |
=== 地下ダム === |
||
[[地下水]]を貯水するため、[[地下]]に設ける'''止水壁'''を[[地下ダム]]という。これは、地下水の流れを土中で |
[[地下水]]を貯水するため、[[地下]]に設ける'''止水壁'''を[[地下ダム]]という。これは、地下水の流れを土中で塞き止め、そこから汲み上げて使用する。地下に空洞を作って[[地底湖]]のように貯水をするわけではない。 |
||
例えば、海岸部においては[[海水]]が地下水へ侵入するのを防ぎ、地下水の塩水化を防止する役割を果たすものとなっている。また、内陸部の場合は、[[帯水層]]の水が分散するのを塞き止めて、地盤内の隙間に水を貯える構造のものとなる。具体的には、[[サンゴ礁]]の島々など山岳地帯の少ない離島・海岸部の地点や、内陸部では自然の止水層が多くあり人工止水壁が少なくてすむ地点などに用いられる。 |
例えば、海岸部においては[[海水]]が地下水へ侵入するのを防ぎ、地下水の塩水化を防止する役割を果たすものとなっている。また、内陸部の場合は、[[帯水層]]の水が分散するのを塞き止めて、地盤内の隙間に水を貯える構造のものとなる。具体的には、[[サンゴ礁]]の島々など山岳地帯の少ない離島・海岸部の地点や、内陸部では自然の止水層が多くあり人工止水壁が少なくてすむ地点などに用いられる。 |
||
世界的には[[ワジ]]が多く存在する[[サハラ砂漠]]など乾燥地帯に集中 |
世界的には[[ワジ]]が多く存在する[[サハラ砂漠]]など乾燥地帯に集中する。これは日本と異なり降雨量に対して蒸発量が大きく無視できない地域においては、貯水表面が外気に曝されないため、貯水の損失を防ぐ観点から有効である。日本([[日本ダム協会]]調べ)では主に[[沖縄県]]を中心とした島嶼部や海岸沿いの地域に集中しており、[[福里ダム]]など14基建設されている。 |
||
=== 鋼製ダム === |
=== 鋼製ダム === |
||
ダム本体が[[ステンレス]]などのいわゆる[[鋼]]で形成されているダム。 |
ダム本体が[[ステンレス]]などのいわゆる[[鋼]]で形成されているダム。人造湖側は水を遮る壁(遮水壁)を設け、支柱などで基礎地盤と連結して貯水し、下流部を[[ステンレス鋼]]で形成する型式のダム。断面の形状としては[[バットレスダム]]に似る。安定性を保つために地中に[[アンカー]]を設置し、[[水圧]]に耐える構造を採っている。アメリカでは[[1898年]]完成の[[アッシュ・フォーク・ダム]]をはじめ[[20世紀]]初頭に幾つか建設されたが、現在施工例はない。日本国内ではハイダムの施工例は存在せず、[[2006年]]に竣工した[[大阪府]]の[[泉南農業公園調整池]]が唯一の施工例である。 |
||
=== 木材ダム === |
=== 木材ダム === |
||
ダム本体を[[木材]]で形成したダム。木材を組み、隙間に石や土砂を充填して堰堤とした。セメントの輸送が困難であった産業革命期に、北米の林業の盛んな地域で建設された。木材の性質上腐食しやすく、規模の拡大にも限界があったため、その多くがアースダムなど別の方式に建て替えられた。北米ではいくつかの木材ダムが残されている。 |
ダム本体を[[木材]]で形成したダム。木材を組み、隙間に石や土砂を充填して堰堤とした。セメントの輸送が困難であった[[産業革命]]期に、北米の林業の盛んな地域で建設された。木材の性質上腐食しやすく、規模の拡大にも限界があったため、その多くが[[アースダム]]など別の方式に建て替えられた。北米ではいくつかの木材ダムが残されている。 |
||
== ダム諸元に関する表記 == |
== ダム諸元に関する表記 == |
||
224行目: | 211行目: | ||
現在、世界における最大の堤高を有するダムは[[タジキスタン]]に建設されている[[水力発電]]用の'''ログンダム'''で335メートルの高さがあり、完成すれば[[東京タワー]](333メートル)を超える高さを誇る。現在既設ダムで世界一である'''[[ヌレークダム]]'''(300メートル)も同じタジキスタンの同一河川にある。堤高200メートル以上のダムを型式別で見ると[[アーチ式コンクリートダム]]が最も多く、続いて[[フィルダム]]が多い<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/WJyun.cgi?sy=h 『ダム便覧』世界のハイダム]</ref>。 |
現在、世界における最大の堤高を有するダムは[[タジキスタン]]に建設されている[[水力発電]]用の'''ログンダム'''で335メートルの高さがあり、完成すれば[[東京タワー]](333メートル)を超える高さを誇る。現在既設ダムで世界一である'''[[ヌレークダム]]'''(300メートル)も同じタジキスタンの同一河川にある。堤高200メートル以上のダムを型式別で見ると[[アーチ式コンクリートダム]]が最も多く、続いて[[フィルダム]]が多い<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/WJyun.cgi?sy=h 『ダム便覧』世界のハイダム]</ref>。 |
||
また、総貯水容量では人造湖単体としては[[ジンバブエ]]と[[ザンビア]]の間に建設された'''[[カリバダム]]'''が最も容量が大き |
また、総貯水容量では人造湖単体としては[[ジンバブエ]]と[[ザンビア]]の間に建設された'''[[カリバダム]]'''が最も容量が大きい。その総貯水容量は実に約1,806億立方メートルであり、日本最大の自然湖である[[琵琶湖]](約27億立方メートル)の約67倍の容量を誇っている。自然湖をダム化したものを含めると、[[ウガンダ]]に建設された'''[http://www.kajima.co.jp/gallery/const_museum/dam/index.html オーエンフォールズダム]'''の約2兆7000億立方メートル(琵琶湖の約1,000倍)が最大であるが、容量の9割は[[ヴィクトリア湖]]の容量であり、ダムによる増加分は2,700億立方メートルである。その他、堤高の高いダムに関しても、容量が100億立方メートル級のダムが軒を連ねている<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/WJyun.cgi?sy=c 『ダム便覧』世界の貯水池容量の大きいダム]</ref>。面積においてもカリバダムが約5,180[[平方キロメートル]]と世界最大の広さを有し、[[三峡ダム]]のように貯水池延長が約500[[キロメートル]]という規模を持つダムもある。 |
||
ダムによる水力発電量では[[ブラジル]]・[[パラグアイ]]に |
ダムによる水力発電量では[[ブラジル]]・[[パラグアイ]]・[[国境]]にまたがる'''[[イタイプダム]]'''がかつて世界最大であり、その最大出力は1260万キロ[[ワット]]と日本最大の水力発電所である[[神流川発電所]]([[群馬県]]・[[長野県]]。282万キロワット)の約4.5倍もの電力を供給する。[[2009年]]に中国・[[長江]]で完成した'''[[三峡ダム]]'''([[長江]])では2012年に2250万キロワットまで発電能力を増やし<ref>[http://www.afpbb.com/articles/-/2888245?pid=9218633 「中国・三峡ダムが全面稼働、発電量は原発15基分」][[フランス通信社|AFP]](2012年7月6日)2018年7月28日閲覧。</ref>、イタイプダムのそれを大きく上回った。 |
||
=== 堤高ランキング === |
=== 堤高ランキング === |
||
441行目: | 428行目: | ||
== ダムの名称 == |
== ダムの名称 == |
||
ダムに付けられる名称は通常計画の段階で命名される |
ダムに付けられる名称は通常、計画の段階で命名される。途中で変更になる場合もある<ref>一例としては日本で、[[群馬県]]の[[渡良瀬川]]に[[1977年]](昭和52年)完成した[[草木ダム]]がある。当初は建設予定地点の地名より命名された「神戸ダム」という名称であったが水没予定地に住む住民の要望で現在の名称へと変更になった。</ref>。命名については、河川名やダム建設地点の地名が採用されるケースが多い。この他'''キエフダム'''([[ウクライナ]]の[[ドニエプル川]])や'''クラスノヤルスクダム'''(ロシアの[[エニセイ川]])など所在都市名を採用したもの、中国の'''三峡ダム'''(長江)や'''三門峡ダム'''、'''劉家峡ダム'''([[黄河]])、日本の'''[[豊平峡ダム]]'''([[豊平川]])のように[[峡谷]]名を冠したものなど、多彩である。また、同一河川・水系に建設されたダムの中には、完成順に番号で命名されているものもあり、[[イラン]]にある'''カールーン第一'''・'''第三'''・'''第四ダム'''(カールーン川)はその一例である。ダムによって形成された人造湖についても同様の傾向が見られるが、名称が特に定まっていないものも多い。日本ではダム完成前に一般公募によって人造湖の名称を決めるケースが多くなっている。 |
||
特殊な例としては、'''人名を冠したダム'''がある。これらは該当するダムまたは建設事由である[[河川総合開発事業]]において主導的な役割を果たした、あるいは国政に功績のあった[[政治家]]を顕彰する意味を込めて命名されている。以下に示したものは、その一例である。 |
特殊な例としては、'''人名を冠したダム'''がある。これらは該当するダムまたは建設事由である[[河川総合開発事業]]において主導的な役割を果たした、あるいは国政に功績のあった[[政治家]]を顕彰する意味を込めて命名されている。以下に示したものは、その一例である。 |
||
448行目: | 435行目: | ||
*'''ダニエルジョンソンダム'''(カナダ):カナダ及びアメリカ東海岸地域に電力を供給する目的で[[1968年]]に建設されたダムで、マルチプルアーチダムとしては世界で最も高い214メートルの巨大ダム。ダム名は建設当時の[[ケベック州]]知事で水力発電事業に力を注いだ'''ダニエル・ジョンソン'''にちなんで命名された。なお、彼はダム完成の直前に死去している<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/WAll.cgi?db3=100 財団法人日本ダム協会『ダム便覧』 ダニエルジョンソンダム]</ref>。 |
*'''ダニエルジョンソンダム'''(カナダ):カナダ及びアメリカ東海岸地域に電力を供給する目的で[[1968年]]に建設されたダムで、マルチプルアーチダムとしては世界で最も高い214メートルの巨大ダム。ダム名は建設当時の[[ケベック州]]知事で水力発電事業に力を注いだ'''ダニエル・ジョンソン'''にちなんで命名された。なお、彼はダム完成の直前に死去している<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/WAll.cgi?db3=100 財団法人日本ダム協会『ダム便覧』 ダニエルジョンソンダム]</ref>。 |
||
*'''アタチュルクダム'''([[トルコ]]):南西[[アナトリア]]プロジェクトにおける灌漑・水力発電を目的とした[[ユーフラテス川]]総合開発事業の中心として、ユーフラテス川本流に[[1992年]]に完成した高さ169メートルのロックフィルダムでトルコ最大級の規模を有するダム。ダム名はトルコ建国の父である'''[[ケマル・アタテュルク]]'''(アタチュルク)にちなみ命名された<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/WAll.cgi?db3=084 財団法人日本ダム協会『ダム便覧』 アタチュルクダム]</ref>。 |
*'''アタチュルクダム'''([[トルコ]]):南西[[アナトリア]]プロジェクトにおける灌漑・水力発電を目的とした[[ユーフラテス川]]総合開発事業の中心として、ユーフラテス川本流に[[1992年]]に完成した高さ169メートルのロックフィルダムでトルコ最大級の規模を有するダム。ダム名はトルコ建国の父である'''[[ケマル・アタテュルク]]'''(アタチュルク)にちなみ命名された<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/WAll.cgi?db3=084 財団法人日本ダム協会『ダム便覧』 アタチュルクダム]</ref>。 |
||
*'''シーナカリンダム'''([[タイ王国|タイ]]):映画『[[戦場に架ける橋]]』の舞台となった[[クワイ川]](クワイヤイ川)に、水力発電と治水を目的とした河川総合開発・クワイヤイ第一計画の中心事業として[[1980年]]に完成した高さ140メートルのロックフィルダム。日本の[[円借款]]および[[電源開発]]の技術協力で建設された。ダム名はタイ国王[[ラーマ9世]]の母である'''[[シーナカリン|シーナカリン王太后]]'''の名が冠され、計画名自体も途中からシーナカリン開発計画と改められた<ref>『電発30年史』p331-334。</ref>。 |
*'''シーナカリンダム'''([[タイ王国|タイ]]):映画『[[戦場に架ける橋]]』の舞台となった[[クワイ川]](クワイヤイ川)に、水力発電と治水を目的とした河川総合開発・クワイヤイ第一計画の中心事業として[[1980年]]に完成した、高さ140メートルのロックフィルダム。日本の[[円借款]]および[[電源開発]]の技術協力で建設された。ダム名はタイ国王[[ラーマ9世]]の母である'''[[シーナカリン|シーナカリン王太后]]'''の名が冠され、計画名自体も途中からシーナカリン開発計画と改められた<ref>『電発30年史』p331-334。</ref>。 |
||
*'''ホセ・マリア・モレーロスダム'''([[メキシコ合衆国|メキシコ]]):[[メキシコシティ]]南西に洪水調節・灌漑・水力発電が目的の河川総合開発事業として建設された高さ59.7メートルのロックフィルダム。ダム名は[[メキシコ独立革命]]の英雄で、メキシコ最初の[[憲法]]を制定した'''[[メキシコ独立革命#ホセ・マリア・モレーロスの憲法と独立宣言|ホセ・マリア・モレーロス]]'''の名が冠された。1968年完成<ref>社団法人日本大ダム会議『大ダム』No.78 pp.54-58.1976年12月。</ref>。 |
*'''ホセ・マリア・モレーロスダム'''([[メキシコ合衆国|メキシコ]]):[[メキシコシティ]]南西に洪水調節・灌漑・水力発電が目的の河川総合開発事業として建設された高さ59.7メートルのロックフィルダム。ダム名は[[メキシコ独立革命]]の英雄で、メキシコ最初の[[憲法]]を制定した'''[[メキシコ独立革命#ホセ・マリア・モレーロスの憲法と独立宣言|ホセ・マリア・モレーロス]]'''の名が冠された。1968年完成<ref>社団法人日本大ダム会議『大ダム』No.78 pp.54-58.1976年12月。</ref>。 |
||
*'''ゾラダム'''(フランス):南フランス・[[エクサンプロバンス]]近郊を流れる[[ローヌ川]]支流のアンフェルネ川に[[1854年]]完成した高さ42.5メートルの灌漑と水力発電を目的にしたアーチ式コンクリートダム。完成から約50年間アーチダムとしては世界最高の高さを有していた。ダム名はこのダムを設計した土木技師である'''フランチェスコ・ゾラ'''の名を冠しているが、彼の息子は文豪で知られる[[エミール・ゾラ]]である<ref>『北海道のダム』p.247</ref>。 |
*'''ゾラダム'''(フランス):南フランス・[[エクサンプロバンス]]近郊を流れる[[ローヌ川]]支流のアンフェルネ川に[[1854年]]完成した高さ42.5メートルの灌漑と水力発電を目的にしたアーチ式コンクリートダム。完成から約50年間アーチダムとしては世界最高の高さを有していた。ダム名はこのダムを設計した土木技師である'''フランチェスコ・ゾラ'''の名を冠しているが、彼の息子は文豪で知られる[[エミール・ゾラ]]である<ref>『北海道のダム』p.247</ref>。 |
||
人造湖については先述のミード湖のほか、'''アスワン・ハイ・ダム'''(ナイル川・エジプト)の人造湖が同事業を強力に推進した第2代エジプト大統領'''[[ガマール・アブドゥン=ナーセル]]'''にちなんで'''[[ナセル湖]]'''と命名された例、'''[[グランドクーリーダム]]'''([[コロンビア川]]・アメリカ)の人造湖が建設を推進・指揮した第32代アメリカ大統領'''[[フランクリン・ルーズベルト]]'''にちなみ'''ルーズベルト湖'''と命名された例などがある。 |
人造湖については先述のミード湖のほか、'''アスワン・ハイ・ダム'''(ナイル川・エジプト)の人造湖が同事業を強力に推進した第2代エジプト大統領'''[[ガマール・アブドゥン=ナーセル]]'''にちなんで'''[[ナセル湖]]'''と命名された例、'''[[グランドクーリーダム]]'''([[コロンビア川]]・アメリカ)の人造湖が建設を推進・指揮した第32代アメリカ大統領'''[[フランクリン・ルーズベルト]]'''にちなみ'''ルーズベルト湖'''と命名された例などがある。 |
||
== ダム |
== ダムの諸問題 == |
||
ダムは周辺の[[自然環境]]や[[生活環境]] |
ダムは建設に多額の投資が必要で、河川の場合は建設地周辺から[[河口]]に至るまで広範な地域の[[自然環境]]や[[生活環境]]、社会・経済に大きな影響を及ぼす。このため各ダムは構想・計画段階から賛否両論があり(「[[ダム建設の是非]]」「[[ダムの代替案]]」参照)、訴訟や選挙の争点になることもある。建設や完成後の運用にも様々な問題が生じ、その解決策を模索することとなる。日本では、ダム事業が[[中止したダム事業|中止]]または[[日本の長期化ダム事業|長期化]]した例もある。ダム湖は大量の水を抱えるだけに、耐久限界を超えた[[水害]]や[[事故]]による[[決壊]]が起きると、大きな被害を及ぼす。[[防災]]の役割を担う反面、ダムの建設や貯水によって[[地震#その他|誘発地震]]が発生する可能性も指摘されている。 |
||
⚫ | |||
=== ダム湖化による地域の水没 === |
|||
集落や街道は川沿いに発達することが多いため、ダム建設が計画されると、ダム湖の湛水に伴いう水没予定地域の住民や外部の自然愛好家らによる反対運動が起きることがある([[四国]]の[[早明浦ダム#補償|早明浦ダム]]など)。 |
|||
⚫ | |||
=== 土砂・水の排出量管理 === |
|||
利水目的のダムにおいては、洪水のおそれがない時期は河川の水を全て堰き止めてしまうのでなく一定量を[[放流 (ダム)|放流]]し、下流の[[生態系]]や[[景観]]、[[釣り]]・[[漁業]]、[[水利権]]への配慮を求められる。日本では[[国土交通省]]の発電ダムに対するガイドラインで、そのための維持流量の確保を定めている<ref>[http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/kihonhoushin/030718/pdf/s5-1.pdf 発電ガイドラインについて]国土交通省河川局(平成15年7月18日)2018年7月28日閲覧。</ref>。 |
|||
⚫ | 流域土砂管理を考えた場合、環境問題としては[[ダムと環境#堆砂|堆砂]]の問題と、河川の最大流量をコントロールすることで下流へ砂がフラッシュ(流下)されないという問題もある。また、ダム設置による河川の流量や水温への影響によって、河川[[生態系]]を攪乱するという指摘もある。[[三峡ダム]]では[[黄土高原]]から流出する[[黄砂]]が貯水池に堆積、完成から二年で貯水池が埋没してダム機能が麻痺する事態が発生。さらにアスワン・ハイ・ダムでは下流への土砂流下減少によって[[ナイル・デルタ]]縮小という問題が発生している。堆砂については従来の[[浚渫]](しゅんせつ)主体から排砂バイパス[[トンネル]]による抜本的対策が試行されているほか、流砂連続性を確保するための[[放流 (ダム)#フラッシュ放流|人工洪水試験]]が[[グレンキャニオンダム]](アメリカ)やスイスの発電用ダム、日本の[[国土交通省直轄ダム]]の一部などで実施されている。ただし現在は試行段階であるため、[[海岸侵食]]などを有効に防止するまでには至っていない。 |
||
複数の国を流れる[[国際河川]]においては、上流部にある国が大型ダムを計画・建設することに対して、河川流量の減少を懸念する中流・下流部の国や住民が不満を抱いで国際問題化したり、逆に上流部の国による影響力拡大の手段に使われたりしている、下記のような例もある。「21世紀は水戦争の時代」と呼ばれる中、水資源開発とその保全は[[油田]]開発に匹敵する重要課題であると指摘する専門家も多い。実際問題として[[国際連合|国連]]は[[水質汚染]]と共に水不足を'''[[水の危機]]'''として警告を発しており、複数の国家間で紛争が発生している。 |
|||
*[[メコン川]](中国と[[ラオス]]、[[カンボジア]]、[[ベトナム]]、[[タイ王国]])<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29081730W8A400C1FF2000/ 「メコン川開発 中国、ダム建設加速で影響力拡大 下流域の首脳会議、連携強化確認」]『日本経済新聞』電子版(2018年4月8日)2018年7月28日閲覧。</ref> |
|||
*ナイル川([[エチオピア]]と[[スーダン]]、エジプト)<ref>[https://www.meij.or.jp/kawara/2018_004.html 「エジプト:スーダンでルネッサンスダムをめぐる閣僚級会合実施」][[中東調査会]](2018年4月10日)2018年7月28日閲覧。</ref> |
|||
*[[インダス川]]([[インド]]と[[パキスタン]])<ref>『毎日新聞』朝刊/印パ独立70年・第3部<紛争の水源インダス>、[https://mainichi.jp/articles/20171217/ddm/007/030/060000c (1)ダム建設、相互不信 印、水資源を圧力カードに/パ、枯渇恐れ計画に異議]、[https://mainichi.jp/articles/20171218/ddm/007/030/068000c (2)「川解放へ聖戦」]、[https://mainichi.jp/articles/20171219/ddm/007/030/114000c (3)水枯れ 疑心暗鬼]、2017年12月17日~19日掲載。</ref> |
|||
=== ダム新設の終焉や見直し論 === |
|||
⚫ | ダム技術を切り拓いたヨーロッパ各国では、ダムのみではない多様な施策により治水安全度が格段に向上し、[[ドナウ川]]や[[テムズ川]]をはじめ多くの大河川で一万年に一度の大洪水に耐えうる(日本では最大で百年から百五十年に一度)だけの治水整備(住宅撤去などによる[[氾濫原]]の復元など)が行われ、ダム建設は事実上終焉している。アメリカでは[[1990年代]]に[[アメリカ合衆国内務省|内務省]]開拓局長官であったダニエル・ビアードが「アメリカではダム建設の時代は終わった」と発言し、物議を醸した。日本ではこうした欧米の動きや、[[談合]]などの[[公共事業]]に関連する不透明な税金使用を背景にダム反対派が勢いを強め、「[[中止したダム事業#脱ダム宣言によるもの|脱ダム宣言]]」をはじめダム事業に否定的な動きも出ている。 |
||
=== 防災での限界と決壊事故 === |
|||
治水機能を持つダムは豪雨や長雨が予測されると、あらかじめ放流を行って空き容量を増やしておき、降雨が本格化すると放流量を抑えて下流の[[水害]]を防ぐ[[洪水調節]]を行う。日本ではダム湖への水の流入が貯水能力を超えそうになると、ダムの損壊を防ぐため放流する「[[ただし書き操作|異常洪水時防災操作]]」を行う。下流域で死傷者・行方不明者など被害が出ると、放流判断や告知が適切だったかについて批判が出ることもある。[[平成30年7月豪雨]]では6府県にあるダム8か所で防災操作が行われた<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33192380Q8A720C1CC1000/ 4割ダムで「洪水調節」]『日本経済新聞』朝刊2018年7月20日(社会面)2018年7月28日閲覧。</ref>が、[[肱川]]([[愛媛県]])で氾濫により9人が死亡したため、検証作業が行われている<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33167890Z10C18A7CC1000/ 「ダム放流 適切か検証/愛媛・肱川9人死亡 住民は怒り」]『日本経済新聞』朝刊2018年7月20日(社会面)2018年7月28日閲覧。</ref>。 |
|||
また砂防ダムも、大量の水・土砂が強い勢いで流入すれば防ぎ切れなかったり、[[決壊]]したりする<ref>[https://www.sankei.com/west/news/180724/wst1807240024-n1.html 【西日本豪雨】老朽化砂防防ダム決壊 70年以上前の石積み、「雨が降ると隙間から勢いよく水が…」広島][[産経新聞|産経WEST]](2018年7月24日)2018年7月28日閲覧。</ref>。 |
|||
⚫ | 洪水時に限らず、多数の死傷者を伴うダム決壊事故は国内含め世界中で発生しており、その度にダムに対する安全性が問われ技術、運用面の改善が求められている。フランスの'''マルパッセダム決壊事故'''([[1959年]])ではダム本体の安全性のみならずダム両岸の基礎岩盤の安定性が重要視された。アメリカの'''[[ティートンダム|ティートンダム決壊事故]]'''([[1976年]])では岩盤の安定性だけではなく水分の透過性も重要視され、以降ダムの基礎工事が建設においては特に注意を払われた。さらに貯水の際における諸問題として地盤の変化に伴う[[地すべり]]や誘発[[地震]]の問題も指摘され、[[1963年]]の'''[[バイオントダム|バイオントダム地すべり事故]]'''(イタリア)では2000人の死者を出す惨事を招いた。因みに、史上最悪のダム決壊事故はアメリカの[[ペンシルベニア州]]に建設された'''サウスフォークダム'''で、[[1889年]][[5月31日]]に決壊して[[ジョンズタウン (ペンシルベニア州)|ジョンズタウン]]を壊滅させ、2200人以上の死者を出した。[[ギネス・ワールド・レコーズ|ギネスブック]]にも掲載されている。 |
||
=== ダムが環境へ及ぼす問題 === |
|||
ダムが環境へ及ぼす問題は建設された川の流域から河口の海岸へ及ぶ事もあり、ダムが建設される土地だけにとどまらない。 |
|||
⚫ | また[[第二次世界大戦]]における[[イギリス空軍]]による'''[[チャスタイズ作戦]]'''([[ドイツ]]のダムによる爆撃作戦)や[[第四次中東戦争]]におけるアスワン・ハイ・ダムへの[[イスラエル]]空軍によるペイント弾空爆など、戦争や[[テロリズム]]によっては、ダムは攻撃の対象となる。[[朝鮮戦争]]において[[鴨緑江]]に戦前[[大日本帝国|日本]]が建設した[[水豊ダム]](スープンダム・[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]])は[[アメリカ空軍]]による集中爆撃を受けたが、重力式コンクリートダムの特徴が幸いしダムは決壊せずに持ちこたえている。だがリスク管理やテロ対策の面からも十分な対策が求められている。幾つかの国家ではダムは軍事施設にならぶ重要な防衛拠点として、写真撮影を含み立ち入りが禁じられていることもある。 |
||
詳細は、別項[[ダムと環境]]を参照。 |
|||
=== ダム事故 === |
=== 主なダム事故 === |
||
[[ファイル:Teton Dam failure.jpg|thumb|[[ティートンダム|ティートンダム決壊事故]]]] |
[[ファイル:Teton Dam failure.jpg|thumb|[[ティートンダム|ティートンダム決壊事故]]]] |
||
ダム事故のなかでダムが完全に破壊される「'''決壊事故'''」(崩壊事故)は多数の犠牲者を出す最も重大な事故である。特に大雨によるダム本体からの越流や |
ダム事故のなかでダムが完全に破壊される「'''決壊事故'''」(崩壊事故)は多数の犠牲者を出す最も重大な事故である。特に大雨によるダム本体からの越流や地震による崩壊といった[[天災]]に、施工不良や管理不良といった[[人災]]が重なって起こる場合がほとんどを占める。中には[[戦争]]による[[空襲|空爆]]や意図的な[[破壊活動|サボタージュ]]によって事故が起こることもある。 |
||
最も危険なのはダム湖に試験的に貯水を行う |
最も危険なのはダム湖に試験的に貯水を行う'''試験湛水'''(たんすい)時であり、この工程中に決壊する例も多い。したがって試験湛水中はダム本体のみならず[[人造湖]]に接する周囲の[[地盤]]にも多大な注意を払っている。以下に主な事故を挙例する。 |
||
:''日本の事例については[[日本のダム#日本のダム事故]]を参照のこと'' |
:''日本の事例については[[日本のダム#日本のダム事故]]を参照のこと'' |
||
497行目: | 509行目: | ||
*[[暁の出撃 (1955年の映画)|暁の出撃]]([[1955年]]:[[1943年]]に[[イギリス空軍]]が[[チャスタイズ作戦]]でドイツのダムを爆撃・破壊した史実の映画):メーネダム・エーデルダム |
*[[暁の出撃 (1955年の映画)|暁の出撃]]([[1955年]]:[[1943年]]に[[イギリス空軍]]が[[チャスタイズ作戦]]でドイツのダムを爆撃・破壊した史実の映画):メーネダム・エーデルダム |
||
*[[スーパーマン (1978年の映画)|スーパーマン]]([[1978年]]:ダム決壊により失った恋人を取り戻すため、強引に地球の自転を反転させて時間を戻し、ダム決壊から恋人を救う):[[フーバーダム]] |
*[[スーパーマン (1978年の映画)|スーパーマン]]([[1978年]]:ダム決壊により失った恋人を取り戻すため、強引に地球の自転を反転させて時間を戻し、ダム決壊から恋人を救う):[[フーバーダム]] |
||
*[[ナバロンの嵐]]([[1978年]]: |
*[[ナバロンの嵐]]([[1978年]]:『[[ナバロンの要塞]]』の続編。第二次大戦下、独軍に追い詰められた[[パルチザン]]を救うため、米英[[特殊部隊]]が[[ユーゴスラヴィア]]のダムを破壊する) |
||
*[[007 ゴールデンアイ]]([[ソビエト連邦|ソ連]]・アーカンゲル化学兵器工場へ侵入する際の入口):コントラダム(ヴェルサスカダム |
*[[007 ゴールデンアイ]]([[ソビエト連邦|ソ連]]・アーカンゲル[[化学兵器]]工場へ侵入する際の入口):コントラダム(スイスのヴェルサスカダム) |
||
*[[逃亡者 (1993年の映画)|逃亡者]]([[1993年]]:[[ハリソン・フォード]]扮するキンブル医師がダム下流に飛び込み、追跡を逃れる) |
*[[逃亡者 (1993年の映画)|逃亡者]]([[1993年]]:[[ハリソン・フォード]]扮するキンブル医師がダム下流に飛び込み、追跡を逃れる) |
||
*[[長江哀歌]]([[2006年]]:中国三峡ダム建設予定地を舞台に、庶民の生活を描く):[[三峡ダム]] |
*[[長江哀歌]]([[2006年]]:中国三峡ダム建設予定地を舞台に、庶民の生活を描く):[[三峡ダム]] |
||
509行目: | 521行目: | ||
*[[フランクリン・ルーズベルト]]:第32代[[アメリカ合衆国大統領]]。[[テネシー川流域開発公社]]の生みの親。 |
*[[フランクリン・ルーズベルト]]:第32代[[アメリカ合衆国大統領]]。[[テネシー川流域開発公社]]の生みの親。 |
||
*[[ガマール・アブドゥン=ナーセル]]:第2代[[エジプト]]大統領。[[アスワン・ハイ・ダム]]建設を強力に推進。 |
*[[ガマール・アブドゥン=ナーセル]]:第2代[[エジプト]]大統領。[[アスワン・ハイ・ダム]]建設を強力に推進。 |
||
*[[八田與一]]:[[日本]]の水利技術者。日本統治時代の[[台湾]]で、農業水利事業([[嘉南大圳]])に大きな貢献をした人物。 |
|||
== 脚注 == |
== 脚注 == |
2018年7月28日 (土) 16:44時点における版
ダム(英: Dam)または堰堤(えんてい)は、水力発電や治水・利水、治山・砂防、廃棄物処分などを目的として、川や谷を横断もしくは窪地を包囲するなどして作られる土木構造物。一般にコンクリートや土砂、岩石などによって築く人工物を指す。大規模なダムで川を堰き止めた場合、上流側には人造湖(ダム湖)が形成される。
人間以外にダムを造る動物としてビーバーがおり、また土砂崩れや地すべりによって川が堰き止められて天然ダムが形成されることもある。また、地上だけでなく、地下水脈を堰き止める地下ダムもある。このほか、貯留・貯蓄の比喩として用いられることがあり、森林の保水力を指す緑のダムという言葉がある。
堰(せき、い、いせき)ともいう。この場合は取水や水位の調節などが目的で、砂防ダムは除く。
日本のダムについての詳細は日本のダムを参照のこと。
語源
英語の dam という言葉は中英語に既にみられ、おそらくは中世オランダ語の dam から派生したと考えられている。北海に面した低地が多いオランダでは、河川の水位調整と海水浸入防止のためダムや堤防を築くことが多かった。ダムができるとその地点での渡河が容易となるため、しばしば都市の形成へと繋がった。たとえば、アムステルダムはアムステル川に、ロッテルダムはロッテ川にダムが設けられたことを契機として形成された街である。
概説
ダムの定義は各国により異なるが、1928年(昭和3年)に創設され、現在88か国が加盟する国際大ダム会議における定義では堤高が5.0メートル以上かつ貯水容量が300万立方メートル以上の堰堤を「ダム」として定めている。そのうち、高さが15メートル以上のものをハイダム、それに満たないものをローダムという。日本の河川法でいうダムとはハイダムを指し、これ以外の堰堤についてはたとえ「ダム」という名称が付いたとしても堰として扱われる。ちなみに、明確な定義が無かった時期は、山に接して設けられるものや積極的に流水を制御できる堰堤を「ダム」、堤防に接して設けられるものや常に越水するなど受動的にしか流水を制御できない堰堤を「堰」として分類していた。しかし、堰の中にもダムと同様に洪水調節・流水機能維持を目的に積極的な流水の制御を行う施設も建設されるようになり、ダムと堰の区別が曖昧になってきた。これにより、明確な定義を定める必要性が生まれたと考えられている。なお、ダムを上流から見た時、右側を右岸(うがん)、左側を左岸(さがん)といい、ダムの下流側の面を背面(はいめん)という。
ダムの建設目的は多岐にわたる。主なものとしては治水(洪水調節・不特定利水)と利水(灌漑用水や上水道用水、工業用水、消流雪用水の供給、水力発電、レクリエーション等)がある。治水を目的とするダムを治水ダムといい、利水を目的とするダムを利水ダムという。複数の利水目的を持つ利水ダムや、治水・利水両方を目的とするダムを多目的ダムという。治山を目的とする治山ダムや砂防を目的とする砂防ダム、鉱山で鉱滓貯留を目的とする鉱滓ダム、廃棄物埋設処分を目的とするダム等は河川法のダムとは別扱いとなる。
本項では国際大ダム会議で定義されたダムのうち、日本の河川法、河川管理施設等構造令の基準にも援用されている高さ15.0メートル以上の、いわゆるハイダムについて説明する。堰、治山ダム、砂防ダム、鉱滓ダム、天然ダム、地下ダムについては、それぞれの項目を参照されたい。
日本語においてダムの数え方は「基」であり、1基、2基という呼び方で数える。
なお、2011年時点、世界で最も多くのダムを保有しているのは中華人民共和国である。その数は8万7千基に及ぶ[1]。
歴史
日本のダムに関する詳細な歴史は日本のダムの歴史を、年表の一覧は日本ダム史年表を参照のこと。
ダムの黎明
人類史上、初めてダムが建設されたのは古代エジプト・エジプト第2王朝時代の紀元前2750年に建設されたサド・エル・カファラダム(en:Sadd el-Kafara、意味は「異教徒のダム」)と考えられている。このダムは堤高11.0メートル、堤頂長が106メートルで、石切り場の作業員や家畜に水を供給する上水道目的で建設された。その後の発掘調査などから石積みダムであったと考えられているが、洪水吐き(放流設備)を持たなかったため建設後40年目にして中央から河水が越流し、決壊したと推定されている。このため、このダムは現存しない。またエジプト第12王朝時代のアメンエムハト4世(アンメネメス3世)の治世には干拓により形成された農地に灌漑用水を供給するためのダムが建設されたとされている。現存する最古のダムはシリアのホムス付近に建設されたナー・エル・アシダムと考えられている。このダムは堤高2.0メートル、堤頂長2,000メートルのダムで、推定で紀元前1300年頃に建設されたとしている。現在でも上水道目的で使用されており、建設以来約三千年もの間、修繕を重ねながら稼働している貴重な遺産でもある。
現在高さ200メートル級のダムが多く存在する中近東では、メソポタミア文明時代においてチグリス川・ユーフラテス川にダムが建設されたという記録が残されている。東アジアでは紀元前240年頃、黄河流域で建設されたグコーダムが初見である。戦国時代末期、現在の中国山西省付近にあった趙の領内に建設された堤高30.0メートル、堤頂長300メートルのダムである。このダムは12世紀初頭までの約1300年間、ダムの高さでは世界一であったとされている。その後前漢時代には軍事的観点でダムが建設された例が司馬遷の『史記』に記されており、「劉邦の三傑」と呼ばれた韓信が項羽との戦いにおいて戦場の近くを流れる河川にダムを建設、意図的に破壊して城塞や項羽軍に大打撃を与えた。日本では616年、飛鳥時代に河内国(大阪府)で狭山池が建設されたのが初見である。また、多目的ダム(後述)として奈良時代の731年に摂津国(現在の兵庫県伊丹市)で治水と灌漑を目的とした昆陽池が建設されている。
技術の進歩
ヨーロッパではローマ帝国時代に上水道供給を目的としたダム建設が盛んとなり、現在でもフランスやイタリアなどに堤高20メートル規模のダムが現存、あるいは廃墟として残っている。この頃に初めてダム建設にコンクリート(ローマン・コンクリート)が使われ、止水用にモルタルが用いられた。日本においては灌漑用として稲作の発展と共に多数のダムが建設され現存しているが、1128年(大治3年)に大和国(奈良県)に建設された大門池は高さ32.0メートルと当時としては世界一の高さであった。14世紀頃になるとスペイン各地でダム建設が行われ、特に14世紀末に建設されたアルマンサダムはそれまで世界一であった大門池の高さを塗り替えて世界一に躍り出た。さらに1594年に完成したアーチ式コンクリートダムのチビダム(別名アリカンテダム)は高さ41.0メートルとアルマンサダムの記録を塗り替え、以後300年間に亘って記録が破られることがなかった。このように中世においてはスペインが、ダム技術で世界屈指を誇っていた。
この時期まで世界で建設されたダムはおおむね上水道や灌漑といった利水目的で、洪水調節を行う治水目的のダムは建設されていなかった。だが、17世紀に入るとヨーロッパ諸国で治水目的のためのダム建設が計画され、さらに洪水に耐えうるだけのダム型式としてダムの自重と重力を利用して堤体を安定化させる重力式コンクリートダムの技術が研究・開発されだした。フランスではナポレオン3世により河川開発が強力に推進され、1858年にはロアール川に洪水調節用ダムが建設された。プロイセンでは1833年以降に比較的巨大なコンクリートダムの建設が進められるようになった。日本では遅れること1920年代にコンクリートダムの建設が盛んになり、1924年(大正13年)には当時「世界のビッグ・プロジェクト」と称えられた大井ダム(木曽川)を建設。日本の支配下にあった外地でも大型ダム整備を進めた。台湾では1930年(昭和5年)に烏山頭ダムが完成して嘉南大圳(嘉南平原を沃野に変えた水路網)の要となった。1937年(昭和12年)には旧満州で当時東洋一といわれた豊満ダム(高さ90.0メートル)が、朝鮮半島の鴨緑江では水豊ダム(高さ107.0メートル)が1942年(昭和17年)に竣工し、世界のダム技術に追いついて行くようになった。
多目的ダムの登場
治水を目的としたダムが建設されると、今度は治水と利水双方の機能を組み合わせた多目的ダムの建設が志向されるようになった。既に731年日本において僧・行基が治水と灌漑を目的とした昆陽池を建設していたが、理論自体は提唱されていなかった。多目的ダムの理論を提唱したのは1889年、プロイセンのインツェが最初であり、それを1902年にマッテルンが経済性と技術的理論を結合した形で体系化した。こうしたプロイセンの治水・利水理論は1913年にプロイセン水法として纏められた。これは治水と利水を総合的に運用する法整備として近代における河川関連法規の模範ともされ、その後1918年のスウェーデン水法、1919年のフランスにおける利水関連法規、1920年のアメリカ連邦水力法、1934年のオーストリア水法など諸外国に多大な影響を与えた。
こうした多目的ダムによる治水・利水の総合的な運用は、河川総合開発事業として発展するに至った。一つの河川にダムをはじめ用水路や水力発電所を建設し、治水や灌漑、水道供給、発電を行うことで農業・工業生産力の向上を図り、雇用を安定化させ国力を高めることを最終目的にした事業であり、流域の広範囲に亘って大規模に実施された。特にアメリカにおいては金融恐慌の後、雇用の拡大と工業生産力向上を目指して大河川の総合開発を開始した。1936年にはコロラド川に当時としては世界最大級のフーバーダムを完成させ、さらに大統領フランクリン・ルーズベルトはミシシッピー川の支流・テネシー川に多数のダムを建設して洪水調節と水力発電を行うテネシー川流域開発公社(TVA)を設立、ニューディール政策の一環として総合開発を行った。
このTVAの成功は諸外国を刺激し、第二次世界大戦に前後して各国で河川総合開発が加速した。代表的なものとしてはソ連の五カ年計画に基づくエニセイ川(ブラーツクダムやクラスノヤルスクダムなど)、ヴォルガ川、ドニエプル川[2]の総合開発、インドにおけるダモタル川総合開発事業、オーストラリアにおけるスノーウィーマウンテン総合開発事業などがある。日本では1938年(昭和13年)に物部長穂が「河水統制計画案」として提唱し、その理論は戦後打ち続く洪水に対処するため利根川や淀川など主要7水系において「河川改訂改修計画」の策定へつながり、利根川水系8ダムなどの大規模河川総合開発が行われた。
大ダムの時代
第二次大戦後、ダム建設技術はさらに向上し、高さ200メートルを超える巨大ダムが各国で続々建設されるようになった。1962年には重力式コンクリートダムとしては世界一であるグランド・ディクサーンスダム(スイス)が完成。1968年にはカナダ・ケベック州においてマルチプルアーチダムとしては世界一となるダニエル・ジョンソンダムが完成した。そして1980年にはソ連(現在はタジキスタン)がヌレークダムを建設し、高さ300メートルという既設ダムとしては世界最高のダムを建設した。現在はタジキスタンのヌレークダム上流に高さ335メートルのログンダムが建設されており、完成すれば世界一の高さになる。
貯水容量においても莫大な容量を有する人造湖が続々と誕生した。フーバーダムは総貯水容量が348.5億立方メートルと日本にある全てのダム貯水容量を凌駕する容量を有するが、ジンバブエとザンビア国境にあるカリバダムは総貯水容量が1,806億立方メートルと琵琶湖の約67倍の容量を誇り、人造湖単体としては世界最大の人造湖を生み出した。1957年にウガンダに建設されたオーエン・フォールズダムが世界最大ともいわれるが、総貯水容量2兆7000億立方メートルの大半はヴィクトリア湖の容量であり、ダムによる増量分は2,700億立方メートルである。このほか世界有数の大河川の本流にもダムが建設され、1958年に黄河で完成した三門峡ダム、1970年にナイル川で完成したアスワン・ハイ・ダム、1991年にパラナ川で完成したイタイプダムなどはダム・人造湖の規模においても世界有数であり、2009年長江に完成した三峡ダムはダム・人造湖のほか世界最大の水力発電所を擁する。
ダム技術の革新
ダムの建設技術についても、20世紀に入り様々な手法が開発・導入されるようになった。20世紀前半はコンクリートが高価であり、工費圧縮のためコンクリート使用を抑制する工法が開発された。代表的なものとしてはバットレスダムがあるが、この型式では地震や洪水に弱いという難点があり、盛んに建設されることは無かった。こうした問題を解決したのが中空重力式コンクリートダムであり、重力式コンクリートダム内部に空洞を設け、ダムと基礎地盤との接地面を広く設けることで少ないコンクリートで重力式と同程度の安定性を保つ型式である。これはマルチェロによって理論が纏められ、彼の母国イタリアで盛んに建設されたが日本でも導入され、単体のダムでは世界で最も高い畑薙第一ダム(大井川、125メートル)をはじめ多くの大ダムが建設された[3]。ただし空洞を形成するための型枠や人件費が高騰し、現在では施工例を見ることは極めて少ない。
コンクリートを打設する技術については、従来は区画毎に分けてコンクリートを打ち増す「ブロック工法」が主流であったが、大型機械の導入や組み合わせの試行錯誤によってスムーズなコンクリート打設を図る技術が進んだ。1967年に完成したクラスノヤルスクダム(エニセイ川)ではコンクリート製造プラントからダム現場までをベルトコンベアで結び、休みなく連続して打設できる手法を導入した。こうした手法は世界各地のダム工事で採用され、工期の短縮と工費の縮減に貢献した。
さらなる合理化を図るために開発されたのがRCDコンクリート(Roller Compacted Dam Concrete)によるRCD工法であった。これは超硬練りのコンクリートをベルトコンベアやダンプカーで運搬し、ブルドーザーで敷きならした後にロードローラーで水平に薄く何層も締め固めるという工法である。コンクリートの量を少なく抑える他、ブロック工法のように継ぎ目を設けないので亀裂(クラック)を起こさず、安定性と経済性で従来の工法よりも優れることが確認された。この工法が世界で初めて本格的に手掛けられたのは日本で、1972年(昭和47年)より山口県において建設省が施工した島地川ダム(島地川)が初例である。この後、RCD工法は大規模なダム建設で採用され、中小規模のダムにおいてはRCD工法を中小規模用に改良した拡張レヤ工法が取り入れられた。ロックフィルダムについても大型機械の導入によって原材料の掘削や運搬、締め固め工法の技術が向上したことで大規模な体積を有するダムが多数建設された。
そして近年では、よりコンクリートの量を減らして工費縮減と工期短縮を図る型式の改良が進み、1999年(平成11年)には日本で台形CSGダムという新型式が開発された。これはセメントと土砂と水を最適な含有量で混ぜ合わせることでコンクリートに近い強度の骨材を作り、台形に仕上げることで強度を補強するものである。従来は骨材を選別するのに良質のものを選ばなければならなかったが、この型式だと品質に関係なく骨材を使用できるので工費削減と工期短縮に貢献できるとされている。2002年(平成14年)より沖縄県の億首ダム(億首川)で本格的な施工が開始されたが、洪水の処理や地震への耐久性が課題として残されている。
型式別によるダムの種類
ダムのタイプ、いわゆる型式(かたしき)によるダムの分類としては、大別すると土や砂、岩石を積み上げて建設されるフィルダムと、コンクリートを主原料として建設されるコンクリートダムの二種類があり、おのおの細分化した型式が存在する。このほか両者を連結・複合させたコンバインダム(複合ダム)や、日本で開発された新型式である台形CSGダムがある。いずれもアルファベットの略号で表されることもある。
ただしロックフィルダムとアースダムについては、世界的に見ると明確な区別がなされてはいない。外観がロックフィルダムであってもアースダムとして分類される(カナダのマイカダムなど)ことがあり、材料を混成して施工されることが要因となっている。したがって両方の型式を包括してフィルダムまたはフィルタイプダム、あるいはエンバクトメントダムと呼称される。ロックフィルダムを細分化した亜型で分類するのは日本が代表的である。
地形や地盤、気候、河川流量、さらには地震の有無などにより採用される型式が異なり、地域によって特性が見られる。一般にアルプス山脈一帯や中近東は基礎岩盤が比較的堅固であるためコンクリート量を節減し経済性に優れるアーチ式コンクリートダムが多く建設されている。一方、日本のその他の地域(一部を除く)やアメリカ合衆国西海岸(カリフォルニア州)のような地震多発地域では地震や洪水に最も強い重力式コンクリートダムが多い。
型式一覧
分類 | 小分類 | 略号 | 解説 |
---|---|---|---|
コンクリートダム | 重力式 コンクリートダム |
G | ダムの自重と重力を利用して水圧を支えるダム型式。 |
中空重力式 コンクリートダム |
HG | ダムの堤体内が空洞になっている重力式コンクリートダム。 イタリアや日本に多く見られる型式。 | |
アーチ式 コンクリートダム |
A | 河川両側の堅固な岩盤に水圧を分散させて支えるダム型式。 全世界における堤高200メートル以上のハイダムで多く採用されている型式である。 | |
重力式アーチダム | GA | 重力式とアーチ式の両型式の特性を備えたダム型式。 | |
マルチプル アーチダム (多連式アーチダム) |
MA | 複数のアーチが連なるダム型式。 扶壁で支える点からバットレスダムに比較的近い。 | |
バットレスダム | B | 水を遮る壁(遮水壁)を垂直に扶壁で支えるダム型式。 地震や洪水に弱いため余り堤高を高くできない。 | |
フィルダム | アースダム (アースフィルダム) |
E | 台形状に盛り土を行って建設されるダム型式。 地震の少ない地域では堤高200メートル以上のハイダムも存在する。 |
ロックフィルダム | R | 土砂と岩石を主体として建設されるダム型式。遮水壁の位置・種類によって種類が細分化される。 | |
コンバインダム(複合型ダム) | GF | 重力式と、アースまたはロックフィルダムが複合したダム型式。 | |
台形CSGダム | CSG | 日本で近年開発されたダム型式。事業費削減に貢献することができる。 |
-
アースダム
(アメリカ・フォートペックダム)
地下ダム
地下水を貯水するため、地下に設ける止水壁を地下ダムという。これは、地下水の流れを土中で塞き止め、そこから汲み上げて使用する。地下に空洞を作って地底湖のように貯水をするわけではない。
例えば、海岸部においては海水が地下水へ侵入するのを防ぎ、地下水の塩水化を防止する役割を果たすものとなっている。また、内陸部の場合は、帯水層の水が分散するのを塞き止めて、地盤内の隙間に水を貯える構造のものとなる。具体的には、サンゴ礁の島々など山岳地帯の少ない離島・海岸部の地点や、内陸部では自然の止水層が多くあり人工止水壁が少なくてすむ地点などに用いられる。
世界的にはワジが多く存在するサハラ砂漠など乾燥地帯に集中する。これは日本と異なり降雨量に対して蒸発量が大きく無視できない地域においては、貯水表面が外気に曝されないため、貯水の損失を防ぐ観点から有効である。日本(日本ダム協会調べ)では主に沖縄県を中心とした島嶼部や海岸沿いの地域に集中しており、福里ダムなど14基建設されている。
鋼製ダム
ダム本体がステンレスなどのいわゆる鋼で形成されているダム。人造湖側は水を遮る壁(遮水壁)を設け、支柱などで基礎地盤と連結して貯水し、下流部をステンレス鋼で形成する型式のダム。断面の形状としてはバットレスダムに似る。安定性を保つために地中にアンカーを設置し、水圧に耐える構造を採っている。アメリカでは1898年完成のアッシュ・フォーク・ダムをはじめ20世紀初頭に幾つか建設されたが、現在施工例はない。日本国内ではハイダムの施工例は存在せず、2006年に竣工した大阪府の泉南農業公園調整池が唯一の施工例である。
木材ダム
ダム本体を木材で形成したダム。木材を組み、隙間に石や土砂を充填して堰堤とした。セメントの輸送が困難であった産業革命期に、北米の林業の盛んな地域で建設された。木材の性質上腐食しやすく、規模の拡大にも限界があったため、その多くがアースダムなど別の方式に建て替えられた。北米ではいくつかの木材ダムが残されている。
ダム諸元に関する表記
諸元とは、高さや、重量などのいわゆる概要であり、高さ等呼称は下記の通り。
諸元
諸元 | 単位 | 解説 |
---|---|---|
堤高 | m | 「ダム高」とも呼ぶ。基礎岩盤接地部からのダム堤体の高さを指す。 岩盤を深く掘削して建設しているダムでは見かけ上低く見える。 |
堤頂長 | m | ダム頂上部の長さ。一般に堤高に比して長い。 まれに堤高と堤頂長の比が逆転しているダムもあり、 この場合ダムの外観は縦長となる |
堤体積 | m3 | ダム堤体の体積。 ロックフィルダムでは体積が大きくなる |
総貯水容量 | m³ | 満水時にダム湖に貯水される河水の総量。 洪水調節容量・利水容量・堆砂容量・死水容量の総和で量られる。 (注:死水容量 … 堆砂の最上面と最低水位が合わない時の貯水容量。) |
有効貯水容量 | m³ | 総貯水容量から堆砂容量と死水容量を差し引いた容量。 実際に治水・利水に利用される貯水容量である。 |
流域面積 | km2 | ダム湖に注ぐ全ての河川が流れている地域(流域)の総面積。 面積が極端に狭いダムは揚水発電の上池であったり、 他河川より導水して貯水するダムであることが多い。 |
湛水面積 | ha km² |
ダム湖の満水時における表面積。 湛水面積が広いからといって総貯水容量が多いとは限らないが、 堤高が低いダムでは比較的面積と容量の大きさが比例する。 |
世界の主なダム
現在、世界における最大の堤高を有するダムはタジキスタンに建設されている水力発電用のログンダムで335メートルの高さがあり、完成すれば東京タワー(333メートル)を超える高さを誇る。現在既設ダムで世界一であるヌレークダム(300メートル)も同じタジキスタンの同一河川にある。堤高200メートル以上のダムを型式別で見るとアーチ式コンクリートダムが最も多く、続いてフィルダムが多い[4]。
また、総貯水容量では人造湖単体としてはジンバブエとザンビアの間に建設されたカリバダムが最も容量が大きい。その総貯水容量は実に約1,806億立方メートルであり、日本最大の自然湖である琵琶湖(約27億立方メートル)の約67倍の容量を誇っている。自然湖をダム化したものを含めると、ウガンダに建設されたオーエンフォールズダムの約2兆7000億立方メートル(琵琶湖の約1,000倍)が最大であるが、容量の9割はヴィクトリア湖の容量であり、ダムによる増加分は2,700億立方メートルである。その他、堤高の高いダムに関しても、容量が100億立方メートル級のダムが軒を連ねている[5]。面積においてもカリバダムが約5,180平方キロメートルと世界最大の広さを有し、三峡ダムのように貯水池延長が約500キロメートルという規模を持つダムもある。
ダムによる水力発電量ではブラジル・パラグアイ・国境にまたがるイタイプダムがかつて世界最大であり、その最大出力は1260万キロワットと日本最大の水力発電所である神流川発電所(群馬県・長野県。282万キロワット)の約4.5倍もの電力を供給する。2009年に中国・長江で完成した三峡ダム(長江)では2012年に2250万キロワットまで発電能力を増やし[6]、イタイプダムのそれを大きく上回った。
堤高ランキング
- 世界における詳細なハイダムランキングは世界のハイダム一覧を参照のこと。
順位 | 国名 | ダム名 | 型式 | 堤高 (m) |
総貯水 容量 (千m³) |
完成年 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1位 | タジキスタン | ログンダム | ロックフィル | 335.0 | 13,300,000 | - | 建設中 |
2位 | タジキスタン | ヌレークダム | アース | 300.0 | 10,500,000 | 1980年 | 既設世界一 |
3位 | 中国 | 小湾ダム | アーチ | 292.0 | 15,100,000 | - | 建設中 |
4位 | スイス | グランドディクサーンスダム | 重力式 | 285.0 | 401,000 | 1961年 | |
5位 | グルジア | イングリダム | アーチ | 272.0 | 1,100,000 | 1980年 | |
(参考) | 富山県 | 黒部ダム | アーチ | 186.0 | 199,285 | 1963年(昭和38年) |
総貯水容量ランキング
順位 | 国名 | ダム名 | 型式 | 堤高 (m) |
総貯水 容量 (千m³) |
完成年 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1位 | ジンバブエ ザンビア |
カリバダム | アーチ | 128.0 | 180,600,000 | 1959年 | |
2位 | ロシア | ブラーツクダム | 重力式 | 125.0 | 169,000,000 | 1964年 | |
3位 | エジプト | アスワン・ハイ・ダム | ロックフィル | 111.0 | 162,000,000 | 1970年 | ナセル湖 |
4位 | ガーナ | アコソンボダム | ロックフィル | 134.0 | 150,000,000 | 1965年 | ボルタ湖 |
5位 | カナダ | ダニエルジョンソンダム | 多連式アーチ | 214.0 | 141,851,350 | 1968年 | |
(参考) | ウガンダ | オーエンフォールズダム | 重力式 | 30.0 | 2,700,000,000 270,000,000 |
1957年 | 上段はヴィクトリア湖を含む 下段はダム単体の増量分 |
(参考) | 岐阜県 | 徳山ダム | ロックフィル | 161.0 | 660,000 | 2008年(平成20年) |
発電出力ランキング
順位 | 国名 | ダム名 | 型式 | 堤高 (m) |
認可出力 (kW) |
完成年 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1位 | 中国 | 三峡ダム | 重力式 | 185.0 | 18,200,000 | 2009年 | |
2位 | ブラジル パラグアイ |
イタイプダム | 複合型 | 196.0 | 12,600,000 | 1991年 | |
3位 | ベネズエラ | グリダム | 複合型 | 162.0 | 10,000,000 | 1986年 | |
4位 | ブラジル | トゥクルイダム | ロックフィル | 95.0 | 8,370,000 | 1984年 | |
5位 | ロシア | サヤノシュシェンスカヤダム | 重力アーチ | 242.0 | 6,400,000 | 1990年 | |
(参考) | 長野県 群馬県 |
南相木ダム 上野ダム |
ロックフィル 重力式 |
136.0 120.0 |
2,820,000 | 2005年(平成17年) | 揚水発電 |
ダムの名称
ダムに付けられる名称は通常、計画の段階で命名される。途中で変更になる場合もある[7]。命名については、河川名やダム建設地点の地名が採用されるケースが多い。この他キエフダム(ウクライナのドニエプル川)やクラスノヤルスクダム(ロシアのエニセイ川)など所在都市名を採用したもの、中国の三峡ダム(長江)や三門峡ダム、劉家峡ダム(黄河)、日本の豊平峡ダム(豊平川)のように峡谷名を冠したものなど、多彩である。また、同一河川・水系に建設されたダムの中には、完成順に番号で命名されているものもあり、イランにあるカールーン第一・第三・第四ダム(カールーン川)はその一例である。ダムによって形成された人造湖についても同様の傾向が見られるが、名称が特に定まっていないものも多い。日本ではダム完成前に一般公募によって人造湖の名称を決めるケースが多くなっている。
特殊な例としては、人名を冠したダムがある。これらは該当するダムまたは建設事由である河川総合開発事業において主導的な役割を果たした、あるいは国政に功績のあった政治家を顕彰する意味を込めて命名されている。以下に示したものは、その一例である。
- フーバーダム(アメリカ):治水とラスベガスなどへの電力供給他を目的に計画されたコロラド川総合開発事業(ボールダー峡谷計画)の中心として1936年に完成した高さ221メートルの重力式アーチダム。建設当時はボールダーダムという名称であったが、1947年の第80回連邦議会において第31代アメリカ合衆国大統領であるハーバート・フーヴァーの名を冠する議決がなされ、現在の名称に変更された。なお、人造湖であるミード湖は、当時のアメリカ合衆国内務省開拓局長官であったエルウッド・ミードの名を冠している[8]。
- セオドア・ルーズベルトダム(アメリカ):水力発電を目的として1911年に建設された高さ109メートルの重力式コンクリートダム。完成からしばらくは河川名のソルト川から命名されたソルトリバーダムという名称であったが、1959年に第26代アメリカ大統領であったセオドア・ルーズベルトの名を冠した現名称へと変更された。前述のフーバーダムと同様にダムと人造湖双方に人名を冠した希有な例。
- ダニエルジョンソンダム(カナダ):カナダ及びアメリカ東海岸地域に電力を供給する目的で1968年に建設されたダムで、マルチプルアーチダムとしては世界で最も高い214メートルの巨大ダム。ダム名は建設当時のケベック州知事で水力発電事業に力を注いだダニエル・ジョンソンにちなんで命名された。なお、彼はダム完成の直前に死去している[9]。
- アタチュルクダム(トルコ):南西アナトリアプロジェクトにおける灌漑・水力発電を目的としたユーフラテス川総合開発事業の中心として、ユーフラテス川本流に1992年に完成した高さ169メートルのロックフィルダムでトルコ最大級の規模を有するダム。ダム名はトルコ建国の父であるケマル・アタテュルク(アタチュルク)にちなみ命名された[10]。
- シーナカリンダム(タイ):映画『戦場に架ける橋』の舞台となったクワイ川(クワイヤイ川)に、水力発電と治水を目的とした河川総合開発・クワイヤイ第一計画の中心事業として1980年に完成した、高さ140メートルのロックフィルダム。日本の円借款および電源開発の技術協力で建設された。ダム名はタイ国王ラーマ9世の母であるシーナカリン王太后の名が冠され、計画名自体も途中からシーナカリン開発計画と改められた[11]。
- ホセ・マリア・モレーロスダム(メキシコ):メキシコシティ南西に洪水調節・灌漑・水力発電が目的の河川総合開発事業として建設された高さ59.7メートルのロックフィルダム。ダム名はメキシコ独立革命の英雄で、メキシコ最初の憲法を制定したホセ・マリア・モレーロスの名が冠された。1968年完成[12]。
- ゾラダム(フランス):南フランス・エクサンプロバンス近郊を流れるローヌ川支流のアンフェルネ川に1854年完成した高さ42.5メートルの灌漑と水力発電を目的にしたアーチ式コンクリートダム。完成から約50年間アーチダムとしては世界最高の高さを有していた。ダム名はこのダムを設計した土木技師であるフランチェスコ・ゾラの名を冠しているが、彼の息子は文豪で知られるエミール・ゾラである[13]。
人造湖については先述のミード湖のほか、アスワン・ハイ・ダム(ナイル川・エジプト)の人造湖が同事業を強力に推進した第2代エジプト大統領ガマール・アブドゥン=ナーセルにちなんでナセル湖と命名された例、グランドクーリーダム(コロンビア川・アメリカ)の人造湖が建設を推進・指揮した第32代アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトにちなみルーズベルト湖と命名された例などがある。
ダムの諸問題
ダムは建設に多額の投資が必要で、河川の場合は建設地周辺から河口に至るまで広範な地域の自然環境や生活環境、社会・経済に大きな影響を及ぼす。このため各ダムは構想・計画段階から賛否両論があり(「ダム建設の是非」「ダムの代替案」参照)、訴訟や選挙の争点になることもある。建設や完成後の運用にも様々な問題が生じ、その解決策を模索することとなる。日本では、ダム事業が中止または長期化した例もある。ダム湖は大量の水を抱えるだけに、耐久限界を超えた水害や事故による決壊が起きると、大きな被害を及ぼす。防災の役割を担う反面、ダムの建設や貯水によって誘発地震が発生する可能性も指摘されている。
現在は地球温暖化問題が深刻化し、世界各地で激しい洪水や深刻なかんばつが問題になっており、既存のダム運用に対する見直しも要求されている。一般に二酸化炭素を排出しないとして水力発電は注目されてはいるが、ダムの規模や設置している地域の気候などによっては貯水池より大量にメタンガスが発生するなど悪影響等も世界ダム委員会(WCD)の最終報告書等をはじめとして多方面より指摘されており、慎重な対応が求められている。
ダム湖化による地域の水没
集落や街道は川沿いに発達することが多いため、ダム建設が計画されると、ダム湖の湛水に伴いう水没予定地域の住民や外部の自然愛好家らによる反対運動が起きることがある(四国の早明浦ダムなど)。
さらにダムによって文化財や遺跡が水没するという問題も発生している。アスワン・ハイ・ダムではアブ・シンベル神殿が水没することとなり、ユネスコなどの援助・指導によって移転されている。また三峡ダムでは『三国志』で有名な劉備終焉の地・白帝城が半分以上水没するなどの問題が起こった。
土砂・水の排出量管理
利水目的のダムにおいては、洪水のおそれがない時期は河川の水を全て堰き止めてしまうのでなく一定量を放流し、下流の生態系や景観、釣り・漁業、水利権への配慮を求められる。日本では国土交通省の発電ダムに対するガイドラインで、そのための維持流量の確保を定めている[14]。
流域土砂管理を考えた場合、環境問題としては堆砂の問題と、河川の最大流量をコントロールすることで下流へ砂がフラッシュ(流下)されないという問題もある。また、ダム設置による河川の流量や水温への影響によって、河川生態系を攪乱するという指摘もある。三峡ダムでは黄土高原から流出する黄砂が貯水池に堆積、完成から二年で貯水池が埋没してダム機能が麻痺する事態が発生。さらにアスワン・ハイ・ダムでは下流への土砂流下減少によってナイル・デルタ縮小という問題が発生している。堆砂については従来の浚渫(しゅんせつ)主体から排砂バイパストンネルによる抜本的対策が試行されているほか、流砂連続性を確保するための人工洪水試験がグレンキャニオンダム(アメリカ)やスイスの発電用ダム、日本の国土交通省直轄ダムの一部などで実施されている。ただし現在は試行段階であるため、海岸侵食などを有効に防止するまでには至っていない。
複数の国を流れる国際河川においては、上流部にある国が大型ダムを計画・建設することに対して、河川流量の減少を懸念する中流・下流部の国や住民が不満を抱いで国際問題化したり、逆に上流部の国による影響力拡大の手段に使われたりしている、下記のような例もある。「21世紀は水戦争の時代」と呼ばれる中、水資源開発とその保全は油田開発に匹敵する重要課題であると指摘する専門家も多い。実際問題として国連は水質汚染と共に水不足を水の危機として警告を発しており、複数の国家間で紛争が発生している。
ダム新設の終焉や見直し論
ダム技術を切り拓いたヨーロッパ各国では、ダムのみではない多様な施策により治水安全度が格段に向上し、ドナウ川やテムズ川をはじめ多くの大河川で一万年に一度の大洪水に耐えうる(日本では最大で百年から百五十年に一度)だけの治水整備(住宅撤去などによる氾濫原の復元など)が行われ、ダム建設は事実上終焉している。アメリカでは1990年代に内務省開拓局長官であったダニエル・ビアードが「アメリカではダム建設の時代は終わった」と発言し、物議を醸した。日本ではこうした欧米の動きや、談合などの公共事業に関連する不透明な税金使用を背景にダム反対派が勢いを強め、「脱ダム宣言」をはじめダム事業に否定的な動きも出ている。
防災での限界と決壊事故
治水機能を持つダムは豪雨や長雨が予測されると、あらかじめ放流を行って空き容量を増やしておき、降雨が本格化すると放流量を抑えて下流の水害を防ぐ洪水調節を行う。日本ではダム湖への水の流入が貯水能力を超えそうになると、ダムの損壊を防ぐため放流する「異常洪水時防災操作」を行う。下流域で死傷者・行方不明者など被害が出ると、放流判断や告知が適切だったかについて批判が出ることもある。平成30年7月豪雨では6府県にあるダム8か所で防災操作が行われた[18]が、肱川(愛媛県)で氾濫により9人が死亡したため、検証作業が行われている[19]。
また砂防ダムも、大量の水・土砂が強い勢いで流入すれば防ぎ切れなかったり、決壊したりする[20]。
洪水時に限らず、多数の死傷者を伴うダム決壊事故は国内含め世界中で発生しており、その度にダムに対する安全性が問われ技術、運用面の改善が求められている。フランスのマルパッセダム決壊事故(1959年)ではダム本体の安全性のみならずダム両岸の基礎岩盤の安定性が重要視された。アメリカのティートンダム決壊事故(1976年)では岩盤の安定性だけではなく水分の透過性も重要視され、以降ダムの基礎工事が建設においては特に注意を払われた。さらに貯水の際における諸問題として地盤の変化に伴う地すべりや誘発地震の問題も指摘され、1963年のバイオントダム地すべり事故(イタリア)では2000人の死者を出す惨事を招いた。因みに、史上最悪のダム決壊事故はアメリカのペンシルベニア州に建設されたサウスフォークダムで、1889年5月31日に決壊してジョンズタウンを壊滅させ、2200人以上の死者を出した。ギネスブックにも掲載されている。
また第二次世界大戦におけるイギリス空軍によるチャスタイズ作戦(ドイツのダムによる爆撃作戦)や第四次中東戦争におけるアスワン・ハイ・ダムへのイスラエル空軍によるペイント弾空爆など、戦争やテロリズムによっては、ダムは攻撃の対象となる。朝鮮戦争において鴨緑江に戦前日本が建設した水豊ダム(スープンダム・北朝鮮)はアメリカ空軍による集中爆撃を受けたが、重力式コンクリートダムの特徴が幸いしダムは決壊せずに持ちこたえている。だがリスク管理やテロ対策の面からも十分な対策が求められている。幾つかの国家ではダムは軍事施設にならぶ重要な防衛拠点として、写真撮影を含み立ち入りが禁じられていることもある。
主なダム事故
ダム事故のなかでダムが完全に破壊される「決壊事故」(崩壊事故)は多数の犠牲者を出す最も重大な事故である。特に大雨によるダム本体からの越流や地震による崩壊といった天災に、施工不良や管理不良といった人災が重なって起こる場合がほとんどを占める。中には戦争による空爆や意図的なサボタージュによって事故が起こることもある。
最も危険なのはダム湖に試験的に貯水を行う試験湛水(たんすい)時であり、この工程中に決壊する例も多い。したがって試験湛水中はダム本体のみならず人造湖に接する周囲の地盤にも多大な注意を払っている。以下に主な事故を挙例する。
- 日本の事例については日本のダム#日本のダム事故を参照のこと
- サウスフォークダム決壊事故(フィルダム。アメリカ合衆国・1889年5月31日。北緯40度20分57.45秒 西経78度46分32.39秒 / 北緯40.3492917度 西経78.7756639度)
- 大雨によりダム堤体を貯水が越流して決壊。下流にあるジョンズタウンが壊滅して2,200人が死亡、世界のダム史上最悪の死亡者数をもたらした事故をおこす(ギネスブックにも公式に認定されている)。この水害を「ジョーンズタウン洪水」と呼ぶ。
- 第二次世界大戦時にイギリス空軍によるチャスタイズ作戦の折、軍需産業が盛んだったルール工業地帯に損害を与えて工業生産力を低下させ、ナチス・ドイツに致命的な打撃を与えるため両ダムを空爆し、破壊した。流域住民1,288人が死亡した戦争によるダム破壊の代表事例。終戦後両ダムは当時の西ドイツ政府によって再建され、現在も供用されている。
- 朝鮮戦争時にアメリカ空軍が戦況を有利に運ぶために、電力施設への空襲や北朝鮮軍および支援する中国軍に打撃を与えるべく数度に渡り空爆を行う。ダムはかつて朝鮮半島を統治していた日本が建設したものだが、ダムの体積が大きかったことや建設技術が優れていたこともあって破壊させることに失敗する。
- 本体建設終了後に試験湛水を開始したがその約16時間後、ダム左岸部の堤体が基礎岩盤ごと決壊し500人以上が死亡。水圧を支えるはずの基礎地盤が軟弱であったことから莫大な水圧を支えきれずに崩壊したことが判明。以後のダム建設において両岸の基礎地盤対策が重要視された。日本においても黒部ダムのウイングダム化や奈川渡ダムの規模縮小など影響を与えた。
- バイオントダム地すべり事故(アーチ式コンクリートダム。イタリア・1963年1月)
- 本体建設終了後、最初の試験湛水中に地すべりが発生。それを放置し満水にした所豪雨を被りダム上流の左岸に大規模な地すべりが発生、貯水池に3億立方メートルに及ぶ莫大な土砂が流れ込んだ。これにより貯水が巨大な波となってダムを越え、直下流のロンガローネ村に洪水を引き起こし村は壊滅。2,000人以上が死亡した。ダム自体は決壊しなかったものの放棄され、現在は機能を果たしていない。管理者であるイタリア電力公社の関係者が逮捕・起訴され有罪となった。これ以後、ダムサイトだけではなく貯水によって水没する周辺山地の斜面対策がより重要視された。
- 板橋・石漫灘ダム決壊事故(フィルダム。中国・1975年8月8日)
- 台風3号により河南省一帯は記録的な大雨となり、一日降雨量が1,060ミリと世界で最も多い降水量を記録した(当時)。豪雨に伴い流域の河川が増水、文化大革命時に建設された板橋ダム(総貯水容量:約8億立方メートル)・石漫灘ダムの巨大ダムを始め大小合わせて62箇所のダムが連鎖的に決壊した。この事故により流域の住民や救援活動を行っていた中国軍兵士ら1,827人が死亡、全体でも推定26,000人が死亡したといわれている。原因はこのダムが1957年から1969年まで実施された「大躍進政策」により人海戦術で建設され、工事全体が欠陥だらけであったのに加え、洪水吐きなどの放流設備がほとんど設けられていなかったことが挙げられる。専門家らが指摘したが中国政府は黙殺、結果的に事故につながった。
- 最終的には鄧小平の指示によって洪水流下の阻害要因となっていた残りのダムが爆破されることで洪水は収束した。中国国内ではこの事故を「75.8大洪水」と呼んで「自然災害」とし、ダム決壊の事実は報道が全く禁止されて隠蔽された。この事実は近年明らかになっている。
- ティートンダム決壊事故(フィルダム。アメリカ合衆国・1976年6月5日。右写真。北緯43度54分36秒 西経111度32分22秒 / 北緯43.91000度 西経111.53944度)
- アメリカ合衆国内務省開拓局が施工していたダムで本体建設終了後の試験湛水中に漏水が発生、ブルドーザーで補修を行うが漏水は拡大してブルドーザーごと陥没し同日午前11時57分に決壊した。漏水から決壊まで2時間半程度であった。約3億1,000万トンの湖水が洪水となって下流を襲い住民11人と6,000頭以上の家畜が溺死、負傷者も数千人に上り、被災額や補償案件も膨大なものとなった。原因は建設前より指摘されていた基礎地盤の透水であり、亀裂の多い溶結凝灰岩でその止水対策が不十分であったためと見られている。これ以降フィルダムにおける基礎地盤掘削以降の止水対策が強化されるようになった。
- このダム決壊事故は決壊までの一部始終が初めて映像で収められたほか、メディアによって世界中に映像が報じられ各国のダム関係者に大きな衝撃を与えた。この水害は「ティートン洪水」と呼ばれ、地元農業団体を中心にダム再建が求められたが内務省開拓局は再建を行わず、現在は左岸堤体のみが残る廃墟となっている。[21]
- 折からの大雨で貯水池が満水位を超え、結果ダム本体を越流して決壊する。下流の住民70人以上が死亡したが、フィルダム施工の基本である遮水(しゃすい)対策が不十分だったことが判明し、施工不良であることが決壊の原因とほぼ断定された。
- オーロビルダム放水路破損(フィルダム。アメリカ合衆国・2017年2月)
- カリフォルニア州にある米国一の高さをもつダム。豪雨に伴い放流していたところ放水路が陥没、さらに非常用の放水路においても浸食が認められたため、決壊の危機に陥ったとして州知事が非常事態宣言、住民18万8,000人に避難指示が出された[22]。
- ナクル近郊の農地に設置されていた私営ダムが集中豪雨により決壊。死者45人以上。ダムについては灌漑用などに用いられていたが、事故後、最高検は構造物としての質について問題があるとして調査に乗り出している[23]。
ダムが登場する作品
日本のダムに関連する作品については、日本のダム#ダムが登場する作品を参照のこと。
- 映画
- 親切好き (1952年)
- 暁の出撃(1955年:1943年にイギリス空軍がチャスタイズ作戦でドイツのダムを爆撃・破壊した史実の映画):メーネダム・エーデルダム
- スーパーマン(1978年:ダム決壊により失った恋人を取り戻すため、強引に地球の自転を反転させて時間を戻し、ダム決壊から恋人を救う):フーバーダム
- ナバロンの嵐(1978年:『ナバロンの要塞』の続編。第二次大戦下、独軍に追い詰められたパルチザンを救うため、米英特殊部隊がユーゴスラヴィアのダムを破壊する)
- 007 ゴールデンアイ(ソ連・アーカンゲル化学兵器工場へ侵入する際の入口):コントラダム(スイスのヴェルサスカダム)
- 逃亡者(1993年:ハリソン・フォード扮するキンブル医師がダム下流に飛び込み、追跡を逃れる)
- 長江哀歌(2006年:中国三峡ダム建設予定地を舞台に、庶民の生活を描く):三峡ダム
ダムに関連する人物
日本人に関しては日本のダム#日本のダムに関連する人物を参照のこと
- 韓信:前漢創業の功臣で劉邦の三傑の一。ダムを軍事的に利用して対項羽戦に活用。
- ナポレオン3世:フランス第二帝政皇帝。世界で最初に河川総合開発事業を国策として推進する。
- 孫文:初代中華民国臨時大総統。三峡ダム構想を最初に提唱する。
- フランクリン・ルーズベルト:第32代アメリカ合衆国大統領。テネシー川流域開発公社の生みの親。
- ガマール・アブドゥン=ナーセル:第2代エジプト大統領。アスワン・ハイ・ダム建設を強力に推進。
- 八田與一:日本の水利技術者。日本統治時代の台湾で、農業水利事業(嘉南大圳)に大きな貢献をした人物。
脚注
- ^ 「ダム王国」中国の脅威、半数の4万基が傷んでいる - 東洋経済オンライン 2011年11月4日
- ^ 建設計画自体は1920年代に採用されている。
- ^ コンバインダムを含めたものではイタイプダムが最も高い。
- ^ 『ダム便覧』世界のハイダム
- ^ 『ダム便覧』世界の貯水池容量の大きいダム
- ^ 「中国・三峡ダムが全面稼働、発電量は原発15基分」AFP(2012年7月6日)2018年7月28日閲覧。
- ^ 一例としては日本で、群馬県の渡良瀬川に1977年(昭和52年)完成した草木ダムがある。当初は建設予定地点の地名より命名された「神戸ダム」という名称であったが水没予定地に住む住民の要望で現在の名称へと変更になった。
- ^ 財団法人日本ダム協会『ダム便覧』 フーバーダム
- ^ 財団法人日本ダム協会『ダム便覧』 ダニエルジョンソンダム
- ^ 財団法人日本ダム協会『ダム便覧』 アタチュルクダム
- ^ 『電発30年史』p331-334。
- ^ 社団法人日本大ダム会議『大ダム』No.78 pp.54-58.1976年12月。
- ^ 『北海道のダム』p.247
- ^ 発電ガイドラインについて国土交通省河川局(平成15年7月18日)2018年7月28日閲覧。
- ^ 「メコン川開発 中国、ダム建設加速で影響力拡大 下流域の首脳会議、連携強化確認」『日本経済新聞』電子版(2018年4月8日)2018年7月28日閲覧。
- ^ 「エジプト:スーダンでルネッサンスダムをめぐる閣僚級会合実施」中東調査会(2018年4月10日)2018年7月28日閲覧。
- ^ 『毎日新聞』朝刊/印パ独立70年・第3部<紛争の水源インダス>、(1)ダム建設、相互不信 印、水資源を圧力カードに/パ、枯渇恐れ計画に異議、(2)「川解放へ聖戦」、(3)水枯れ 疑心暗鬼、2017年12月17日~19日掲載。
- ^ 4割ダムで「洪水調節」『日本経済新聞』朝刊2018年7月20日(社会面)2018年7月28日閲覧。
- ^ 「ダム放流 適切か検証/愛媛・肱川9人死亡 住民は怒り」『日本経済新聞』朝刊2018年7月20日(社会面)2018年7月28日閲覧。
- ^ 【西日本豪雨】老朽化砂防防ダム決壊 70年以上前の石積み、「雨が降ると隙間から勢いよく水が…」広島産経WEST(2018年7月24日)2018年7月28日閲覧。
- ^ "Teton Dam Failure", Arthur Gibbs Sylvester, University of California Santa Barbara
- ^ “米加州でダム決壊の恐れ、住民18万人超が避難継続”. CNN (2017年2月14日). 2017年2月14日閲覧。
- ^ “ダム決壊の死者45人に”. AFP (2018年5月12日). 2018年5月13日閲覧。
関連項目
- 堰
- 治水
- 砂防
- 調整池
- 監査廊
- 土木工学 - 土質力学
- 水利権
- 日本のダム
- 八ッ場ダム
- 津軽ダム
- ヌレークダム
- 天然ダム
- 砂防ダム
- 鉱滓ダム
- ビーバー - ダム(広義)を作る動物
- ダムカード - トレーディングカード
- ダムの解体