土石流

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2014年7月長野県木曽郡南木曽町を襲った土石流による被害と復旧作業の様子

土石流(どせきりゅう、英語:debris flow)とは、土砂が水(雨水や地下水)と混合して、河川渓流などを流下する現象のこと[1]土砂災害の原因の一つ。山津波(やまつなみ)、山崩れ地すべりともいう[注釈 1]

概要[編集]

地質学で用いられる斜面変動の分類はD.J.ヴァーンズによる分類が基礎となっている[3]

B.W.ピプキンとD.D.トレントによる斜面変動の分類では、移動速度の非常に速い流動(Flow)のうち、岩石の流動を岩なだれ(Rock avalanche)、粗粒土の流動を土石流(Debris flow)、細粒土の流動を泥流(Mud flow)に分類している[3]

「土石流」は1916年諸戸北郎がドイツ語Murgangの訳語として創案したとみられる[2]。1975年に「土石流」が一般語になる以前は、「山津波」が代表的な用語であり、この他、1960年から土砂害、1977年から土砂災害(山地災害)という用語も用いられるようになった[注釈 2]

日本の法令上は「土石流」について「山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象」と定義されている[4]

文献にない土石流・泥流の痕跡を把握する方法として、地質層の上下関係の年代が逆転していないかを調査することで、発生したエリアと年代を特定することができる。

発生のメカニズム[編集]

土石流は、集中豪雨が主要因となる[5]。発生のメカニズムは大きく次の3つに区分される場合が多い。

  1. 渓流内に堆積している不安定な土砂が、集中豪雨等による異常な出水のはたらきで流動化し、土石流となる場合。
  2. 集中豪雨、あるいはその他の自然現象が原因となり発生した山腹崩壊(土砂崩れ)の崩壊土砂が、多量の湧水や表流水を得て流動化し、渓流内に流れ込みそのまま土石流化する場合。なお、このケースの物理的なメカニズムは未だに解明されていない。
  3. 集中豪雨、あるいはその他の自然現象が原因となり、地すべりや山腹崩壊が発生した際、その崩壊土砂により河川が一時的に閉塞されて天然ダムを形成する。その後、湛水に伴う水位上昇により、それが決壊して土石流化する場合。

また、火山の噴火に伴う融雪[6]、火山湖の決壊、地震による山体崩壊[7]などに起因することもある。

対策[編集]

土石流の流下を抑止するために設置された砂防ダム(スリットダム

土石流の発生や流下する区間は、河川の勾配により推測することができる。一般に土石流の発生区間は、河床勾配20度以上の勾配を有する区間であり、8度を下回ると堆積が始まり、3度以下で水と土石が分離して停止する。ただし、実際に流下する際には、渓流幅の変化や流体中の石レキ成分比、含水率によって変化する[8]

砂防事業による砂防ダム治山事業による治山ダムなどの発生源対策、流下抑止対策。雨量観測及びデータ送信システムの整備、地域住民の伝達等の避難態勢の構築等が対策となる。

避難の目安[編集]

長野県南木曽町を襲った土石流を機に建立された石像。当地では土石流のことを「蛇抜け」と呼び、「白い雨が降る」「谷の水が止まる」と土石流が起こると伝わる[9][10]

土石流の発生は、雨量計で把握できない局所的な集中豪雨が引き金となる場合もあり、地元自治体からの避難勧告はもとより、自発的な判断による早期の避難が安全につながる。


脚注[編集]

注釈[編集]

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  1. ^ 山崩れは古代から用いられ、江戸時代には山津波・山潮と呼んだ。明治には山抜・暴流・砂流・泥流・押出しと呼ばれ、明治末期に地すべりが使用され、昭和後期に「土石流」「鉄砲水」が使用された[2]
  2. ^ 地盤災害は平地の地盤の災害と地すべり、土石流まで含めた広い概念である[2]

出典[編集]

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関連項目[編集]