灯籠流し

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中国・湖南省の水灯籠

灯籠流し(とうろうながし, Water lantern)は、死者の魂を弔って灯籠(灯篭)を海や川に流す行事。とうろう流し灯篭流しとも表記する。

灯籠流しは一説には中国で始まったと言われており、アジアの国々を中心に行われている行事である[1]。中国の華南地方には「放活燈」と呼ばれる風習があり、東南アジアには「放水燈」と呼ばれる風習がある[2]

中国[編集]

中国の華南地方には中元(中元節)に「放活燈」と呼ばれる風習があった[2]

中元節には祖霊を迎えて供養を行い、再び祖霊を送り出す(送亡という)[2]。この送亡の後に色紙で「蓮華燈」と呼ばれるものを作って、夜には灯をともして路傍に置いたり水面に浮かべる行事が「放活燈」である[2]

このような風習は雲南省だけでなく浙江省でもみられた[2]杭州では中元節だけでなく観音大士の誕生日とされる6月19日の前夜にも行われ、西湖では蓮華燈を湖面に浮かべる灯籠流しが行われた[2]

日本[編集]

国領水無月祭り灯篭流し(兵庫県)

日本においては、一般的にはお盆の行事送り火の一種であり、夏祭り花火大会などと合同で行われることが多い。しかしながら「お盆」時期についての解釈が地方によって異なることや、特別の追悼行事として行う場合もあり、日本全国で一斉に行われるわけではない。また、灯籠流しを行わない地域も多い。雛祭りの原型とされる流し雛の行事との類似性が指摘される。

広島や長崎のように戦死者の霊を弔う為に第二次世界大戦後に灯籠流しを始めた地域も多かったが、1970年代に入ると海や川の汚染が問題になり、灯籠をそのまま流すことを中止する地域も現れた。1972年には琵琶湖で中止になったほか、1973年には静岡市巴川で中止となった[3]。自治体が放流を禁じている例もあり、その場合は川の下流などで灯籠を回収したり、河川敷や海岸に集め回収することになる。しかし費用の問題から狭い範囲で実施することで回収を容易にしたり、回収せずにそのまま流したりする例もある。

2018年6月1日夜に、石川県金沢市金沢百万石まつりの一環で行われた灯籠流しで、約1200個の灯籠を川に流したところ、密集した灯篭に火が燃え広がり、約600個の灯篭が燃える事態が発生した。消防によって10分後に消し止められ、けが人はいなかったという[4]

主な灯籠流し[編集]

川裾祭りでの灯篭流し(兵庫県丹波市市島)。
花火大会が同時に開催される場合が多い(市島川裾祭り)。

画像一覧[編集]

環境問題と対策[編集]

各国で環境への配慮が考えられ、数量制限[6]、環境に配慮した素材[7]、下流で回収が行われる[8][9]

脚注[編集]

  1. ^ ベトナムの灯籠流し”. ナショナルジオグラフィック日本版. 2023年8月17日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 鎌田 茂雄「中国仏教儀礼の研究-放水燈-」『印度學佛教學研究』第29巻第2号、日本印度学仏教学会、1981年、592-595頁。 
  3. ^ 「風情かゴミか 灯ろう流し」『朝日新聞』昭和44年(1974年)6月24日夕刊、3版、11面
  4. ^ 川に流した灯籠600個燃える 「加賀友禅灯ろう流し」 金沢
  5. ^ 永平寺大燈籠ながし 日本夜景遺産認定プロジェクト、2021年8月18日閲覧。
  6. ^ 水燈節 市政府籲1家庭1水燈 _綜合新聞_泰國世界日報”. www.udnbkk.com. 2023年1月20日閲覧。
  7. ^ 環境に配慮した「流し灯籠」を開発 脱プラ、もなかの皮を利用 長崎”. 毎日新聞. 2023年1月20日閲覧。
  8. ^ 日本放送協会. “河口湖で灯籠流し 3年ぶりに一般からの参加も 富士河口湖町|NHK 山梨県のニュース”. NHK NEWS WEB. 2023年1月20日閲覧。
  9. ^ 材料可降解并设拦截网 江城放河灯科学又环保 ——新文化报 - 吉林市的日志,人人网,吉林市的公共主页”. web.archive.org. 2023年1月20日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]