浚渫

浚渫(しゅんせつ、英: dredging)は、港湾・河川・運河などの底面を浚(さら)って土砂などを取り去る土木工事のことである。浚渫作業用の船舶を浚渫船(しゅんせつせん)という。
目的
[編集]流量確保
[編集]河川で、洪水時でも十分な流量に対応できるよう断面積を確保するために浚渫が行われる[1]。
堆砂対策
[編集]ダムに堆積する土砂を排除するため、水中の堆砂を浚渫するダムが多い[2]。こうした土砂は河川環境の保全・改善のためダム下流の河川に置土し、出水時の流出で下流に土砂供給することがある[3]。
航路・泊地
[編集]航路や泊地は、船舶が安全に航行・停泊できるよう必要な水深が確保されていなければならない[4]。そのため、係留施設の新設や、大型船が接岸できるよう係留施設を計画する場合は、航行や停泊の妨げにならないように既存の航路や泊地の水深を大きくするために浚渫を行う[4]。また、周辺の河川から土砂が流下し、水底を移動して航路や泊地に堆積することで船舶の航行や停泊に支障をきたす場合がある[4]。その場合も浚渫によって必要水深を確保する[4]。
構造物築造
[編集]防波堤や岸壁などを築造する際、築造地点での土質が軟弱で良質土に置き換えたい場合は床掘りで浚渫を行う[4]。また、軟弱土を地盤改良することで海底面が盛り上がった場合は土砂を除去するために浚渫を行う[4]。
環境対策
[編集]湾奥など閉鎖性海域や深堀り跡地などでは有機物を多く含んだヘドロが堆積しやすく、海域環境に悪影響を与える[4]。そのため、環境改善としてヘドロの除去を目的とした浚渫を行う[4]。
土砂確保
[編集]工業用地などを増設する埋立のために、土砂を確保するためにも浚渫が行われることがある[5]。
採掘
[編集]海外においては、鉱山における露天掘りの一種として、浚渫船が用いられる事がある。マレーシア等では、浚渫船を用いて河川において砂錫の採掘が大規模に行われていた。この他、砂金などの採掘にも用いられていた。
施工
[編集]施工フロー
[編集]施工は事前調査、関連付帯工、浚渫工、出来形検査を経て完了する[6]。事前調査では事前深浅測量、土質調査、底質調査、磁気探査などを行う[6]。関連付帯工では余水吐き、排砂管設備、築堤盛土、汚濁防止膜設置などを行う[6]。浚渫工では浚渫船によって浚渫を行う[6]。出来形検査では事後深浅測量を行う[6]。
土捨て
[編集]浚渫した土砂は土捨てが必要である[7]。土捨て場所は浚渫地点に近く、十分な容量を確保でき、作業時に気象・海象の影響を受けにくいなどの条件がそろうことが望ましいが、近年はそのような土捨て場所の確保が難しくなった[7]。土捨ては埋立地で行うか、海洋への直接投入を行う場合(「沖捨て」と呼ばれる)がある[7]。沖捨てする場合は濁りが広範囲で発生するため、漁業関係者との事前協議が必要である[7]。
工法
[編集]浚渫工法は使用する浚渫船の選定と浚渫した土砂の処理方法によって定まる[8]。浚渫船は土質・浚渫規模・水深・土捨条件・気象・海象・工期などから選定される[8]。土質は浚渫工法に及ぼす影響の中で最も大きく、N値が30以下であれば通常のポンプ浚渫船やグラブ浚渫船でも施工できる一方で、これを超えると砕岩の併用や大型船の使用が必要となる[9]。
用いられる浚渫船は、ポンプ浚渫船[10]・ドラグサクション浚渫船[11]・グラブ浚渫船[12]などがある。
出典
[編集]- ^ “河川の整備・維持”. 東京都建設局第一建設事務所 (2023年9月28日). 2025年10月25日閲覧。
- ^ 佐々木一英 2018, pp. 38–39.
- ^ 佐々木一英 2018, p. 39.
- ^ a b c d e f g h 港湾学術交流会 2014, p. 130.
- ^ 室田恭宏「浚渫の話(1)」(PDF)『DOBOKU技士会東京』第41号、東京土木施工管理技士会、2008年8月。2024年6月19日閲覧。
- ^ a b c d e 港湾学術交流会 2014, p. 131.
- ^ a b c d 港湾学術交流会 2014, p. 136.
- ^ a b 土木工法事典編集委員会 2015, p. 907.
- ^ 土木工法事典編集委員会 2015, p. 908.
- ^ 港湾学術交流会 2014, pp. 132–134.
- ^ 港湾学術交流会 2014, p. 134.
- ^ 港湾学術交流会 2014, pp. 134–136.
参考文献
[編集]- 港湾学術交流会『新版港湾工学』朝倉書店、2014年6月20日。ISBN 978-4-254-26166-0。
- 土木工法事典編集委員会『土木工法事典』(第6版)ガイアブックス、2015年5月1日。ISBN 978-4-88282-947-8。
- 佐々木一英「ダムの長寿命化、機能回復に向けた堆砂対策技術 ~ダムを「永く使う」ための技術の開発・導入に向けて~」『土木技術資料』第60巻第1号、土木研究センター、2018年、38-40頁。
関連項目
[編集]- 日本埋立浚渫協会
- 掻い掘り
- 浚渫船
- 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
- 代書 - 落語の演目。大阪では浚渫業者を「河太郎(がたろ)」(=河童)と呼んでいたことが分かる。
- 金の浚渫
- エアーリフト (水中作業) ‐ 水中作業者が抱えて、ポンプで水上に吸い上げる浚渫作業用の装備。
外部リンク
[編集]- 一般社団法人 水底質浄化技術協会(底浄協)
- 株式会社SKK
- 海域における深掘り跡等の埋め戻しに関する考え方(案) (PDF, 90 KiB) (環境省、2006年3月)
- 関門海峡を浚渫する国土交通省九州地方整備局の海翔丸 - YouTube(朝日新聞社提供、2019年12月6日公開)