緑のダム

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緑のダム(みどりのダム)とは、として降ったダムのように貯めて、ゆっくりとに流すことを期待された森林、およびその土壌のことである。

概要[編集]

一般に森林の土壌は、スポンジのように多孔質であり、降雨時には空隙に大量の水を蓄え、降雨後に徐々に放出する機能を持つ。その機能は1ヶ月以上無降雨の期間が続いても持続することもあり、その保水力からダムとして喩えられるものである。

「緑のダム」という名称は首都圏水不足が問題とされていた1970年代、「森林の保水力」も大切だということを伝えるために、コンクリートダムと対比して考え出された[1]

利点と欠点[編集]

緑のダムは川の流量を一定に保ち、洪水渇水を緩和する働きが期待され、スポンジ状の土壌では水が地表を流れないために侵食を防ぎ、土砂災害の防止という面で、ダムの効用と比して語られることがあり、林野庁ではこれらの機能を、水源涵養機能と呼んでいる。長野県知事であった田中康夫の「脱ダム宣言」に代表されるように、人工的なダムを見直そうという動きから、近年注目されつつある手法・観念ではある。

一方で、農林水産省林野庁林業試験場信州大学農学部森林水文学を長年研究していた中野秀章博士は、全国の林業試験場・森林理水試験地の長年の観測データを分析して、森林伐採をしたほうが、雨が降らない時期の河川流量が増えることを確認しており、このため森林の水源涵養機能という概念とは幾分異なる結果を長年にわたって報告している。以前から、それに類する議論はこれまでもあったが、森林水文学の見地より中野は長年の観測データの科学的分析からこれまでの林野行政の主張とはしばしば異なる結論を導き出してきた。森林は枝や葉が雨をトラップしてこれらが大地に達することなく蒸発する。木の葉が吸い上げた水分を蒸散作用によって大気に放出することによって水を消費するという水循環のプロセスから考えると、これは極めて妥当な結論とされている。

樹木の生長にも水は使われる。枝葉に付着した水滴は土壌にしみこまずに蒸発してしまうことは、人間が利用できる水の量が相対的には少なくなることを示しているが、そもそも、日本の森林、特に人工林は手入れ不足が深刻であるとされている。

緑の砂漠」と呼ばれる土壌が荒廃したタイプの森林では、降雨のたびに土砂が大量に流出するので土砂災害の温床となることもあり得る、保水性という面でも健全な森林に比べて劣るため、緑のダムには不適である。森林の機能を最大限に活かすには、森林が健全な森林であることが前提である。

日本は比較的降雨量があるため、渇水問題などが気にされることはこれまで少なかったとみられ、その結果、人工的なダムと比べた時の利点として挙げられるのは人工的なダムと環境破壊利権の面で比べた時の利点があげられること、例えばダムがなければ川を遮ることがないことで魚や水生動物の遡上を妨げないこと、適量の土砂や栄養分が下流に流れ続けることで三角州や海岸線の縮小・後退(海岸侵食)や磯焼けなど、下流域や海で起きている問題を軽減できるとする考えで同時にダムで問題になる堆砂とは無縁になること、ダム建設時に集落の水没問題が起こらず住み慣れた土地を去るいったことがない点が利点になろう、という人工ダムそのものの欠点をあげるものである。

一方で緑のダムの欠点として挙げられているのは、流量をコントロール出来ないことで万一の急な需要増や大雨に対応が出来ないことは渇水洪水の被害を拡大させる、という人工ダムのもつ機能と役割そのものの事項であった。

脚注[編集]

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  1. ^ 蔵治光一郎+保屋野初子編 『緑のダム――森林・河川・水循環・防災』 築地書館、2004年、iii頁、252頁

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]