鍋料理
鍋料理 | |
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発祥地 | 日本 |
地域 | 東アジア |
鍋料理(なべりょうり)は、惣菜を食器に移さず、調理に用いた鍋に入れたままの状態で食卓に供される日本の料理である。鍋物(なべもの)、あるいはただ鍋(お鍋)と呼んで指す場合もある。
複数人で鍋を囲み、卓上コンロやホットプレートなどで調理しながら、個々人の椀や取り皿あるいはポン酢やタレなどを入れた小鉢(呑水という)に取り分けて食べるのが一般的である。特に寒い季節である冬に好まれる。
通常は複数人で囲んで食べるため一抱えほどの大きさの鍋を用いるが、宴会や会席料理では小鍋で一人前ずつ供される事もある。一人用の鍋も市販されており、これを用いる場合は椀などに取り分けず、鍋から直接食べることもある。
鍋料理で、肉、魚などに添えて煮るネギその他の野菜を「ざく」ということがある。
鍋料理の歴史
近代以前の日本の住居には、台所にある竈(かまど)とは別に、調理のほか照明や暖房を兼ねた囲炉裏が用意されることが多く、そこで煮炊きした料理を取り分けて食べる事は日常的に行われていた。調理された煮物を各々に配膳せず鍋のまま供する方法は17世紀の中頃に記録に現れ始める。18世紀後半になって、囲炉裏の無い町屋や料理屋で火鉢やコンロを使用した『小鍋仕立て』という少人数用の鍋が提供され、鍋から直箸で何人かがつつくという現代見られる鍋料理が発達した[1]。 しかし、小鍋仕立ては竈神信仰や銘々膳、箱膳による食事スタイルなど、それまでの社会的習慣と相容れないものであり、一般の家庭には浸透しなかった[2]。
その後明治に入ってからの牛鍋の流行やちゃぶ台の普及などにより、鍋料理は一般家庭への普及がみられた。調理の近代化が進み調理の熱源が木質からガスなどに転換するにつれて、加熱をしながら食べるという方式は飲食店での提供が主となったが、カセットコンロなどの発明と普及により、再び家庭でさかんに鍋料理が食べられるようになっている。
使用される鍋
日本の鍋料理に使用する鍋として、最もポピュラーなのは陶器製の土鍋である。土鍋は熱伝導性が低いため火がじっくりと通り、長時間の煮込みでも焦げ付いたりする危険性が低いために鍋料理に適しており、寄せ鍋をはじめとして、多くの鍋料理に対して用いられる。具材を煮込む前に焼く工程があるすき焼きなど、土鍋には向かない調理法がある場合は鉄、ステンレスなどの金属製の鍋(金属鍋)が使われる。もちろん、通常土鍋が使われる料理を金属鍋で代用することも可能。最近の電磁調理器の普及に伴い、それに対応した土鍋風ホーロー鍋なども販売されている。また、ジンギスカン鍋、フォンデュなど、それ専用に作られた独特の形状の鍋を使用する料理も多い。
変わったところでは、主に日本料理において使われる「紙鍋」という技法が存在する。これは、耐水加工をした和紙を器の形にしてスープと具材を盛り、下から直火で炙って鍋にするもの。紙が中に入れた水(スープ)の沸点である摂氏100度以上に熱せられず、燃える温度に達しないためにこのような技法が可能。見た目の優美さ、和紙が具材のあくを吸うためあく取りが不要であることなどのメリットがあるほか、容器を使い捨てに出来ることから、大人数による宴会などでの卓上鍋として用いられることが多い。なお、紙鍋とほぼ同様の形状・用途のものにアルミニウム箔製の「箔鍋」がある。
また、昆布を器にした「昆布鍋」というものもある。
鍋料理の締め
色々な具材を煮込んでいるためにスープには出汁が凝縮された状態になっている。このスープを利用しての食べ方にも色々あるが、一般的には雑炊が多い。
- 使用される事の多い具材
一般的な鍋料理
煮汁に味付けを施すもの
- 寄せ鍋
- すき焼き
- 鴨鍋
- 軍鶏鍋(鳥すき)
- 土手鍋 - カキを用いた味噌味の鍋。
- もつ鍋
- 磯鍋 - 地元の海産物を用い、味付けは塩ベースの鍋。浜料理(漁師料理)の一種。
- 浜鍋 - 漁師飯の一種で貝や残った魚を鍋に上入れて味噌で煮て食べる鍋料理
- おでん
煮汁に味付けを施さず、椀に取り分けてから調味するもの
- 湯豆腐 - 豆腐
- 水炊き - 鶏肉
- ちり鍋 - タラやタイ、フグなど各種の白身魚のほか、常夜鍋のように肉類を使うこともある。
- しゃぶしゃぶ - 牛肉、豚肉
- 蒸し鍋 - 蒸籠蒸しだが鍋と呼んでいる。一般的には蒸籠による物だが、温泉地では噴気孔の高熱蒸気を用いた物もある。
どちらのケースもあるもの
日本各地の鍋料理
あ行
- 飛鳥鍋(奈良県)
- 赤から鍋 (愛知県)
- あんこう鍋(茨城県、福島県)
- 石狩鍋(北海道)
- 石焼き鍋(秋田県・静岡県)
- いしる鍋(石川県)
- 猪鍋(群馬県、静岡県)
- 芋煮(青森県を除く東北地方および新潟県)
- 伊予さつま(愛媛県)
- 鰯のちり鍋(福岡県)
- 魚すき(大阪府)
- 打ち込み汁(香川県)
- うどんすき(大阪府)
- ええじゃん鍋(広島県)
- お狩場鍋(熊本県)
- オハウ(北海道)
か行
- かしわ鍋(愛知県)
- かにちり(福井県、兵庫県)
- 鴨鍋(滋賀県、千葉県、埼玉県)
- キジ鍋 (日本各地)
- キビナゴ鍋(長崎県)
- きりたんぽ鍋(秋田県)
- 牛汁(沖縄県)
- クエ鍋(高知県)
- くじら鍋 (和歌山県)
- 具雑煮(長崎県)
- げんげ鍋(富山県)
- けんちゃん汁(宮崎県)
- 源平汁(香川県)
- ごり汁(石川県)
さ行
- 桜鍋(東京都・長野県・熊本県)
- さつま汁(鹿児島県)
- さわ鍋(岡山県)
- 山菜味噌炊き鍋(岐阜県)
- 三平汁(北海道)
- しっぽく鍋(大阪府)
- 地鶏鍋(大分県)
- じゃっぱ汁(青森県)
- しょっつる鍋(秋田県)
- ジンギスカン鍋(北海道)
- 水軍鍋(愛媛県)
- すすぎ鍋(鳥取県)
- 船場汁(大阪府)
- せんべい汁(青森県八戸市)
- せり鍋(宮城県仙台市.正式名は仙台せり鍋)
- そばかっけ鍋(岩手県)
- そば米雑炊(徳島県)
- 鯖の煮食い(島根県・高知県)
た行
- 鯛ちり(徳島県)
- だご汁(だんご汁)(大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県)
- だまこ鍋(秋田県)
- たら汁(富山県)
- ちりとり鍋(大阪府)
- てっちり(大阪府、山口県、福岡県)
- 土手鍋(広島県)
- どぜう鍋(東京都)
- どぶ汁(茨城県、福島県)
- とり野菜(石川県)
- どんがら汁(山形県)
- どんこ汁(岩手県)
な行
は行
- はりはり鍋(大阪府)
- 番屋鍋(新潟県)
- ひきとおし(長崎県)
- 美酒鍋(広島県)
- ひっぱりうどん(山形県)
- 日の丸鍋(秋田県)
- ひるぜん鍋(岡山県)
- 弁慶の菜汁(香川県)
- ぼたん鍋(神奈川県、兵庫県、岐阜県)
ま行
や行
ら行
わ行
日本の新しい鍋料理
日本の一般家庭でさまざまな鍋料理が作られるようになり、それが有名になってきたものもある。その中には海外の料理と組み合わせた鍋もある。
- 豆乳鍋
- キムチ鍋
- 井上鍋
- ミルフィーユ鍋(白菜と豚肉をミルフィーユのように重ね合わせて入れた鍋)
- パクチー鍋(パクチーを入れた鍋)
- 明太子鍋
- 豚骨鍋
- カレー鍋
- 餃子鍋
- みかん鍋(山口県周防大島町、みかん産地の新グルメ、薬味にもみかん胡椒を使用)
- レモン鍋
- トマト鍋
海外由来の鍋料理
海外の鍋料理で日本で知名度が上がってきて食べられるようになった鍋料理。
日本のホームパーティーでの鍋料理
現代の日本の家庭では冬によく食べられる家庭の料理での代表格とも言える料理であるが、家にお客を招待した時にも提供される料理でもある。いわゆるホームパーティーでの料理として日本ではよく食べられる料理である。ゆえに鍋パーティーという造語も存在する。1つの鍋で調理した鍋料理を大人数で分けて食べていく。もちろん食材やだし汁が減れば付け足して加熱し、食材に火が通ればまた取り分けて食べる。こういった鍋料理を作る過程も大勢で楽しむのがホームパーティーでの鍋料理である。
鍋奉行
鍋料理においては、具材を入れる順序や位置、食べ頃など、非常に細かく指定して仕切る人はしばしば見受けられる。このような人物を「鍋奉行(なべぶぎょう)」と称する[3][4]。時代劇でとかく権力を振るう役回りである「奉行」(槍奉行や畳奉行のように、それぞれを管理する役職)をもじり、また少々迷惑な存在であるという意味も含んだ呼称である。
なお、鍋奉行の他に以下のような呼称もある。
- 鍋将軍(なべしょうぐん)
- “奉行よりも厳しい”仕切り役。奉行より権力があり、逆らうことができない、という意味で「将軍」をもじっている[4]。
- アク代官(アクだいかん)
- 鍋料理において、上に浮く灰汁をすくい取る作業を担当する人。「悪代官」のもじり。この語はウェブサイト「鍋の館 by モフモフ」でモフモフこと岡安淳司によって提唱され、ネット上を中心に流行し、2000年にデイリー新語辞典に掲載されるなどした[4]。
- 待ち奉行(まちぶぎょう)・待ち娘(まちむすめ)
- 鍋奉行とは逆に、ほとんど手を出さずにひたすら食べられる時が来るのを待ち、おいしくできた鍋を楽しむだけの人。男性を「待ち奉行」、女性を「待ち娘」と呼び、それぞれ「町奉行」「町娘」のもじり[4]。
脚注
- ^ 鈴木晋一 『たべもの史話』 小学館ライブラリー、1999年、pp82-83
- ^ 福田 育弘『構造としての飲食 : 魯文(ろぶん)の『安愚楽鍋(あぐらなべ)』から鴎外の「牛鍋」へ (PDF) 』早稲田大学教育学部 2005年 2015年5月16日閲覧
- ^ 佐藤憲正『日本国語大辞典 第二版 第十巻』日本国語大辞典 第二版 編集委員会、2001年、230頁。
- ^ a b c d “あたたか〜い、お鍋にまつわるエトセトラ”. 日本気象協会. 2019年1月25日閲覧。