灰汁

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灰汁(あく)


灰汁(あく)とは、食品に含まれる、渋み・苦み・不快な臭いなどの元となる、食事には不要な成分の総称。

灰汁は多様な物質や現象の総称である。硝酸シュウ酸ホモゲンチジン酸などの有機酸や、アルカロイド物質、タンニンなどのポリフェノール類、や浸出液に含まれるタンパク質、遊離アミノ酸などが灰汁の成分であると考えられている。特に動物質の食品と植物質の食品の灰汁の質の差は大きい。

目次

[編集] 洗剤としての灰汁

灰汁は、灰を水のなかに入れてとる液で、洗濯や染め物など用途に応じてさまざまな作り方があった。 洗濯用には米俵を一俵分焼き、これを一斗(18リットル)樽に入れ、水をいっぱいに加え、よく混ぜてこの上澄みをたらいに移し、20倍くらいに薄めたものを使用した。 稲のわらを焼いて作った灰が一番質がよいとされ、次にすすきや萱で作った炭俵が使われた。


[編集] 植物性食品の灰汁

植物性の食材である生物としての植物は、多くの場合草食動物の摂食を防ぐための防御物質として刺激性の物質や、栄養素消化吸収を阻害する物質、摂食した動物生理状態を変化させる生理活性物質などを持っていることが多い。こうした物質は人間の味覚や健康にとって好ましいと判断されれば香辛料ハーブ生薬として却って積極的な利用の対象となるが、食材の味覚を妨げると判断されれば灰汁として調理時に除去の対象となる。

例えば、ホウレンソウなどに含まれているシュウ酸は、苦み、えぐみをもたらすが、カルシウム成分と一緒に煮ることにより、不溶性のシュウ酸カルシウムとなって味覚で感知できなくなり、除去できる。

ワラビなどの山菜に含まれるチアミナーゼは不味いだけでなく、ビタミンB1を分解する作用があるため、多く摂取すると脚気を引き起こす。また、植物にとっては重要な栄養物質であるが、人間のような動物には代謝できない亜硝酸塩は体内で発ガン性物質に変化するという研究結果もある。

一方、大豆などに含まれるサポニン類は発ガンを抑制する効果があるという報告もあり、全ての灰汁成分が体に良くないというわけではない。ゴボウなどの不味成分といわれるタンニンに代表されるポリフェノール類(ゴボウを水にさらすと水が赤茶色に変色するのはタンニンの流失による。)も、近年は抗酸化作用が注目されている。また、野菜や山菜の灰汁も適度な量でありさえすれば食材の個性的な味覚の一部と判断されており、除去しすぎると特有の風味を失うことになり、灰汁抜きの適度な加減が必要となる。

[編集] 動物性食品の灰汁

肉や魚介類を煮た時の灰汁は、煮汁に溶け出した水溶性のタンパク質が熱変性によって凝固した、アミノ酸や脂質を含む泡状の浮遊物である。旨味成分や栄養学上有用な栄養素を含むが、料理の風味上強すぎると不快に感じる成分や、癖のある味・臭いを持つ様々な成分をも吸着しているため、見た目と臭い、舌触りがよくないなどの理由で取り除かれることが多い。 一般にフランス料理などのスープを作る場合には、臭いや濁りを嫌って灰汁は除去される。

しかしこうした食材の癖の強さは、料理の方法によっては却って食材の個性を強調する要素として良好な味覚をもたらす場合もあり、イタリア料理の一部などでは肉の灰汁をあえてソースに加えることもある。

[編集] 灰汁抜き

ワラビの灰汁抜き(ここに湯を注ぎ一昼夜置く)

灰汁抜き(あくぬき)とは調理法のひとつで、特に植物性の食材を水または湯などにつけて、苦み、えぐ味等の灰汁を抜くこと。そのままでは食べられない素材でも、灰汁抜きによっておいしく食べることができる。

灰汁抜きの対象になる代表的な食べ物としては、たけのこゼンマイワラビなどの山菜類、などがある。

植物の灰汁は水溶性であるものが多く、水にさらしておくだけでも溶出する。山菜などの灰汁抜きの際、長時間煮込むと有用な栄養素が灰汁とともに抜けすぎたりするなど弊害が多いので、ごく短時間熱湯で茹でて細胞を損傷させて灰汁が抜けやすくし、そのあと冷水で適度な量まで灰汁を抜くのが定法である。

さらによく灰汁を抜くためには、重曹や木灰を溶かした塩基性の水(これも「灰汁」という)にさらすとよい。これは、灰汁のうちの有機酸成分がアルカリと結合し塩として抜ける[要出典]ことによる。

シュウ酸は米ぬかで効果的に取ることができる。とぎ汁でも効果が高い。

調理以外にも、食器に塗りたての、水槽のコーキング剤など、直接口に入ると有害となるものを水や湯に長時間晒して無害にしてから使うことを「灰汁抜き」と呼ぶことがある。

[編集] 灰汁取り

動物性の肉類、魚介類を含む食品を茹でたり煮たりすると、水面に白色や茶色の不純物が泡状になり浮かび上がることがある。これは食品の水溶性タンパク質を主成分とする灰汁が水に溶け出した後、タンパク質の熱変性で凝固したものなので、お玉網杓子などで静かにすくい取り、捨てる。この作業のことを灰汁取りと呼ぶ。また、もっぱら灰汁取りに用いる網杓子のことを灰汁取りと呼ぶこともある。灰汁取り用の網杓子は、通常のものよりも目が細かくなっていることが多い。すくい取った灰汁はお玉などにへばりつくので、水を入れたボウルに潜らせるとよい。

フランス料理のコンソメを作るときには、泡立てた卵白を加え沸騰させる。卵白が不味(ふみ)成分や濁りの成分とともに固まり簡単にすくい取ることができる。これは肉類を煮たときの灰汁の発生原理を極端にしていることになる。つまり、肉類から煮汁に溶け出し、熱変性で凝固するときに様々な癖の強い不味成分や濁りの成分を吸着する水溶性タンパク質の供給を、泡立てた卵白を加えることで極端に多くし、除去したい成分の吸着率を大幅に高くしているのである。

灰汁取りは、調理の上でとても重要な作業であるが、同時にミネラルなどの旨味成分も含んでいることが多いので過度の灰汁取りは、栄養上も風味の上でも、あまり好ましくない。よって灰汁は、ある程度は残しておいた方が良い。多人数で鍋物を囲む際に動物性の灰汁を除去し過ぎてしまう者をアク代官と呼ぶことがある。

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