ゼンマイ

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ゼンマイ
W zenmai4041.jpg
ゼンマイ
分類
: 植物界 Plantae
: シダ植物門 Pteridophyta
: シダ綱 Pteridopsida
: ゼンマイ科 Osmundaceae
: ゼンマイ属 Osmunda
: ゼンマイ O. japonica
学名
Osmunda japonica Thunb.
和名
ゼンマイ

ゼンマイ、学名Osmunda japonica)は、ゼンマイ科多年生シダ植物

特徴[編集]

山野に生える。水気の多いところを好み、渓流のそばや水路の脇などによく出現する。かつてはサツキなどとともによく生えていたものである。

根茎は短く斜めから立つ。葉は高さ0.5~1メートル、新芽はきれいなうずまき状で、その表面は綿毛で覆われているが、成長すると全く毛はなくなる。葉は2回羽状複葉。シダとしては切れ込みが少ないタイプに属する。栄養葉では個々の小葉は幅広い楕円形っぽい三角形で先端は丸く、表面につやがなく、薄い質である。胞子葉が独立し、栄養葉より高くまっすぐに立って棒状の小葉が並ぶ。まれに栄養葉の一部に胞子嚢が出る場合があり、これをハゼンマイとして区別する説もあるが、偶発的なもののようである。

北海道から沖縄まで、国外では樺太、朝鮮、中国からヒマラヤまで分布する。

近似種[編集]

左:ゼンマイ(広い葉)
中:オオバヤシャゼンマイ(中間)
右:ヤシャゼンマイ(狭い葉)

アメリカには姉妹種のレガリスゼンマイ (O. regalis L.) がある。ゼンマイに似るが、胞子葉が独立しておらず、栄養葉の先端の羽片に胞子嚢がつく。

ゼンマイ属は世界に十数種、日本には5種があるが、そのうちでヤシャゼンマイ (O. lancea Thunb.) はゼンマイにごく近縁なシダで、外見は非常によく似ている。異なる点は葉が細いことで、特にゼンマイの小羽片の基部が丸く広がり、耳状になるのに対して、はるかに狭くなっている。また、植物体も一回り小さく、葉質はやや厚い。日本固有種で、北海道南部から九州東部にかけて分布する。生育環境ははっきりしていて、必ず渓流の脇の岩の上である。ゼンマイも水辺が好きであるが、渓流のすぐそばには出現せず、ヤシャゼンマイとは住み分けている。上記の特徴はいわゆる渓流植物の特徴そのものであり、そのような環境へ適応して種分化したものと考えられる。

なお、この両種が生育している場所では、両者の中間的な型のものが見られる場合がある。これは両者の雑種と考えられており、オオバヤシャゼンマイ O. ×intermedia (Honda) Sugimoto という。その形や大きさはほぼ中間であるが、やや変異が見られると言う。また、胞子葉は滅多に形成されず、できた場合も胞子は成熟しないらしい。

利用[編集]

食用[編集]

渦巻き状を呈する新芽

日本では山菜の代表格としてワラビと並び称される。若い葉は佃煮お浸し胡麻和え、煮物などにして食べる。かつての山里では棚田の石垣に一面に生えていた。春の芽生え前に草刈りをしておけば鎌で収穫できたという。

が平面上の螺旋形(渦巻き形)になる。その表面には綿毛が被さっている。スプラウトとして食用にするには根元を折り、表面の綿毛を取り去り、小葉をちぎって軸だけにし、ゆでてあく抜きし天日に干す。干しあがるまでに何度も手揉みをして柔らかくし、黒い縮緬状の状態で保存する。

また、大きな株ではハリガネのような黒っぽい根が塊状になる。これをオスマンダと称し、園芸用の培養材として用いる。

ぜんまい織り[編集]

東北地方では、ゼンマイの綿毛を使った織物もある。

ゼンマイの新芽を採取した後、食用の茎と綿毛を分離するが、その綿毛を集めておいてゴミを取り除き、天日でよく乾燥させておく。夏頃に90度程度で蒸し上げ、それを乾燥させ、真綿水鳥羽毛を混ぜ合わせて糸を紡ぐ。縦糸・横糸のどちらかに綿糸絹糸を用い、もう一方に前述の混合糸を使って布を織る。ゼンマイの布は保温性や防水性に富み、また防虫・防カビ効果もある。

ただ2013年現在では織り手があまりおらず、今後ぜんまい織りの布を入手するのは困難になると思われる。

日本語における文化的側面[編集]

新芽の渦巻から、平面の上の渦巻になっているものをぜんまいと称する。ぜんまいばねがその代表例で、これのことを省略してゼンマイと言うこともある。

シダとしては名が通っているので、何々ゼンマイというふうに、シダ類の普通名詞として使われる例もある。

ゼンマイの語源としては「せんまき(千巻き)」に由来するという説、銭巻であり、巻いた姿が古銭に似るからとの説がある。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]