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鉄道駅

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オランダズヴォレ

鉄道駅(てつどうえき)とは鉄道を構成する施設の一つで、列車への旅客の乗降、貨物の積降に使用する場所である。ここでは主に日本の鉄道駅について記す。

概要

日本では一般にと呼ぶが、停車場(ていしゃじょう、ていしゃば)などとも呼ばれる。駅という名前は宿駅制度から来ている。明治時代に日本で鉄道が開業する際に、英語の"station"からステンショとも呼ばれステン所と当て字をされることもあった。

路面電車軌道)の発着場所は、のほかに停留場(ていりゅうじょう)[脚 1]停留所(ていりゅうじょ)もしくは電停(でんてい)とも呼ばれる。呼称については地域差が大きい。たとえば東京都内の場合、都電ではかつては「電車の停留所」と呼ばれ、現在は「都電の停留所」と呼ばれている。一方で、東急世田谷線は鉄道線と同様に「駅」と呼ばれている。東京都内では昔も今も「電停」と呼ばれることはまれである。東京以外では「○○電停」の呼称が一般に通用する地域もある。

もっぱら貨物の取り扱いをする駅は貨物駅という。

構造・配置

鉄道駅は鉄道の路線において、数百メートルから数キロメートルの間隔で設けられる。駅の設置間隔は概ね人口密度と密接な関わりがあるが、地形にも左右されるため、隆起の多い地形に比べ平坦な地形のほうが設置できる土地が確保しやすく、駅間隔が狭い傾向にある。また設置間隔は列車の運行速度にも相関し、高速鉄道では数十キロメートルから数百キロメートルの間隔で設置される。

鉄道駅は駅舎プラットホーム線路などから構成される。鉄道駅の構造は、プラットホームの位置によって、地上駅高架駅地下駅に分類できる。しかし増築を重ねた駅舎や、新路線の開通などで駅の規模が拡張された駅舎では多くのホームを有し、この3つのうちのひとつに限定できないことも多い。また半地下式や盛土式のように、定義の仕方によって扱いが異なってくるものもある。

駅舎は本屋(ほんや・ほんおく)[脚 2]とも呼ばれ、典型的な旅客駅舎は、切符売り場、改札口、事務室、待合室、コンコース、売店、観光案内所などを備えた施設になっている。駅舎と本屋は同義語と捉えて問題ない駅がほとんどであるが、本屋とは、鉄道事業者が定めた駅の中心点を含めた構造物またはエリアを示すものである。

建物を大規模化し、駅機能以外の機能をふんだんに盛り込んだ駅舎のことを特に駅ビル(Station Building)と呼ぶ。駅ビルには、テナントとして百貨店をはじめとする各種の店舗、企業のオフィス、ホテルなどが入っていることが多い。

一方、小規模な駅にはプラットホームと線路だけで構成され、駅舎を持たないものもある。

地上駅

地上駅(地平駅舎)の例:東急池上線御嶽山駅
地上駅(橋上駅舎)の例:函館本線発寒駅

地平駅舎

地平駅舎は、一般的には駅舎およびホームが取り付けの道路と同じ、またはほとんど同じ高さにある駅のこと。片側ホームであればホーム高さ分を盛土して道路‐駅舎‐ホーム間が段差無しで直結できる。古くからの駅の構造であるが、線路を挟んだ向かい側(駅裏)からの利用は不便となり、また、都市を分断するなどの理由から後述の橋上駅舎高架駅に改築された駅も存在する。ホームと駅舎のどちらか一方、または両方が築堤などの上にあり、標高差が少しある場合もある。

利点としては、駅舎正面のホームに限ればバリアフリーであり、一線スルーを応用して駅舎正面に列車を着発させ利便性を高めることができる。また、建設費が安く、改修や改良の工事がたやすい。

行き止まりでない駅においてホームが二つ以上あったり、駅舎とホームの間に線路がある場合、乗客は線路を渡ることになるが、このとき改札内の跨線橋あるいは地下道による上下動が生じる。跨線橋も地下道も置かない駅では、構内踏切を通ることとなるため安全面でやや不安を抱え、構内踏切に遮断機が設置されている場合は、列車が発車するのを待たないと線路を渡ることができない。

橋上駅舎

橋上駅舎を持つ駅を橋上駅と呼ぶ。跨線橋と駅舎を一体化したような形で、ホームや線路の上空に改札など従来の駅舎にあった諸施設が設置され、外部やホームには階段やエスカレータエレベーターで接続される。例えば鉄道が市街地を東西方向に通過している場合、線路を挟んで改札を2つ作るより、橋上の1か所に切符売り場や改札を統合する方が管理もしやすく、人件費など運用コストも削減できる。また、鉄道で分断されていた南北の市街地を結ぶ自由通路を兼ねる場合もある。橋上駅舎化により新たに設置した階段部分、エレベータ部分がかつての駅舎部分より小さく収まれば、店舗や駅前広場など有効活用できるスペースが生まれる。地上ホームではなくて、掘割にプラットホームがある場合も橋上駅舎と呼ぶ。

地下駅舎

橋上駅舎とは逆に、駅舎のみを地下に設置した地下駅舎もある。効果としては橋上駅舎と似ている。橋上駅舎よりは上下する距離が短いが、構内が暗いなどの欠点もある。地上にはホームのほかに出入口が設けられるが、地下鉄の駅出入口のように小規模のものもあれば、一般の地上駅舎なみの立派な出入口を設けている例も見られる。

高架駅

高架駅の例:中央本線東小金井駅

高架駅とは、鉄道が高架化された場合など、ホームが高架部分にある駅のことである。この場合、駅舎も高架の部分に造られる場合と、階段を下りた高架下などの地上に造られる場合がある。

駅舎は高架下を利用して設置されていることが多い。高架線で開通した路線の駅や、地上を走る路線の高架化による連続立体交差事業に伴って、古くからの地上駅が高架駅に改築された場合が多い。広義では築堤も高架であり、築堤上にホームを持つものも高架駅と言える。

踏切が無いのが特徴で、高架駅の利点というより高架橋の利点であるが、高架下が有効に使用できる。駅舎を高架下に設置する場合は駅舎の用地取得が省け、また利用価値の高い駅周辺の土地を有効活用できる。

高架下に駅舎を設置する場合、乗客が駅両側から改札まで等しい距離で到達できる。ホーム間の連絡通路が高架下に設けられることも多く、この場合ホームまでの上下移動が、橋上駅舎を設置した地上駅の半分で済み便利である。

しかし問題として、高架の建設費がかさんだり、車椅子やベビーカーなどの交通弱者の場合には駅員や周りの人の手助けが必要になったりする点がある。近年はエレベーターなどの設置によりバリアフリー化を図っているので、後者については解消が進んでいる。

地下駅

地下駅の例:JR東西線北新地駅

地下駅とは、鉄道が地下化された場合など、ホームが地下部分にある駅のことである。この場合、駅舎も地下に造られる場合と、階段を昇った地上に造られる場合がある。

駅舎は地上にあることもあれば地下にあることもあり、また地下と地上にまたがって設置されることもある。地下鉄のような地下路線、あるいは地下化による連続立体交差化が行われた路線の駅の構造である。特殊な例では、トンネル内に設けられた駅もあり、中には海底に位置する駅もある(竜飛海底駅吉岡海底駅など)。広義には掘割の中にプラットホームがある場合も含む。

駅舎部分も地下に設ける場合、地上においては駅への出入口の取り付け部分を建設するだけで済むため、地上の日照を遮ることがない。また、地上の景観にあまり影響を与えない。

地下にある特性上、地上と駅の間の移動や乗り換えに時間がかかるため、移動の高速化やバリアフリーのためエレベーターエスカレーターを設ける必要がある。換気設備や排水設備も必要になることが多く、建設費が高く駅の拡張が困難であるが、市街地においては土地取得費を考えればむしろ安上がりになることもある。災害時に大惨事になるリスクが高い。このため防災設備にコストがかかる。また終日構内が暗く、昼間でも照明が必要だったり、音の反響により駅舎内で騒音が発生しやすい。

取り扱いによる分類

鉄道駅が扱うものは大きく分けて旅客貨物に大別できる。以下、旅客を扱う駅である旅客駅と、貨物を扱う貨物駅の2つに大別して解説する。

旅客駅

旅客駅の例:芸備線安芸矢口駅

旅客駅は旅客の乗降のために設けられた駅であり、旅客の乗降に適した設備を有している。複数の路線が乗り入れる主要な旅客駅(ターミナル駅)では、周辺の駅に比べ利用者が多くなる傾向にあり、そういった駅では駅員が配属され、特殊な切符の発券窓口などもある。それ以外の駅でも駅員は配属されることもあるが、国際的に見た場合、駅業務が無人化されている場合が多く、発券機や自動改札といった機械設備が人間に代わって駅業務を果たしているところもある。

設備

旅客駅は主に駅舎、待合室プラットホーム線路跨線橋などから構成されているが、駅によっては乗車設備のみであることもあるため一概に言うことは難しい。基本的には駅舎の内部には発券設備、待合施設、改札口が備え付けられているが、小規模な駅ではいずれも簡略化されることが多い。なお、信用乗車方式を採用する場合は規模に関わらず最小限の設備に抑えられている。

旅客を取り扱う駅では、一般には乗降のための設備を持っており、乗降するための台をプラットホーム(ホーム)と呼ぶ。列車の長さよりも長く設けることが多いが、乗降口に合わせてその都度階段などを置いて対応している場合もある。

ホームに並行する形でホームの片側または両側に線路が敷かれる。複数の線路を有する駅では、複数の乗り場に「○番線」「○番ホーム」「○番のりば」「プラットフォーム○」のように番号を付けて旅客の便を図っている。そのほか、運行時刻を掲載した時刻表が備え付けられていることがある。

ホームへ入場する際に改札を通る場合がある。無人駅や、路線によっては改札が省略され、列車への乗車後に運賃を支払う場合もある。一般に改札を通る場合、乗車する列車の区間の相当する運賃や、それに相当する乗車券が必要になる。乗車券は駅の中の窓口や、券売機等を通じて購入することが多い。また、乗車しなくてもホームに立ち入るために入場券が必要になる場合もある。

複数の乗り場がある場合は線路を渡るか、連絡通路を通り別のホームへ移動する。

規模の大きい駅になると、駅舎もそれに伴って大きくなる。大型化された駅舎には、駅ビルと呼ばれ、商業施設オフィスホテルなどが入居する例もある。

構内設備

鉄道駅の構内には特有の設備が存在することがある。鉄道変電所や信号機、また多数の線路を分岐するための分岐器が設置される。

運営

駅には駅員が常駐していることが望ましいが、利用者の少ない駅では駅員が配属されない傾向がある。このような無人化された駅は無人駅と呼ばれ、駅員がやるべき仕事を機械化していたり、駅業務そのものを行わなかったりする。また反対に駅員がいる駅を有人駅と呼ぶ。

駅舎や周辺の管理は、有人駅であれば基本的に駅員が行うことになるが、無人駅では管理している鉄道会社が定期的に行うこともあれば、駅の周辺に住む住民によって管理されることもある。

臨時駅

常時乗客の乗降に使用される一般的な常設駅の他に、特定の季節または日に限って使用される臨時駅(りんじえき)がある。

貨物駅

貨物駅の例:白新線新潟貨物ターミナル駅

貨物駅は貨物列車に貨物を積み降ろすることを目的とした駅である。貨物は列車の走行の際に支障が出ないよう、大きさが統一されたコンテナを用いる。標準軌以上の軸幅を持つ軌道を走る貨物列車は国際規格のコンテナが用いられることが多く、国際的に見ても大部分がこれに相当するが、狭軌の軌道や、カーブ区間の多い軌道では独自の大きさのコンテナが用いられることもある。

コンテナは直方体のものが一般的であるが、液体の化石燃料や化学薬品などを輸送する場合はタンクを有するコンテナとなり、丸みを帯びた形となっている。

工場や燃料基地が駅となっておりへ引き込み線を通じて直接乗り入れる列車は、コンテナと貨車が一体となったものが用いられる場合がある。その場合は貨物のみを駅で積み降ろしするが、そうでない場合は、フォークリフトクレーンを用いてコンテナを列車に直接載せることが多く、その為の設備を駅は有する。

鉄道駅は線路の高さによって、地上駅高架駅地下駅と言った区別ができるが、貨物駅の場合は地上駅が多い。

また、船舶との連絡に重点を置いた貨物駅では、埠頭へ直接乗り入れることもある。

新設・廃止

駅は適宜必要に応じて新駅として新設されたり、既存駅を廃止して廃駅にされたり、信号場に変更されたりするが、鉄道路線の新設や廃止に伴って行われることが多い。新設される場合、現代では環境アセスメントが行われることがある。新設費用は、その路線を営む鉄道事業会社が負担する場合と、地元自治体あるいは沿線企業(ニュータウン開発業者など)が負担する場合がある。

単独で廃止される場合は、駅の維持費が収入を大きく上回り維持が不可能になったときや、物理的な問題で廃止ぜざるを得なくなることが多い。鉄道駅を廃止した後は、都市部であれば再開発が行われることが多いが、都市部でない場合はそのまま放置されることも少なくない。また建造物が撤去されて更地とされることもある。駅はプラットホームを含め、比較的広大な土地を有することが多く、ターミナル駅では顕著である。そのためまとまった形での再開発が行われることもある。

都市の中の鉄道駅

都市においては、鉄道駅の周辺は人が容易に集まることができるため、大規模なターミナル駅などの鉄道駅の周辺は特に商業が活発化し、地価が高騰する傾向にある。またそうでなくても、ターミナル駅から近い都市部の駅の周辺では大規模な住宅が建設されやすく、都市の中の位置づけとしては大きな役目を担っている。多くの都市の場合、ターミナル駅が都市の中心部として発達している。都市計画交通計画において鉄道は大きな存在を担っている。

これに対して、地方においては、市町村内に駅がある場合でも、駅が町の中核とはなっていない例も多い。

鉄道駅の存在は鉄道への乗降を行うためだけに留まらず、駅前にバス停を置くことでバスへの乗り継ぎが行えるようになっていたり、タクシーとも連絡できるようになっていたりと交通の節点としての役割を担うことができる。

また郊外の駅では、都市部への自動車の流入を減らすように鉄道駅を活用することが20世紀後半から行われ始めるようになった。パークアンドライドという考えはこれの典型的な例であり、郊外の駅の周辺に駐車場を用意し、自動車と鉄道の乗り換えをスムーズにするというものである。

『都市の価値を紡ぐ50のトピックス(日建設計総合研究所・都市のバリューを考える会)Topic19 鉄道駅の利用者に対するわかりやすさ』[1]においては、ケヴィン・リンチが著書『都市のイメージ』で提唱したイメージアビリティ5要素「パス」「エッジ」「ディストリクト」「ノード」「ランドマーク」を用いて、日本の都市における鉄道駅の多くは今やこれら5要素すべてを併せ持つ複雑な存在であると論じている。この論に拠ると、例えば上述の乗り継ぎ点・パークアンドライドについては鉄道駅の「ノード(人々が入ることのできる点、接合点)」要素が強く表れたものと見ることができる。

脚注・出典

脚注

  1. ^ 日本での法令上の呼称。索道トロリーバス(無軌条電車)においても停留場である。
  2. ^ 明治期にBooking Officeを直訳したものである

出典

  1. ^ “Topic19 鉄道駅の利用者に対するわかりやすさ”. 都市のバリューを考える会 都市の価値を紡ぐ50のトピックス(日建設計総合研究所). (2010年2月15日). http://www.nikken-ri.com/valueup/column19.html 2012年4月9日閲覧。 

関連項目

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