襟
襟・衿(えり)とは、衣服において、首を取り囲む所につけられている部分のことである。英語のcollarからカラーともいう。
概要
襟は衣服の首回りに当たる部分ではあるが、その服飾が発達した地域で様々な方向性が模索され、日常的に着る衣服では、地域の気候風土に即した発展を見せている。
寒い地域では防寒のために毛皮などを使って衣服内の暖かい空気が逃げないようにするが、逆に暑い地域では緩やかな襟元から汗などにより湿度の上がった空気を逃がすと共に外気を取り入れるよう大きく開いた形状をする。しかし太陽光の強烈な砂漠地帯などでは太陽光を遮断するためにそれほど開いた構造をしていないなどである。
寒暖など気候の変化が激しい地域では、この襟部分を工夫して寒ければ立てて首の防寒とし、普段は倒してつかう様式が見られ、ヨーロッパ地域ではこういった使い分けの可能な襟構造を持つ着衣が一般的で、後に欧米の文化が導入された広い地域で、この襟構造を持つ様式が一般化している。ただコートなど一部の衣服を除くと、21世紀現在に於いて襟を立てて着ることは一般的ではなく、むしろ装飾的にそういった構造が引き継がれている面がある。
機能追加の延長でフード(頭巾)と一体化しているものや、その頭巾を収納するための袋状の構造を持つ服(→パーカー)もあるなど、近代以降にも様々に変化がみられる。
襟と装飾
襟回りは会話の際に相手の顔に次いで良く目に入る場所である。このため衣服にも装飾や意匠が凝らされる場合もある。
装飾としての襟では、より飾り立てるための布地をふんだんに使用したものも歴史上に散見され、逆に質素さや堅実さを演出するために簡素化したりする。また襟元は上着の上からでもシャツ部分が覗くところでもあり、ここを装飾するファッション形態も見られ、こと欧米化した地域ではネクタイなどの様式化した専用の衣服も見られる。
ドレスなど装飾的な着衣の中には、女性向けなどで首回りの布を一切廃して肩から胸元までもが大きく開かれている服装もある。これは女性の胸元が男性にとって「美」の審査基準に関与する・また女性もそういう価値観があることを理解しているためであろう。
やや装飾とは趣を異にするが、軍服では襟に階級章などを添付する場合があり、それらは襟章と呼ばれる。その一方で議員記章(いわゆる「議員バッジ」)など社会的役職を示すバッジ(ないしメダル)を飾る場合もある。これもやはり顔に次いで見やすい位置という理由があると察せられる。
種類
- ウィンザー・カラー Windsor collar(ワイド・スプレッド・カラー wide spread collar)
- アルスターカラー
- カラーとラペルの幅がほぼ同等か、カラーの方が若干広い背広型の襟。
- ウィングカラー
- ワイドカラー
- ボタンダウン・カラー
- レギュラーカラー
- テーラードカラー
- 背広型の襟。
- 立襟(スタンド・カラー stand collar)
- マオカラー
- 学生服やマオカラースーツ、国民服に使われる立襟の仲間。
- セーラーカラー(ジョンベラ)
- セーラー服の襟
- ショールカラー(へちま襟)
- タキシードに使われるへちま型の襟。
- 上襟(共襟、掛け襟)
- 襟、カラー、ここの項目のこと。
- 下襟
- 台襟
- ワイシャツやポロシャツの第一ボタンに縫い付けられている固い部分。襟が崩れにくくボタンがずれないように出来ている。
- 開襟
- アロハシャツに見られる開いた襟。
- 白衿(白べり)
- 慶事に用いる、ウェストコートに付ける白い衿。白や灰のウェストコートの代用として用いる。
- 白襟
- 白襟黒紋付の略称。
- 半衿
- 襦袢に付ける、付け替えの衿。
- 広衿(ひろえり)
- 女性の長着に用いる。
- 撥衿衿(ばちえり)
- 女性の長襦袢に用いる。
- 棒衿(ぼうえり)
- 浴衣や男性の和服や長着に用いる。
- ファーマーズ・カラー
- 襟カラー
- 詰襟
- 折襟(ギリーカラー)
- 襞襟(ひだえり)16-7世紀に流行・南蛮貿易に伴い日本にも伝わった。
- 丸首襟(クルー・ネック crew neck / フィッシャーマン・ネック)
- ボートネック
- ゆるやかな曲線で横に広くくられた、浅い船底形の衿
- ヘンリー・ネック (henley neck) 前開きでボタン留めのクルー・ネック
- オックスフォード州のヘンリーで行われたボートレースの選手の着用した襟型が起源。
- キーネック
- Uネック
- Vネック
- ハイネック
- とっくり襟(タートルネック turtl neck)
- トンジョン(半襟)