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1985年のワールドシリーズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1985年ワールドシリーズ

シリーズ優勝記念にホワイトハウスを表敬訪問し、当時のアメリカ合衆国大統領ロナルド・レーガンジャンパーバットを贈呈するロイヤルズの選手たち
チーム 勝数
カンザスシティ・ロイヤルズAL 4
セントルイス・カージナルスNL 3
シリーズ情報
試合日程 10月19日–27日
観客動員 7試合合計:32万7494人
1試合平均:04万6785人
MVP ブレット・セイバーヘイゲン(KC)
ALCS KC 4–3 TOR
NLCS STL 4–2 LAD
殿堂表彰者 ジョン・シャーホルツ(KC GM)
ジョージ・ブレット(KC内野手)
ホワイティ・ハーゾグ(STL監督)
レッド・ショーエンディーンスト(STLコーチ[注 1]
オジー・スミス(STL内野手)
チーム情報
カンザスシティ・ロイヤルズ(KC)
シリーズ出場 5年ぶり02回目
GM ジョン・シャーホルツ
監督 ディック・ハウザー
シーズン成績 091勝71敗・勝率.562
AL西地区優勝
分配金 選手1人あたり7万6341.71ドル[1]

セントルイス・カージナルス(STL)
シリーズ出場 3年ぶり14回目
GM ダル・マックスビル
監督 ホワイティ・ハーゾグ
シーズン成績 101勝61敗・勝率.623
NL東地区優勝
分配金 選手1人あたり5万4921.76ドル[1]
全米テレビ中継
放送局 ABC
実況 アル・マイケルズ
解説 ジム・パーマー
ティム・マッカーバー
平均視聴率 25.3%(前年比2.4ポイント上昇)[2]
ワールドシリーズ
 < 1984 1986 > 

1985年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)優勝決定戦の第82回ワールドシリーズ(だい82かいワールドシリーズ、82nd World Series)は、10月19日から27日にかけて計7試合が開催された。その結果、カンザスシティ・ロイヤルズアメリカンリーグ)がセントルイス・カージナルスナショナルリーグ)を4勝3敗で下し、球団創設17年目で初の優勝を果たした。

両チームの対戦はシリーズ史上初めて。ミズーリ州を本拠地とする球団どうしの対戦となったため、両本拠地都市を結ぶ州間高速道路70号線(Interstate 70)になぞらえた "I-70シリーズ" や、州の愛称「疑い深い州」(The Show-Me State)を冠した "ショー・ミー・シリーズ" という呼び名がつけられた[3]。カージナルス優勝決定まであと1イニングという第6戦の9回裏、ロイヤルズ先頭打者ホルヘ・オータの一ゴロを一塁塁審ドン・デンキンガーがセーフと誤審し、そこからロイヤルズが逆転優勝を果たしたことで物議を醸したシリーズでもある[4]シリーズMVPには、最終第7戦で完封勝利を挙げるなど、2試合18.0イニングで2勝0敗・防御率0.50という成績を残したロイヤルズのブレット・セイバーヘイゲンが選出された。

ワールドシリーズでは1976年から指名打者(DH)制度が導入され、今シリーズまでの10年間は、偶数年は全試合で採用、奇数年は全試合で不採用とされていた。翌1986年からは規則が変更され、年度にかかわらずアメリカンリーグ球団の本拠地では採用、ナショナルリーグ球団の本拠地では不採用となった[5]。この方式が現在も続いているため、全試合DHなしで開催されたワールドシリーズは現時点では今シリーズが最後である。

試合結果

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1985年のワールドシリーズは10月19日に開幕し、途中に移動日を挟んで9日間で7試合が行われた。日程・結果は以下の通り。

日付 試合 ビジター球団(先攻) スコア ホーム球団(後攻) 開催球場
10月19日(土) 第1戦 セントルイス・カージナルス 3-1 カンザスシティ・ロイヤルズ ロイヤルズ・スタジアム
10月20日(日) 第2戦 セントルイス・カージナルス 4-2 カンザスシティ・ロイヤルズ
10月21日(月) 移動日
10月22日(火) 第3戦 カンザスシティ・ロイヤルズ 6-1 セントルイス・カージナルス ブッシュ・スタジアム
10月23日(水) 第4戦 カンザスシティ・ロイヤルズ 0-3 セントルイス・カージナルス
10月24日(木) 第5戦 カンザスシティ・ロイヤルズ 6-1 セントルイス・カージナルス
10月25日(金) 移動日
10月26日(土) 第6戦 セントルイス・カージナルス 1-2x カンザスシティ・ロイヤルズ ロイヤルズ・スタジアム
10月27日(日) 第7戦 セントルイス・カージナルス 0-11 カンザスシティ・ロイヤルズ
優勝:カンザスシティ・ロイヤルズ(4勝3敗 / 球団創設17年目で初)

第1戦 10月19日

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  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
セントルイス・カージナルス 0 0 1 1 0 0 0 0 1 3 7 1
カンザスシティ・ロイヤルズ 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 8 0
  1. 勝利ジョン・テューダー(1勝)  
  2. セーブトッド・ウォーレル(1S)  
  3. 敗戦ダニー・ジャクソン(1敗)  
  4. 審判
    [球審]ドン・デンキンガー(AL)
    [塁審]一塁: ビル・ウィリアムズ(NL)、二塁: ジム・マッキーン(AL)、三塁: ボブ・エンゲル(NL)
    [外審]左翼: ジョン・シュロック(AL)、右翼: ジム・クイック(NL)
  5. 試合開始時刻: 中部夏時間UTC-5)午後7時30分 試合時間: 2時間48分 観客: 4万1650人 気温: 50°F(10°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
セントルイス・カージナルス カンザスシティ・ロイヤルズ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 W・マギー 1 L・スミス
2 O・スミス 2 W・ウィルソン
3 T・ハー 3 G・ブレット
4 J・クラーク 4 F・ホワイト
5 T・ランドラム 5 J・サンドバーグ
6 C・セデーニョ 6 D・モトリー
7 T・ペンドルトン 7 S・バルボニ
8 D・ポーター 8 B・ビアンカラーナ
9 J・テューダー 9 D・ジャクソン
先発投手 投球 先発投手 投球
J・テューダー D・ジャクソン

第2戦 10月20日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
9回表二死満塁、テリー・ペンドルトンが走者一掃の二塁打を放ちカージナルスが逆転(1分14秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
セントルイス・カージナルス 0 0 0 0 0 0 0 0 4 4 6 0
カンザスシティ・ロイヤルズ 0 0 0 2 0 0 0 0 0 2 9 0
  1. 勝利ケン・デイリー(1勝)  
  2. セーブジェフ・ラハティ(1S)  
  3. 敗戦チャーリー・リーブラント(1敗)  
  4. 審判
    [球審]ビル・ウィリアムズ(NL)
    [塁審]一塁: ジム・マッキーン(AL)、二塁: ボブ・エンゲル(NL)、三塁: ジョン・シュロック(AL)
    [外審]左翼: ジム・クイック(NL)、右翼: ドン・デンキンガー(AL)
  5. 試合開始時刻: 中部夏時間UTC-5)午後7時35分 試合時間: 2時間44分 観客: 4万1656人 気温: 60°F(15.6°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
セントルイス・カージナルス カンザスシティ・ロイヤルズ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 W・マギー 1 L・スミス
2 O・スミス 2 W・ウィルソン
3 T・ハー 3 G・ブレット
4 J・クラーク 4 F・ホワイト
5 T・ランドラム 5 P・シェリダン
6 C・セデーニョ 6 J・サンドバーグ
7 T・ペンドルトン 7 S・バルボニ
8 D・ポーター 8 B・ビアンカラーナ
9 D・コックス 9 C・リーブラント
先発投手 投球 先発投手 投球
D・コックス C・リーブラント

第3戦 10月22日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
5回表、フランク・ホワイトの2点本塁打でロイヤルズがリードを4点に広げる(43秒)
9回裏、ブレット・セイバーヘイゲンがテリー・ペンドルトンを左直に打ち取り試合終了、ロイヤルズが今シリーズ初勝利(37秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
カンザスシティ・ロイヤルズ 0 0 0 2 2 0 2 0 0 6 11 0
セントルイス・カージナルス 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 6 0
  1. 勝利ブレット・セイバーヘイゲン(1勝)  
  2. 敗戦ウォーキーン・アンドゥハー(1敗)  
  3. 本塁打
    KC:フランク・ホワイト1号2ラン
  4. 審判
    [球審]ジム・マッキーン(AL)
    [塁審]一塁: ボブ・エンゲル(NL)、二塁: ジョン・シュロック(AL)、三塁: ジム・クイック(NL)
    [外審]左翼: ドン・デンキンガー(AL)、右翼: ビル・ウィリアムズ(NL)
  5. 試合開始時刻: 中部夏時間UTC-5)午後7時35分 試合時間: 2時間59分 観客: 5万3634人 気温: 65°F(18.3°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
カンザスシティ・ロイヤルズ セントルイス・カージナルス
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 L・スミス 1 W・マギー
2 W・ウィルソン 2 O・スミス
3 G・ブレット 3 T・ハー
4 F・ホワイト 4 J・クラーク
5 P・シェリダン 5 A・バンスライク
6 J・サンドバーグ 6 T・ペンドルトン
7 S・バルボニ 7 D・ポーター
8 B・ビアンカラーナ 8 T・ランドラム
9 B・セイバーヘイゲン 9 J・アンドゥハー
先発投手 投球 先発投手 投球
B・セイバーヘイゲン J・アンドゥハー

第4戦 10月23日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
9回表、ジョン・テューダーがダリル・モトリーを中飛に打ち取り試合終了、カージナルスが優勝に王手をかける(58秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
カンザスシティ・ロイヤルズ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 1
セントルイス・カージナルス 0 1 1 0 1 0 0 0 X 3 6 0
  1. 勝利ジョン・テューダー(2勝)  
  2. 敗戦バド・ブラック(1敗)  
  3. 本塁打
    STL:ティト・ランドラム1号ソロ、ウィリー・マギー1号ソロ
  4. 審判
    [球審]ボブ・エンゲル(NL)
    [塁審]一塁: ジョン・シュロック(AL)、二塁: ジム・クイック(NL)、三塁: ドン・デンキンガー(AL)
    [外審]左翼: ビル・ウィリアムズ(NL)、右翼: ジム・マッキーン(AL)
  5. 試合開始時刻: 中部夏時間UTC-5)午後7時15分 試合時間: 2時間19分 観客: 5万3634人 気温: 73°F(22.8°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
カンザスシティ・ロイヤルズ セントルイス・カージナルス
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 L・スミス 1 W・マギー
2 W・ウィルソン 2 O・スミス
3 G・ブレット 3 T・ハー
4 F・ホワイト 4 J・クラーク
5 J・サンドバーグ 5 T・ランドラム
6 D・モトリー 6 C・セデーニョ
7 S・バルボニ 7 T・ペンドルトン
8 B・ビアンカラーナ 8 T・ニエト
9 B・ブラック 9 J・テューダー
先発投手 投球 先発投手 投球
B・ブラック J・テューダー

第5戦 10月24日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
7回裏、ロイヤルズのダニー・ジャクソンが先頭打者から3者連続3球三振の "イマキュレイト・イニング" を達成(1分6秒)
9回裏、ジャクソンがトム・ニエトを遊ゴロに打ち取り試合終了、ロイヤルズが踏みとどまる(38秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
カンザスシティ・ロイヤルズ 1 3 0 0 0 0 0 1 1 6 11 2
セントルイス・カージナルス 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 5 1
  1. 勝利ダニー・ジャクソン(1勝1敗)  
  2. 敗戦ボブ・フォーシュ(1敗)  
  3. 審判
    [球審]ジョン・シュロック(AL)
    [塁審]一塁: ジム・クイック(NL)、二塁: ドン・デンキンガー(AL)、三塁: ビル・ウィリアムズ(NL)
    [外審]左翼: ジム・マッキーン(AL)、右翼: ボブ・エンゲル(NL)
  4. 試合開始時刻: 中部夏時間UTC-5)午後7時15分 試合時間: 2時間52分 観客: 5万3634人 気温: 70°F(21.1°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
カンザスシティ・ロイヤルズ セントルイス・カージナルス
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 L・スミス 1 W・マギー
2 W・ウィルソン 2 O・スミス
3 G・ブレット 3 T・ハー
4 F・ホワイト 4 J・クラーク
5 P・シェリダン 5 T・ランドラム
6 S・バルボニ 6 C・セデーニョ
7 J・サンドバーグ 7 T・ペンドルトン
8 B・ビアンカラーナ 8 T・ニエト
9 D・ジャクソン 9 B・フォーシュ
先発投手 投球 先発投手 投球
D・ジャクソン B・フォーシュ

第6戦 10月26日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
9回裏、ロイヤルズ先頭打者ホルヘ・オータの一ゴロを一塁塁審ドン・デンキンガーがセーフと判定。カージナルスが抗議するも判定は覆らず(1分16秒)
その後ロイヤルズは一死満塁とし、代打デーン・オージの2点適時打で逆転サヨナラ勝ち(1分7秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
セントルイス・カージナルス 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 5 0
カンザスシティ・ロイヤルズ 0 0 0 0 0 0 0 0 2x 2 10 0
  1. 勝利ダン・クイゼンベリー(1勝)  
  2. 敗戦トッド・ウォーレル(1敗1S)  
  3. 審判
    [球審]ジム・クイック(NL)
    [塁審]一塁: ドン・デンキンガー(AL)、二塁: ビル・ウィリアムズ(NL)、三塁: ジム・マッキーン(AL)
    [外審]左翼: ボブ・エンゲル(NL)、右翼: ジョン・シュロック(AL)
  4. 試合開始時刻: 中部夏時間UTC-5)午後7時30分 試合時間: 2時間47分 観客: 4万1628人 気温: 68°F(20°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
セントルイス・カージナルス カンザスシティ・ロイヤルズ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 O・スミス 1 L・スミス
2 W・マギー 2 W・ウィルソン
3 T・ハー 3 G・ブレット
4 J・クラーク 4 F・ホワイト
5 T・ランドラム 5 P・シェリダン
6 T・ペンドルトン 6 S・バルボニ
7 C・セデーニョ 7 J・サンドバーグ
8 D・ポーター 8 B・ビアンカラーナ
9 D・コックス 9 C・リーブラント
先発投手 投球 先発投手 投球
D・コックス C・リーブラント

第6戦の先発投手は、ロイヤルズがチャーリー・リーブラント、カージナルスがダニー・コックス。この試合では両先発による投手戦が展開され、7回終了時点で両チームとも無得点のまま。8回表、カージナルスは二死一・二塁の好機で9番コックスに打順がまわったため、代打ブライアン・ハーパーを起用する。このハーパーがリーブラントから中前打を放ち、二塁走者テリー・ペンドルトンが生還してカージナルスが1点を先制した。その裏、2番手ケン・デイリーが無失点に抑え、カージナルスは3年ぶりの優勝まで残り1イニングとした。

9回裏、カージナルスは3番手トッド・ウォーレルが登板する。先頭打者ホルヘ・オータ打球は一塁方向へのゴロとなり、一塁手ジャック・クラークベースカバーのウォーレルへトスで送球した。アウトと思われたが、一塁塁審ドン・デンキンガーはセーフの判定を下した。カージナルスが抗議したものの、判定は覆らず。テレビ中継ではリプレイが流され、解説のジム・パーマーは「アウトに見えますね」、実況のアル・マイケルズも「アウトであることに疑いの余地はないように思えます」と話していた[6]。その後ロイヤルズは一死満塁の好機を作り、9番・投手ダン・クイゼンベリーの打順で代打にデーン・オージを起用した。オージはウォーレルの2球目を右前へ運び、三塁走者オニクス・コンセプシオンと二塁走者ジム・サンドバーグが相次いで生還、ロイヤルズが土壇場での逆転サヨナラ勝利によりシリーズの行方を最終第7戦へもつれ込ませた。デンキンガーは判定に自信を持っており、試合終了後にコミッショナーピーター・ユベロスに「正しかったよな?」と確認したが、ユベロスはただ首を横に振って否定したという[7]

2014年、MLBでは塁上のセーフ/アウトの判定にビデオ判定が行われるようになった。そしてロイヤルズが、この1985年以来29年ぶりのワールドシリーズ進出を果たした。デンキンガーは「ビデオ判定の導入には大賛成。あのときビデオ判定があったら、自分の名前なんて誰にも知られることはなかったんじゃないか」と話した[6]。また、ウォーレルの捕球を音で確認しようとしたが球場の大歓声にかき消されて聴こえなかったといい、判定を下したときの自身の位置取りについて「近すぎた。もうちょっと離れたところから足と捕球を一目に見ていれば、正しい判定を下す可能性が高くなってたと思う」とも振り返っている[7]

第7戦 10月27日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
2回裏、ダリル・モトリーの2点本塁打でロイヤルズが先制。特大のファウルのあとバットを交換して打ち直す(2分18秒)
ロイヤルズ先発投手ブレット・セイバーヘイゲンが、9イニングをひとりで投げ切りカージナルス打線を完封。最後はアンディ・バンスライクを右飛に打ち取り、ロイヤルズの優勝が決定(2分15秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
セントルイス・カージナルス 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0
カンザスシティ・ロイヤルズ 0 2 3 0 6 0 0 0 X 11 14 0
  1. 勝利ブレット・セイバーヘイゲン(2勝)  
  2. 敗戦ジョン・テューダー(2勝1敗)  
  3. 本塁打
    KC:ダリル・モトリー1号2ラン
  4. 審判
    [球審]ドン・デンキンガー(AL)
    [塁審]一塁: ビル・ウィリアムズ(NL)、二塁: ジム・マッキーン(AL)、三塁: ボブ・エンゲル(NL)
    [外審]左翼: ジョン・シュロック(AL)、右翼: ジム・クイック(NL)
  5. 試合開始時刻: 中部夏時間UTC-5)午後7時25分 試合時間: 2時間46分 観客: 4万1658人 気温: 62°F(16.7°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
セントルイス・カージナルス カンザスシティ・ロイヤルズ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 O・スミス 1 L・スミス
2 W・マギー 2 W・ウィルソン
3 T・ハー 3 G・ブレット
4 J・クラーク 4 F・ホワイト
5 A・バンスライク 5 J・サンドバーグ
6 T・ペンドルトン 6 S・バルボニ
7 T・ランドラム 7 D・モトリー
8 D・ポーター 8 B・ビアンカラーナ
9 J・テューダー 9 B・セイバーヘイゲン
先発投手 投球 先発投手 投球
J・テューダー B・セイバーヘイゲン

最終第7戦の先発投手は、ロイヤルズがブレット・セイバーヘイゲン、カージナルスがジョン・テューダー。このふたりはともに、この年のレギュラーシーズンでは20勝を挙げている。7戦4勝制のワールドシリーズが3勝3敗のタイにもつれ、最終戦でその年の20勝投手どうしが先発として投げ合うのは、1962年以来23年ぶり史上5度目である[8]。ワールドシリーズでは審判が時計回りにローテーションするため、ドン・デンキンガーが前日の一塁塁審からこの日は球審に移った。試合は2回裏、ダリル・モトリーがテューダーから2点本塁打を放ち、ロイヤルズが先制する。3回裏にも、一死満塁からジム・サンドバーグが押し出し四球を選び、3点目を挙げてテューダーを降板に追い込む。さらに代わって登板したビル・キャンベルからも、スティーブ・バルボニの左前打で2点を奪い5-0とした。ロイヤルズが試合を優位に進める一方、カージナルス打線はセイバーヘイゲンの前に沈黙し、最初の6イニングでは二塁を踏むこともできなかった。

5回裏にもロイヤルズが6点を加え、試合は11-0となる。このイニング途中、カージナルスの監督ホワイティ・ハーゾグと5番手投手ウォーキーン・アンドゥハーがデンキンガーから退場処分を受けた。二死一・二塁の場面でアンドゥハーがサンドバーグに対し内角球を投じ、これをデンキンガーがボールと判定するとアンドゥハーは激昂、これを受けてまずハーゾグがダグアウトから出てきてデンキンガーに抗議し、退場させられた。このときハーゾグが前夜のデンキンガーの誤審を「もしあれがなければこの試合は必要なかった」と蒸し返したため、デンキンガーは「あんたのチームの打者がもうちょっと打ってりゃこの試合は必要なかった」と言い返したという[注 2][9]。再開後、次の球をアンドゥハーは再び内角に投げ、これをデンキンガーも再びボールと判定し、アンドゥハーがリアクションをとったところでデンキンガーが退場処分を下した。ワールドシリーズでの退場処分は、1976年ニューヨーク・ヤンキース監督のビリー・マーチンが受けて以来9年ぶりである[10]

試合はそのまま11-0で終了し、ロイヤルズが優勝を決めた。シリーズ終了後、アイオワ州にあるデンキンガーの自宅に脅迫や抗議の手紙が寄せられ、警察が警備にあたる騒ぎとなった[7]。この事態に対し、コミッショナーピーター・ユベロスは「野球には最初から人間的要素が組み込まれている」と誤審を暗に認めつつも、カージナルスによる誤審場面ポスターの販売計画を差し止めるなどして、デンキンガーをかばった[4]。しかしその誤審は人々の印象に強く残り、時が経つにつれて「誤審は第7戦の9回裏二死で起きた」「デンキンガーはこの誤審によって引退させられた」など、事実とは異なる話が広まっていった[注 3][6]

脚注

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注釈

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  1. ^ 殿堂入りは指導者としてではなく、二塁手としての功績が評価されてのもの。
  2. ^ 今シリーズ7試合でカージナルスは、チーム打率.185・OPS.516に終わった。総得点は13点で、1試合平均では2点を下回る。
  3. ^ 実際にはデンキンガーは、その後も1998年シーズンを最後に引退するまで、13年にわたって審判生活を続けた。ワールドシリーズにも、1991年に再び出場している。

出典

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  1. ^ a b "World Series Gate Receipts," Baseball Almanac. 2019年8月31日閲覧。
  2. ^ "World Series Television Ratings," Baseball Almanac. 2019年8月31日閲覧。
  3. ^ Jim Caple, "Playoff pros, cons and rootability," ESPN.com, September 28, 2014. 2019年8月31日閲覧。
  4. ^ a b 伊東一雄 / 馬立勝 『野球は言葉のスポーツ アメリカ人と野球』 中央公論社中公新書〉、1991年、ISBN 4-12-101019-1、41-44頁。
  5. ^ John Cronin, "The Historical Evolution of the Designated Hitter Rule," Society for American Baseball Research, 2016. 2019年8月31日閲覧。
  6. ^ a b c Doug Miller, "Denkinger cool with reminders of mistaken call in '85 Series / Umpire, players reflect on infamous play as expanded replay makes its Fall Classic debut," MLB.com, October 20, 2014. 2019年8月31日閲覧。
  7. ^ a b c David Tanklefsky, "Throwback Thursday: Don Denkinger Blows "The Call"," VICE, October 22, 2015. 2019年8月31日閲覧。
  8. ^ Rob Neyer, "Rare show: 20-game winners in Game 7," ESPN.com, November 4, 2001. 2020年8月9日閲覧。
  9. ^ Sean Gregory, "The Ump Who Blew the '85 World Series Wants a Rematch," Time, October 14, 2014. 2019年8月31日閲覧。
  10. ^ "World Series Ejections," Baseball Almanac. 2019年8月31日閲覧。

外部リンク

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