1968年のワールドシリーズ

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1968年ワールドシリーズ
チーム 勝数
デトロイト・タイガースAL 4
セントルイス・カージナルスNL 3
シリーズ情報
試合日程 10月2日–10日
観客動員 7試合合計:37万9670人
1試合平均:05万4239人
MVP ミッキー・ロリッチ(DET)
殿堂表彰者 アル・ケーライン(DET外野手)
エディ・マシューズ(DET内野手)
レッド・ショーエンディーンスト(STL監督[注 1]
ルー・ブロック(STL外野手)
スティーブ・カールトン(STL投手)
オーランド・セペダ(STL内野手)
ボブ・ギブソン(STL投手)
ダグ・ハーヴェイ(審判員)
チーム情報
デトロイト・タイガース(DET)
シリーズ出場 23年ぶり08回目
GM ジム・キャンベル
監督 メイヨ・スミス
シーズン成績 103勝59敗・勝率.636
分配金 選手1人あたり1万0936.66ドル[1]

セントルイス・カージナルス(STL)
シリーズ出場 02年連続12回目
GM ビング・デバイン
監督 レッド・ショーエンディーンスト
シーズン成績 097勝65敗・勝率.599
分配金 選手1人あたり1万7078.71ドル[1]
全米テレビ中継
放送局 NBC
実況 カート・ガウディ
解説 ハリー・ケリー(第1・2・6・7戦)
ジョージ・ケル(第3~5戦)
平均視聴率 22.8%[2]
ワールドシリーズ
 < 1967 1969 > 

1968年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)優勝決定戦の第65回ワールドシリーズ英語: 65th World Series)は、10月2日から10日にかけて計7試合が開催された。その結果、デトロイト・タイガースアメリカンリーグ)がセントルイス・カージナルスナショナルリーグ)を4勝3敗で下し、23年ぶり3回目の優勝を果たした。

両チームの対戦は、1934年以来34年ぶり2回目。第1戦ではカージナルスのボブ・ギブソンがタイガース打線から17三振を奪い、サンディー・コーファックス1963年シリーズ第1戦で樹立していた1試合最多記録(15)を更新した[3]。しかしタイガースは、最終第7戦ではそのギブソンから4得点を挙げ、1勝3敗からの3連勝で逆転優勝を成し遂げた。7戦4勝制のシリーズにおいて、1勝3敗からの逆転優勝と2勝3敗から敵地2連勝での逆転優勝は、いずれも1958年ニューヨーク・ヤンキース以来10年ぶりで、前者は3回目、後者は5回目[注 2][4]シリーズMVPには、第2戦・第5戦・第7戦の3登板全てで完投勝利を挙げ防御率1.67という成績を残したタイガースのミッキー・ロリッチが選出された。1シリーズ3先発登板で3勝は、前年のギブソンに次いで史上9人目である[5]

今シリーズではタイガース専属アナウンサーのアーニー・ハーウェルが、本拠地タイガー・スタジアム開催の3試合で試合前のアメリカ合衆国国歌星条旗』独唱を行う歌手の人選を球団に一任され、第3戦ではマーガレット・ホワイティングを、第4戦ではマーヴィン・ゲイを、第5戦ではホセ・フェリシアーノを招聘した[6]。このうち、フェリシアーノはアコースティック・ギター弾き語り形式で歌ったが、当時としては珍しい独特なアレンジを加えた独唱だったため、賛否両論を巻き起こした。独唱直後から球場や全米テレビ中継局のNBCに抗議の電話が殺到し、ハーウェルが職を失いかける一方で、RCAレコードはこの国歌をシングルとして発売し、Billboard Hot 100で最高50位に入っている[7]

試合結果[編集]

1968年のワールドシリーズは10月2日に開幕し、途中に移動日を挟んで9日間で7試合が行われた。日程・結果は以下の通り。

日付 試合 ビジター球団(先攻) スコア ホーム球団(後攻) 開催球場
10月02日(水) 第1戦 デトロイト・タイガース 0-4 セントルイス・カージナルス ブッシュ・メモリアル・
スタジアム
10月03日(木) 第2戦 デトロイト・タイガース 8-1 セントルイス・カージナルス
10月04日(金) 移動日
10月05日(土) 第3戦 セントルイス・カージナルス 7-3 デトロイト・タイガース タイガー・スタジアム
10月06日(日) 第4戦 セントルイス・カージナルス 10-1 デトロイト・タイガース
10月07日(月) 第5戦 セントルイス・カージナルス 3-5 デトロイト・タイガース
10月08日(火) 移動日
10月09日(水) 第6戦 デトロイト・タイガース 13-1 セントルイス・カージナルス ブッシュ・メモリアル・
スタジアム
10月10日(木) 第7戦 デトロイト・タイガース 4-1 セントルイス・カージナルス
優勝:デトロイト・タイガース(4勝3敗 / 23年ぶり3度目)

第1戦 10月2日[編集]

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
カージナルス先発投手ボブ・ギブソンの全17奪三振(2分11秒)
7回裏、ルー・ブロックのソロ本塁打でカージナルスがリードを4点に広げる(46秒)
チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
デトロイト・タイガース 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 3
セントルイス・カージナルス 0 0 0 3 0 0 1 0 X 4 6 0
  1. ボブ・ギブソン(1勝)  デニー・マクレイン(1敗)  
  2. 本塁打
    STL:ルー・ブロック1号ソロ
  3. 審判
    [球審]トム・ゴーマン(NL)
    [塁審]一塁: ジム・ホノチック(AL)、二塁: スタン・ランズ(NL)、三塁: ビル・キナモン(AL)
    [外審]左翼: ダグ・ハーヴェイ(NL)、右翼: ビル・ハラー(AL)
  4. 昼間試合 試合時間: 2時間29分 観客: 5万4692人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
デトロイト・タイガース セントルイス・カージナルス
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 D・マコーリフ 1 L・ブロック
2 M・スタンリー 2 C・フラッド
3 A・ケーライン 3 R・マリス
4 N・キャッシュ 4 O・セペダ
5 W・ホートン 5 T・マッカーバー
6 J・ノースラップ 6 M・シャノン
7 B・フリーハン 7 J・ハビアー
8 D・ワート 8 D・マックスビル
9 D・マクレイン 9 B・ギブソン
先発投手 投球 先発投手 投球
D・マクレイン B・ギブソン

先発投手は、カージナルスがのボブ・ギブソン、タイガースがデニー・マクレイン。レギュラーシーズンではギブソンが22勝9敗・防御率1.12、マクレインが31勝6敗・防御率1.96という成績を残しており、ともにシーズン終了後、それぞれのリーグでサイ・ヤング賞MVPを受賞することとなる。その年のサイ・ヤング賞受賞予定者どうしがシリーズで先発として投げ合うのは、これが史上初めて[8]。試合は4回裏にカージナルス打線がマクレインをとらえ、マイク・シャノンフリアン・ハビアーの連続適時打で3点を先制した。一方のギブソンは6回表に二死二・三塁とされるも、4番ノーム・キャッシュ三振に打ち取って危機を免れた。ギブソンは8回終了時点で毎回の14三振を奪い、さらに9回も続投する。この回は無死一塁からまず3番アル・ケーラインを三振に仕留め、1963年シリーズ第1戦サンディー・コーファックスが樹立した1試合奪三振数のシリーズ最多記録に並ぶと、続く4番キャッシュも三振させて記録を更新し、最後は5番ウィリー・ホートンの見逃し三振で記録を17まで伸ばすとともに、3者連続三振で試合を締めくくった。

第2戦 10月3日[編集]

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
3回表、ミッキー・ロリッチのソロ本塁打でタイガースが2点目を奪う(50秒)
チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
デトロイト・タイガース 0 1 1 0 0 3 1 0 2 8 13 1
セントルイス・カージナルス 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 6 1
  1. ミッキー・ロリッチ(1勝)  ネルソン・ブライルズ(1敗)  
  2. 本塁打
    DET:ウィリー・ホートン1号ソロ、ミッキー・ロリッチ1号ソロ、ノーム・キャッシュ1号ソロ
  3. 審判
    [球審]ジム・ホノチック(AL)
    [塁審]一塁: スタン・ランズ(NL)、二塁: ビル・キナモン(AL)、三塁: ダグ・ハーヴェイ(NL)
    [外審]左翼: ビル・ハラー(AL)、右翼: トム・ゴーマン(NL)
  4. 昼間試合 試合時間: 2時間41分 観客: 5万4692人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
デトロイト・タイガース セントルイス・カージナルス
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 D・マコーリフ 1 L・ブロック
2 M・スタンリー 2 J・ハビアー
3 A・ケーライン 3 C・フラッド
4 N・キャッシュ 4 O・セペダ
5 W・ホートン 5 M・シャノン
6 J・ノースラップ 6 T・マッカーバー
7 B・フリーハン 7 R・デービス
8 D・ワート 8 D・マックスビル
9 M・ロリッチ 9 N・ブライルズ
先発投手 投球 先発投手 投球
M・ロリッチ N・ブライルズ

タイガースは2回表にウィリー・ホートンのソロ本塁打で先制すると、3回表には先発投手の9番ミッキー・ロリッチもソロ本塁打を放ち、2-0とする。ロリッチにとってはこの一打が、1979年シーズン終了後に現役を引退するまで、レギュラーシーズンを含めてもこれが唯一の本塁打となった[9]。メジャー初本塁打をポストシーズンで記録したのは、1932年ワールドシリーズ第4戦のフランク・デマリー以来36年ぶり史上3人目である[注 3][10]。6回表には前日3三振の4番ノーム・キャッシュにもソロ本塁打が出て、カージナルスの先発投手ネルソン・ブライルズはイニング途中での降板に追い込まれる。タイガースはこの回さらに、2番手スティーブ・カールトンから二死満塁という場面を作り、1番ディック・マコーリフの中前打で2点を追加した。カージナルスがその裏にオーランド・セペダの適時打で1点を返したものの、タイガースは直後の7回表に1点を加えたうえ、9回表にも二死満塁からの2者連続押し出し四球で7点差に突き放した。大量の援護に恵まれたロリッチが1失点完投勝利を挙げ、タイガースが1勝1敗とした。

第3戦 10月5日[編集]

チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
セントルイス・カージナルス 0 0 0 0 4 0 3 0 0 7 13 0
デトロイト・タイガース 0 0 2 0 1 0 0 0 0 3 4 0
  1. レイ・ウォッシュバーン(1勝)  アール・ウィルソン(1敗)  Sジョー・エルネ(1S)[注 4]  
  2. 本塁打
    STL:ティム・マッカーバー1号3ラン、オーランド・セペダ1号3ラン
    DET:アル・ケーライン1号2ラン、ディック・マコーリフ1号ソロ
  3. 審判
    [球審]スタン・ランズ(NL)
    [塁審]一塁: ビル・キナモン(AL)、二塁: ダグ・ハーヴェイ(NL)、三塁: ビル・ハラー(AL)
    [外審]左翼: トム・ゴーマン(NL)、右翼: ジム・ホノチック(AL)
  4. 昼間試合 試合時間: 3時間17分 観客: 5万3634人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
セントルイス・カージナルス デトロイト・タイガース
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 L・ブロック 1 D・マコーリフ
2 C・フラッド 2 M・スタンリー
3 R・マリス 3 A・ケーライン
4 O・セペダ 4 N・キャッシュ
5 T・マッカーバー 5 W・ホートン
6 M・シャノン 6 J・ノースラップ
7 J・ハビアー 7 B・フリーハン
8 D・マックスビル 8 D・ワート
9 R・ウォッシュバーン 9 E・ウィルソン
先発投手 投球 先発投手 投球
R・ウォッシュバーン E・ウィルソン

タイガースの本拠地タイガー・スタジアムに舞台を移して行われた第3戦は、3回裏にタイガースがアル・ケーラインの2点本塁打で先制する。しかしカージナルスは5回表にカート・フラッドの適時打で1点を返すと、なおも一死一・二塁からティム・マッカーバーが右翼へ3点本塁打を放ち逆転した。タイガースはその裏、ディック・マコーリフのソロ本塁打で1点差に追い上げるが、カージナルスは7回表無死二・三塁からオーランド・セペダに3点本塁打が出て、点差を4点に広げた。6回途中から登板のジョー・エルネが、試合終了まで3.2イニングで1被安打とタイガース打線を抑え、カージナルスが2勝目を挙げた。

第4戦 10月6日[編集]

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
マーヴィン・ゲイによる試合前のアメリカ合衆国国歌『星条旗』独唱(2分9秒)
カージナルスのルー・ブロックが初回先頭打者本塁打を含む3安打で4打点を挙げる(1分9秒)
4回表、ボブ・ギブソンのソロ本塁打でカージナルスが5点目を奪う(41秒)
チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
セントルイス・カージナルス 2 0 2 2 0 0 0 4 0 10 13 0
デトロイト・タイガース 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 5 4
  1. ボブ・ギブソン(2勝)  デニー・マクレイン(2敗)  
  2. 本塁打
    STL:ルー・ブロック2号ソロ、ボブ・ギブソン1号ソロ
    DET:ジム・ノースラップ1号ソロ
  3. 審判
    [球審]ビル・キナモン(AL)
    [塁審]一塁: ダグ・ハーヴェイ(NL)、二塁: ビル・ハラー(AL)、三塁: トム・ゴーマン(NL)
    [外審]左翼: ジム・ホノチック(AL)、右翼: スタン・ランズ(NL)
  4. 昼間試合 試合時間: 2時間34分 観客: 5万3634人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
セントルイス・カージナルス デトロイト・タイガース
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 L・ブロック 1 D・マコーリフ
2 C・フラッド 2 M・スタンリー
3 R・マリス 3 A・ケーライン
4 O・セペダ 4 N・キャッシュ
5 T・マッカーバー 5 W・ホートン
6 M・シャノン 6 J・ノースラップ
7 J・ハビアー 7 E・マシューズ
8 D・マックスビル 8 B・フリーハン
9 B・ギブソン 9 D・マクレイン
先発投手 投球 先発投手 投球
B・ギブソン D・マクレイン

第1戦に続きボブ・ギブソンデニー・マクレインの先発で始まったが、マクレインは初回表先頭打者のルー・ブロックにいきなりソロ本塁打を浴び、さらにマイク・シャノンの適時打で2点目を失う。マクレインは3回表にもティム・マッカーバーとシャノンに連続適時打を打たれ、この回途中での降板を余儀なくされる。カージナルスは4回表、9番・投手ギブソンのソロ本塁打などでさらに2点を加え、点差を6点に広げた。ギブソンの本塁打は、前年シリーズ第7戦に続く2年連続である。ワールドシリーズで本塁打を放った投手は、ギブソンや今シリーズ第2戦のミッキー・ロリッチも含め過去に10人いるが、通算2本目を打ったとなるとギブソンが史上初である[9]。8回表には無死満塁から9番ギブソンが押し出し四球を選んだあと、ブロックに走者一掃の二塁打が出て、カージナルスの得点は2桁に乗った。ギブソンは4回裏にジム・ノースラップのソロ本塁打で1点を失ったものの、失点をそれだけにとどめて10奪三振で完投し、カージナルスが敵地で優勝に王手をかけた。

第5戦 10月7日[編集]

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
ホセ・フェリシアーノによる試合前のアメリカ合衆国国歌『星条旗』独唱(1分59秒)
4回裏、タイガースの先頭打者ミッキー・スタンリーが三塁打で出塁(33秒)
5回表一死二塁、カージナルスのフリアン・ハビアーが左前打を放ち二塁走者ルー・ブロックが生還を試みるも、左翼手ウィリー・ホートンの返球に阻まれる(1分6秒)
チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
セントルイス・カージナルス 3 0 0 0 0 0 0 0 0 3 9 0
デトロイト・タイガース 0 0 0 2 0 0 3 0 X 5 9 1
  1. ミッキー・ロリッチ(2勝)  ジョー・エルネ(1敗1S)  
  2. 本塁打
    STL:オーランド・セペダ2号2ラン
  3. 審判
    [球審]ダグ・ハーヴェイ(NL)
    [塁審]一塁: ビル・ハラー(AL)、二塁: トム・ゴーマン(NL)、三塁: ジム・ホノチック(AL)
    [外審]左翼: スタン・ランズ(NL)、右翼: ビル・キナモン(AL)
  4. 昼間試合 試合時間: 2時間43分 観客: 5万3634人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
セントルイス・カージナルス デトロイト・タイガース
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 L・ブロック 1 D・マコーリフ
2 J・ハビアー 2 M・スタンリー
3 C・フラッド 3 A・ケーライン
4 O・セペダ 4 N・キャッシュ
5 M・シャノン 5 W・ホートン
6 T・マッカーバー 6 J・ノースラップ
7 R・デービス 7 B・フリーハン
8 D・マックスビル 8 D・ワート
9 N・ブライルズ 9 M・ロリッチ
先発投手 投球 先発投手 投球
N・ブライルズ M・ロリッチ

後がないタイガースはミッキー・ロリッチを先発させるが、初回からカート・フラッドの適時打とオーランド・セペダの2点本塁打で3点を追う展開に。タイガース打線は4回裏に相手先発ネルソン・ブライルズをとらえ、ノーム・キャッシュ犠牲フライジム・ノースラップの適時打で1点差に追い上げる。5回表、カージナルスは一死二塁からフリアン・ハビアーの左前打で二塁走者ルー・ブロックが本塁を突くが、タイガースは左翼手ウィリー・ホートンの返球と捕手ビル・フリーハンのブロックでアウトにした。7回裏、タイガースは2番手ジョー・エルネを攻め、一死満塁から3番アル・ケーラインの中前打で2走者を還して逆転、さらに続く4番キャッシュにも適時打が出て5-3とする。ロリッチは9回表に一死一・二塁の危機を迎えるが、代打ロジャー・マリスを三振に打ち取ると、最後はブロックを投ゴロに仕留めて完投、タイガースが踏みとどまった。

第6戦 10月9日[編集]

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
3回表、タイガース打線がジム・ノースラップの満塁本塁打などで一挙10得点(3分26秒)
5回表、アル・ケーラインがソロ本塁打が放ちタイガースのリードは13点に(42秒)
9回裏、カージナルスの先頭打者ロジャー・マリスが中前打で出塁。結果的にはこれが生涯最後の安打に(16秒)
9回裏、タイガース先発投手デニー・マクレインがダル・マックスビルを見逃し三振に仕留めて試合終了、完投勝利を挙げる。シリーズは3勝3敗のタイに(37秒)
チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
デトロイト・タイガース 0 2 10 0 1 0 0 0 0 13 12 1
セントルイス・カージナルス 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 9 1
  1. デニー・マクレイン(1勝2敗)  レイ・ウォッシュバーン(1勝1敗)  
  2. 本塁打
    DET:ジム・ノースラップ2号満塁アル・ケーライン2号ソロ
  3. 審判
    [球審]ビル・ハラー(AL)
    [塁審]一塁: トム・ゴーマン(NL)、二塁: ジム・ホノチック(AL)、三塁: スタン・ランズ(NL)
    [外審]左翼: ビル・キナモン(AL)、右翼: ダグ・ハーヴェイ(NL)
  4. 昼間試合 試合時間: 2時間26分 観客: 5万4692人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
デトロイト・タイガース セントルイス・カージナルス
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 D・マコーリフ 1 L・ブロック
2 M・スタンリー 2 C・フラッド
3 A・ケーライン 3 R・マリス
4 N・キャッシュ 4 O・セペダ
5 W・ホートン 5 T・マッカーバー
6 J・ノースラップ 6 M・シャノン
7 B・フリーハン 7 J・ハビアー
8 D・ワート 8 D・マックスビル
9 D・マクレイン 9 R・ウォッシュバーン
先発投手 投球 先発投手 投球
D・マクレイン R・ウォッシュバーン

タイガースはこの日、相手先発レイ・ウォッシュバーンを序盤から打ち崩す。2回表にウィリー・ホートンビル・フリーハンの適時打で2点を先制、3回表にも無死一・二塁からアル・ケーラインの適時打で1点を加え、ウォッシュバーンを降板させる。2番手ラリー・ジャスターからも1点を奪い、なおも無死満塁とすると、レギュラーシーズン満塁本塁打4本のジム・ノースラップがここでも満塁本塁打を放った。その後もタイガース打線の攻勢は続き、最終的にこの回は打者15人で10点を挙げた。1イニング2桁得点はワールドシリーズ史上、1929年シリーズ第4戦の7回裏にフィラデルフィア・アスレチックスが記録して以来、38年ぶり2度目のできごとである[11]。タイガースの先発投手デニー・マクレインは第4戦から中2日での登板ながら、9回裏にフリアン・ハビアーの適時打で1点を失ったのみの完投を果たし、タイガースが連勝で3勝3敗のタイに持ち込んだ。

第7戦 10月10日[編集]

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
6回裏、タイガース先発投手ミッキー・ロリッチが一塁走者を牽制で誘い出してアウトにするプレイをふたつ決める(1分42秒)
7回表、ジム・ノースラップの2点三塁打でタイガースが先制(38秒)
続くビル・フリーハンの二塁打で三塁走者ノースラップも生還、タイガースが3点目を挙げる(37秒)
9回裏、ロリッチがティム・マッカーバーを捕邪飛に打ち取り完投、タイガースの優勝が決定(1分8秒)
チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
デトロイト・タイガース 0 0 0 0 0 0 3 0 1 4 8 1
セントルイス・カージナルス 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 5 0
  1. ミッキー・ロリッチ(3勝)  ボブ・ギブソン(2勝1敗)  
  2. 本塁打
    STL:マイク・シャノン1号ソロ
  3. 審判
    [球審]トム・ゴーマン(NL)
    [塁審]一塁: ジム・ホノチック(AL)、二塁: スタン・ランズ(NL)、三塁: ビル・キナモン(AL)
    [外審]左翼: ダグ・ハーヴェイ(NL)、右翼: ビル・ハラー(AL)
  4. 昼間試合 試合時間: 2時間7分 観客: 5万4692人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
デトロイト・タイガース セントルイス・カージナルス
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 D・マコーリフ 1 L・ブロック
2 M・スタンリー 2 J・ハビアー
3 A・ケーライン 3 C・フラッド
4 N・キャッシュ 4 O・セペダ
5 W・ホートン 5 M・シャノン
6 J・ノースラップ 6 T・マッカーバー
7 B・フリーハン 7 R・マリス
8 D・ワート 8 D・マックスビル
9 M・ロリッチ 9 B・ギブソン
先発投手 投球 先発投手 投球
M・ロリッチ B・ギブソン

先発投手は今シリーズともに2勝のボブ・ギブソンミッキー・ロリッチ。ギブソンは6回終了時点で被出塁が内野安打1本だけと好投を続ける。一方、第5戦から中2日で登板のロリッチは、初回に二死一・二塁の危機を切り抜けると、2回・5回・6回にも先頭打者の出塁を許した。だが2回裏は7番ロジャー・マリスを遊ゴロ併殺に仕留め、6回裏にはルー・ブロックカート・フラッドをいずれも牽制で刺すなど、こちらも無失点のままイニングを重ねた。7回表、タイガースは二死からノーム・キャッシュウィリー・ホートンの連打で一・二塁とし、6番ジム・ノースラップが中堅方向へ飛球を放つ。この打球を中堅手フラッドが一瞬見失ったため頭上を越され、三塁打となって2者が生還、タイガースが先制点を挙げた。さらに続くビル・フリーハン二塁打でノースラップも還り1点を追加、9回にもドン・ワートの適時打で4-0とする。その裏、カージナルスは二死からマイク・シャノンのソロ本塁打で1点を返したが、ロリッチが6番ティム・マッカーバーを捕邪飛に打ち取って完投で試合終了。タイガースが1勝3敗からの逆転で、23年ぶりにワールドシリーズを制した。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 殿堂入りは監督としてではなく、二塁手としての功績が評価されてのもの。
  2. ^ 1勝3敗からの逆転優勝を過去に達成したのは、1925年ピッツバーグ・パイレーツと1958年のヤンキースの2球団。2勝3敗から敵地2連勝での逆転優勝を過去に達成したのは、1926年のヤンキース、1934年のカージナルス、1952年のヤンキース、1958年のヤンキースの4球団。
  3. ^ デマリーの前には、1924年ワールドシリーズ第3戦でロジー・ライアンが記録している。
  4. ^ MLBにおいてセーブが公式記録となったのは1969年のことである。そのため、今シリーズでのセーブは参考記録である。

出典[編集]

  1. ^ a b "World Series Gate Receipts," Baseball Almanac. 2019年1月3日閲覧。
  2. ^ "World Series Television Ratings," Baseball Almanac. 2020年10月17日閲覧。
  3. ^ David Adler, "Pitchers with most K's in postseason game / Best playoff performances include aces Gibson, Koufax, Clemens, Lincecum," MLB.com, October 23, 2018. 2019年1月3日閲覧。
  4. ^ Matt Kelly and Andrew Simon, "Cubs complete uphill Series comeback / Sixth team to rally from down 3-1; seventh to win Games 6, 7 on road," MLB.com, November 3, 2016. 2019年11月29日閲覧。
  5. ^ Ronald Blum, "Kluber could become 1st since Lolich to win 3 Series starts," Associated Press News, November 2, 2016. 2020年2月1日閲覧。
  6. ^ Bill Haney, "Ernie Harwell's role in a notorious anthem," Detroit Free Press, September 25, 2014. 2019年1月3日閲覧。
  7. ^ Alice George, "For 50 Years, José Feliciano’s Version of the National Anthem Has Given Voice to Immigrant Pride," Smithsonian, June 15, 2018. 2019年1月3日閲覧。
  8. ^ The Hartford Courant, "AWARD-WINNING MATCHUP," Hartford Courant, October 25, 1996. 2020年10月17日閲覧。
  9. ^ a b David Vincent, "Pitchers Dig the Long Ball (At Least When They Are Hitting)," Society for American Baseball Research, 2012. 2020年10月18日閲覧。
  10. ^ Katherine Acquavella, "Dodgers vs. Braves score: L.A. strikes back in NLCS as record-setting first inning fuels Game 3 blowout," CBSSports.com, October 14, 2020. 2020年12月12日閲覧。
  11. ^ Andrew Simon and Sarah Langs, "Batter up! Biggest playoff innings in history," MLB.com, November 4, 2020. 2021年5月23日閲覧。

外部リンク[編集]