赤崎勇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
本来の表記は「赤﨑勇」です。この記事に付けられた題名は、技術的な制限により、記事名の制約から不正確なものとなっています。
赤﨑 勇
Isamu Akasaki 20141211.jpg
 赤﨑勇(2014年)
生誕 (1929-01-30) 1929年1月30日(88歳)
日本の旗 日本鹿児島県川辺郡知覧村
(現・南九州市
国籍 日本の旗 日本
研究分野 半導体工学
化学工学
電子工学
研究機関 名古屋大学
名城大学
出身校 旧制第七高等学校造士館
(現・鹿児島大学
京都大学理学部化学科
博士課程
指導学生
天野浩小出康夫
主な業績 世界初の窒化ガリウムの高結晶に成功
世界初の青色発光ダイオード青色LED)の発明
コヒーレント光青色紫外発光デバイス (LED, LD) 全ての基礎技術の確立
青紫色 レーザーの開発
窒化物半導体世界最高効率となる太陽電池の開発
窒化物半導体電子線励起レーザー開発
他重要な業績多数
影響を
受けた人物
榊米一郎早川幸男
主な受賞歴 節「学術賞」を参照
プロジェクト:人物伝
ノーベル賞受賞者ノーベル賞
受賞年:2014年
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:高輝度で省電力の白色光源を可能にした青色発光ダイオードの発明

赤﨑 勇(あかさき いさむ、1929年1月30日 - )は、日本半導体工学化学工学者)。学位工学博士名古屋大学)。京都大学名誉博士名城大学大学院理工学研究科終身教授、名城大学窒化物半導体基盤技術研究センター長、名古屋大学特別教授名誉教授、名古屋大学赤﨑記念研究センターリサーチ・フェロー、文化功労者文化勲章受章者、日本学士院会員

「赤﨑」の「﨑」は山偏に竒(いわゆる「たつさき」)であるが、JIS X 0208に収録されていない文字のため、赤崎 勇と表記されることも多い。

株式会社松下電器東京研究所基礎第4研究室室長松下技研株式会社半導体部長、名古屋大学工学部教授などを歴任した。

概要

鹿児島県出身の半導体工学学者。 高輝度青色発光ダイオードとなるGaN/窒化ガリウムの研究が知られており、世界の学術界、産業界の物性研究者達が挑戦し撤退した、物性制御が困難と信じられたGaN/窒化ガリウムを半導体研究ではそれまで用いることがほとんど無かったMOCVD法を決断し、高品質高純度の結晶化を実現し1986年世界初の成功を収める。『特許1708203/米国特許4855249』 『特許3026087/米国特許5122845』。  そして学術上不可能とされたGaN/窒化ガリウムにおけるp型伝導の発見や発光ダイオードを高輝度にする為に必要なp型半導体n型半導体の接合型青色発光ダイオードを発明し、世界で初めて高輝度青色発光ダイオードを誕生させる。また自然界には存在しないGaN/窒化ガリウムの創造はエレクトロニクス革命とも呼ばれ次世代の半導体発明にも繋がることになった。(これらの青色発光ダイオード発明業績、GaN窒化物半導体に関する業績の原著論文は約700編以上、221以上にも上る特許を取得。)これらの傑出した業績により、恩賜賞ノーベル物理学賞受賞するなど国内外の数々の重要な賞を多数受賞する。なお1986年には名古屋大学・赤崎研究グループと豊田合成産学連携による青色発光ダイオード商品化生産技術プロジェクトが始動し、1987年科学技術振興事業団から青色LEDの製造技術開発を受託、1991年には実用化の成功認定がされている。2014年度にノーベル物理学賞天野浩中村修二と共に受賞する。

生い立ち

鹿児島県川辺郡知覧村(のちの知覧町、現・南九州市[1]出身。幼少期に鹿児島市の上町地区に移り鹿児島市立大龍小学校、鹿児島県立第二鹿児島中学校(現・鹿児島県立甲南高等学校[2]1946年に旧制第七高等学校造士館(現・鹿児島大学)を卒業し、京都大学に進学[3]。京都大学理学部化学科卒業。2歳年上の兄は九州大学大学院総合理工学教授や福岡工業大学学長を歴任した赤崎正則九州大学名誉教授。

中学時代は学徒勤労動員のため、2年次終わりから鹿児島市内の工場に勤務、3年次からは鹿屋海軍航空隊での掩体壕作り、4年次からは佐世保海軍工廠での作業に従事し、3年間程度しか授業を受けることができなかった。1945年6月に陸軍航空士官学校受験準備のため帰郷した鹿児島市で、アメリカ軍による空襲および至近距離からの無差別銃撃に遭ったものの、わずか50センチメートルほど銃弾が逸れるなどして、一命を取り留めた。1949年に京都大学理学部に入学。大学時代は地元の人も行かないような神社仏閣を巡ったり夏休みには信州の山々を歩き、クラシック鑑賞をして充実した学生時代を過ごす。 [4]

研究者として

京都大学卒業後、神戸工業(現富士通テン)に入社して、明石市の大久保製作所でブラウン管の開発に従事。その後上司の有住徹弥真空管部長が名古屋大学工学部電子工学科に転出したのに伴い、有住研究室の助手に誘われる。当初断ったものの強引に勧誘され、1959年から5年間新設の名古屋大学有住研究室での学究生活に入って助手、講師、助教授を務めた。1964年名古屋大学工学博士、論文の題は「Geの気相成長に関する研究」[5]。1964年からはスカウトされる形で新設の松下電器東京研究所に移って、基礎第4研究室長や松下技研株式会社半導体部長を務めGaAsやGaPを中心とするⅢ‐Ⅴ族化合物、およびそれらの混晶(GaAsP,GaInP,GaInAsPなど)の各種結晶成長(気相および液相エビタキシャル成長、融液成長、液体封止高圧引上げ成長など)及び電気的、光学的性質に関する研究業績、赤色、黄緑色LEDや赤色レーザーダイオード開発に関する著しい業績を上げている。1981年より1992年まで名古屋大学工学部電子工学科教授を務め、大学では研究室を異例中の異例となる赴任初年度に開設されている。研究室メンバーは最初の指導学生となる天野浩・現名古屋大学特別教授や小出康夫・現国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)理事らが在籍し、数多くの優秀な研究者達を育て上げたことでも有名である。

1992年に名古屋大学を定年退官。その後は名城大学教授に就任し、現在は名城大学終身教授、名古屋大学特別教授を務める。

物性制御が困難と諦められていた窒化ガリウム (GaN) の結晶化に成功し、世界初の青色発光ダイオード(青色LED)を実現させたことでも世界で有名。その窒化ガリウム・青色LED・ レーザー関連に及ぶ莫大な特許料を建設費の一部に用いて、名古屋大学東山キャンパス内に赤﨑記念研究館が建設され、2006年10月20日に開館した[6]

現職

略歴

ノーベル賞受賞に際して文部科学省により公表された肖像写真

主な業績

名古屋大学赤崎記念研究館
  • 高品質・高純度のGaN結晶の成長創製を新たに発明した低温堆積緩衝層技術MOCVD法によって世界で初めて実現させ、結晶学的均衡性・光学的特性・エレクトロニクス特性を同時に達成したワイドギャップ半導体としての機能を発現させる。(1986年
  • Mgをドープし低エネルギー電子線照射 (LEEBI) で活性化させることによって窒化物半導体におけるp型伝導を発見する。(1989年
  • 高品質GaN結晶にシリコンをドープさせたn型伝導度制御の実現。(1989年)
  • 世界で初めてp型GaNの結晶化を証明し世界初となるGaNのpn接合型高輝度青色発光ダイオードを発明する。(1989年)
  • GaNからの室温における紫外光誘導放出コヒーレント光を実現させpn接合型青色/紫外発光デバイス (LED, LD) に必須の全ての基礎技術に世界に先駆けて成功する。(1990年)
  • 窒化物半導体における量子サイズ効果を示す多重ヘテロ効果の発見。(1991年
  • AlGaN/GaNダブルヘテロ構造での低閾値光励起誘導放出の実現。(1993年
  • 室温における最短波長レーザーダイオード(パルス 376nM)に成功。(1995年)
  • GaN系半導体量子構造による量子閉じ込めシュタルク効果の実証確認。(1997年
  • GaN系統の結晶におけるピエゾ電界強度結晶方位依存性の無極性面、半極性面の存在を理論的に明らかにする。(これが引き金となり無極性面/半極性面への結晶成長および半導体デバイス研究へと繋がる次世代半導体の大きな開発潮流を生み出すことになる。)(2000年)
  • 高電子移動度AlGaN/Gal超格子の実現。(2001年
  • 高品質AlGaNテンプレートを用いた最高出力紫外LEDの開発。(2002年
  • ZrB2基板上の紫外/紫色LEDの開発。(2003年
  • 世界最高峰となる最短波波長レーザー (350.9nM) の実現に成功する。(2004年
  • 高温MOVPE法の開発による高品質AlNの実現。(2005年
  • HFET型高感度ホトセンサーの開発。(2012年
  • 窒化物半導体系世界最高効率となる太陽電池の開発。(2012年)
  • 世界初の窒化物半導体系電子線励起レーザーに成功する。(2013年

学術賞

2014年12月8日グランドホテルにてカリフォルニア大学サンタバーバラ校固体照明エネルギー電子工学センター所長中村修二(左)、名古屋大学赤﨑記念研究センターセンター長天野浩(中央)と

栄典

2011年11月3日、文化勲章親授式後の記念撮影にて沖縄科学技術研究基盤整備機構ユニット代表研究者柳田充弘(左端)、日本芸術院会員丸谷才一(中央)、日本芸術院会員大樋年朗(右から2人目)、東京大学名誉教授三谷太一郎(右端)と

科学アカデミー会員

重要な論文

1981年
  • Y. Ohki, Y. Toyoda, H. Kobayasi and I. Akasaki: “Fabrication and properties of a practical blue-emitting GaN m-i-s diode”, Inst. Phys. Conf. Ser., No. 63, Chap. 10, pp. 479-484
1986年
  • Metalorganic vapor phase epitaxial growth of a high quality GaN film using an AlN buffer layer (Amano, H., Sawaki, N., Akasaki, I. and Toyoda, Y.). Applied Physics Letters 48: 353-355.
1989年
  • Effects of AlN Buffer Layer on Crystallographic Structure and on Electrical and Optical Properties of GaN and Ga1-xAlxN (0<x≤0.4) Films Grown on Sapphire Substrate by MOVPE (Akasaki, I., Amano, H., Koide, Y., Hiramatsu, K. and Sawaki, N.). Journal of Crystal Growth 98: 209-219.
  • P-Type Conduction in Mg-Doped GaN Treated with Low-Energy Electron Beam Irradiation (LEEBI) (Amano, H., Kito, M., Hiramatsu, K. and Akasaki, I.). Japanese Journal of Applied Physics 28: L2112-L2114.
1990年

H. Amano, T. Asahi and I. Akasaki: “Stimulated Emission Near Ultraviolet at Room Temperature from a GaN Film Grown on Sapphire by MOVPE Using an AlN Buffer Layer”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 29, No. 2, pp. L205-L206, 1990.

1991年
  • H. Murakami, T. Asahi, H. Amano, K. Hiramatsu, N. Sawaki and I. Akasaki: “Growth of Si-doped AlxGa1-xN on (0001) sapphire substrate by metalorganic vapor phase epitaxy”, J. Crystal Growth, Vol. 115, pp. 648-651
1995年
  • I. Akasaki, H. Amano, S. Sota, H. Sakai, T. Tanaka and M. Koike: “Stimulated Emission by Current Injection from an AlGaN/GaN/GaInN Quantum Well Device”, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 34, Pt. 2, No. 11B, pp. L1517-L1519
1997年
  • Crystal Growth and Conductivity Control of Group III Nitride Semiconductors and Their Application to Short Wavelength Light Emitters (Akasaki, I. and Amano, H.). Japanese Journal of Applied Physics 36: 5393-5408.
2006年
  • Breakthroughs in Improving Crystal Quality of GaN and Invention of the p-n Junction Blue-Light-Emitting Diode (Akasaki, I. and Amano, H.). Japanese Journal of Applied Physics 45: 9001-9010.

著書・編著・監修

  • 『電気・電子材料』1985年9月(朝倉書店
  • 『III-V族化合物半導体』1994年5月(培風館
  • 『青色発光デバイスの魅力―広汎な応用分野を開く』 1997年4月(工業調査会
  • 『III族窒化物半導体』1999年12月(培風館)
  • 『ワイドギャップ半導体―あけぼのから最前線へ・・』2013年2月(培風館)
  • 『青い光に魅せられて〜青色LED開発物語』2013年3月(日本経済新聞出版社)。大川出版賞受賞(財団法人大川情報通信基金)/サントリー文化財団海外出版助成書籍

参考資料

出典

[ヘルプ]
  1. ^ The Nobel Prize in Physics 2014
  2. ^ 『赤崎氏ノーベル賞 愚直に「噛んつけ」 不屈の探究心輝く(荒野を行く - 赤崎勇物語 - <下>)』 南日本新聞2014年10月9日付 23面
  3. ^ 赤崎教授に名誉博士号 鹿児島大、26日授与式”. 読売新聞. 2015年6月24日閲覧。
  4. ^ http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/history/honor/award_b/nobel/2015/akasaki/interview.html ノーベル物理学賞受賞者・赤﨑勇博士と京都大学 -大学時代に育まれた研究者の芽-
  5. ^ 学位論文書誌データベースによる
  6. ^ 赤﨑記念研究館
  7. ^ http://www.aip.nagoya-u.ac.jp/extramural/akasaki/
  8. ^ http://www.jacg.jp/jacg/japanese/frame_main/16/2014_JACGAWARD.html
  9. ^ http://www.jacg.jp/jacg/japanese/top.html
  10. ^ http://www.photonicssociety.org/award-winners/Engineering%20Achievement%20Award
  11. ^ http://inouesho.jp/jyusyou/index.html
  12. ^ http://www.iocg.org/prizes/frank_laudise_prize.html
  13. ^ http://www.candc.or.jp/kensyo/recipient_cc.html
  14. ^ http://www.ieee.org/documents/morton_rl.pdf
  15. ^ http://www.rankprize.org/opto-electronics1.htm
  16. ^ http://www.electrochem.org/awards/ecs/ecs_awards.htm
  17. ^ http://www.electrochem.org/awards/ecs/recipients/ssst_recipients.htm
  18. ^ 朝日賞:過去の受賞者”. 朝日新聞. 2009年11月4日閲覧。
  19. ^ http://www.toray.com/tsf/kagaku/kag_004.html
  20. ^ http://www.fujizai.or.jp/prize-J41_50.htm
  21. ^ https://www.jsap.or.jp/activities/award/outstanding/prizewinner.html
  22. ^ http://www8.cao.go.jp/cstp/sangakukan/1kai.pdf
  23. ^ http://www.ssdm.jp/SSDM_Award_history.html
  24. ^ http://masu-www.pi.titech.ac.jp/links_files/patent/2004/contest/20041108-announce-year.pdf
  25. ^ http://www.jacg.jp/jacg/japanese/frame_main/16/JACG%20Outstanding%20Achievement%20Award.html
  26. ^ http://www.tms.org/awards/TMSAwardWinnersSpecific.aspx?year=ALL%20YEARS&awardName=%27FMD%20John%20Bardeen%20Award%27
  27. ^ https://www.jsap.or.jp/jsapi/Pdf/Number06/07_Awards.pdf
  28. ^ http://www.nae.edu/MembersSection/Directory20412/31054.aspx
  29. ^ http://www.inamori-f.or.jp/laureates/k25_a_isamu/prf_e.html
  30. ^ 赤﨑勇教授に日本人2人目のエジソン賞名城大学プレスリリース
    赤崎勇氏にエジソン賞=日本2人目、青色LEDで貢献時事通信
  31. ^ [1]
  32. ^ http://asiasociety.org/new-york/events/2015-asia-game-changer-awards-and-gala-dinner
  33. ^ ドレイパー賞:LED開発で赤崎と中村両氏ら5人
  34. ^ http://en.unesco.org/news/fifth-unesco-medals-contributions-development-nanoscience-and-nanotechnologies-ceremony
  35. ^ 中日文化賞:第41回-第50回受賞者”. 中日新聞. 2009年10月26日閲覧。
  36. ^ http://www.ieee.org/membership_services/membership/fellows/chronology/fellows_1999.html

外部リンク