名誉市民

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名誉市民(めいよしみん、:Honorary Citizen)とは、主に次の3つの意味を持つ概念である。即ち、

である。以下、類似の概念や称号を含めて紹介する。

国家の名誉市民権と名誉市民の称号[編集]

国家の付与する名誉市民称号のうち、アメリカ合衆国名誉市民は最も著名な例の一つである。米国の場合、完全なる名誉称号であり、特権はもちろん米国市民権は付与されない[6]カナダなどでも人種差別や民主化闘争の指導者に名誉市民権を付与しており、これまでにも南アフリカアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃に尽力した同国大統領ネルソン・マンデラミャンマーの民主化に功績あるアウンサンスーチーに名誉市民権を付与しているほか、2013年10月16日にはパキスタン人権活動家イスラム原理主義勢力タリバンから狙撃され、瀕死状態から回復したマララ・ユスフザイに名誉市民権を付与することを表明している[7]

省・州・都道府県など中間自治体における「名誉市民」称号[編集]

また、名誉市民称号に比等する称号は都道府県のような中間的な地方公共団体でも制定され、その行政区に在住または関係する住民・人物に贈られている。

名誉省民・栄誉公民[編集]

中国では地方行政庁にあたる省で名誉省民の称号を贈呈している。1991年11月、日中両国のピンポン外交の立役者でもある愛知工業大学の後藤淳に対し、中国江蘇省から名誉省民称号が贈られているほか[8]2001年には福井放送社長の伊藤嘉治に中国浙江省から日中友好の功績により、名誉省民の称号を贈られたのはその例である[9]。 また、山東省の人民政府で栄誉公民の称号を贈呈しており[10]、これまで丸紅特別顧問の西田健一などが受称している[11]

名誉道民[編集]

韓国では地方行政区の道庁では名誉道民の称号を制定している[12]

名誉州民[編集]

また、米国では個々の州で名誉州民の称号が制定されており、終戦後の日本でGHQに戦争孤児の救済に対する助言し、日本国内で赤い羽根共同募金の設立を提案したカトリック教会神父社会事業家エドワード・ジョゼフ・フラナガン1965年に米国のネブラスカ州の名誉州民となっているほか[13]、1986年には日本貿易振興機構理事長赤澤璋一に対し、米国コロラド州から名誉州民の称号を贈呈されている[14]。また、1991年には読売新聞社社長の小林与三次が夫妻で米国ワシントン州名誉州民称号を受称[15]96年にはカンボジア国連ボランティアとして活動中に銃弾に倒れた中田厚仁が、活動地域だった同国コンポントム州から名誉州民称号を贈られている[16]

名誉都民[編集]

日本では東京都名誉都民の称号を制定している[17]

名誉県民[編集]

東京都以外の道府県では主に名誉県民などの称号が制定されており[3][18]内閣総理大臣経験者では森喜朗石川県名誉県民に[19]福田赳夫康夫親子が群馬県名誉県民となっている[20]。そのほかの例では香川県名誉県民も参照されたい。

郡及び市町村・特別区の名誉市民[編集]

名誉郡民[編集]

米国や韓国などで、郡が授与する名誉市民称号を「名誉郡民」という。2010年、福井県の仏教建築を専門とする金剛組金剛利隆に韓国扶余郡から、百済の文化保存への貢献に対し、名誉郡民称号が贈られたのは主な例である[21]

名誉市民[編集]

名誉市民の称号は欧米で始められた制度で、主に公共福祉学術、技芸そのほかの文化産業等に業績ある人に対して賞賛と尊敬の念を示す目的で贈られる。 著名な例ではパリ市が2004年6月8日に、同市市議会緑の党の提案により、ミャンマーのアウンサンスーチーに名誉市民の称号を贈呈することを提案。与党社会党の賛成により、スーチーの誕生日である同月19日に称号が贈呈されたこと[22]。また、2008年に中国の人権活動家の胡佳ダライ・ラマ14世にパリ市から名誉市民称号が贈呈され、中国政府が反発したことが挙げられる[23]芸術分野では2011年7月12日、米国人歌手レディー・ガガ同性愛者支援の功績で豪州シドニー市から名誉市民の称号が贈られている[24]。 一方、称号を剥奪した例としては2004年にハンガリー首都ブダペストが同国のEU加盟を目前に、かつてソ連スターリンに贈っていた名誉市民称号を「人類に対する重要な罪」を理由に取り消したことが知られているほか[25]ドイツ北部のゴスラー市では2013年10月27日1934年アドルフ・ヒトラーに贈られていた名誉市民称号が手続き上の見落としにより、取り消されていなかったことが発覚し、同日、市議会の全会一致で称号剥奪が決議されている。なお、ヒトラーのは存命中、ドイツ国内の約4000の自治体から名誉市民称号が贈られているが、死後ほとんど取り消しとなっている[26]

日本では、1949年昭和24年)仙台市志賀潔土井晩翠本多光太郎らに名誉市民の称号を贈ったのに始まり、今日では多くの市がこの制度を設けている。また、町、村などの自治体も、この制度に倣って、名誉区民、名誉町民、名誉村民などの称号を贈ることも多くなっている[3]。名誉市民を表す英語honorary citizenのhonoraryは義務や特権、報酬を伴わないことをその重要な意味としているが、日本では贈られた人には、その自治体の公共施設の利用や生活の便宜などの、若干の特権が与えられることが多い[3]

受賞者はその市区町村出身の国会議員首長などの政治家医師教育者研究者、出身の著名人などが多く、政治家の例では元首相の森喜朗が石川県能美市の名誉市民第1号となったことや[27]羽田孜長野県上田市の名誉市民になったことが挙げられる[28]。研究者ではノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学教授山中伸弥京都市東大阪市など自身とゆかりある市の名誉市民となっている[29]

名誉区民[編集]

東京都23区のように区制を敷く自治体では名誉市民に相当する名誉区民の称号を制定している。東京都の例では、漫画家から『アンパンマン』の原作者 やなせたかし新宿区名誉区民に選ばれているほか[30]、『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』の原作者 松本零士練馬区名誉区民となっている。同様に練馬区では狂言師野村万作も名誉区民称号の贈呈を受けている[31]葛飾区では映画監督山田洋次が同区名誉区民となっている[32]

名誉町民[編集]

町制を敷いている自治体では、名誉市民に相当する称号として名誉町民や特別名誉町民などの称号を制定している。主な例では、ノーベル化学賞受賞者で北海道大学名誉教授鈴木章故郷むかわ町の特別名誉町民に選ばれたことが挙げられる[33]。名誉市民同様、政治家も贈呈の対象だが、佐賀県北方町では当時の町長松本和夫が名誉町民に自身を推薦し、議会で可決したことで物議を呼んだことがある[34]

名誉村民[編集]

村制の自治体では名誉市民に相当する称号として、名誉村民などの称号を制定している。政治家では日本航空123便墜落事故の事故現場となった群馬県多野郡上野村の村長で事故対応の陣頭指揮を執った黒沢丈夫が同村名誉村民第1号となっている[35]

そのほか、著名人の例では、2011年サッカーワールドカップドイツ大会でなでしこジャパンDFを務めた岩清水梓に対し、故郷の岩手県岩手郡滝沢村(現滝沢市)の村長 柳村典秀から同村名誉村民の称号が贈られている[36]熊本県山江村では100歳を超える高齢者に贈っている[5]

その他[編集]

その他、同類の称号として名誉鎮民、名誉郷民などがある。

脚注[編集]

  1. ^ 本項「国家の名誉市民」の節を参照のこと。
  2. ^ 本項「省・州・都道府県など中間自治体における「名誉市民」称号」の節を参照のこと。
  3. ^ a b c d 相賀徹夫日本大百科全書22』(小学館1988年) 720頁参照。
  4. ^ 新村出編『広辞苑 第六版』(岩波書店2011年)2757頁、松村明編『大辞泉 第二版』(三省堂2012年)3564頁、時枝誠記編『角川国語大辞典』(角川書店1982年) 2061頁、山田忠雄編、酒井憲二編、倉持保男編、柴田武編、笹原宏之編、上野善道編、山田明雄編、井島正博編『新明解国語辞典』(三省堂、2012年) 1483頁参照。
  5. ^ a b 「106歳、3世紀 祝い「名誉村民」山江村で第1号=熊本」『読売新聞』2001年11月7日西部朝刊二熊本版29頁参照。
  6. ^ 詳細はアメリカ合衆国名誉市民の項を参照のこと。
  7. ^ ロイター通信ウェブサイト「16歳の人権活動家マララさん、カナダが名誉市民権付与へ」2013年10月17日13:15 JST参照。
  8. ^ 「東海地方の関係者も追悼――トウ小平氏死去」『毎日新聞』1991年2月20日中部夕刊9頁参照。
  9. ^ 「FBC伊藤嘉治社長が中国・浙江省の「名誉省民」に=福井」『読売新聞』2001年11月3日大阪朝刊福井版31頁参照。
  10. ^ 中華人民共和国山東省人民政府ウェブサイト「外国の友人への栄誉公民称号授与規定」参照。
  11. ^ 「中国・山東省から「栄誉公民」の称号 丸紅・西田特別顧問」『読売新聞』2004年11月27日東京朝刊11頁参照。
  12. ^ 「[鳥取ひとひと往来]清水幸久さん、薛幸久さん=鳥取」『読売新聞』2009年9月5日大阪朝刊鳥取2版30頁参照。
  13. ^ 詳細はエドワード・ジョゼフ・フラナガンの項を参照。
  14. ^ 「コロラド名誉州民にジェトロ赤沢理事長」『読売新聞』1986年10月24日東京朝刊7頁参照。
  15. ^ 「小林読売新聞社社長夫妻にワシントン州名誉州民称号」『読売新聞』1991年5月1日東京朝刊14頁参照。
  16. ^ 「[いずみ]カンボジアで死亡した国連ボランティアの中田厚仁さんが名誉州民に」『読売新聞』1996年1月13日大阪朝刊31頁参照。
  17. ^ 詳細は名誉都民の項目および東京都ウェブサイト名誉都民一覧参照のこと。報道では「名誉都民の顕彰式」『読売新聞』2002年10月2日東京朝刊都民版33頁参照。
  18. ^ 「「名誉県民」4人の顕彰式=愛知」『読売新聞』2012年12月4日中部朝刊名市面参照。
  19. ^ 「森元首相 名誉県民に 知事表明 松選手は「まだ早い」=石川」『読売新聞』2013年1月5日東京朝刊石川版27頁、「「名誉県民に」満場一致 6人目」『読売新聞』2013年1月23日東京朝刊石川版29頁参照。
  20. ^ 「福田康夫元首相 名誉県民に「初の親子2代」=群馬」『読売新聞』2013年4月2日東京朝刊群馬版29頁参照。
  21. ^ 「日本企業存続の条件(4)身内に甘くすべからず――事業継続を優先(時事解析)終」『日本経済新聞』2012年1月13日朝刊25頁参照。
  22. ^ 「ミャンマーのスー・チー氏 パリの名誉市民に(地球24時)」『朝日新聞』2004年6月9日朝刊1頁参照。
  23. ^ 「ダライラマ14世を名誉市民に」『朝日新聞』2008年4月22日夕刊2頁参照。
  24. ^ 共同通信社47NEWS2011年7月12日配信「ガガさん、シドニー名誉市民に 同性愛者支援を評価」参照。
  25. ^ 「スターリンの名誉市民権はく奪/ブダペスト議会」『読売新聞』2004年4月25日東京朝刊9頁参照。
  26. ^ 「ヒトラー死後も「名誉市民」市議会気づき剥奪」『読売新聞』2013年11月1日東京朝刊7頁参照。
  27. ^ 「森元首相が能美市初の名誉市民に/石川県」『朝日新聞』2013年1月25日朝刊石川全県/地方版27頁、「森元首相に 能美名誉市民 第1号 「皆さんのおかげ」=石川」『読売新聞』2013年4月14日東京朝刊石川版33頁参照。
  28. ^ 「羽田孜元首相に名誉市民の称号 上田市議会が可決/長野県」『朝日新聞』2013年10月2日朝刊長野東北信/地方版31頁、「上田市 羽田元首相 名誉市民に=長野」『読売新聞』2013年10月2日東京朝刊長野2版30頁参照。
  29. ^ 「山中教授 名誉市民に 幼少期暮らした東大阪」『読売新聞』2013年7月2日大阪朝刊29頁、「京都市名誉市民 山中教授に称号」『読売新聞』2013年7月30日大阪夕刊12頁参照。
  30. ^ 新宿区ウェブサイト「名誉区民」参照。
  31. ^ 練馬区ウェブサイト「練馬区名誉区民顕彰」参照。
  32. ^ 葛飾区ウェブサイト「葛飾区名誉区民の紹介」参照。
  33. ^ むかわ町ウェブサイト「鈴木章先生に「むかわ町特別名誉町民」称号授与、「むかわ町特別功労賞」表彰!」参照。
  34. ^ 「佐賀県北方町長「自分を名誉町民に」議員に本人提案、可決」『読売新聞』2005年6月23日西部朝刊34頁参照。
  35. ^ 「上野村長10期、日航機墜落で陣頭指揮 黒沢氏 名誉村民第1号=群馬」『読売新聞』2006年1月6日東京朝刊群馬西版29頁参照。
  36. ^ 「滝沢名誉村民 おめでとう なでしこ・岩清水選手 授与式=岩手」『読売新聞』2012年1月17日東京朝刊岩手版33頁参照。

参照文献[編集]

文献資料[編集]

  • 相賀徹夫編『日本大百科全書22』(小学館、1988年) ISBN 409526022X
  • 時枝誠記編『角川国語大辞典』(角川書店、1982年) ISBN 4040111028
  • 新村出編『広辞苑 第六版』(岩波書店、2011年)ISBN 400080121X
  • 松村明編『大辞泉 第二版』(三省堂、2012年)ISBN 4095012137
  • 山田忠雄編、酒井憲二編、倉持保男編、柴田武編集、笹原宏之編、上野善道編、山田明雄編、井島正博編『新明解国語辞典』(三省堂、2012年) ISBN 4385131546

報道資料[編集]

  • 『朝日新聞』2004年6月9日朝刊
  • 『朝日新聞』2008年4月22日夕刊
  • 『朝日新聞』2013年1月25日朝刊石川全県/地方版
  • 『朝日新聞』2013年10月2日朝刊長野東北信/地方版
  • 『日本経済新聞』2012年1月13日朝刊
  • 『毎日新聞』1991年2月20日中部夕刊
  • 『読売新聞』1986年10月24日東京朝刊
  • 『読売新聞』1991年5月1日東京朝刊
  • 『読売新聞』1996年1月13日大阪朝刊
  • 『読売新聞』2001年11月3日大阪朝刊福井版31頁
  • 『読売新聞』2004年11月27日東京朝刊
  • 『読売新聞』2005年6月23日西部朝刊
  • 『読売新聞』2006年1月6日東京朝刊群馬西版
  • 『読売新聞』2009年9月5日大阪朝刊鳥取2版
  • 『読売新聞』2012年1月17日東京朝刊岩手版
  • 『読売新聞』2012年12月4日中部朝刊名市面
  • 『読売新聞』2013年1月5日東京朝刊石川版
  • 『読売新聞』2013年1月23日東京朝刊石川版
  • 『読売新聞』2013年4月2日東京朝刊群馬版
  • 『読売新聞』2013年4月14日東京朝刊石川版
  • 『読売新聞』2013年7月2日大阪朝刊
  • 『読売新聞』2013年7月30日大阪夕刊
  • 『読売新聞』2013年10月2日東京朝刊長野2版
  • 『読売新聞』2013年11月1日東京朝刊

外部リンク[編集]

関連項目[編集]