実録 マリウポリの20日間

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実録 マリウポリの20日間
20 днів у Маріуполі
監督 ミスティスラフ・チェルノフ（英語版）
脚本 ミスティスラフ・チェルノフ
製作 ラニー・アロンソン＝ラス（英語版）
ミスティスラフ・チェルノフ
ダール・マクラッデン
ミッチェル・マイズナー
音楽 ジョーダン・ダイクストラ（英語版）
撮影 ミスティスラフ・チェルノフ
編集 ミッチェル・マイズナー
製作会社
配給 PBSディストリビューション（英語版）
公開 アメリカ合衆国の旗 2023年1月20日 (SFF（英語版）)[1]
上映時間 94分
製作国  ウクライナ
言語 ウクライナ語
英語
ロシア語
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実録 マリウポリの20日間
『フロントライン』のエピソード
話数シーズン2023
第22話
初放送日2023年11月21日 (2023-11-21)
時間97分
“20 Days in Mariupol”. PBS. 2023年12月25日閲覧。
イントロダクション付きの全編

『実録 マリウポリの20日間』（ウクライナ語: 20 днів у Маріуполі）は、ミスティスラフ・チェルノフ（英語版）監督による2023年のウクライナのドキュメンタリー映画である[2]。ロシアがウクライナ侵攻を開始した後にチェルノフが仲間と共に包囲されたマリウポリで過ごした20日間がとらえられている。チェルノフは『フロントライン』とAP通信のチームと共にマリウポリで集めた映像を編集した。この映画は2023年サンダンス映画祭（英語版）でプレミア上映され[1]、ワールド・シネマ・ドキュメンタリー・コンペティション部門で観客賞を受賞した[3][4][5]。第96回アカデミー賞国際長編映画賞にはウクライナ代表作として出品され[6][7]、12月発表の最終選考15作品に残った[8]。また2023年ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞ではドキュメンタリー映画トップ5に選ばれた[9]。

内容[編集]

この映画はチェルノフが2022年のマリウポリの戦いで仲間たちと過ごした20日間が記録されている。ロシアによる侵攻が始まり、ウクライナの取材チームは包囲された街に閉じ込められるが、戦争の記録作業を続けようと奮闘する。

公開[編集]

イギリスのドキュメンタリー映画配給会社であるドッグウーフ（英語版）が国際セールスを監督し、PBSディストリビューション（英語版）が権利を獲得した北米を除く全世界でのセールスを担当する[10]。

アメリカ合衆国では2023年7月14日に限定上映された[11]。ウクライナでは8月31日に一般公開が始まった[12]。プレ・プレミア上映はキーウ[13]とリヴィウで行われた[14]。2023年9月の最初の週末でのウクライナの興行収入は53万フリヴニャを超え、ウクライナのドキュメンタリー映画史上最高額を記録した[15]。

評価[編集]

Rotten Tomatoesでは55件の批評に基づいて支持率は100%（英語版）、平均点は8.8/10となり、「『実録 マリウポリの20日間』は戦争がもたらす壊滅的な影響について過酷だが重要な視点を提供している」とまとめられた[16]。Metacriticでは18件の批評に基づいて加重平均値は84/100と示された[17]。

『バラエティ』のデニス・ハーヴェイは「これは殺伐としているが、本質的な映画だ」、「このノンフィクション作品は単純な物語の弧を持たないかもしれないが、監督の気取らない一人称のナレーションと編集された戦争犯罪の証拠の激しさが、それにもかかわらず、この映画を釘付けにする」と評した[18]。『ハリウッド・リポーター』のフランク・シェック（英語版）は『実録 マリウポリの20日間』を「ロシア軍によるウクライナの都市の数週間にわたる包囲を描いたこのジャンルの特に没入感のある例だ。（中略）人間的な悲劇が描かれている事以外に最も鮮明に伝わってくるのは戦場特派員の重要性と、このような命がけの状況下で働くために彼らが持たなければならない勇気と創意工夫だ」と評した[19]。『ザ・マーキュリー・ニュース（英語版）』のランディ・マイヤーズは4ツ星満点中3.5ツ星を与え、「重苦しく、本質的なジャーナリズム作品」、「ロシアに狙われ、容赦なく攻撃された港町に3週間近く潜入したAP通信のウクライナ人記者による没入感のある証言」と評した[20]。

RogerEbert.com（英語版）のマット・ゾラー・サイツ（英語版）はこの映画に4ツ星満点中3.5ツ星を与え、「観る者が2度と観たくなくなる素晴らしいドキュメンタリーのショートリスト入りだ。（中略）これはこの世の地獄からの発送だ。断片的で、混沌としていて、不正確なその性質は啓示だ」と評した[21]。

上映論争[編集]

2023年10月、この映画はベオグラード郊外のラザレヴァツ文化センターで開催されたセルビア・ベルドックス映画祭で上映される予定だった。10月10日、極右の超国家主義者であるセルビア急進党はこの映画を「キーウ政権の反ロシア宣伝映画」であり、「セルビア人の兄弟ロシアに対する態度を変えようとする西側の試み」であるとして上映の中止を求めた[22]。10月12日、映画祭運営側は上映を中止し、「ベルドックスはこの決定の背後にはおわず、与していない」と強調した[23]。

受賞とノミネート[編集]

『実録 マリウポリの20日間』は2023年サンダンス映画祭（英語版）のワールド・シネマ・ドキュメンタリー・コンペティション部門に出品された。ワールド・シネマは2023年1月にこの映画祭で行われた[24]。この映画はワールド・シネマ・ドキュメンタリー部門で観客賞を受賞した

その後も2023年の多くの賞を獲得した。平和のための映画賞（英語版）ではドキュメンタリー賞[25]、クリーブランド国際映画祭（英語版）ではスタンド・アップ賞を受賞した[26]。ウクライナでのプレミア上映はドキュディUA（英語版）で行われ、ナショナル・コンペティション・プログラムの主要賞を受賞した[27]。ニュージーランドのドキュメンタリー映画祭であるドク・エッジ（英語版）では監督賞（ミスティスラフ・チェルノフ）と編集賞（ミッチェル・マイズナー）を受賞した[28]。さらにシェフィールド・フォクフェスト（英語版）ではティム・ヘザリントン賞を受賞した[29]。

賞 開催日 部門 候補 決定 参照
アカデミー賞 2024年3月10日 国際長編映画賞 『実録 マリウポリの20日間』 最終選考15作品 [30]
サンダンス映画祭 2023年1月29日（英語版） ワールド・シネマ: ドキュメンタリー・コンペティション 『実録 マリウポリの20日間』 ノミネート [24]
ワールド・シネマ観客賞: ドキュメンタリー 受賞
平和のための映画賞（英語版） 2023年3月6日 価値あるドキュメンタリー賞 受賞 [25]
クリーブランド国際映画賞（英語版） 2023年4月1日 グレッグ・ガンド記念スタンド・アップ賞 受賞 [26]
ドク・エッジ（英語版） 2023年6月3日 国際作品賞 ノミネート [28]
国際監督賞 ミスティスラフ・チェルノフ 受賞
国際編集賞 ミッチェル・マイズナー 受賞
ドキュデイズUA（英語版） 2023年6月8日 ドキュ/ウクライナ・コンペティション審査員賞 『実録 マリウポリの20日間』 受賞 [27]
観客賞 受賞
シェフィールド・ドクフェスト（英語版） 2023年6月19日 ティム・ヘザリントン賞 受賞 [29]
アテネ国際映画賞 2023年10月9日 ドキュメンタリー賞 ノミネート [31]
ドキュメンタリー賞 - 特別賞 受賞 [32]
クリティクス・チョイス・ドキュメンタリー・アワード（英語版） 2023年11月12日（英語版） ドキュメンタリー作品賞（英語版） ノミネート [33]
[34]
第一回ドキュメンタリー作品賞（英語版） 受賞
政治ドキュメンタリー賞 受賞
ナレーション賞（英語版） ミスティスラフ・チェルノフ ノミネート
編集賞 ミッチェル・マイズナー ノミネート
ゴッサム・インディペンデント映画賞 2023年11月27日（英語版） ドキュメンタリー賞（英語版） 『実録 マリウポリの20日間』 ノミネート [35]
ナショナル・ボード・オブ・レビュー 2023年12月6日 トップ5ドキュメンタリー映画賞 受賞[注釈 1] [36]
ワシントンD.C.映画批評家協会賞 2023年12月10日（英語版） ドキュメンタリー賞（英語版） ノミネート [37]
シカゴ映画批評家協会賞 2023年12月12日 ドキュメンタリー賞（英語版） ノミネート [38]
ダラス・フォートワース映画批評家協会賞 2023年12月18日（英語版） ドキュメンタリー映画賞（英語版） 2位 [39]
トロント映画批評家協会賞 2023年12月17日（英語版） アラン・キング・ドキュメンタリー賞（英語版） 受賞 [40]
アストラ映画&クリエイティブ・アーツ賞（英語版） 2024年1月6日 ドキュメンタリー作品賞 ノミネート [41]
[42]
シネマ・アイ・オナーズ 2024年1月12日（英語版） ノンフィクション作品賞 ミスティスラフ・チェルノフ、ミッチェル・マイズナ、ラニー・アロンソン＝ラス、ダール・マクラッデン 未決定 [43]
デビュー賞 『実録 マリウポリの20日間』 未決定
観客賞 未決定
編集賞 ミッチェル・マイズナー 未決定
作品賞 ミスティスラフ・チェルノフ、ミッチェル・マイズナ、ラニー・アロンソン＝ラス、ダール・マクラッデン 未決定

脚注[編集]

  1. ^ この賞は単独の受賞ではなく、複数の作品を表彰するものである。

参考文献[編集]

  1. ^ a b “Program Guide — 20 Days in Mariupol”. Sundance Film Festival. 2023年1月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月10日閲覧。
  2. ^ Bradshaw, Peter (2023年10月4日). “20 Days in Mariupol review – searing film bears terrible witness to brutal siege” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/film/2023/oct/04/20-days-in-mariupol-review-searing-film-bears-terrible-witness-to-brutal-siege 2023年10月4日閲覧。 
  3. ^ Galuppo, Mia (2023年1月27日). “Sundance: 'A Thousand and One,' Nikki Giovanni Doc Take Top Jury Prizes”. The Hollywood Reporter. 2023年5月10日閲覧。
  4. ^ Goodman, Stephanie (2023年1月27日). “'A Thousand and One' and Nikki Giovanni Documentary Win at Sundance Film Festival”. The New York Times. 2023年5月10日閲覧。
  5. ^ Husted, Anne (2023年2月13日). “FRONTLINE, AP documentary '20 Days in Mariupol' wins Sundance Film Festival World Cinema Documentary Audience Award - FRONTLINE”. FRONTLINE. 2023年5月10日閲覧。
  6. ^ https://www.pravda.com.ua/eng/news/2023/12/8/7432286/
  7. ^ Horlach, Polina (2023年9月18日). “"20 днів у Маріуполі": обрали претендента на "Оскар-2024" від України”. 2023年12月25日閲覧。
  8. ^ Bergeson, Samantha (2023年12月21日). “2024 Oscar Shortlists Unveiled: ‘Barbie,’ ‘Poor Things,’ ‘Maestro,’ and ‘The Zone of Interest’ Make the Cut” (英語). IndieWire. 2023年12月22日閲覧。
  9. ^ Lewis, Hilary (2023年12月6日). “National Board of Review Names 'Killers of the Flower Moon' Best Film of 2023” (英語). The Hollywood Reporter. 2023年12月6日閲覧。
  10. ^ Ntim, Zac (2023年6月28日). “Dogwoof Takes International Sales Rights On Ukrainian War Doc '20 Days In Mariupol'” (英語). Deadline. 2023年7月13日閲覧。
  11. ^ “In '20 Days in Mariupol' Documentary, the Horrors of War Are Illuminated” (English). US News (2023年7月12日). 2023年8月2日閲覧。
  12. ^ “У прокат вийде українська стрічка, яку в Hollywood Reporter назвали "ударом під дих"”. Українська правда _Життя. 2023年8月2日閲覧。
  13. ^ “Що дивитися та слухати на фестивалі Bouquet Kyiv Stage 2023 в Софії Київській” (ウクライナ語). vogue.ua (2023年8月10日). 2023年8月25日閲覧。
  14. ^ “Львівський медіафорум запрошує на допрем'єрний показ фільму лауреата Пулітцерівської премії Мстислава Чернова” (ウクライナ語). www.ukrinform.ua (2023年8月22日). 2023年8月25日閲覧。
  15. ^ “Документальный фільм "20 днів у Маріуполі" підкорив український кінопрокат” (ウクライナ語). 62.ua - Сайт міста Донецька. 2023年10月1日閲覧。
  16. ^ “20 Days in Mariupol” (英語). Rotten Tomatoes. Fandango Media. 2023年12月16日閲覧。
  17. ^ “20 Days in Mariupol Reviews”. Metacritic. Fandom, Inc.. 2023年7月5日閲覧。
  18. ^ Harvey, Dennis (2023年1月21日). “'20 Days in Mariupol' Review: A Harrowingly Immediate Look at a City Under Siege”. Variety. 2023年5月10日閲覧。
  19. ^ Scheck, Frank (2023年1月21日). “'20 Days in Mariupol' Review: Harrowing Doc Chronicles Russian Siege of Ukrainian Port City”. The Hollywood Reporter. 2023年5月10日閲覧。
  20. ^ Myers, Randy (2023年1月25日). “What to watch: 'Shrinking' finds Jason Segel, Harrison Ford at their best” (英語). The Mercury News. 2023年7月10日閲覧。
  21. ^ Seitz, Matt Zoller (2023年7月14日). “20 Days in Mariupol movie review (2023) | Roger Ebert”. RogerEbert.com. Ebert Digital LLC. 2023年7月16日閲覧。
  22. ^ Golubović, Dragana (2023年10月10日). “ANTIRUSKA PROPAGANDA NIJE DOBRODOŠLA: Srpska radikalna stranka pozvala CK Lazarevac da otkaže promociju filma ukrajinskog novinara Černova” (セルビア語). BSC Happy Portal. 2023年10月18日閲覧。
  23. ^ “Dragi prijatelji Beldocsa” (セルビア語). Beldocs (2023年10月12日). 2023年10月18日閲覧。
  24. ^ a b “20 Days in Mariupol 2023 Sundance Film Festival”. Sundance Film Festival. 2023年12月25日閲覧。
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  26. ^ a b “Awards & Competitions | CIFF 47” (英語). CIFF. 2023年4月10日閲覧。
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  42. ^ “The 2023 Hollywood Creative Alliance’s (HCA) Astra Film And Creative Arts Award Winners”. Next Best Picture (2024年1月6日). 2024年1月7日閲覧。
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関連項目[編集]

外部リンク[編集]

批評[編集]

1942–1960
1961–1980
1981–2000
2001–2020
2021–
背景
ウクライナと
ロシアの関係
（紛争勃発以前）
ウクライナ紛争
(2014年-)
ロシア側の主張
軍事衝突の一覧
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ロシア国内
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その他
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占領地域
「住民投票」によって
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 ウクライナ
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ウクライナ国内
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