節足動物
| 節足動物 | ||||||||||||||||||
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現生および絶滅した様々な節足動物[注釈 1]
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| 地質時代 | ||||||||||||||||||
| カンブリア紀 - 現世 | ||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||
| Arthropoda Latreille, 1829 | ||||||||||||||||||
| 亜門 | ||||||||||||||||||
節足動物(せっそくどうぶつ、Arthropod)とは、節足動物門(Arthropoda)に属する動物の総称、昆虫類・甲殻類・クモ類・ムカデ類など、外骨格と関節を持つグループである。動物界最大の分類群で多様性の最も高い動物門であり[2][1][3][4]、現生種は約110万種と記載される全動物種の85%以上を占め[5]、陸・海・空・土中・寄生などあらゆる場所に進出して様々な生態系と深く関わっている。なお、いわゆる「虫」の範疇に入る動物は当動物門のものが多い[6]。
本動物門の関節に分かれた付属肢(関節肢)に因んで、学名「Arthropoda」はギリシア語の「arthron」(関節)と「pous」(脚)の合成である[7]。
目次
構造と形態[編集]
外部形態[編集]
節足動物の形態は多様化しており、分類群によって様々な外見を持つ。体の表面はキチン質とタンパク質等からなるクチクラ(cuticle)でできた外骨格(exoskeleton)で覆われる。成長に伴い体のサイズが大きくなるときには、脱皮により古い外骨格は脱ぎ捨てられ、新しい外骨格が形成される。節足動物は体節制をもつ動物門であり、体は体節(somite)という節単位の繰り返し構造からなる。体の背腹は、それぞれ背板(tergum)と腹板(sternum)という外骨格に覆われており、体節の両側で更に側板(pleuron)を持つ場合もある。表面を被うこれらの外骨格も体節単位になっており、体節の間は関節状に可動であることが多い。
ただし、複数体節の融合や分化など、いわゆる異規体節制(Heteronomous metamerism[8])がある程度以上発達し、例えば頭部や頭胸部はそれぞれの群で独特の複数体節が融合してできた合体節(tagma)であり、顎や触角など頭部に含まれる数対の付属肢は元々複数であった体節に由来である。こうして種類によって体節のうちの特定のものが組み合わされてひとつづきの外骨格で覆われる場合が多く見られ、外観上あるいは機能上の単位を構成する(tagmosis、tagmatization)。例えば、体を頭部・胸部・腹部(前体・中体・終体)の3部、または頭胸部・腹部(前体・後体)の2部に分けて呼ぶ場合があり、これは節足動物の各分類群ごとの特徴として用いられる。一部の分類群は、体の最後尾に尾節(telson)という尾のような構造をも備えている。なお、一部の寄生性の分類群は著しく特殊化しており、外見上では体節構造が全く見当たらいものがある。
付属肢[編集]
各体節からは、それぞれ一対の関節肢(arthropodized appendage)と呼ばれる付属肢が出ている。これが「節足動物」という名前およびその学名の由来となっている。関節肢も体と同様に外骨格で覆われ、関節に分かれた節(podomere)からなる。関節肢は分類群や備える部位によって歩脚・遊泳脚・鋏・鎌・顎・触角・鰓・生殖肢など様々な功能に応じて色んな形に特殊化している。例えば頭部には感覚用の触角と摂食用の顎、胴体には移動用の歩脚を持つなど、節足動物は、往々にして独自の機能を持った様々な関節肢を身に備え、「アーミーナイフのように、お互いに別の機能を持った複数の道具が同時にセットされる」とも比喩される[9]。また、節足動物は多くが口の直前に上唇(labrum)またはハイポストーマ(hypostome)という1枚の蓋状の構造体があり、これも付属肢由来の部分ではないかと思われる[10]。なお、上述の体節のように、寄生性甲殻類や昆虫の幼虫の中には、関節肢が不明瞭もしくは完全に退化消失する例がある。
軟甲綱の体制模式図:頭部には2対の触角と3対の顎・胸部には8対の胸肢・腹部には5対の腹肢と1対の尾肢をもつ
鋏型の第1脚、歩脚型の第2-4脚とヘラ状の第5脚(遊泳脚)をもつタイワンガザミ(ワタリガニ)
関節肢は、内肢(endopod)と外肢(exopod)をもつ二叉型付属肢(biramous appendage)が祖先形質であると思われる。しかし、現生節足動物の中にこの性質を明瞭に保留するのは甲殻類だけで、他の分類群においては内肢しか見られない単枝型付属肢(uniramous appendage)がほとんどである。外肢と内肢の他、付属肢の外側と内側がそれぞれ外葉(exite、epipod)と内葉(endite)という附属体を更に加えた場合もある。また、絶滅した三葉虫とマーレラなど、カンブリア紀の殆どの節足動物の歩脚はヒレ状の外肢(または外葉)と歩脚状の内肢からなる二叉型である。
内部構造[編集]
多くの左右相称動物と同様、節足動物は体腔を持ち、消化管は体の前後に貫通し、いわゆる口と肛門という2つ開け口を持つ。体節に貫通する紐状の心臓と中枢神経はそれぞれ体の背面と腹面に付く。
循環系は開放血管系であり、細胞外液はリンパ液や血液という区別は存在せず、リンパ液と血液の役割を兼ねている血リンパ(hemolymph)が心臓と組織の間隙(血体腔)に流れる。心臓の伸縮や体の運動によって血リンパは心臓の動脈から体の静脈と呼吸器などの器官を通り、心門を通じて再び心臓に戻る。血リンパの中には免疫系に関わる血球がある。
一部の前口動物のように、節足動物の神経系の様式ははしご形神経系(ladder-like nervous system)である。腹側の1対の神経索が体の前後に走り、体節に合わせて備えた神経節(ganglia)は、左右の連絡で繋がっている。頭部ないし頭胸部に備え、キノコ体(mushroom body)を持つ脳は、前大脳(protocerebrum)・中大脳(deutocerebrum)・後大脳(tritocerebrum)という3つの脳神経節から構成される。この脳は前端3つの体節(先節・第1体節・第2体節)と共に数対の神経節が融合した結果であり、そこから食道を囲んだ食道神経環(circumesophageal nerve ring)を通じて体の神経節に繋がる。一部の体節の融合が著しく、神経が集中してはしご形が不明瞭な場合もある。
感覚器[編集]
節足動物は様々な感覚器を通じて周りの環境を感知する。体表は常に剛毛(感覚毛、setae)をもち、種によっては触覚・振動・音・水流や気流・温度・匂いや味・化学物質など視力以外の感覚を持つ。 鋏角類以外の節足動物の頭部は、往々にして触角(Antenna)という関節肢をもち、ほとんどの場合は重要な感覚器官である。なお、触角のない鋏角類の中でも、ウデムシやサソリモドキの様に一部の歩脚が感覚器官に特殊化した例がある[11]。
他にも昆虫の小顎と下唇にある顎鬚は嗅覚や味覚に関わり、サソリの櫛状板・ヒヨケムシのラケット器官・一部の昆虫と甲殻類の後端にある尾毛(cercus、caudal ramus)も感覚器官として用いられており、コオロギやキリギリスの前足[12]・バッタの胸部と腹部の間に両側[13]・カマキリの後胸部腹面[14]には聴覚に関わる特殊な器官を持つ。
長い触角と尾毛をもつシミ
Zabalius aridus(キリギリス科)の前脚に備えた耳
触角のような第1脚をもつウデムシ
眼[編集]
節足動物は、単眼(ocelli、simple eye)と複眼(compound eye)という2つの種類の眼を持つことが基本である思われる。しかし分類によって片方しか持たず、複眼の単眼化、稀に視力が失なわれた種類もある。また、単眼の中に元から単眼だったものは背単眼ないし中眼(lateral eye)、複眼から退化したものは側単眼ないし側眼(median eye)とも呼ばれる。発生学的に、節足動物の眼は先節に備わる構造である[10]。
複眼は図形認識能力を備え、多数の個眼(ommatidium)という構成単位からモザイク画の様な視覚を産生する。単眼は主に明暗を感知する能力を持つが、一部のクモの単眼は図形認識能力を持ち、例えばハエトリグモの視力はよく発達しており、内部の網膜をも動かすことができる。
六足類と甲殻類は基本的に単眼と複眼を両方備える。多足類は背単眼を持たず、中にゲジは複眼、他のものは複眼由来の側単眼を持つ。鋏角類の中でカブトガニとウミサソリは単眼と複眼を両方備え、クモガタ類は複眼を持たず、背単眼と側単眼(中眼と側眼)を混在し、或いは片方のみを持つ。また、カンブリア紀の古生物から始め、三葉虫類や基盤的な節足動物と思われるアノマロカリス類も発達した複眼を持つ[15][16][17]。
運動[編集]
関節の隙間は可塑性をもつ関節膜(arthrodial membrane)に覆われており、2つの関節の外骨格内側に付着する筋肉を通じて運動をする。胴体の関節は様々な方向へ湾曲できることが多いが、関節肢の関節は往々にして1対の蝶番のような構造、いわゆる関節丘(ピボット、pivot)に固定されて一つの平面上でしか動かない。そのため節足動物の関節肢、特に基部は多数の節に分かれて様々な動きに対応する。また、外骨格は体の内側へ延長し、いわゆる内突起(apodeme)となり、筋肉に付着面を提供することも多い。例えばカニの鋏の中では、可動指の関節に繋がった、大量の筋肉が付着する板状の内突起が見られる。また、体中のリンパ液の水圧の変化によって関節肢を動かす分類群もある。
呼吸[編集]
節足動物は様々な生息環境に進出しており、それに応じた多様な呼吸様式がみられる。陸生種では気管や書肺、水生種では鰓をもつものがある。呼吸器官を持たず、体表でガス交換を行う種類もある。
- 六脚類は主に陸生で発達した気管を持ち、胸部と腹部のそれぞれの節に一対の気門を持つ。水生昆虫の中で一部の幼虫は、水中呼吸に用いられる鰓を持つ。
- 多足類は全て陸上性で、六脚類と似たような気管と気門で呼吸する。
- 鋏角類の中で、水生のカブトガニ類は後体の鰓脚における書鰓で呼吸をし、陸生のクモガタ類は主に書肺や気管(気門)を通じて行う。なお、ウミグモと一部のダニは呼吸器官を持たず、体表で直接的にガス交換を行う。
- 甲殻類は通常、付属肢における外葉などの附属体が鰓となって水中に呼吸する。陸生のワラジムシ亜目は腹肢にある白体(偽気管)で呼吸し、ヤシガニの鰓室は陸上での呼吸に用いられる無数の突起物がある[18]。
繫殖と発育[編集]
求愛行動・交尾或いは交接・メイトガード・護卵など、節足動物は分類によって様々な繁殖行動を持つ。原則として有性生殖を行う卵生動物であるが、サソリやアブラムシなどから単為生殖と卵胎生の例も知られる。
成長に伴い古い外骨格の下で新しい外骨格を形成し、脱皮(Ecdysis)を通じて古い外骨格から抜け出して成長する。新しい外骨格は柔らかく、固くなるのも時間が掛かり、脱皮直後の節足動物は無防備である。そのため節足動物の脱皮は常に隠れ場所で行うことが多い。中でも古い外骨格を摂食して栄養を回収する種類や、一部のクモは脱皮直後のメスを狙って交接することが知られる。
節足動物の幼生は基本的に成体と似たような外見を持つだが、甲殻類のノープリウス幼生や昆虫の幼虫など、成長の過程で著しく形態が変化する変態を行う分類群も少なくない。昆虫の成虫になる脱皮過程は羽化(Eclosion)と呼ばれる。多足類の中には、成体になるまで脱皮に伴って体節と脚の数を増やせるものがある。
護卵するムカデ
幼生を背負するサソリ
羽化直後のアブラゼミ成虫
ヒョウモンドクチョウの生活環
他の動物門との関係性[編集]
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| 節足動物の系統的位置。 |
節足動物と他の動物門の類縁関係については、長く議論されていた。 以前は、前口動物であること、体節制を持つことなどの共通点から、環形動物に近縁であると考えられた。そして舌形動物・有爪動物・緩歩動物という3つの動物門は、両者の中間形態を示唆するものと思われ、側節足動物(Parathropoda)としてまとめられた。こうして、環形動物・側節足動物・節足動物という体節制をもつ3つの動物群は、体節動物(Articulata)という単系統群を構成すると考えられた。その中でも有爪動物と緩歩動物は、節足動物に分類される経緯もあった[19][20]。
しかしその後は、発生学・分岐分類学・分子系統学・分子遺伝学など多方面の情報により、環形動物は節足動物に類縁でなく、むしろトロコフォア幼生を共有する軟体動物などと共に単系統群の冠輪動物に属するものであると判明した。したがって体節制という共通点は、単なる前口動物の共有原始形質か、あるいは収斂進化の結果と思われ、節足動物と環形動物の類縁関係は否定的になった[21][22]。舌形動物は、のちにウオジラミに近縁の節足動物であると解明されており、緩歩動物と有爪動物も、他の動物門より節足動物に近縁と見なされるようになった。やがて、側節足動物も多系統となり、否定された。
21世紀現在、節足動物・有爪動物・緩歩動物という3つの動物門の単系統性が有力視され、まとめて汎節足動物(Panarthropoda)になる[23][24][25]。これらはさらに鰓曳動物や線形動物など(環神経動物 Cycloneuraliaとも言う)に加えて、脱皮動物(Ecdysozoa)という単系統群を構成する[2][26]。
なお、有爪動物と緩歩動物にはいずれも節足動物のみに共通の形質が見られ、それをはじめとして汎節足動物の内部系統関係は諸説に分かれる[27]。この議論の詳細については汎節足動物#内部系統を参照のこと。
起源[編集]
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| 予想された節足動物のステムグループの系統関係。[28][10][19] |
アノマロカリスとオパビニアをはじめとして、カンブリア紀の化石からは、節足動物に類縁する思われるものの、現在の分類では所属場所が見あたらない、最初期の節足動物の系統発生を示唆するものがある[29][30]。その中でも、アノマロカリス類と節足動物の類縁関係は広く注目されていた[31][32]。同時期の節足動物の化石記録のうち、三葉虫類は最も早期で、おそよ5億2,100万年前に出現するが、5億3,700万年前にも遡る節足動物の生痕化石(Rusophycusなど)が見つかっており、更なる早期な起源を示唆する[1]。
アノマロカリス類やオパビニアなどDinocaridida綱のものは、シベリオン類などの葉足動物に次ぐ、節足動物全般の最初期の脇道系統(ステムグループ)に位置する基盤的な節足動物と考えられ、節足動物は葉足動物から派生したグループであることが示唆される[10][19]。これらの学説の詳細はアノマロカリス類#分類、葉足動物#節足動物との関係性および恐蟹綱#系統関係を参照のこと。
上述の群に次いた脇道系統には、全身の硬質な外骨格、全ての付属肢が関節肢であることや複数体節からなる頭部など、いわゆる「真正の」節足動物(真節足動物、Euarthropoda)として基本である形質を備えたフキシャンフィア類、およびイソキシスやカナダスピスなど「"bivalved forms"」として便宜上にまとめられるものが位置すると考えられる。これらの節足動物をはじめとして、前大脳に対応(前大脳性 protocerebral、先節由来)する付属肢らしい構造は見当たらず(もしくは上唇に特殊化、後述参照)、第1対の付属肢の神経は中大脳に対応(中大脳性 deutocerebral、第1体節由来)であることに因んで、「Deuteropoda」という広義上の真節足動物のクレードを構成する[10][19]。
分類[編集]
系統関係と体節の相同性[編集]
現生の節足動物は、鋏角亜門(クモガタ類、カブトガニ類など)・多足亜門(ムカデ、ヤスデなど)・甲殻亜門(甲殻類)・六脚亜門(昆虫など)という4つの亜門に分類されている。化石種まで範囲を広げれば、三葉虫を含んだArtiopoda亜門という過去の大グループや幾つの系統関係が明らかになっていない分類群も存在した。
特に注目されるのは、前端体節の融合による頭部(真鋏角類の場合は前体)の付属肢である。その構造は主に亜門によって以下のパターンがある。
- 六脚類:触角1対・大顎1対・小顎1対・下唇1個(1対の小顎から癒合した部分)
- 多足類:触角1対・大顎1対・小顎2対
- 甲殻類:触角2対・大顎1対・小顎2対
- 鋏角類(真鋏角類):鋏角1対・触肢1対・歩脚4対
- 鋏角類(ウミグモ類):鋏肢1対・触肢1対・担卵肢1対・歩脚1対
- Artiopoda類:触角1対・歩脚3対以上
これらの付属肢の対応関係(相同性)は、節足動物の内部系統や他の汎節足動物との関係性を大きく左右する的とされ、そこから繰り広げた議論は「Arthropod head problem」として知られている[10]。
古典的な知見では、鋏角類の触角を欠くという特徴は二次的退化と考えられ、多足類と六脚類は近縁とされてきた。しかしこれらの知見は、後に発生学・神経解剖学・分子遺伝学・分子系統学など多方面の情報に否定され、代わりに鋏角類の鋏角は大顎類の第1触角に相同であるとされ[33]、多足類と六脚類の直接の関連も支持されず、むしろ六脚類は側系統群である甲殻類から分岐したという結果が出ている(汎甲殻類仮説)[34][35][36][37][38]。また、通常では鋏角類とされるウミグモ類の系統位置がしばしば疑問視される。分子系統解析によって、鋏角類であることを支持するものが多い[39]が、それ以外の節足動物と対置すべき説もある[36][40]。
三葉虫類をはじめてとして、幾つかの絶滅した節足動物の分類群と現存分類群の類縁関係については、未だに定説がない[2]。例えば三葉虫などを含んだArtiopoda類は、鋏角類に類縁の説はあったが、頭部体節の構成と触角を持つなど性質に基づいてむしろ大顎類に類縁ではないかという見解もあり[41][42]、また鋏角類と大顎類より基盤的な節足動物という説もある[2]。Megacheira類に関しては、フキシャンフィア類に次ぐ真節足動物のステムグループに位置し[10]、または脳の構造に基づいて基盤的な鋏角類と見なす[43]、などの説がある。
こうした研究の発展に伴い、節足動物の高次系統に対して様々な系統仮説が与えられており、以下の例が挙げられる[20]。
- 多足類・甲殻類・六脚類からなる。大顎を持つことが共有形質とされる。
- 汎甲殻類 Pancrustacea(=八分錘類 Tetraconata)
- 甲殻類と六脚類からなる。複眼の八分割される硝子体などが共有形質とされる。
- Myriochelata(=Paradoxopoda)
- 多足類と鋏角類からなる。
- 甲殻類と鋏角類からなる。ニ叉型付属肢が共有形質とされる。
- 無角類 Atelocerata(=気門類 Tracheata、狭義の単肢類 Uniramia sensu stricto)
- 多足類と六脚類からなる。気門や頭部の付属肢構成などが共有形質とされる。
- Artiopoda類と鋏角類からなる。
- Artiopoda類・多足類・甲殻類・六脚類からなる。中大脳性(第1体節由来)の第1触角を持つことが共有形質とされる。
2019年現在、節足動物は有爪動物を含まない単系統群であることや、大顎類説、汎甲殻類説、およびウミグモ類が鋏角類に含まれる説が広く認められる[2]。
| 節足動物の内部系統関係 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 節足動物の各亜門(太字)の類縁関係とその内部高次系統をまとめた分岐図。六脚亜門以外の汎甲殻類は側系統の甲殻亜門に属する。系統位置が不安定なものは、ここで複数分岐としてまとめられる。 |
また、節足動物の胚発生に見られる眼と前大脳を備わった最前方の節、いわゆる先節には付属肢を持たないというのは従来の判断であった。しかし、多くの節足動物の口の前にある蓋状の構造、いわゆる上唇またはハイポストーマは、著しく融合、退化した先節由来の1対の付属肢であるという知見はのちに有力視され[44][45][10]、有爪動物の触角やアノマロカリス類の前部付属肢との相同性も注目される[10][31]。
| 分類/体節 | 先節 (前大脳) |
1 (中大脳) |
2 (後大脳) |
3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 六脚類 | 上唇 * | 触角 * | (退化)* | 大顎 * | 小顎 * | 下唇 * | 第1脚 |
| 甲殻類 | 上唇 * | 第1触角 * | 第2触角 * | 大顎 * | 第1小顎 * | 第2小顎 * | 第1脚 |
| 多足類 | 上唇 * | 触角 * | (退化)* | 大顎 * | 第1小顎 * | 第2小顎 * | 第1脚 |
| 鋏角類(真鋏角類) | 上唇 * | 鋏角 * | 触肢 * | 第1脚 * | 第2脚 * | 第3脚 * | 第4脚 * |
| 鋏角類(ウミグモ類) | ? * | 鋏肢 * | 触肢 * | 担卵肢 * | 第1脚 * | 第2脚 | 第3脚 |
| Artiopoda類 | ハイポストーマ * | 触角 * | 第1脚 * | 第2脚 * | 第3脚 * | 第4脚 | 第5脚 |
| Megacheira類 | ハイポストーマ * | 大付属肢 * | 第1脚 * | 第2脚 * | 第3脚 * | 第4脚 | 第5脚 |
| フキシャンフィア類 | ハイポストーマ * | 触角 * | SPAs * | 第1脚 | 第2脚 | 第3脚 | 第4脚 |
| アノマロカリス類[46] | 前部付属肢 * | 鰭 | 鰭 | 鰭 | 鰭 | 鰭 | 鰭 |
| 緩歩動物[46] | 歯針 * | 第1脚 | 第2脚 | 第3脚 | 第4脚 | - | - |
| 有爪動物[47] | 触角 * | 顎 * | 粘液腺 | 第1脚 | 第2脚 | 第3脚 | 第4脚 |
| 葉足動物[46] | 触角/前部付属肢 * | 第1脚 | 第2脚 | 第3脚 | 第4脚 | 第5脚 | 第6脚 |
下位分類[編集]
節足動物は記載された種数の最も多い動物門である[1][3][4]。その数はほとんどの動物種だけでなく、真核生物の大部分をも占める[3][48]。2011年現在、100万種以上の六脚類・11万種以上の鋏角類・6万種以上の甲殻類・1万種以上の多足類という計120万種以上の現生節足動物が記載された[4][49]。また、絶滅した三葉虫も大きなグループであり、1万種以上が記載された[50]。
ウミグモの1種
- 甲殻亜門 Crustacea(側系統群)
- 貝形虫綱 Ostracoda - 貝虫(カイミジンコ)
- ヒゲエビ亜綱 Mystacocarida - ヒゲエビ
- イクチオストラカ綱 Ichthyostraca[51]
- 軟甲綱 Malacostraca - シャコ、カニ、エビ、オキアミ、ダンゴムシなど
- 六齢ノープリウス綱 Hexanauplia[51]
- 鞘甲亜綱 Thecostraca - フジツボ、エボシガイ、フクロムシなど
- ヒメヤドリエビ亜綱 Tantulocarda
- 橈脚亜綱 Copepoda - カイアシ(ケンミジンコ)
- 鰓脚綱 Branchiopoda - アルテミア、ホウネンエビ、カブトエビ、カイエビ、ミジンコなど
- カシラエビ綱 Cephalocarida - カシラエビ
- ムカデエビ綱 Remipedia - ムカデエビ
絶滅した分類群(ステムグループ含む)[編集]
- †(綱和訳なし)Dinocaridida - アノマロカリス類、オパビニアなど
- †(目和訳なし)Hymenocarina - オダライア、カナダスピスなど
- † フキシャンフィア目 Fuxianhuiida[28] - フキシャンフィアなど
- †(綱和訳なし)Megacheira - ヨホイア、ハイコウカリス、レアンコイリアなど
- †(綱和訳なし)Marrellomorpha - マーレラなど
- †(亜門和訳なし)Artiopoda[52][53]
- †(上綱和訳なし)Vicissicaudata - シドネイア、光楯類など
- †三葉形類 Trilobitomorpha
- †(和訳なし)Petalopleura - シンダレラ、シャンダレラなど
- †(和訳なし)Nektaspida - ナラオイアなど
- †(和訳なし)Conciliterga - クアマイア、サペリオンなど
- †三葉虫綱 Trilobita - 三葉虫
様々なMegacheira類
三葉虫の1種
旧分類[編集]
分子系統学、分岐分類学が盛行する以前には、形態に基づく以下の分類が使用されていた。流通している書籍と文献にもこの分類にしたがっているものも多い。よって参考・比較のため、また生物学史上の意義もあり、以下に併記する。
人間との関わり[編集]
この節の加筆が望まれています。 (2019年1月) |
食文化[編集]
販売される蜂蜜
節足動物は人間の食文化と深く関わっている。食材とされ、食品の生成に関わり、および食害を与えるものがある。
食材とされる節足動物の中で甲殻類は特に代表的で、カニ・エビなどの十脚類は魚介類として一般的である。それ以外の甲殻類、例えばアミ、オキアミ、フジツボなどにも食用とされる場合がある。ムカデ・クモ・サソリ、および昆虫など一般に「虫」と扱われる節足動物の中でも、地域によっては食材とされる種類がある(昆虫食)。また、特定の節足動物に頼ってできた食品もあり、蜂蜜(ミツバチによる)やミルベンケーゼ(チーズダニによる)[54]などが挙げられる。
一方で、人間の食材や食品を食害する節足動物もあり、特に農作物を食害するものは農業害虫に含まれる。このような害虫とされる種類を持つ節足動物は、バッタ(蝗害など)・カメムシ(ミナミアオカメムシなど)・アブラムシ・甲虫(コクゾウムシなど)・鱗翅類(農作物を食害するイモムシとケムシ)などの昆虫のみならず、ダニ(ハダニなど)・ヤスデ[55]にも食害を与える種類がある。
飼育[編集]
節足動物はペットや観察の対象として飼育されることが多い。その範囲は幅広く、陸生の昆虫やクモガタ類から水生の甲殻類まで及ぶ。観賞用に飼育される主な節足動物は、甲虫(カブトムシ、クワガタムシなど)・エビ(ザリガニなど)・オオツチグモなどが挙げられる。一部の分類群に対しては、それに向いている累代飼育方法や関連産品が創設され、また節足動物そのものが飼育キットとセットで販売されることもある(カブトエビ、アルテミアなど)。
医学[編集]
ヒトに対して、刺咬・吸血・接触・寄生・媒介などにより疾患を発生させ、衛生害虫に含まれる節足動物があり、以下の例が挙げられる[56]。
- 刺咬性のもの
- 吸血性のもの
- 接触性のもの
- 鱗翅類(鱗翅目/チョウ目) - ドクガやチャドクガなどの毒針毛による皮膚炎[60]。イラガなどの毒棘による皮膚炎[60]。
- 甲虫類(鞘翅目/コウチュウ目) - アオバアリガタハネカクシから分泌されるペデリンによる皮膚炎[60]。アオカミキリモドキなどから分泌されるカンタリジンによる水疱性皮膚炎[60]。ミイデラゴミムシから噴射されるガスに含まれるベンゾキノンによる皮膚炎[60]。オサムシ類やマイマイカブリから噴射されるメタアクリル酸による皮膚炎[60]。
- カメムシ類(半翅目/カメムシ目) - クサギカメムシの分泌液による皮膚炎[60]。
- サソリモドキ類(クモガタ綱サソリモドキ目) - アマミサソリモドキやタイワンサソリモドキから噴射される酢酸を含む液体による皮膚炎[60]。
注釈[編集]
- ^ 左上:三葉虫のコリハペルティス(Kolihapeltis sp.)、右上:ウミサソリのスティロヌルス(Stylonurus powriensis)、左中:サソリの1種(Scorpio maurus palmatus)、右中:カニの1種(Callinectes sapidus)、左下:ムカデの1種、右下:チョウの1種トラフアゲハ(Papilio glaucus)
出典および脚注[編集]
- ^ a b c d Daley, Allison; Antcliffe, Jonathan; Drage, Harriet; Pates, Stephen (2018-05-21). “Early fossil record of Euarthropoda and the Cambrian Explosion”. Proceedings of the National Academy of Sciences 115: 201719962. doi:10.1073/pnas.1719962115.
- ^ a b c d e Giribet, Gonzalo; Edgecombe, Gregory D. (2019-06-17). “The Phylogeny and Evolutionary History of Arthropods”. Current Biology 29 (12): R592–R602. doi:10.1016/j.cub.2019.04.057. ISSN 0960-9822.
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