ラガニア

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ラガニア
生息年代: 505.0 Ma
ROM-BurgessShale-LagganiaCambriaFossil.png
バージェス頁岩塁層から発見されたラガニアの化石(カナダはオンタリオ州ロイヤルオンタリオ博物館所蔵)
保全状況評価
絶滅(化石
地質時代
約5億0,50万年前
古生代カンブリア紀中期)
分類
: 動物界 Animalia
上門 : 脱皮動物上門 Ecdysozoa
階級なし : 汎節足動物 Panarthropoda
: 節足動物門 Arthropoda[1]
: 恐蟹綱 Dinocaridida
: 放射歯目 Radiodonta
亜目 : アノマロカリス亜目 Anomalocarida
: フルディア科 Hurdiidae[2]
: ラガニア属 Peytoia
学名
genus Peytoia 
Walcott1911
タイプ種
Peytoia nathorsti
Walcott1911
シノニム
和名
ラガニア

ラガニアLaggania)、またはペユトイアPeytoia [3])は、カンブリア紀の海に生息していたバージェス動物群の古生物である。アノマロカリスと共に、アノマロカリス類の代表的な1である。

形態[編集]

2009年までの知見に従ったラガニアの復元模型、背面の櫛状構造と後方に位置する眼が組み込まれでいる。
バージェス動物群のスケール比較
Anomalocaris canadensis アノマロカリス・カナデンシス 
Laggania cambria ラガニア・カンブリア 
Opabinia regalis' (オパビニア・レガリス) 
Wiwaxia corrugata ウィワクシア・コルガタ 
Pikaia gracilens ピカイア・グラキレンス 
Hallucigenia sparsa ハルキゲニア・スパルサ

尾鰭のない楕円形の体、頭部の後方に付いた眼など、通常のアノマロカリス類よりもコンパクトなシルエットを持つ。同じく最初期に発見され、流線的な姿を持ったアノマロカリスとは対照的である。 発見された全身化石は15㎝しか及ばないが、散在する化石部位の大きさから推測すると、最大はおよそ50㎝にも当たる大型種である[4]

胴体[編集]

上下に扁平で、ラグビーボールのような楕円形の体形をしている。頭部は全長の⅓を占めるほど大きく、短い眼柄に支えられた1対の眼はその後端の両側に備える。多くのアノマロカリス類とは異なり、頭部の背面には殻のような硬組織を持たず、その外縁部らしき組織は腹側の化石のみに見られる[5]

胴体は11節からなり、それぞれの背側には「setal blades」という鰓として考えられた一連の櫛状構造が体節の前縁部に沿って繋がっている。かつて、その繋ぎ目からできた筋は胴体腹側の部位として復元された[3]。尾端は単純の鈍い突起であり、尾鰭や尾毛などの附属体は一切ない[5]

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体節に応じて、11対の(ひれ)は胴体部の腹側から両側に向かって張り出す。それぞれの鰭の前半部の領域には数本の筋のような構造がある[5]。鰭の幅は、中央部の最も発達した1対から体の両端へ向けて次第に短くなって、菱形のような形を描く。

2014年の再検討により、本種の鰭は腹側の11対だけではなく、エーギロカシスの様に、背側にも小さな鰭が1節に1対ずつあることが明らかになった。本種の原記述において、その背側の小さな鰭を示し、化石に見られる小さな三角形の跡は鰓の塊として見間違いされた[2]

前述の通り、胴体の尾端は特殊化した尾鰭を持たない。頭部の腹側にはもう3対の小さな鰭が加えて、幅広い頭部に覆われる[3]

触手[編集]

触手(大付属肢)はごく短く、全体は櫛状に近い形態である。11節に分かれ、2列の棘がそれぞれ触手の背側と内側に沿って走り、第2-6節の腹側には5本のブレード状の突起がある。 本種の触手は、フルディアのものとして混同される時期があった[6]

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“輪切りのパイナップル”とも喩えられる典型的な「ペユトイア口」は、触手に次ぐ、頭部腹側の前端付近に位置する。32個の歯に囲まれ、そのうち発達した4つの歯は十字に並び、残りの28個の細い歯はその四辺の間隔に7個ずつ並んでいる。本属の化石において、この「ペユトイア口」は円形から楕円-長方形に近い形態まで保存された例が存在する[7]

生態[編集]

コンパクトな体付き、短い触手、眼が後方に付くなどの特徴は活発な捕食生活に不向きとされ、ラガニアを濾過摂食者として考える学者もいる[8]。しかしその一方、触手の構造を分析し、ラガニアはフルディアと共に、比較的に大型の底生性動物を摂る捕食者と見なす知見もある[9]

発見史[編集]

アノマロカリスと同じく、ラガニアは複雑な発見史を持ち、発見初期は体のそれぞれの部分が別の生物として考えられた。

1911年、歯をもつ胴体の化石はナマコの一種として考え、Laggania cambriaと名付けられた。そして触手の部分は “Appendage F”と名付けられ、別の古生物であるシドネイアの付属肢とされた。1978年から、胴体の化石はカイメン(胴体)に付着したクラゲ(口)Peytoia nathorstiとされ、“Appendage F” を所属する節足動物が不明の付属肢として考えられた[4]

1980年代から、アノマロカリス類の全身化石が発見され、この動物群の基本体制が明らかになった。しかしながら、当時の復元はアノマロカリスとラガニアの特徴を組み合わせたものであった。その後、本種はアノマロカリスAnomalocaris canadensis)とは同属の Anomalocaris nathorsti として考えられた。1996年、本種とアノマロカリスの相違点が認められ、元々の胴体部を示す学名を採用し、別属のアノマロカリス類 Laggania cambria として名付けられた[4]

長い間、本属の学名は「Laggania」として知られていた。しかし同一の文献により献名した「Laggania」と「Peytoia」は、1978年においてそのうちの「Peytoia」はSimon Conway Morrisに有効の学名として選ばれた。動物命名法国際審議会のルールに従って「Peytoia」は有効であり、「Laggania」はそのシノニムとして含められた[10][11]

分類[編集]

ラガニア属はエーギロカシスフルディアなどと共に、フルディア科Hurdiidae)のアノマロカリス類として分類された。 下位分類について、ラガニア属はタイプ種であるラガニア・カンブリア (Laggania cambria、現Peytoia nathorsti)の他に、もう1つの種 Peytoia infercambriensis が知られる。後者は、触手の化石のみが発見されている[12]

脚注[編集]

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  1. ^ 真節足動物のステムグループとされる、詳しくはアノマロカリス類#分類を参照。
  2. ^ a b Van Roy, Peter; Daley, Allison C.; Briggs, Derek E. G. (2015). “Anomalocaridid trunk limb homology revealed by a giant filter-feeder with paired flaps”. Nature 522: 77–80. doi:10.1038/nature14256. PMID 25762145. 
  3. ^ a b c Morphology of Anomalocaris canadensis from the Burgess Shale
  4. ^ a b c Laggania - Fossil Gallery - The Burgess Shale
  5. ^ a b c Hurdiid radiodontans from the middle Cambrian (Series 3) of Utah
  6. ^ The morphology and systematics of the anomalocarid Hurdia from the Middle Cambrian of British Columbia and Utah
  7. ^ The Anomalocaris Homepage | Species Accounts III - Anomalocaris canadensis & Laggania cambria
  8. ^ Dzik, J. and Lendzion, K. 1988. The oldest arthropods of the East European Platform. Lethaia, 21, 29–38.
  9. ^ Reconstructing anomalocaridid feeding appendage dexterity sheds light on radiodontan ecology
  10. ^ Conway Morris, S. (1978). “Laggania cambria Walcott: A composite fossil”. Journal of Paleontology 52 (1): 126–131. 
  11. ^ Daley, A. and Bergström, J. (2012). "The oral cone of Anomalocaris is not a classic 'peytoia'." Naturwissenschaften, doi:10.1007/s00114-012-0910-8
  12. ^ Daley, A. C.; Legg, D. A. (2015). “A morphological and taxonomic appraisal of the oldest anomalocaridid from the Lower Cambrian of Poland”. Geological Magazine 152 (5): 949–955. doi:10.1017/S0016756815000412. 

関連項目[編集]