カブトガニ類

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カブトガニ類
生息年代: Ordovician–現世
オルドビス紀現世
Origin of Vertebrates Fig 005.png
様々なカブトガニ類[注釈 1]
地質時代
オルドビス紀 - 現世
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
階級なし : 真鋏角類 Euchelicerata
: 節口綱 Merostomata
: カブトガニ目剣尾目Xiphosura
学名
Xiphosura
Latreille, 1802
シノニム
Merostomata
Dana, 1852
和名
カブトガニ
カブトガニ類
剣尾類
英名
Horseshoe crab
King crab
Xiphosuran
下位分類群

カブトガニ類、または剣尾類(Xiphosuran、horseshoe crab)は、鋏角亜門カブトガニ目剣尾目Xiphosura)に属する節足動物の総称である。一般にカブトガニ(兜蟹、鱟)と総称されるが、この呼称は本群の1種 Tachypleus tridentatus を指す和名でもある。鋏角類に分類されており、すなわち名前に反してカニなどの甲殻類ではない

現生のカブトガニ類は4種のみ知られるが[1]化石種まで範囲を広げると80種以上をも含んだ大きなグループである[2]。カブトガニ類はオルドビス紀で既に出現し、正式に記載されるものはおよそ4億4500万年前(ヒルナント期[3]、命名がなされていない化石まで範囲を広げるとおよそ4億8000万年前(トレマドッグ期)まで遡れる[4][5]。現生のカブトガニ類はいくつかの化石種に似通った姿を持ち、いわゆる「生きている化石」の代表的な生物として知られている。

カブトガニ類の分類の内部構成については、従来通りハラフシカブトガニ類Synziphosurina)を含んだ「広義のカブトガニ類(Xiphosura sensu lato)」と、2013年で再定義され、それを除いた「狭義のカブトガニ類(Xiphosura sensu stricto)」がある[6][2]。本項目では主に前者について扱う。

なお、カブトガニ類と大まかな姿が似通った生きている化石として知られ、しばしばカブトガニ類と混同されるカブトエビは甲殻類であり、鋏角類であるカブトガニ類とは別物である。

名称[編集]

学名「Xiphosura」はのような尾節に由来し、ギリシャ語の「Xiphos」()と「uros」()の合成である[7]

カブトガニ類は鋏角類であり、甲殻類カニではない。しかし、各地域のカブトガニ類への呼称に「カニ」(蟹、crab)を含むことが多く、以下の例が挙げられる。

  • 和名は「カブトガニ」と言い、これは日本に分布する唯一のカブトガニ類 Tachypleus tridentatus の標準和名でもある[8]。漢字転写は「」、「兜蟹」などがある。カブトガニ類に当たる分類群「剣尾目」に因んで「剣尾類[9]」とも言う。
  • 英語では蹄鉄の形に似た背甲に因んだ「horseshoe crab」他に、「king crab[7]や、本群の学名 Xiphosura に因んだ「xiphosuran」という学術的な総称もある[6]
  • 中国語では「」や「馬蹄蟹」の他に、雌雄が前後で繋ぐことから「夫妻」や「鴛鴦」とも呼ばれる[10]

形態[編集]

カブトガニ類の身体は、前体(prosoma)と後体(opisthosoma)の2部によって構成され、終端は棘状の尾節(尾剣[11] telson)を持つ。全ての付属肢関節肢)は腹側にあり、幅広い体に覆われる。現存種はいずれも数十cmに及ぶ大型の節足動物であるのに対して、古生代の化石種は数cm程度のものが多い。また、外見と生態がいずれもよく似通う現存種[12]に比べて、化石種、特に中生代のものは比較的に多様化していた[6]

前体[編集]

サソリ(左)とアメリカカブトガニ(右)の前体付属肢比較図
I:鋏角
II:触肢
III-VI:歩脚
アメリカカブトガニの前体断面図

前体(頭胸部)は先節と第1-6体節の癒合によって構成された合体節である。往々にして幅広い半円形ないし三日月のような形をしており、歩脚を覆うドーム状の背甲(carapace)となる。背面の両側と中心は、それぞれ1対の複眼(側眼 lateral eye)と単眼(中眼 median ocelli)がある。現存種の場合、複眼の直後・単眼の間・腹側の口の前という3つの所からは、それぞれ1対の特殊な眼(larval eye)の存在が確認でき、そのうち腹側のものは腹眼(腹側眼[11] ventral eye)とも呼ばれる[13]ハラフシカブトガニ類の場合、ほとんどの種類は眼を欠くと考えられる[5]

カブトガニ類の背甲の背面は眼以外にも様々な特徴をもつ。複眼の上側には眼部隆起線(opthalmic ridge)[11]が走り、後縁の中心には心葉(cardiac lobe、または心域 cardiac region)[11]という盛り上がった領域があり、両後側から突き出した部分は後角(posterior angle)[11]、頬棘(genal spine)[14]、または側棘(lateral spine)[14]と言う。これらの特徴は分類群によって形や発達具合が異なり、カブトガニ類の系統関係を示すのに重要視される形質である[6][15]

前体における6対の付属肢関節肢)は全て背甲の下の中心付近で接しており、口はその間に開いている。口と上唇の前にある第1対の付属肢は、摂食に用いられる短い型の鋏角である。次の5対は歩脚型の付属肢であり、先端がとなるものが多い。そのうち最初の1対は触肢であるが、クモガタ類のように特殊化せず、歩脚との区別はほぼない。ただし雄の場合、この付属肢1対のみ、もしくは次の歩脚と共に2対が、雌を包接するため先端が太い鉤爪状の構造(把持器[11] clasper)へ特殊化したものがある。現生種の場合、最後の1対の脚の基節は「櫂状器」(flabellum)という葉状の外肢があり、脚先は「へら状器」(spatulate organ)[11]という4枚の板状構造を持つことが確認できる[16]。また、それぞれの歩脚の基節は、口を囲んだ顎基(gnathobase)という摂食に用いられるノコギリ状の突起がある。

後体[編集]

後体は体節に分かれ、後体第1節由来の「第6対の脚」をもつとされるウェインベルギナ
アメリカカブトガニの鰓脚の表側 (A) と書鰓のある裏側 (B)

後体(腹部)は9-11節(第7-15/17体節)を含め、多くの場合は前体より横幅が狭い。派生的にはカブトガニ類(カブトガニ亜目 Xiphosurida)の場合、第7体節以外の後体の全ての体節は癒合して「thoracetron」という1つの合体節をなしているが、基盤的化石群、いわゆるハラフシカブトガニ類ではほぼ全てが可動の体節に分かれる[16][5]。カブトガニ亜目の中で、後体の両脇に縁棘(marginal spine)[11]と呼ばれる6対の可動の棘(movable spine)を持つ例が多い[17]

カブトガニ類の後体第1節(第7体節)は、往々にして外見上から完全に消失するほど退化しており、現存種からは、この体節は前体へ癒合し、唇様肢(chilarium)と呼ばれる後脚の間に位置する摂食用の短い付属肢を持つことが確認できる[16][6]。しかし、ほとんどの化石種の第7体節/付属肢の詳細は不明で、一部のハラフシカブトガニ類においては独立した退化的な背板(microtergite)が見られる[6]。中でもウェインベルギナは、この部分が前体のとほぼ同形の脚を持っていたと考えられる[18][19][16]。これらの性質により、この体節は機能的にむしろ前体的であり、前体の一部と扱うべきことも検討される[16]

次の後体第2-7節(第8-13体節)は、6対の蓋板(operculum)という平板状の付属肢を持ち、基本的には幅広い外肢と指のような短い内肢からなる二叉型付属肢である[6][16]。最初の1対は左右癒合した生殖口蓋(genital operculum)と言い、裏側の基部は1対の生殖孔が開き[6]、卵や精子はそこから排出する。次の5対は鰓脚(branchial appendage または gill operculum)であり、それぞれの外肢の裏側は、まるで本のページのように畳んだ呼吸用の書鰓がある[6]

後体の尾端に当たる肛門の直後は1本の棘状の尾節が伸び、「尾剣」や「cadual spine」とも呼ばれ、上下と左右方向で運動できる。カブトガニ亜目の尾節は往々にして全長の半分以上を占めるが、ハラフシカブトガニ類の尾節はそれに対しやや短い[16]

内部構造[編集]

カブトガニ類の神経系(1枚目)と背側の循環系(2枚目、赤)

液体状の物質しか摂食できない他の多くの現生鋏角類とは異なり、カブトガニ類は固形状の食物を摂ることに適した特殊な消化器を持つ[20]

前体腹側にあるは後方に向かって開き、クチクラに覆われる食道は前方へ伸びる。前体の前縁付近からは、Uターンのように、上向きに大きく曲がり返した前胃がある。前胃は素嚢筋肉の発達した砂嚢からなり、食物を細かく砕き、殻や骨などの食べられない物質はここから口へ噴き返す。砂嚢の直後は細くなり、幽門弁へ接続する。幽門弁から肛門付近の直腸までの消化管は長い中腸でつながっており、その両側は体の大部分を占めた盲腸中腸腺)がある。消化酵素はここで分泌され、食物を分解し、栄養を吸収する[21]

循環系は発達している。背側の縦長い心臓から伸びるたくさんの動脈を用いて、血リンパ身体の各組織へと運ぶ。書鰓を経て酸素化した血リンパは、体腔に流れ込んで再び心臓へと戻る。体内の血リンパは無色透明であるが、ヘモシアニンを含むため、流血などために酸素と結びつくと銅イオン由来の青色になる[22]

他の節足動物と同様、カブトガニ類ははしご形神経系を持ち、は前大脳・中大脳・後大脳と呼ばれる3つの脳神経節からなるが、原始的と思われる形質を持つ[23]。また、前体の神経節クモガタ類のように集約するが、後体の神経節は明瞭に分節している[24]

尿を排出する器官として対をなす脚基腺coxal gland)があり、開口部は後脚の基節に開く。これもクモガタ類に似通っている[25]

生態[編集]

カブトガニ類の顎基と蓋板の規則的な動き
現生カブトガニ類の遊泳姿勢
淡水性で全身を丸める石炭紀Alanops magnificus

現存種のカブトガニ類は干潟や海底に生息する海棲動物である。肉食偏りの雑食性で、確保した餌を脚の顎基の連動で握りつぶしながら口へと運ぶ[26]二枚貝を主食とし[27]巻貝多毛類甲殻類腐肉海藻など様々な生物をも食物とする[27][28]。後脚のへら状器によって干潟や砂浜の上でも前進が可能で、幅広い背甲の形も泥に沈むことを防いでおり、干潟上の移動や、砂などの堆積物の中に潜むことに適している[29]。後体の蓋板と鰓脚を連動させ、裏返しの姿勢で遊泳をすることができる。成体の性的二形は明瞭で、に比べてはやや小柄であり、包接中に雌の後体を嚙合せるように、背甲の前縁下側もやや空いている。繁殖期の頃、干潟や砂浜に集まり、雄は特殊化した鉤爪状の歩脚を用いて雌の後体を包接する。雌は砂浜上で数万個のを産み、雄は排して卵の体外受精を完成させる。幼生は十数回の脱皮をし、数年を経て成体になる。節足動物にしては長寿で、例えばアメリカカブトガニの平均寿命は20年から40年であると推測されている[30]。長寿である上に、成体は脱皮をしないため、大きな体にはフジツボ巻貝などの付着生物が付くことが多い[31]

なお、化石種からは、淡水域に生息し・遊泳や堆積物へ潜むことに不向き・全身を丸めるなど、現存種とは異なった生態や行動にあることを示唆する種類がいくつか知られる[32][18][29][17]。特に石炭紀で繁栄したBellinuridae科は、その全ての種類が淡水生であったと考えられる[5]

現存種[編集]

現生のカブトガニ類は、カブトガニTachypleus tridentatus)、ミナミカブトガニTachypleus gigas)、マルオカブトガニCarcinoscorpius rotundicauda)、アメリカカブトガニLimulus polyphemus)の4種のみが知られる。各種類の詳細はそれぞれの該当項目を参照のこと。

カブトガニ Tachypleus tridentatus の雄。背甲の前縁は2つの窪みがある。
カブトガニ Tachypleus tridentatus
日本台湾中国沿岸など東アジア東南アジアの海域に生息する。雄の体長は45cmから70cm、雌の体長は55cmから85cmほどまで成長し、最大のカブトガニ類として知られる[12]
ミナミカブトガニ Tachypleus gigas
南アジアと東南アジアの海域に生息する。雄の体長は25cmから40cm・雌の体長は25cmから50cm程度である[12]
マルオカブトガニ Carcinoscorpius rotundicauda
南アジアと東南アジアの海域に生息する。雄と雌の最大体長はそれぞれ35cmと40cmであり、現存種の中では最小のカブトガニ類である[12]。時期によって毒を持つことが知られる[33][34][35]
アメリカカブトガニ Limulus polyphemus
アラスカ州西部と、メキシコ湾など大西洋北西沿岸の海域に生息する。現生カブトガニ類の中で研究が最も進んでいる種である[12][13]

いずれも生態と外見はよく似通っており[12]、生息地と体長の相違点以外では以下の特徴から区別できる[1][12][36][37][38]

特徴/種類 カブトガニ

Tachypleus tridentatus

ミナミカブトガニ

Tachypleus gigas

マルオカブトガニ

Carcinoscorpius rotundicauda

アメリカカブトガニ

Limulus polyphemus

雄の背甲前縁両側の窪み あり なし なし なし
雄の鉤爪状の脚 前の2対 前の2対 前の2対 前の1対のみ
生殖口蓋の内肢 退化的 退化的 退化的 発達
後体両側前3対の棘 長い 長い やや短い 長い
後体尾端中心の棘数(不動棘) 3本 1本 1本 1本
尾節の形 三角柱状 三角柱状 円柱状 三角柱状
尾節の長さ 体とほぼ一致 体とほぼ一致 体より長い 体より短い
染色体の数(2n 26 28 32 52
(その他の特有形質) 後体背面の棘が多い 肛門周辺の縁に細棘を欠く 雄の鉤爪は鋏型である 体はやや縦長い

分類[編集]

分類史[編集]

19世紀に描かれた「甲殻類」のイラスト。カブトガニ類(右下)は甲殻類と一斉に並べられた。

19世紀には、三葉虫らしい姿をした幼生と形態上の大まかな類似点に基づいて、節足動物の中でカブトガニ類は三葉虫に類縁であると考えられた。当初はウミサソリ類と共に、いずれも甲殻類扱いされた[39][40]。しかし20世紀以降の再検討により、カブトガニ類とウミサソリ類は甲殻類らしからぬ、むしろサソリなどのクモガタ類と対応できる体制を持つことが判明した[41]。それ以降、三葉虫や甲殻類と区別されたカブトガニ類とウミサソリ類は、ウミグモ類・クモガタ類などと共に、まとめて節足動物の大グループの1つである鋏角類Chelicerata)に含まれるようになった。

系統関係[編集]

節足動物
大顎類

多足類 Myriapod collage.png甲殻類 Crustacea.jpg六脚類 Insect collage.png

鋏角類

ウミグモ類 Callipallene brevirostris (YPM IZ 077244) 003.jpeg

真鋏角類

カブトガニ類 Tachypleus gigas.JPG

クモガタ類

クモ Brachypelma smithi 2009 G03.jpgサソリ Scorpion Photograph By Shantanu Kuveskar.jpgダニ Trombidium-holosericeum-01-fws.jpgなど

複眼顎基二叉型付属肢・発達した後体付属肢など、残りの現生真鋏角類ウミグモ類以外の鋏角類)であるクモガタ類クモサソリダニなどの仲間)には見当たらない、多くの真鋏角類の祖先形質と思われる特徴を持ち、カブトガニ類は、真鋏角類の初期系統発生およびその共通祖先への考査において重要視される分類群である[13]。通常、派生的と思われるクモガタ類に対して、カブトガニ類はそれより早期に分岐した基盤的な真鋏角類と見なされる[6]。2004年による解析結果では、カブトガニ類とクモガタ類に至る系統はおよそ4億8000万年前(古生代オルドビス紀)頃に分岐していたとされる[42]

なお、一部の分子系統学的解析では別の系統関係を示唆し、カブトガニ類は非単系統群のクモガタ類の間から分岐する(主にクツコムシ類と姉妹群になる[43][44])という系統的位置が挙げられた[45][43][44]。これに基づいて、カブトガニ類は陸生のクモガタ類に起源で二次的に水生化した、もしくはカブトガニ類が水生のままでクモガタ類が複数回で上陸したという2つの説も提唱された[44][46]。しかし、このような見解(少なくともその一部)を否定する研究も後に少なからぬ挙げられており、中ではカブトガニ類は単系統群のクモガタ類よりも早期に分岐したという通説を支持する分子系統解析[47][48]分子時計的解析や[49]、カブトガニ類の二次的水生化説を否定する古生物学的証拠が挙げられた[46][48]。特に後者に関して、水生性に適した特徴(顎基・書鰓など)を含めてカブトガニ類は多くの特徴は、クモガタ類でない化石鋏角類(節口類など、後述参照)を通じて広く見られることによって祖先形質であることが強く示唆される[46][48]。例えカブトガニ類は本当にクモガタ類の間から分岐しただとしても、その水生性はおそらく祖先形質であり、とても二次的には考えられない[46][48]

化石鋏角類との関係性[編集]

カブトガニ類に類するほどの現生鋏角類は存在しないが、化石鋏角類まで範囲を広げると、ウミサソリ類Chasmataspidida類、および広義のカブトガニ類に含まれるハラフシカブトガニ類など多くの例が挙げられ、カブトガニ類との関係性は多く議論が繰り広げられた。

ウミサソリ類(広翼類、ウミサソリ目/広翼目 Eurypterida
ウミサソリ類とカブトガニ類はかつて近縁と考えられており、共に節口類節口綱 Merostomata)を構成していた。この見解は、水生性・発達した背甲・鰓のある後体付属肢・複眼の構造・顎基のある前体付属肢など多くの共有形質に基づいた[50]。しかしウミサソリ類については、主に精莢の受け渡しに適した生殖器官に基づいてクモガタ類との類縁関係が後に有力視されるようになった[6]。これによると、カブトガニ類とウミサソリ類の多くの共通点は、単なる真鋏角類の祖先形質となる。
Chasmataspidida
Chasmataspididaというウミサソリ類に似通い、同じく節口類に当たる分類群は、かつて独特なカブトガニ類と考えられた[51]が、1997年以降ではカブトガニ類でない独立群と見なされるようになった[6]。Chasmataspidida類を多系統群と見なし、そのうち Chasmataspis はカブトガニ類に近縁で、Diploaspididae科はウミサソリ類に近縁との説があった[52]が、確実でなく、特に2010年代以降では、本群は単系統群で、ウミサソリ類とクモガタ類に近縁とする(Dekatriataをなす)説が主流になりつつある[6][53][54][17]
ハラフシカブトガニ類(共剣尾類、ハラフシカブトガニ亜目[55]/共剣尾亜目[9] Synziphosurina
ハラフシカブトガニ類という化石群は伝統的にカブトガニ類に含まれ[56]、派生的なカブトガニ類(カブトガニ亜目 Xiphosurida)の姉妹群[56]もしくはそれに至る側系統群[57]と考えられた。しかし Lamsdell (2013) が様々なハラフシカブトガニ類の形質を検証し、それを基に他の鋏角類との系統関係を再構成したところを初めとして、ハラフシカブトガニ類はカブトガニ亜目と単系統群になっておらず、むしろ真鋏角類全般とDekatriata類(Chasmataspidida類・ウミサソリ類・クモガタ類からなる単系統群)のそれぞれのステムグループから分岐している雑多な分類群とされる(注釈[注釈 2][注釈 3][注釈 4]参照)[6][53][54][17][5]。よって、従来および広義のカブトガニ類は、Prosomapodaオファコルスディバステリウム以外の真鋏角類)からDekatriata類を除いた側系統群であり、狭義のカブトガニ類は、ハラフシカブトガニ類を除き、カブトガニ亜目とそれに類縁するいくつかの属(ルナタスピスKasibelinurusなど)のみを含んだ単系統群と再定義された[6]
鋏角類

ウミグモCallipallene brevirostris (YPM IZ 077244) 003.jpeg

真鋏角類

オファコルス 20200810 Offacolus kingi.png

ディバステリウム 20200812 Dibasterium durgae.png

Prosomapoda[注釈 2]

様々な†ハラフシカブトガニ類側系統群20200812 Weinbergina opitzi.png20200814 Venustulus waukeshaensis.png20200815 Legrandella lombardii.png

狭義のカブトガニ類[注釈 3]

ルナタスピスKasibelinurusなど(側系統群20200813 Lunataspis aurora.png

カブトガニ亜目[注釈 5] Tachypleus gigas.JPG

Planaterga[注釈 4]

様々な†ハラフシカブトガニ類側系統群20200923 Pseudoniscidae.png20200923 Bunodidae.png

Dekatriata

Chasmataspidida20200607 Chasmataspidida Octoberaspis Hoplitaspis Chasmataspis Diploaspis.png、†ウミサソリHaeckel-Eurypterida1024.jpgクモガタ類 Haeckel Arachnida.jpg など

Lamsdell (2013)[6] およびそれを踏襲した系統解析[53][54][17]を基に簡略化したカブトガニ類と他の鋏角類の系統関係。青い枠は広義のカブトガニ類に該当する範囲を示す(詳細の系統関係はカブトガニ類#下位分類を参照)。


下位分類[編集]

真鋏角類

オファコルス

ディバステリウム

Prosomapoda[注釈 2]

ウェインベルギナ* 20200812 Weinbergina opitzi.png

Anderella* 20200924 Anderella parva.png

ヴェヌストゥルス* 20200814 Venustulus waukeshaensis.png

Camanchia* 20200924 Camanchia grovensis.png

Legrandella* 20200815 Legrandella lombardii.png

狭義のカブトガニ類[注釈 3](後述参照)

Planaterga[注釈 4]

Willwerathia* 20200928 Willwerathia laticeps.png

Pseudoniscidae* 20200923 Pseudoniscidae.png

Bembicosoma* 20200925 Bembicosoma pomphicus.png

Bunodidae *20200923 Bunodidae.png

Dekatriata(†Winneshiekia、†Houia、†Chasmataspidida類、†ウミサソリ類、クモガタ類

ハラフシカブトガニ類(*)を中心とする広義のカブトガニ類(青枠)の系統関係[58]
狭義のカブトガニ類[注釈 3]

Kasibelinurus(非単系統群)

Pickettia

ルナタスピス 20200813 Lunataspis aurora.png

カブトガニ亜目[注釈 5]
Bellinurina

Bellinuridae Belinurus.jpgEuproops rotundatus restoration.jpg20191018 Alanops magnificus.png

Limulina

Bellinuroopsis

Rolfeiidae

Paleolimuloidea

Paleolimulidae

Limuloidea

Valloisella

Limulitella henkeli

オーストロリムルス科 Austrolimulus fletcheri.jpg

カブトガニ科 Tachypleus gigas.JPG

狭義のカブトガニ類の内部系統関係[58]

World Spider Catalog に掲載される化石鋏角類一覧表「A summary list of fossil spiders and their relatives」(最終更新日:2020年1月15日)[2]によると、現存4種と化石100種以上の広義のカブトガニ類が記載されており、化石種の中で80種以上は狭義のカブトガニ類に属する[2]

広義のカブトガニ類よりも基盤的な真鋏角類オファコルスディバステリウム、および Dekatriata に含まれるとされる WinneshiekiaHouia は、便宜上にハラフシカブトガニ類として広義のカブトガニ類に含まれる場合もある[53][54][58]。分類学的位置が議論的で再検証が必要とされる Borchgrevinkium は、Lamsdell (2013) によって暫定的に広義のカブトガニ類としてまとめられる[6]

狭義のカブトガニ類はほぼ全ての種類がカブトガニ亜目(Xiphosurida)に分類され、そこから2下目2上科5科に細分される[2]。他にもカブトガニ亜目以外の属を含んだKasibelinuridae科はあるが、単系統群をなしていないため再定義が必要と指摘され[17]、それを敢えて採用しない文献もある[58][5]

現生種はカブトガニ科に分類され、形態的差異から2亜科3属4種に区別される[1]。人工交雑による実験では、アメリカカブトガニ(アメリカカブトガニ亜科)とアジア産カブトガニ類(カブトガニ亜科)では受精が成立せず、アジア産3種の間では交雑卵から孵化する例が見られた[59]。アジア産の3種はマルオカブトガニ(マルオカブトガニ属)とそれ以外の2種(カブトガニ属)に分けられるが、カブトガニに対してマルオカブトガニよりもミナミカブトガニの方が生殖的隔離が進んでいることから、マルオカブトガニをカブトガニ属に含める説もある[60]。一方で2012年に発表されたカブトガニ科の分子系統解析では、カブトガニとミナミカブトガニで単系統群を形成し、マルオカブトガニがその姉妹群となるという結果が得られている[61]

次のリストの中で属より上位の分類群は太字、伝統的にハラフシカブトガニ類 Synziphosurina に分類されたものは「*」で示す[6]


カブトガニ類と誤認された化石[編集]

アグラスピスAglaspis spinifer)の復元図。かつてカブトガニ類に近縁の鋏角類と誤って復元された光楯類の一例。

不完全な化石によって知られ、かつてカブトガニ類もしくはその近縁と誤認された化石はいくつか挙げられる[2]光楯類Aglaspidida)はその代表的な一例であり、20世紀後期まで、この類は長い間に付属肢が推測的に節口類らしく復元され、カブトガニ類もしくはそれに近縁の鋏角類と誤解された[56][6]。後に付属肢が再検証され、鋏角の代わりに触角があるという鋏角類らしきぬ特徴をもつと分かり[77]、カブトガニ類の近縁どころか、鋏角類ですらなく、むしろ三葉虫を含んだ別系統(Artiopoda類)のものであると判明した[78][79](詳細は光楯類#系統関係を参照)。光楯類の他、昆虫HypatocephalaPermolimulinellaなど)・三葉虫Hemiaspis)・棘皮動物Lemoneites)からにもカブトガニ類と誤って記載された化石が挙げられる[80][2]。後体の局部のみが知られる Kiaeria は長らくカブトガニ類と思われていたが、2019年の再検討にむしろChasmataspidida類ではないかと指摘される[81]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 1と2:アメリカカブトガニ Limulus polyphemus(成体と幼生)、3と4:ユウプループス Euproops(=Prestwichia)、5:リムロイデス Limuloides limuloides(=Hemiaspis limuloides)、6:Pseudoniscus aculeatus
  2. ^ a b c d Prosomapoda:成体の第2-4前体付属肢は外肢を欠く。
  3. ^ a b c d e 狭義のカブトガニ類 Xiphosura sensu stricto:第7体節は退化的で付属肢は唇様肢、後体は前端で最も幅広く、背甲後縁中心の隆起部(cardiac lobe)の背甲の後半を超えるほど前へ伸び、複眼の隆起線(opthalmic ridges)は前方で会合してMの字形となる。
  4. ^ a b c d Planaterga:背甲両後側の頬棘は退化的、後体の背板は発達したこぶを欠いて第3/4節で最も幅広く、第7体節の背板はmicrotergiteを形成して付属肢は退化的。
  5. ^ a b c カブトガニ亜目 Xiphosurida:第8体節(後体第2節)以降の全ての背板は癒合してthoracetronをなす。
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関連項目[編集]