イラガ
イラガ | ||||||||||||||||||||||||
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![]() イラガ
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Monema flavescens Walker, 1855 | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
イラガ |

イラガ(刺蛾、Monema flavescens)は、チョウ目イラガ科に属する昆虫およびその総称である。「蜂熊」「オキクサン」「シバムシ」「キントキ」「デンキムシ」「ヤツガシラ」「オコゼ」「イタイイタイムシ」とも称され、そのほかに数十の地方名がある[1]。イラガの天敵はカマキリやヤドリバエ、アシナガバチなどである。他の天敵にイラガの繭に寄生する外来種のハチ・イラガイツツバセイボウがいる。
生態[編集]
- 幼虫
- 通常は7月から8月頃、多い年は10月頃に再び見られる。体長は25mm。脚が短くずんぐりした体に多くの棘を持ち、触れるとハチに刺されたような鋭い痛みを生じる。さまざまな樹種で繁殖し、落葉広葉樹[2]の葉裏に集団で生息していることが多い。
- 繭
- 終齢幼虫(前蛹)で越冬し、そのための繭を作る。独特の茶色い線が入った白く固い卵状の殻でカルシウムを多く含み、日本の昆虫がつくる繭の中で最も固いとみられる(カルシウムは白さの要素で、固さはタンパク質の層構造による)[3]。春先に中で蛹化し、6月に羽化する。羽化時には繭の上端が蓋のように開き(小さな穴は寄生バチの脱出口)、地方によってはスズメノショウベンタゴ(担桶)とも呼ばれる。釣り餌(特にタナゴ釣り用)として用いられる際には、玉虫(たまむし)と称される。
- 成虫
- 無毒。明かりに飛来する。口吻が退化しているため、成体は何も食べない。
形態[編集]
- 幼虫
- 幼虫は別名を「イラムシ」とも称され、ライムのような鮮やかな緑色や薄茶色、概観はウミウシのような形状をしている。
- 成虫
- 羽化した後の成虫の開張は30mm程度。翅に黄色と橙色の特徴的な模様を呈する。口吻が退化しているため、成体は何も食べない。
虫刺被害と治療[編集]
幼虫に触れると見舞われる激しい痛みは、地方名のひとつ「デンキムシ(電気虫)」の由来である。これは、外敵を察知した幼虫が全身の棘の先から毒液を一斉に分泌するためである。体を光にかざすと、すべての針の先から液体が分泌されていることがわかる。
刺激はかなり強く、場合によっては皮膚に水疱状の炎症を生じ、鋭い痛みの症状は1時間程度、かゆみは1週間程度続くことがある。卵をつぶしたり触れたりしてもかぶれるほか、種類によっては繭に毒毛を付けているものがある。刺された場合にはすぐに流水で毒液と棘を洗い流し、棘が残っていれば粘着テープなどで除去する(患者はかなりの痛みを感じているので、配慮が必要)。その後、市販の虫刺されの治療薬を塗るとよい。症状が酷い場合や目に入った場合には、医師の治療を受ける。正確な毒成分は解明されていないが、ヒスタミンやさまざまな酵素を成分とした非酸性の毒だとされている。中和目的にアンモニア水を塗っても効果は無く、抗ヒスタミン剤やアロエの葉の汁を塗布するのが有効とされる。ひどい場合には、皮膚科などでの処置が必要である。
駆除には、BT剤やピレスロイド系物質含有の殺虫スプレー(蚊、ゴキブリ用など)が効果的である。
近縁種[編集]
仲間として、ナシイラガ、アオイラガ、アカイラガ、ヒメクロイラガなどがある。
食樹の樹幹についている繭はヒロヘリアオイラガのものであることが多い。なお、ヒロヘリアオイラガに限っては繭にも毒がある。
脚注[編集]
- ^ アナタの地方では、イラガの幼虫のこと、何と呼んでますか?
- ^ 宮田彬、「毒毛虫類」『森林科学』 2008年 53巻 p.44-47, doi:10.11519/jjsk.53.0_44, 日本森林学会。
- ^ 石井象二郎, 井口民夫, 金沢純, 富沢長次郎、「イラガの繭 III. 繭の組成と硬さ」『日本応用動物昆虫学会誌』 1984年 28巻 4号 p.269-273, doi:10.1303/jjaez.28.269, 日本応用動物昆虫学会。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- イラガ類「刺されたときの対処法」 神奈川県衛生研究所