アースロプレウラ

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アースロプレウラ
生息年代: 315–299 Ma
Arthropleura NT small.jpg
A. armataの復元図(旧復元)
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 多足亜門 Myriapoda
: ヤスデ綱 Diplopoda
亜綱 : アースロプレウラ亜綱 Arthropleuridea
: †アースロプレウラ目 Arthropleurida
: †アースロプレウラ科 Arthropleuridae
: アースロプレウラ属 Arthropleura
学名
Arthropleura
Meyer[1]1853
タイプ種
Arthropleura armata
Meyer, 1853
  • A. armata Meyer, 1853
    = A. moyseyi Calman, 1914,
    = A. affinis Goldenberg, 1873,
    = A. zeilleri Boule, 1893
  • A. britannica Andrée, 1910
  • A. cristata Richardson, 1959
  • A. enodis Guthörl, 1934
  • A. maillieuxi Pruvost, 1930
  • A. mammata (Salter, 1863)
  • A. punctata Goldenberg, 1873

アースロプレウラArthropleura)は古生代石炭紀森林に生息した、アースロプレウラ類ヤスデの1である。本属の1種 Arthropleura armata は陸生節足動物として既知最大の種であり[2]、節足動物全般においても一部のウミサソリと並んで史上最大級のものとなる[3]ノバスコシアイリノイオハイオペンシルベニアなど各地から化石が見つかっている。

形態[編集]

アースロプレウラの化石のイラスト。この標本では60cmほどある。

巨大な節足動物として著名な古生物であるが、全身化石は発見されていないため、一部の特徴、例えば頭部の構造や正確の体節数は不明である。既知の全てのアースロプレウラの化石を単なる脱皮殻と見なす学者もいる[2]

胴部はほぼ同形の多数の体節(胴節)によって構成され、30節ほどあると推測される[4][3]。予想される体長は種によって異なり、45cmほどの幅をもち、最も広く知られる A. armata では2m以上を達している[4]が、A. moyseyi では30cmほどである[5]。各体節の背板(tergites、背面の外骨格)の表面はこぶが密生し、左右に張り出した側板(pleurae)がある。

脚(関節肢)は頑丈な円錐状で、少なくとも7節の短い肢節に分かれる[4]。脚と胴節の接続部は複雑な構造をした数枚の外骨格をもつ[6]。従来の復元では1胴節に1対の脚のみをもつとされていた[6]が、90年代の見解をはじめとして、ヤスデのように、ほぼ全ての胴節に2対の脚をもつ(diplopodous)説がのちに取り上げられており[7][8][4][2]、確実にそのような特徴が見られる他のアースロプレウラ類の化石も発見される[8]

他のアースロプレウラ類である EoarthropleuraMicrodecemplex による確実な頭部構造(少なくとも口器[7])は発見される[7][8]のに対して、本属の頭部に関してはほぼ不明である[4]。「丸い頭部」と思われる構造は20世紀後期のいくつか研究に報告されている[6]が、2000年代の再検証では、それらは頭部ではなく、むしろ頸板(collum、ヤスデの頭部の直後にある板状の外骨格、胴部最初の背板)であると示される[4][2][3]。他のヤスデのように、頭部はこの頸板の下にあったと考えられる[3]

呼吸[編集]

現生のヤスデらしい気管系は見当たらないが、粒状の表面をしたポケット状の構造が各体節の下で対になって配置され、これを通じて皮膚呼吸をしていたと考えられる[3]。アースロプレウラほど巨大な節足動物がこれほど単純な方法で呼吸するのは非効率的であるが、当時の石炭紀では酸素濃度が現世より約35%ほど高かったと推測され、当時の節足動物は現生のものより酸素を体に取り込みやすかったと思われる[3]

生態[編集]

スコットランドアラン島Laggan Harbourで出土した足跡の化石

アースロプレウラは植物食であったと考えられている。いくつかの化石に保存された糞石(糞の化石)とされる痕跡では、シダ胞子ヒカゲノカズラ植物類の破片を含んでいた[9]。再検証により、それは単にアースロプレウラの脱皮殻に混入した植物の破片と見なされるが、前述の植物を主食とする可能性は否定できない[3]。這った跡の化石(生痕化石)は各地で知られている。

石炭紀にアースロプレウラやメガネウラのように巨大な節足動物が多かった原因として、シダ植物群の大繁殖により当時の大気中の酸素濃度が約35%と高かったためとする説や、脊椎動物が陸上での進化を始めて間もない頃であったので、これらを捕食する動物が少なかったからとする説などが唱えられている。ペルム紀の前期までに、巨大な節足動物の大半が絶滅した。その原因は捕食動物によるものではなく、気候の変化とともに石炭紀と同じ森林環境が姿を消し、食料となる植物が無くなったことだとされる[10]

分類[編集]

アースロプレウラはアースロプレウラ類(Arthropleurids、学名:Arthropleuridea)に分類されるである。アースロプレウラ類には、本属、Eoarthropleura[7]、および Microdecemplex[8] の計3属が知られ、それぞれ独自のに分類される。アースロプレウラ類は多足類であることは広く認められるが、かつては多足類のどの現存綱(ムカデヤスデコムカデエダヒゲムシ)にも属さず、多足亜門における独自の綱(アースロプレウラ綱)扱いとされた[11]。しかし21世紀の見解をはじめとして、この類はヤスデ(ヤスデ綱)の1群として認められ、その亜綱の1つ(アースロプレウラ亜綱)とされるようになった[8][12][11][2]

脚注[編集]

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  1. ^ Friedrich Albrecht Anton Meyer (1768-1795) naturalist or ヘルマン・フォン・マイヤー (1801-1869) palaeontologist
  2. ^ a b c d e Minelli, Alessandro (2015-10-01) (英語). Treatise on Zoology - Anatomy, Taxonomy, Biology. The Myriapoda. BRILL. ISBN 978-90-04-18827-3. https://books.google.com.tw/books?id=bqW8CgAAQBAJ&pg=PA339&lpg=PA339&dq=Arthropleuridea&source=bl&ots=PAMcz0SWkU&sig=ACfU3U2udO_iiH2uhw61M_cZgw6pMVhoRg&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwioqszNueXoAhWMMN4KHckxCGkQ6AEwAnoECAcQOg#v=snippet&q=Arthropleuridea&f=false 
  3. ^ a b c d e f g Largest Land-Dwelling “Bug” of All Time | National Geographic (blogs)”. web.archive.org (2016年3月4日). 2020年4月13日閲覧。
  4. ^ a b c d e f Fortey, Richard A.; Thomas, Richard H. (2012-12-06) (英語). Arthropod Relationships. Springer Science & Business Media. ISBN 978-94-011-4904-4. https://books.google.com.tw/books?id=xTzsCAAAQBAJ&pg=PA216&lpg=PA216&dq=Arthropleura+head&source=bl&ots=hEi4-94YMw&sig=ACfU3U1kLTOq_TCFGWbIkL6AYtC0XiGCcw&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwj7-oPcq-XoAhXCUN4KHe_RCawQ6AEwGHoECAwQLA#v=onepage&q=Arthropleura&f=false 
  5. ^ Considérations sur la stratigraphie du terrain houiller de la Belgique. La Faune continentale du terrain Houiller de la Belgique.”. lib.ugent.be (1930年). 2020年4月13日閲覧。
  6. ^ a b c Rolfe, W. D. Ian; Ingham, J. K. (1967-01-01). “Limb structure, affinity and diet of the Carboniferous ‘centipede’ Arthropleura” (英語). Scottish Journal of Geology 3 (1): 118–124. doi:10.1144/sjg03010118. ISSN 0036-9276. https://sjg.lyellcollection.org/content/3/1/118. 
  7. ^ a b c d William Shear & Paul Selden (1995). Eoarthropleura (Arthropoda, Arthropleurida) from the Silurian of Britain and the Devonian of North America” (PDF). Neues Jahrbuch für Geologie und Paläontologie, Abhandlungen 196 (3): 347–375. http://www.paulselden.net/uploads/7/5/3/2/7532217/eoarthropleura.pdf. 
  8. ^ a b c d e Wilson, Heather M.; Shear, William A. (1999). “Microdecemplicida, a new order of minute arthropleurideans (Arthropoda: Myriapoda) from the Devonian of New York State, U.S.A.” (英語). Transactions of the Royal Society of Edinburgh: Earth Sciences 90 (4): 351–375. doi:10.1017/S0263593300002674. ISSN 0263-5933. https://www.researchgate.net/publication/259408307_Microdecemplicida_a_new_order_of_minute_arthropleurideans_Arthropoda_Myriapoda_from_the_Devonian_of_New_York_State_USA. 
  9. ^ (PDF) Evidence of pteridophyte-arthropod interactions in the fossil record” (英語). ResearchGate. 2018年12月22日閲覧。
  10. ^ Holmes, Thom (2008-06) (英語). March Onto Land: The Silurian Period to the Middle Triassic Epoch. Infobase Publishing. ISBN 9780816059591. https://books.google.com/books?id=j-sOYynMAAMC&pg=PA59 
  11. ^ a b Shear, William; Edgecombe, Gregory (2009-11-01). The geological record and phylogeny of the Myriapoda. 39. https://www.researchgate.net/publication/40037333_The_geological_record_and_phylogeny_of_the_Myriapoda 
  12. ^ Kraus, O.; Brauckmann, Carsten (2003-01-01). “Fossil giants and surviving dwarfs. Arthropleurida and Pselaphognatha (Atelocerata, Diplopoda): Characters, phylogenetic relationships and construction”. Verh. Naturwiss. Ver. Hamburg 40: 5–50. https://www.researchgate.net/publication/286669749_Fossil_giants_and_surviving_dwarfs_Arthropleurida_and_Pselaphognatha_Atelocerata_Diplopoda_Characters_phylogenetic_relationships_and_construction. 

参考文献[編集]

  • 石川良輔編『節足動物の多様性と系統』,(2008),バイオディバーシティ・シリーズ6(裳華房)
  • 金子隆一編『ぞわぞわした生きものたち 古生代の巨大節足動物』,(2012),(サイエンス・アイ新書)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

Dinosaurier-Interessierte:Arthropleura:1997年時点のCarsten Brauckmann氏によるアースロプレウラの復元図の複写。2010年代ではこの復元は否定的である。