節口綱

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節口綱
生息年代: Tremadocian–0
Haeckel-Tachypleus gigas-1024.jpg Eurypterus Paleoart.jpg
地質時代
オルドビス紀トレマドッグ期) - 現世[1][注釈 1]
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
階級なし : 真鋏角類 Euchelicerata
: 節口綱(腿口綱)
Merostomata
sensu Woodward, 1866
学名
Merostomata
sensu Woodward, 1866

節口綱(せっこうこう)、腿口綱(たいこうこう)、またはメロストマ綱[2]学名Merostomata)は、鋏角類に属する節足動物の分類群の1つ。節口類腿口類[2](merostome)と総称され、カブトガニ類ウミサソリ類を含むグループを形成している[3]

現生では4種のカブトガニ類のみを含む群であるが、化石は300種を超えるほど多く知られる[1]。特に古生代の地層から多くの化石が見つかっており、確実で既知最古のものは少なくとも約4億8000万年前のオルドビス紀早期まで遡れる[1][注釈 1]

学名「Merostomata」はギリシャ語の「meros」(太もも)と「stoma」()の合成である。これは本群において、脚の基部が口器に特化し、がその間に位置することに因んでいる[4]

用法[編集]

1852年、「Merostomata」はジェームズ・デーナによって創設され、当時はカブトガニ類のみを含む分類群であった(Merostomata Dana, 1852)。1866年、Henry Woodwardはこの分類群にウミサソリ類を追加して以降、節口類(Merostomata sensu Woodward, 1866)はカブトガニ類ウミサソリ類を含んだ分類群として広く流用されていた。

しかし、ウミサソリ類が後に多くの研究にカブトガ二類よりもクモガタ類に近縁とされるように至り[3]、この分類群に対しては、クモガタ類を除いた側系統群とし、もしくはウミサソリ類を節口類から除外し、節口類(Merostomata Dana, 1852)をカブトガニ類 Xiphosura のシノニムとみなし[5]、この分類群は破棄すべき[6]、などの見解が与えられる。なお、この分類群の単系統性を支持する研究結果もわずかにあり[3]、便宜上の総称として採用する文献もある[7]

本項目では、カブトガニ類ウミサソリ類などを含む節口類、いわゆる Merostomata sensu Woodward, 1866 について扱う。

形態[編集]

ウミサソリ類の構造

数cmしか及ばない小型種もあるが、節口類は大型の節足動物を中心とするグループである[8]。現生のカブトガニ類だけでも最大数十cm、化石群まで範囲を広げるとウミサソリ類は1m前後の種類がほとんどで、2.5m以上と推測され、発見史上最大の節足動物として知られるものもある[9]

体は前体後体の2部に分かれ[10]付属肢関節肢)は全て体の腹面に備わる。他の鋏角類(ウミグモ類クモガタ類)との主な相違点は、主に能動的な蓋板・顎基のある脚・発達した背甲をもつことが挙げられる。

前体[編集]

サソリ(左、クモガタ類)とカブトガニ類(右)の前体付属肢の比較図(I:鋏角、II:触肢、III-VI:脚)

前体(prosoma、または頭胸部 cephalothorax)は先節と第1-6体節の癒合でできている合体節で、背面が広がった背甲(carapace または prosomal dorsal shield[10])に覆われる。通常、背甲の背面にはそれぞれ1対の複眼である側眼と単眼である中眼をもつ。

体節数に応じて、前体には6対の付属肢をもつ。最初の1対は鋏角(chelicera)であり、3節の中で先端2節はを構成し、通常では小さく目立たない。次の5対は脚であり、最初のものは触肢(pedipalp)だが、他の脚との形態上の区別はほぼない[10]。これらの脚はカブトガニ類ではほぼ同形だが、ウミサソリ類では番目によって形が分化した例が多く見られる。脚は基部が正中線で接しており、それぞれ基部の肢節は口器の役目をするように顎基(gnathobase)をもつものが多い[11]。脚は通常では内肢のみをもつ単枝型だが、はっきりとした外肢をもつ二叉型のものもある[10]

目立てない上唇(labrum)に覆われるは鋏角と触肢の間に位置するが、カブトガニ類の場合では後ろ向きにずらし、口が脚の間にあるように見える。脚の間には「endostoma」という、クモガタ類の前体の腹板に相同と思われる[10]目立たない外骨格がある[12][13][14]

後体[編集]

ウミサソリ類の生殖口蓋(上)と尾節(左下)

後体(opisthosoma、または腹部 abdomen)は第7体節をはじめとして9-13節(第15-19体節まで及ぶ)によって構成され、現生種を含んだカブトガニ亜目では体節が全て癒合しているが、それ以外の化石種では体節が明瞭に分節される例が多い[10]。後体はさらに付属肢の有無もしくは単に外見上の発達具合に基づいて、前後で幅広い中体(mesosoma、または前腹部 preabdomen)と幅狭い終体(metasoma、または後腹部 postabdomen)で区別される場合もある[5][10]

後体前7節(第7-13体節)の腹面に附属肢はあるが、最初のもの以外では板状の蓋板(がいばん、operculum)であり、その多くが呼吸器である書鰓(しょさい、book gill)をもつ[10]。蓋板の中で最初の1対は生殖口蓋(genital operulum)といい、カブトガニ類の場合では単に1対の生殖口をもつ構造体だが、ウミサソリ類Chasmataspidida類の場合ではその中央に特化した生殖肢(genital appendage)をもつ[10]

後体第1節(第7体節)は退化的で、背面の外骨格(背板)外見上から観察できない場合が多く、あったとしても幅狭く目立てない[10]。その付属肢は多くの場合では単純な短い構造体(カブトガニ類の唇様肢 (chilarium)、ウミサソリ類などの下層板 (metastoma)[15])であり、前体の一部として機能する傾向が強い[10]ウェインベルギナは例外的に、この体節に前体のとほぼ一致な脚をもつとされる[10]。これらの性質に基づいて、この体節を後体ではなく、前体の一部と扱うべきではないかという見解もある(鋏角類#第7体節も参照)[10][7]

後体の最後尾に繋ぐ尾節(telson)は発達しており、通常は棘状(尾剣)だが、ウミサソリ類ではへら状となる群もある[10]

生態[編集]

節口類は水棲動物であり、現生のカブトガニ類棲に限られるが、化石群まで範囲を広げると、カブトガニ類とウミサソリ類の両方とも海棲と淡水性の種類を含んでいる[16][17][18]捕食者とされる種類が多い。

一般に脚で水の底を這い回る動物であるが、後体の蓋板(カブトガニ類)もしくは特化した遊泳脚(一部のウミサソリ類とChasmataspidida類)で遊泳を行うものもあり、ウミサソリ類に至っては同時に陸上で活動てきたと考えられる種類もある[19]

系統関係[編集]

鋏角類」という分類群はまだ提唱されない20世紀以前では、節口類は甲殻類扱いされた[20]。後にクモガタ類クモサソリダニなどが属する分類群)に対応する体制をもつことが分かり、1901年以降ではクモガタ類やウミグモ類とともに鋏角類としてまとめられるようになった[21]

鋏角類の初期系統発生と基本体制への考査において、節口類は特に注目されるグループである。本群の鋏角類からは、複眼・特殊化していない触肢・発達した後体付属肢と書鰓二叉型付属肢など、著しく特化したウミグモ類と派生的なクモガタ類には見当たらない、鋏角類祖先形質共有原始形質)と思われる特徴が少ながらずに出揃っている[5]

従来、節口類はクモガタ類と共に真鋏角類(ウミグモ以外の鋏角類)を構成する2つの(節口綱、クモガタ綱)とされてきたが、この分類体系は単に海棲と陸棲の真鋏角類を便宜的に分けているだけで、系統関係に基づいていないことが指摘される[3]。ほぼ全ての系統解析においても、ウミサソリ類は(主に生殖器の構造に基づいて)カブトガニ類よりもクモガタ類に近縁とされる[22][23][14][3][5][10]。すなわちウミサソリ類とクモガタ類は単系統群Sclerophorata)を構成し、節口類はクモガタ類に至る側系統群となる[5][10]。なお、少数であるものの、節口類の単系統性を支持する見解もある[3]

鋏角亜門

ウミグモ

真鋏角類

オファコルス

Prosomapoda

様々なハラフシカブトガニ類側系統群

狭義のカブトガニ類

ルナタスピスKasibelinurusなど(側系統群

カブトガニ亜目

Planaterga

様々なハラフシカブトガニ類側系統群

Dekatriata

Chasmataspidida

Sclerophorata

ウミサソリ

クモガタ類

Lamsdell (2013)[5] を基に簡略化した鋏角類の内部系統関係。青い枠は節口類に該当する範囲を示す。また、Dekatriata以外のProsomapodaは、側系統群とされる広義のカブトガニ類に該当する(後述参照)[5]
かつては鋏角類と考えられた光楯類

光楯類はかつて鋏角類であると考えられ、20世紀中期までではこの類(特にカブトガニ類)に分類された[5]。しかし後の再検討により、光楯類は鋏角類の付属肢構成を欠いている(鋏角はなく、触角を含んで頭部付属肢は4-5対しかない)別系統の節足動物であると判明し、20世紀後期では三葉虫類と共にArtiopoda類に再分類されるようになった[24]

該当する分類群[編集]

カブトガニ類[編集]

カブトガニ類または剣尾類カブトガニ目剣尾目学名Xiphosura[25][26]は、現生は34のみが生存し、化石オルドビス紀まで遡り[27][28]、80種以上が認められるグループである[1]ウミサソリ類に比べて体は比較的にコンパクトな形をとる。前体は脚の先端まで覆ったドーム状の背甲であり、脚の先端がになっているものが多い。6対の蓋板のうち最初の1対は単なる生殖口蓋で、後5対は書鰓をもつ。化石種は比較的に多様化して数cmの小型種も多いが、現生種はいずれも数十cmの大型で、外見・生態とも大まかに共通している[29]

狭義のカブトガニ類は、後体第1節(第7体節)の背面は外見上から観察できず、その付属肢は小さな唇様肢であることを共有形質とする[10]。広義のカブトガニ類はハラフシカブトガニ類をも含め、その中でも、第7体節の付属肢は歩脚であるという、他の真鋏角類に発見例のない特徴をもったウェインベルギナがある[5]カブトガニ亜目の場合、後体の体節は全て癒合し、「thoracetron」という合体節となる[5][10]。名前の通り、長く伸びていた「尾剣」と呼ばれる状の尾節をもつ。

従来は単系統群とされ、カブトガニ亜目(Xiphosurida)とハラフシカブトガニ亜目(共剣尾類 Synziphosurina[15]の2群に細分された[30]。しかしLamsdell (2013) の再検討がなされる以降、ハラフシカブトガニ類は系統範囲の雑多な側系統群と見なされるようになった[5]。これにより、従来および広義のカブトガニ類は、ウミサソリ類やクモガタ類など(Dekatriata)を除いた側系統群で、狭義のカブトガニ類は、ハラフシカブトガニ類を除き、カブトガニ亜目といくつかの属のみを含んだ単系統群とされるようになった(カブトガニ類#化石鋏角類との関係性ハラフシカブトガニ類#系統と進化、および上記の系統図を参照)[5][1][18]

現生種は全てカブトガニ科(Limulidae)のものであり、東アジアによるカブトガニTachypleus tridentatus)、南アジア南東アジアによるミナミカブトガニTachypleus gigas)とマルオカブトガニCarcinoscorpius rotundicauda )、および北アメリカによるアメリカカブトガニLimulus polyphemus)の計4種が知られる。中でアメリカカブトガニは特に研究が進んでいる[29]。蓋板を用いて泳ぐことができ、雑食性で、二枚貝巻貝多毛類甲殻類などの小動物や[31]腐肉海藻をも餌とする[32]

ウミサソリ類[編集]

様々なウミサソリ

ウミサソリ類または広翼類ウミサソリ目広翼目学名Eurypterida[15]は、およそ250種が認められ[1]、1m前後の大型種を中心とし、既知最大級の節足動物をも含んだ絶滅したグループである[9]カブトガニ類に比べて体は細長く、流線型の形をとる。前体は幅広いが、カブトガニ類ほどには極端でない。鋏角や脚が特殊化した例が存在し、特にウミサソリ亜目はへら状の遊泳脚へ特化した第5脚を持つ。後体は発達しており、13節のうち下層板をもつ第1節の背板は観察できず、背面は12節に見える[10]。6対の蓋板はカブトガニ類のと同じく後5対が書鰓をもつが、体の腹側と鰓室を構成し、最初の2対は癒合して棒状の生殖肢をもつ[10]。後体は更に前後で中体(前腹部)と終体(後腹部)に区別できる場合がある[10]。棘状ないしへら状の尾節をもつ[10]

海中および淡水域に生息し、オルドビス紀からペルム紀まで生息した。化石から、海中からだんだんと淡水へと生息域を広めていったことが分かる[16]

古くはカブトガニ類、もしくはクモガタ類サソリのみに近縁とされてきたが、後にクモガタ類と姉妹群を構成する系統関係の方が広く認められるる[22][23][14][5][10]

Chasmataspidida[編集]

様々なChasmataspidida

Chasmataspidida類(英名:chasmataspidid、chasmataspid[33])は、少なくともオルドビス紀からデボン紀にかけて生息し[1]、2019年現在では十数種のみが知られる希少なグループである[33]。ほとんどの種類は3cmを超えない小型で、全面的特徴はウミサソリ類に似通っているが、後体の体節分化は明らかに異なる[34][10]。鋏角の詳細は不明で、残りの前体付属肢も往々にして保存されていないが、知られるものからでは歩脚型で、ネジムシ[15]の場合は少なくとも1対が型の先端をもち[34]Diploaspididae科の場合は後脚がへら状の遊泳脚となる種が確認される[10]。後体は13節からなり、そのうち第1節の背板は消失しないもののごく幅狭い[10]。後体は前4節の前腹部と後9節の後腹部という、他の鋏角類に見当たらない独特な分化様式をもつ[34][10]ネジムシの場合、前腹部の体節はカブトガニ類の後体のように癒合している[34]。後体の腹側は3対の蓋板と、ウミサソリ類と同様に下層板と生殖肢をもつ[10]。なお、この類は6対の蓋板をもったことを示唆するカンブリア紀ネジムシらしい生痕化石もある[34]。棘状ないしへら状の尾節をもつ[10]。このような形質にあることから、古くはカブトガニ類やウミサソリ類と誤同定される種類もいくつか挙げられる[35][36][37]

Chasmataspidida類の系統的位置は多くの議論がなされ、様々な系統仮説(カブトガニ類に含まれる・ウミサソリ類に含まれる・ウミサソリ類に至る側系統群・カブトガニ類とウミサソリ類に対して多系統群など)が提唱された[34][34][33]。しかし2010年代以降では、Chasmataspidida類の単系統性は広く認められ、ウミサソリ類・クモガタ類と共に単系統群(Dekatriata)になる説も有力視されつつある(詳細はChasmataspidida#系統関係を参照)[5][38][39][40]

その他のもの[編集]

オファコルス(1枚目)とディバステリウム(2枚目)の付属肢構造(Ex:脚の外肢)

以下の種類は、場合によっては便宜的に広義のカブトガニ類にも含まれるが、系統的には基盤的な真鋏角類と見なされるものである[5][1]カブトガニ類ウミサソリ類の場合、少なくとも第1-4脚は完全に外肢を欠けているが、これらの種類は、前体の第1-4脚はよく発達した歩脚状の外肢を有しており、これは基盤的な鋏角類から受け継いだ祖先形質と考えられる[10]

体節と付属肢の比較[編集]

各種の節口類と他の鋏角類クモガタ類ウミグモ類)の体節/付属肢構成[10]
分類/体節 1 2 3 4 5 6 7 8 9以降
オファコルス 鋏角
二叉型

(二叉型)

(二叉型)

(二叉型)

(二叉型)
鰭状の付属肢 蓋板 蓋板5対
ディバステリウム 鋏角
(二叉型)

(二叉型)

(二叉型)

(二叉型)
唇様肢らしい付属肢 蓋板(書鰓 蓋板(書鰓)5対
ウェインベルギナ 鋏角 蓋板 蓋板5対?
カブトガニ亜目 鋏角
(二叉型)
唇様肢 蓋板 蓋板(書鰓)5対
Chasmataspidida 鋏角 下層板 蓋板(生殖肢) 蓋板2対(5対?)
ウミサソリ類† 鋏角 下層板 蓋板(生殖肢) 蓋板(書鰓)5対
クモガタ類 鋏角 触肢 -[注釈 2][10] 蓋板(書肺/生殖肢)/- 蓋板(書肺)/櫛状板/-
ウミグモ 鋏肢 触肢 担卵肢 - -

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ a b カンブリア紀まで遡る節口類らしい生痕化石がある。節口綱#Chasmataspididaを参照。
  2. ^ サソリの前体の腹板に関しては第7体節の付属肢由来という説がある。次の脚注を参照。

出典[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]