触肢

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触肢(しょくし、pedipalp)とは、節足動物の中で鋏角類に特有の関節肢鋏角と第一歩脚の間に付く前体(頭胸部)の第二付属肢である。触鬚(しょくしゅ)とも呼ばれる。

大顎類との対応関係[編集]

古典的な知見において、鋏角類の触肢は大顎類多足類甲殻類六脚類)の大顎相同の付属肢(第3体節由来)であると考えられた。しかし発生学的証拠と遺伝子発現によると、むしろ甲殻類の第二触角(第2体節由来、多足類六脚類の場合は退化)に相同である方が有力視される[1]

概要[編集]

触肢は6節によって構成され、カブトガニ類の場合は歩脚と一致で、クモガタ類の場合は7節の歩脚より一節少ない(蹠節を欠く)。節口類などの基盤的な真鋏角類の触肢は特殊化せず、歩脚として用いられることが多いが、クモガタ類の触肢は顕著に歩脚から分化し、ほとんど歩行に用いず、感覚や捕食器官としての役割を果たすのが一般的である。

また、複雑な口器を持つ大顎類とは異なり、鋏角類の口器となる付属肢は1対の鋏角しかなく、口は鋏角と触肢の間にあるため、触肢の基部(基節)は摂食を補助する突起を持つことが多い。クモは触肢基節には下顎という突起を持ち、ザトウムシカブトガニウミサソリは更に特殊化しており、後の歩脚の基節まで加えて顎基(gnathobase)という餌を咀嚼できる構造となる。

節口類の触肢[編集]

カブトガニ類とウミサソリ類からなる節口類節口綱、腿口綱、カブトガニ綱)の触肢は特殊化せず、歩脚として用いられる場合がほとんどである。そのため、節口類の触肢は形態学的に第一脚と扱いされ、付属肢の構成については「鋏角1対・歩脚5対」として記述されることもある(通常およびクモガタ類の場合は「鋏角1対・触肢1対・歩脚4対」となる)。

  • カブトガニ類の触肢は歩脚から分化せず、歩脚とはほぼ一致な外見を持つ。しかし雄のカブトガニ類の場合、触肢は次の1対の歩脚と共に、先端が鉤状に特殊化しており(アメリカカブトガニは触肢のみ)、雌の後体を把握することに用いられる。
  • ウミサソリ類の触肢も歩脚として用いられる。ミクソプテルスなどのような、触肢が隣接した歩脚と共に捕脚状となる種類もある。

クモガタ類の触肢[編集]

コヨリムシを除き、クモガタ類クモガタ綱蛛形鋼クモ綱)の触肢は主に捕食や感覚など歩行以外の用途に用いられる。

ウミグモ類の触肢[編集]

ウミグモの触肢(3)

ウミグモ類ウミグモ綱皆脚綱)の触肢は単純な歩脚状であり、触肢が完全に退化した種類もある。

英語などの場合、ウミグモ類の触肢は「palp」と呼ばれ、他の鋏角類(真鋏角類)の触肢「pedipalp」とは区別される。

脚注[編集]

  1. ^ Telford, Maximilian J.; Thomas, Richard H. (1998年9月1日). “Expression of homeobox genes shows chelicerate arthropods retain their deutocerebral segment” (英語). Proceedings of the National Academy of Sciences 95 (18): 10671–10675. ISSN 0027-8424. PMID 9724762. http://www.pnas.org/content/95/18/10671. 
  2. ^ Holm, Erik; Dippenaar-Schoeman, Ansie (2010). Goggo Guide: The arthropods of southern Africa. Pretoria: LAPA Publishers. ISBN 0799346896.
  3. ^ Wolff, Jonas O.; Schönhofer, Axel L.; Schaber, Clemens F.; Gorb, Stanislav N. (2014年10月1日). “Gluing the ‘unwettable’: soil-dwelling harvestmen use viscoelastic fluids for capturing springtails” (英語). Journal of Experimental Biology 217 (19): 3535–3544. doi:10.1242/jeb.108852. ISSN 0022-0949. PMID 25274325. http://jeb.biologists.org/content/217/19/3535. 

関連項目[編集]