ヒヨケムシ

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ヒヨケムシ目
生息年代: 305–0 Ma
ペンシルベニア紀現世 [1]
Sunspider.jpg
ヒヨケムシの一種(アリゾナ州
地質時代
石炭紀ペンシルベニア紀[2] - 現世
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
: クモガタ綱 Arachnida
: ヒヨケムシ目 Solifugae
学名
Solifugae
Sundevall, 1833
和名
ヒヨケムシ
英名
Solifugid
Solifuges
Camel spider
Sun spider
Wind scorpion
Red Roman
本文参照

ヒヨケムシ(日避虫、ヒヨケムシ類)は、鋏角亜門クモガタ綱ヒヨケムシ目Solifugae)に所属する節足動物の総称。主に熱帯の乾燥気候の場所に分布し、巨大なはさみの様な鋏角を持つ活発な捕食者である。

同じくクモガタ類に属するクモらしい姿を持っているが、クモではなく、自ら独自のを構成したグループである。1000種以上に及ぶ大きな分類群であるにも関わらず、ヒヨケムシに関する研究は少なく、その系統分類形態学・および生態学は未だに不明点が多い[3]

名前[編集]

ヒヨケムシは、地域によって様々な通称を持つ動物である[3]

和名「ヒヨケムシ」(日避虫)と学名「Solifugae」("太陽から逃げる者")は、日当たりを避け、巣穴や日当りのない場所に身を隠す習性に由来する。英語ではそのコブのように盛り上がる前体部から「Camel spider」(ラクダクモ)・素速い動きから「Wind scorpion」や「Wind spider」(風のサソリクモ)・昼行性の種類は「Sun spider」(太陽のクモ、サンディエゴスペイン人による「arañhas 'del sol」に由来する)、他にも「Red Roman」などの呼称がある。なお、これらのほとんどが「spider」(クモ)と「scorpion」(サソリ)という別のクモガタ類の名称を含むため、誤解を招きやすい。

南アフリカでは女性の髪に引き寄せられるという噂からhaarskeerder(髪を切る者)[4]古代ギリシアでは10本脚(正確には2本の触肢と8本の脚)のような外見から「φαλάνγιον」(phalangion、"指骨"を意味する)と呼ばれ、他にも第一次世界大戦による北部アフリカの駐屯軍から「jerrymander」や「jerrymunglum」と呼ばれる[4]

形態[編集]

Galeodes sp. の腹側
I:鋏角(基節)
II:触肢(基節)
III-VI:歩脚(基節)
opisth 1:生殖口蓋
ge:
生殖孔
ll2l3:気門
a:肛門

体長は数㎜から10㎝まで達し[3]、陸生節足動物にしては大型種を含む。多くの種は体長5㎝前後で、最大のものは附属肢を含めて12-15㎝となる[5]鋏角類にしては例外的に、分節のある前体・巨大な鋏角と発達した気管をもつ。他のクモガタ類と同様に8本脚であるが、触肢は歩脚のように発達しているため、脚が10本あると誤解されることがある[6]。全身に毛(剛毛)が生えた動物であり、体色は多くの種類では浅い黄色やクリーム色であるが、赤、黒、白などの色の組み合わせをもつ派手な種類もある。

他のクモガタ類から明確に区別できるヒヨケムシの固有派生形質は、巨大な鋏角の他に、触肢の吸盤・後脚のラケット器官・雄の鋏角に備えた鞭毛などが挙げられる[3]

外部形態[編集]

多くの鋏角類とは異なり、前体(頭胸部)は部分的に分節し、背甲は3つの「peltidium」という背板に分かれる[7]。そのうち、眼・鋏角触肢・第1-2脚(先節+第1-4体節)に対応する前半部(propeltidium)は大きく膨らみ、前端中心に1対の単眼をもち、視力は発達しており、一部の種ではpropeltidiumの左右に眼点をも生えている[8]。後半部の2つの背板(mesopeltidium、metapeltidium)は、それぞれ第3-4脚(第5、6体節)に対応している[7]。このような体節の分化は、コヨリムシ類と胸板ダニ類(Acariformes)に似通っている[7]

ヒヨケムシの一種の前体。2つの単眼と巨大な鋏角をもつ

ヒヨケムシの最大の特徴は、前体の前端から、前向きに突き出した巨大な鋏角である。2節によって構成され、基部の肢節は背側に不動指をもち・その腹面は上下に動く可動指となる先端の肢節があり、あわせてになっている。内側に歯が並んでおり、毒腺はない[9]

ヒヨケムシの一種の腹面。第4脚基部にラケット器官があり、直後に縦割れの生殖口蓋がある

10本脚のように見えるが、他のクモガタ類と同じく実際は8本脚で、最初の1対は脚ではなく触肢である。触肢は歩脚のように発達し、先端には収納可能な吸盤(suctorial organ)がある[10]。第1脚は細短く歩行に用いられず、補助的な感覚器官となる。残り3対は歩行用で、第4脚が最も発達しており、その基部の下面には3対(アナホリヒヨケムシ科)ないし5対(他の現存科)のラケット器官(malleoli、racquet organs)と呼ばれる小さな扇状の構造が並んでおり、感覚器であると考えられる[11]。また、統一に7節からなる一般のクモガタ類の脚とは異なり、ヒヨケムシの脚の肢節数は変則的で、第1対から第4対までそれぞれ6・7・8・8となり、カニムシと同様、膝節らしい肢節は見当たらない[12](一説には長い腿節に見える第5肢節は発達した膝節であり、転節に見える直前の第4肢節は著しく短縮した腿節である[13])。跗節(先端の肢節)は分類群によって分節(跗小節)が見られ、の重要な同定形質の1つとされる[14]。また、第2-3歩脚の基節(最初の肢節)の間は1対の気門が開いている[15]。基節の間に腹板らしい構造は見当たらない[7]

後体(腹部)は楕円形で柔らかい[7]。外見上からは10節に見えるが、実際には11節があり、第1節は退化的である[7]。第2節の腹側は縦割れの生殖口蓋をもち、中心は生殖孔が開く。その次の第3-4節はそれぞれの後縁中心に1対の気門が開く[7]。なお、第5節に1対ないし1個の気門をも加えた種類もある[7]

雌雄[編集]

性的二形で、は丈夫な体型をもつのに対して、は細身で脚は長く、ラケット器官は発達し、鋏角はやや貧弱で不動指に鞭毛(flagellum)と呼ばれる構造体を持つ。雄の鞭毛と雌の生殖口蓋の構造は種によって異なり、同定形質として重要視される[14]

呼吸器官[編集]

ヒヨケムシの呼吸器官は、クモガタ類には他に例がないほどよく発達した気管系である。腹側に前体1対と後体2-3対の気門を持ち、気管は全身を貫通し、脚と触肢にも及ぶ[15]。それを接続する数対の気嚢は鋏角に集約している。このような配置は、巨大で力強い鋏角の重さを減少し、そのガス交換の効率を上げた特徴であると思われる[15]

生態[編集]

南アフリカによるSolpugidae科のヒヨケムシ

主に砂漠などの乾燥地に生息しており、乾燥帯生態系における重要な肉食動物である[16]。多くの種類は夜行性であるが、昼行性の種類もいくつかある[17]。脚は速く、最速のものはおよそ時速16キロメートルまで達する[18]。砂を掘って休憩場所を作る習性を持ち、朽ち木やの下にいることが多い[19]。一日の内の活動しない時間(夜行性の種類は日中、昼行性の種類は夜)をそこで過ごす[19]。昼行性の種類の中で、後体を立てて体温調節をするものが知られる[19]。詳細の生態は、いくつかの種類のみが記載される。

獲物と天敵[編集]

イモムシを捕食するSolpugidae科のヒヨケムシ
サソリに捕食されるヒヨケムシ

素早く走る活発な捕食者であり、主に昆虫クモサソリなど他の節足動物を捕食するが、ときには共食いもし、特に大型種では、トカゲネズミなどの小型の脊椎動物も捕食できる[20]

徘徊しながら触肢を振りまわして周りを感知し、先端の吸盤で平滑な表面や獲物を掴み[10]、強力な鋏角によって獲物の外皮や肉を食い千切る。その過程で後体は伸縮し、鋏角は左右相互に動きながら獲物の体液を口へ運ぶ。成体は自発的に徘徊しながら獲物を探すのに対して幼生は待ち伏せして獲物を捕るという、同一種類が成長段階の違いによって異なった捕食行動をとるものも知られる[21]

一方、ヒヨケムシは無毒で体も柔らかく、他の肉食動物に狙われやすい。同じ生息地の哺乳類鳥類などの大型脊椎動物の糞からヒヨケムシの鋏角の残骸が多く見られ、特に昼行性の種類は鳥類によく補食される。ヒヨケムシの背側に向かった中眼と敏感な視力は、その天敵への警戒のためであると思われる[19]。上述のクモサソリなどから逆に捕食されることもあり、中でも地面にトンネルを作るアシダカグモの一種は、何らかのメカニズムを通じてヒヨケムシの1種Metasolpuga picta の雄を誘惑し、自らの穴に同種の雌が居ると勘違いさせて捕食することが記載される[19]

防御と擬態[編集]

ツノメクサリヘビ属の1種 Pseudocerastes urarachnoides、ヒヨケムシの形に擬態する尾端を持つ

刺激を受けると触肢を高く上げ、鋏角を開き、後体を立てる動作をすることがある。これはサソリ擬態する威嚇姿勢と考えられている。それでも相手が諦めない場合は、鋏角で噛み付いて自衛する。鋏角を擦り合わせ、音を出して威嚇する種も知られる[5][22]

ヒヨケムシ科に属し、ナミビアに生息するヒヨケムシの一種は、黒い体に白い背中を持つ。これは黒い体と白い前翅を持つ一部のOnymacris属とStenocara属のゴミムシダマシ科甲虫擬態する特徴であると思われる[23]

ヒヨケムシが他の動物の擬態モデルとなった例もある。例えばイランに生息するツノメクサリヘビ属ヘビPseudocerastes urarachnoides は、尻尾の先端でヒヨケムシの腹部と脚に擬態し、それを使って鳥類を誘惑して捕食する(攻撃擬態[23]

繁殖と発育[編集]

繁殖は多くのクモガタ類と同様、真の交尾は行わず、精包精莢)の受け渡しを通じて行う「交接」となる。

に触れると、雌は動かない状態に入り、雄は鋏角を用いて排出した精包を掴んで雌の生殖孔へ受け渡す。ただし、ヒトリヒヨケムシ科のヒヨケムシは例外的に、雄は生殖孔から精包を直接的に雌の生殖孔へ渡す[24]。雄は交接直前に鋏角を用いて雌の腹部を噛んでマッサージする行動も多く見られる。相手を傷つけないように、雄の鋏角の内歯は相対的に貧弱であったと思われる[19]。また、ヒヨケムシ科からは、雄は鋏角で雌を持ちあげながら歩き回る配偶行動を持つ種が知られる[25]。一部の種では、飼育下の観察において配偶行動が失敗したり、交接終了後の雄が雌に食べられてしまう事が高頻度に発生するが、自然環境ではほとんどが無事に逃げ出すことができる[19]。また、雌がハンドリングなど人為的な刺激を受けて交接過程のような動かない状態に入ることもある[24]

雄の鞭毛の交接における役割は明らかになっていないが、交接時に雄が鞭毛を雌の生殖孔に差し込み、交接後には砂に潜んで鋏角の身見繕いをする行動が観察される[19]

産卵の際、雌は深く穴を掘って卵を産む。卵の数は種によって50から200個の間である。卵の世話をする習性を持つ雌は卵を保護する間に捕食はしない為、産卵の前に大量の餌を摂る[26]。幼生は9-10齢期を通じて成体になる。寿命は1年以下、雄の方が短命と思われ、生活環は一年周期と考えられる[4]

分布と分類[編集]

オセアニアを除き、砂漠などの乾燥した地方を中心として世界の熱帯から亜熱帯にかけて分布する。何らかの理由で逃亡した個体が発見された例がある[6]が、日本には分布しない。

多くのクモガタ類と同様、ヒヨケムシのクモガタ類における系統的位置は明らかになっていない。古くは形態上の共通点(2肢節のはさみ型の鋏角・膝節らしい肢節のない脚・腹板のない前体・同様の気門の位置など)に基づいて、ヒヨケムシはカニムシに最も近縁(共にHaplocnemataもしくはApatellaを構成する)であると考えられた[27][28][29]。しかしこれはその後の分子系統学的情報に支持されず、不確実であるものの、代わりにクツコムシ類もしくは胸板ダニ類(Acariformes)やコヨリムシ類などとの類縁関係を示唆する結果が出ている[30][31]。後者の場合、ヒヨケムシ類と胸板ダニ類はPoecilophysideaを構成し、これはコヨリムシ類と共にCephalosomataをなしている[29]

下位分類[編集]

化石種をも含め、13科153属1100種以上のヒヨケムシが記載されている。クモガタ綱のなかで、ヒヨケムシ目は6番目に多様化したである[3]

以下は既知の13科について記述する。表記される跗節(脚の終端の肢節)の跗小節数は「第1脚から第4脚までの跗節の跗小節数」である[14]。科の和名は小野 (2002) による[32]

チリヒヨケムシ科[32] Amacataidae
チリに分布するAmacata penai という1種のみによって知られる[33]
歩脚の跗小節数は1-2-2-4となり、第1脚の跗節に爪が無い[33]
雄の鋏角の不動指の背側は分岐があり、鞭毛は膜状で可動である。このような鋏角は後述のカルシュヒヨケムシ科に似通っている[33]
スナハシリヒヨケムシ科[32] Ammotrechidae
南アメリカからアメリカ南部まで広く分布する。化石1種を含めて、5亜科22属84種が知られる。
歩脚の跗小節数は1-1-1-1から1-2-2-4となり、第1脚の跗節に爪が無い。雄の鞭毛は運動できず、半透明の膜状で鋏角内側に付く。
前体と鋏角の接続部は後方へ斜め、眼の部分が前へ突き出すように見える[34]
ミナミヒヨケムシ科[32] Ceromidae
現生種は南部アフリカに分布する。ブラジルからの化石1種を含めて、4属21種が知られる。
歩脚の跗小節数は1-2-2-2となり、第1脚の跗節に2本の爪を持つ。
コヒヨケムシ科[32] Daesiidae
南アメリカ南部、ヨーロッパ南部、アフリカ南部東部北部中東インドまで広く分布する。6亜科29属177種が知られる。
歩脚の跗小節数は1-1-1-1から1-2-2-4となり、第1脚の跗節に爪が無い。雄の鞭毛は運動能力を持ち、鞭状から膜状までの形態をもつ。
ヒトリヒヨケムシ科[32] Eremobatidae
アメリカの砂漠地域から中央アメリカまで分布する。2亜科7属187種が知られる。
歩脚の跗小節数は1-1-1-(1-3)となり、第1脚の跗節に1-2本の爪を持つ。雄の鞭毛は運動能力を持ち、集約した毛束である。
雄の鋏角は途中から細くなり、不動指は針状やへら状など独特の形となるものが多い[35]。配偶行動は他のヒヨケムシと異なり、精包は直接に雄の生殖孔から雌の生殖孔へ渡す[24]
サメヒヨケムシ科[32] Galeodidae
アフリカ東部北部から中東インドモンゴルまで広く分布する。9属200種が知られる大きなグループである。
歩脚の跗小節数は1-2-2-3となり、それぞれの爪に毛が生える。雄の鞭毛は運動能力を持ち、後向きの鞭状となる。
普遍な大型種が含める代表的な科の1つ。鋏角の摩擦音で威嚇する習性が知られる[22]
アジアヒヨケムシ科[32] Gylippidae
近東南アフリカに分布する。5属25種が知られる。
歩脚の跗節数は1-1-1-1となる。
アナホリヒヨケムシ科[32] Hexisopodidae
南アフリカに分布する。2属25種が知られる。
歩脚の跗小節数は1-1-1-1となり、第4脚の跗節に爪が無い。雄の鞭毛は運動能力を持つ、螺旋状に巻いた鞭状構造である。
砂堀りに特殊化したグループ。脚は極端に短く、ラケット器官は3対のみ。全身は濃い毛束に覆われ、その特徴的な外見から「Teddybear Solifuges」という愛称を持つ[36]
カルシュヒヨケムシ科[32] Karschiidae
ヨーロッパ南東部・北アフリカ中東からモンゴルまで広く分布する。4属40種が知られる。
歩脚の跗小節数は1-1-1-1となる。雄の鞭毛は運動できず、螺旋状に巻いた鞭状構造から板状までの形態があり、基部は特殊な毛束を持つ。
雄の鋏角の不動指は二股状など独特な形となり、触肢は特殊化した棘がある[37]
ウモウヒゲヒヨケムシ科[32] Melanoblossidae
南アフリカ南東アジアベトナムインドネシア)に分布する。2亜科6属16種が知られる。
歩脚の跗節数は1-1-1-1から1-2-2-4となる。雄は数対の短い鞭毛を持ち、鋏角の内側に付く。
既知唯一の東南アジアに生息するヒヨケムシDinorhax rostrumpsittacici を含む[8]
ヒカラビヒヨケムシ科[32] Mummuciidae
南アメリカに広く分布する。10属18種が知られる。
歩脚の跗小節数は1-1-1-(1-2)となる。雄の鞭毛は膜状で鋏角内側に付く。
体は往々にしてひまわり種子に似通った黒白の縞模様を持つ。世界最小のヒヨケムシVempironiella aguilari を含む[38]
Protosolpugidae
アメリカイリノイ州石炭紀地層から発見された化石Protosolpuga carbonaria という1種のみによって知られる。
オオヒヨケムシ科[32] Rhagodidae
アフリカからインドまで分布する。27属98種が知られる。
歩脚の跗小節数は1-1-1-1となり、第1脚の跗節に2本の爪を持つ。雄の鞭毛は運動できず、角の様な太短い板状で鋏角内側に付く。
体型のずんぐりしたグループ。後体の尾端は半円形で肛門は腹面に付く。脚は太短く鋏角は大きく発達し、派手な体色を持つ種類が多い[39]。いくつかの種類からは、アリを自発的に襲いかかる行動が知られる[40]
ヒヨケムシ科[32] Solpugidae
アフリカに広く分布する。2亜科23属200種が知られ、Galeodidae科並の大きなグループである。
歩脚の跗小節数は1-4-4-(6-7)となり、第1脚の跗節に爪が無い。雄の鞭毛は可動だが自発的に運動できず、後向きの鞭状である。
代表的な科の1つ。派手な体色をもつ昼行性の種類がある[19]


化石[編集]

Protosolpuga化石

ヒヨケムシは化石に保存しにくく、化石種の発見例は非常に稀である[2][41]

およそ3億3000万年前(古生代石炭紀ミシシッピ紀)まで遡るSchneidarachne saganii という正体が明らかになっていないクモガタ類の化石は、ヒヨケムシらしい形質をもち、おそらく基盤的なヒヨケムシであると考えられる[42]。明らかにヒヨケムシである最古の化石種は、およそ3億500万年前(古生代石炭紀ペンシルベニア紀)まで遡る1科1属のProsolpuga carbonaria である[2]。ほとんどが乾燥帯に生息する現生ヒヨケムシとは異なり、この化石種は沼地の多い森林に生息していたと考えられる[2]。後述の白亜紀Cushingia ellenbergeri も似通っており、森林に生息していたと推測される[43]。他にも化石の保存状態が例外的に良好なCratosolpuga wunderlichi(およそ1億1500万年前、白亜紀、ミナミヒヨケムシ科)が知られる[44]

琥珀に保存された化石ヒヨケムシもあり、以下の種が挙げられる。

  • Cushingia ellenbergeri(およそ9000万年前、白亜紀Cenomanian紀、カルシュヒヨケムシ科?)[43][45]
  • Palaeoblossia groehni(およそ5000-4000万年前、古第三紀-始新世、コヒヨケムシ科)[46]
  • Happlodontus proteus(およそ3000-1000万年前、中新世-新第三紀、スナハシリヒヨケムシ科)[47]

人間との係わり[編集]

サソリとヒヨケムシの闘争が描かれたスタンプ

過剰に刺激され、鋏角で噛み付いて防御する場合は、人間の皮膚を貫通できるほどの力強い大型種も存在するが、ヒヨケムシは無毒で人間を自発的に襲うことはなく、基本的には無害の動物である[48][49]

人間の日常とはさほど係わりのない動物であるが、クモサソリなど多くのクモガタ類と同じく、様々な都市伝説に因んで過剰に誤解される一生物である[48]。その奇妙な姿から「猛毒を持つ」「ラクダを喰う」「クモとサソリのハイブリッド」など、不正確な情報や根拠のない噂が原産地やネットなどで誇張されて伝えられた[48]。隠れていた石を裏返すなどして日光に晒されると、すぐ影のある場所へ向かって走る習性があり、近くに人がいるとその影に向かう事もある。これが「人に襲いかかる」と誤解されてしまうこともある[48]。クモらしい姿と紛らわしい英語名に加えて、クモ(spider)やサソリ(scorpion)と誤って紹介されることも多い[6][48]

稀にペットとして流通するが、不明点の多い生態により確立した飼育方法は無く、人工飼育に不向きとされる。

疑問視される有毒種報告[編集]

インド産のRhagodes nigrocinctus という種に関しては、上皮腺に毒があるとの報告がインド人の研究者らによって1978年になされている。それによれば、この種の上皮腺から抽出した毒をトカゲ類に注入したところ、10匹のうち7匹が麻痺したとされる。しかし他のヒヨケムシからはそのような上皮腺は見つかっておらず、この種についての追試も行われていない。またもし上皮腺に毒があるとしても、その毒を彼らがどのように用いるのかも不明である[50]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ おとそ3億3000万年前(古生代石炭紀ミシシッピ紀)まで遡るヒヨケムシらしいクモガタ類の化石がある。後述参照
  2. ^ a b c d Fossil History”. www.solpugid.com. 2018年11月19日閲覧。
  3. ^ a b c d e Introduction: What Are Solifuges?”. www.solpugid.com. 2018年11月19日閲覧。
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  5. ^ a b G. Schmidt (1993). Giftige und gefährliche Spinnentiere (in German). Westarp Wissenschaften. ISBN 3-89432-405-8.
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参考文献[編集]

  • 内田亨監修 『動物系統分類学』第7巻(中A)「真正蜘蛛類」、中山書店。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]