セロトニン

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セロトニン
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識別情報
CAS登録番号 50-67-9 チェック
PubChem 5202
ChemSpider 5013 チェック
UNII 333DO1RDJY チェック
KEGG C00780 チェック
MeSH Serotonin
ChEBI CHEBI:28790 チェック
ChEMBL CHEMBL39 チェック
5
特性
化学式 C10H12N2O
モル質量 176.215 g/mol
外観 White powder
融点

167.7 °C, 441 K, 334 °F (121–122 °C (ligroin)[2])

沸点

416 ± 30 °C ((at 760 Torr)[3])

への溶解度 slightly soluble
酸解離定数 pKa 10.16 in water at 23.5 °C[1]
双極子モーメント 2.98 D
危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS
半数致死量 LD50 750 mg/kg (subcutaneous, rat),[4] 4500 mg/kg (intraperitoneal, rat),[5] 60 mg/kg (oral, rat)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

セロトニン(serotonin)、別名5-ヒドロキシトリプタミン(5-hydroxytryptamine、略称5-HT)は、動植物に広く分布する生理活性アミン、インドールアミンの一種。名称はserum(血清)とtone(トーン)に由来し、血管の緊張を調節する物質として発見・名付けられた[6]ヒトでは主に生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などに関与する。

生合成と体内での働き[ソースを編集]

トリプトファンからセロトニンへの合成経路

セロトニンは必須アミノ酸トリプトファンから5-ヒドロキシトリプトファンを経てセロトニンになる。 人体内には約10mg存在し、消化管粘膜に90%、血小板中に8%、脳内の中枢神経系に2%存在する。 体内では主に小腸にある腸クロム親和性細胞、および腸クロム親和性細胞様細胞が産生し、腸の蠕動亢進に働く[6]。そのため、消化管のセロトニンが過剰に分泌されると下痢になり、分泌が少ないと便秘になる[7]。 消化管で生成されたセロトニンの一部は血小板中に取り込まれ、血液凝固・血管収縮、疼痛閾値の調節、脳血管の収縮活動の調節などに働く[8]

一方、脳内の神経伝達物質として働くセロトニン(以下、脳内セロトニン)は脳幹の縫線核で合成される[6]。腸で生成されたセロトニンは血液脳関門を通らないため脳のニューロンに直接作用する可能性はない。5-ヒドロキシトリプトファンは血液脳関門を通過するが種々の副作用を示すため、脳内セロトニンを増やすためには栄養学的にはトリプトファンの摂取が重要となる[9]

トリプトファンは血液脳関門の通過にあたり、他のLNAAs(large neutral amino acids)(バリンロイシンイソロイシンフェニルアラニンチロシンメチオニン)と共通の輸送体を使って脳内に入る。そのため、高たんぱく食などLNAAsが多い環境ではトリプトファンは脳へ取り込まれにくくなり、脳内セロトニン合成の律速段階となる[10][11]

また、Diksicらの研究によると健常男性は女性より約52%脳内セロトニンを産生する能力が高く、セロトニンの前駆物質であるトリプトファンが欠乏すると、女性では脳内セロトニン合成が男性の4倍減少する[12]

脳内セロトニンを生成する縫線核群は、大脳皮質大脳辺縁系視床下部脳幹脊髄など広汎な脳領域に投射しているため、脳内セロトニンが関与する生理機能は多岐にわたる[13]。生体リズム・神経内分泌・睡眠体温調節などの生理機能と、気分障害統合失調症薬物依存などの病態に関与しているほか、ドーパミンノルアドレナリンなどの感情的な情報をコントロールし、精神を安定させる働きがある。

ホルモンとしても働き、消化器系や気分、睡眠覚醒周期、心血管系、痛みの認知、食欲などを制御している。

受容体[ソースを編集]

神経作用[ソースを編集]

セロトニン神経(5-HT神経)の活動特性は、覚醒時に抵頻度発射(規則的な 3–5 Hz の発射活動)を継続して、標的細胞のシナプス間隙に一定のセロトニンを分泌させ、覚醒状態を維持することにある。痛みやストレスなどの内外環境からの覚醒・ストレス刺激には影響されない。徐波睡眠に移行するとその活動が減弱、レム睡眠になると、完全に消失する。

脳内のパターン形成機構によるリズム性運動(歩行運動、咀嚼運動、呼吸運動、グルーミングなど)で興奮し、覚醒状態における種々な活動に適度な緊張(抗重力筋の緊張や交感神経の緊張など)を与える役割がある。覚醒時の5-HT神経系の活動が抑制された状態はうつ病慢性疲労症候群などの症状を惹起するとされる。

抗うつ薬にはセロトニンに関わる薬があり、TCASSRISNRIMAO阻害剤が主に当てはまる。セロトニンの再取り込みを阻害することによってシナプス間のセロトニンの量が増えるとされる。

製薬会社は自社の抗うつ薬の宣伝として、セロトニンの欠乏を正常化するというように説明するが、これは証拠によって裏付けられていない比喩的な説明である[14]

疼痛に関しては、延髄の大縫線核からの下行性疼痛制御系での伝達物質として働く[15]。縫線核の細胞体に存在する5-HT1A受容体(オートレセプター)にセロトニンが作用すると、終末からセロトニン放出が抑制される。この受容体の機能が低下(脱感作)すると、神経終末からセロトニン放出が促進する。

GABAを伝達物質として持つ抑制性介在ニューロンは興奮性セロトニン受容体(5-HT2A・5-HT3)と抑制的セロトニン受容体(5-HT1B・5-HT1C)を持つ。1次ニューロンの終末は興奮性セロトニン受容体(5-HT2A・5-HT3・5-HT4)と抑制的セロトニン受容体(5-HT1A・5-HT1B・5-HT1C)を、2次侵害受容ニューロンは抑制的セロトニン受容体(5-HT1A)を持つ。

疼痛抑制[ソースを編集]

  • 2次ニューロンと1次ニューロン終末の抑制的セロトニン受容体にセロトニンが作用。
  • 介在ニューロンの興奮性セロトニン受容体にセロトニンが作用。

疼痛促進[ソースを編集]

  • 1次ニューロン終末の興奮性セロトニン受容体にセロトニンが作用。
  • 介在ニューロンの抑制的セロトニン受容体にセロトニンが作用。

出典・注釈[ソースを編集]

  1. ^ Mazák, K.; Dóczy, V.; Kökösi, J.; Noszál, B. (2009). “Proton Speciation and Microspeciation of Serotonin and 5-Hydroxytryptophan”. Chemistry & Biodiversity 6 (4): 578–90. doi:10.1002/cbdv.200800087. PMID 19353542. 
  2. ^ Pietra, S.;Farmaco, Edizione Scientifica 1958, Vol. 13, pp. 75–9.
  3. ^ Calculated using Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V11.02 (©1994–2011 ACD/Labs)
  4. ^ Erspamer, Vittorio (1952). “Ricerche preliminari sulle indolalchilamine e sulle fenilalchilamine degli estratti di pelle di Anfibio”. Ricerca Scientifica 22: 694–702. 
  5. ^ Tammisto, Tapani (1967). “Increased toxicity of 5-hydroxytryptamine by ethanol in rats and mice”. Annales medicinae experimentalis et biologiae Fenniae 46 (3, Pt. 2): 382–4. 
  6. ^ a b c セロトニンの生理作用
  7. ^ セロトニンDojo
  8. ^ セロトニン(5-HT)
  9. ^ 荒川泰昭 (2000). “特集「飽食時代の落とし穴!? 欠乏症にご用心」-脳の栄養不足は大丈夫?-” (日本語). 『食生活』 (東京: カザン) 94 ((財)国民栄養協会): 21-26. ISSN 0386-989X. 5560469. http://www.arakawa-yasuaki.com/course/brain-nutrient.html. 
  10. ^ 横越 英彦 (2004), 『脳機能と栄養』, 幸書房, pp. 394, ISBN 4782102429 
  11. ^ L. Voog; T. Eriksson (1992). “Diurnal rhythms in rat brain large neutral amino acids (LNAAs), monoamines and monoamine metabolites”. Journal of Neural Transmission / General Section JNT 87 (3): 215-224. 
  12. ^ Diksic M. et al (1997). “Differences between males and females in rates of serotonin synthesis in human brain”. Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 94 (10): 5308-5313. http://www.pnas.org/content/94/10/5308.long. 
  13. ^ 有田 秀穂 (2009). “特集:セロトニンの働きを考える セロトニンの生理作用”. 『小児科』 (金原出版株式会社) 50 (13). 
  14. ^ Lacasse, Jeffrey R.; Leo, Jonathan (2006). “Questionable Advertising of Psychotropic Medications and Disease Mongering”. PLoS Medicine 3 (7): e321. doi:10.1371/journal.pmed.0030321. PMC 1518694. PMID 16848626. http://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.0030321. 
  15. ^ 免疫蛍光法によって、縫線核群の細胞の多くのものがセロトニンを含むことが知られている。

関連項目[ソースを編集]

外部リンク[ソースを編集]