恐蟹綱

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
恐蟹綱
生息年代: 542–400 Ma
Anomalocaris BW.jpg
アノマロカリス(上)とオパビニア(下)の復元図

Opabinia BW.jpg

地質時代
カンブリア紀 - デボン紀前期
分類
: 動物界 Animalia
上門 : 脱皮動物 Ecdysozoa
階級なし : 汎節足動物 Panarthropoda
葉足動物 "Lobopodia"
: 節足動物門Arthropoda
: 恐蟹綱 Dinocaridida
Collins, 1996
下位分類群

恐蟹綱(きょうかいこう、Dinocarididaディノカリディダ)は、初期の節足動物として考えられた絶滅動物群である。アノマロカリス類オパビニアなどを含む。主にカンブリア紀に生息した海棲動物であり、その後オルドビス紀デボン紀からも発見されている[1][2]分岐学上、この分類は節足動物の初期脇道系統に位置する側系統群(ステムグループ)として考えられる。

捕食性として考えられた種類が多いことと甲殻類の腹部に似た触手の形に由来し、学名「Dinocaridida」はギリシャ語の「deinos」(恐ろしい)と「caris」(カニエビ)の合成で、併せて「恐ろしいカニ(エビ)」を意味する。また、この分類はしばしば「Dinocarida」(ディノカリダ)として表記される[3]

特徴[編集]

左右対称で、体節制をもつ動物である。最大の共通性質は、頭部前方にある特化した1対の前方付属肢(触手、大付属肢)と、体の両側に向かって張り出した遊泳用の鰭(ひれ)がある。大部分の表皮(クチクラ)は、真の節足動物ほど硬質化していない、柔らかいものだと思われる[4]。ごく一部の種類は、鰭の下側に葉足動物様の柔軟な脚を具えている[5]

確認されたものに限れば、神経系は有爪動物に似たはしご形神経系で、脳神経節は前大脳1つだけで、前方付属肢に対応する。消化道の途中には体節に応じて数対の消化腺が並ぶ、このような消化道は多くの古生代節足動物と一部の現生甲殻類に類似し、そして他の葉足動物にはほぼ見られない特徴である[6]

現生のイカのように鰭を波打つ、自由遊泳をする活発な動物と思われる。獰猛な捕食者として考えられたものが多いが、濾過摂食に適したような種類もいくつか発見されている[7][1]

系統関係[編集]

汎節足動物

アイシュアイア





ハルキゲニアなど



カギムシ(真有爪動物




クマムシ(真緩歩動物


消化腺[6]

シベリオンなど


ひれ[4]

パンブデルリオン


複眼[9]

ケリグマケラ


腹側に向かう口[8]

オパビニア


局部の外骨格[4]

アノマロカリス類


全身の外骨格[4]

節足動物









本群は、真の節足動物(真節足動物)が葉足動物から分化する過程、その脇道系統に位置する側系統群、いわゆるステムグループ節足動物として考えられる[10]。本群の動物から、その変化過程を示唆する性質が見られる。例えばパンブデルリオンは、アノマロカリス類らしき鰭と口を備える同時に、柔軟な脚を持ち、葉足動物らしき性質が残されている[5]。その一方、アノマロカリス類は、関節肢化した触手と複眼を持ち、節足動物との重要な共通性質が見られる[4]。また、シベリオン科(Siberiidae、シベリオンなど)の葉足動物は、特化した前方付属肢と消化腺を持つという共通性質から、この脇道系統の基部に位置された[6]

下位分類[編集]

本群は、放射歯目Radiodontaラディオドンタ)という1目のみが知られているが、その後の知見ではアノマロカリス類のみを示す傾向がある[1]。ここは、属までにこの目以外の分類を表記する。また、かつて本群のものとして考えられたパラペユトイアは、Megacheiraという別系統の節足動物とされた(パラペユトイア#系統関係を参照)[3]

ギャラリー[編集]

化石[編集]

復元[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ a b c Anomalocaridid trunk limb homology revealed by a giant filter-feeder with paired flaps
  2. ^ Gabriele Kühl, Derek E. G. Briggs & Jes Rust (2009). “A great-appendage arthropod with a radial mouth from the Lower Devonian Hunsrück Slate, Germany”. Science 323 (5915): 771–773. Bibcode 2009Sci...323..771K. doi:10.1126/science.1166586. PMID 19197061. 
  3. ^ a b Hou, Xianguang; Bergström, Jan; Jie, Yang (2006). “Distinguishing anomalocaridids from arthropods and priapulids”. Geological Journal 41 (3–4): 259–269. doi:10.1002/gj.1050. 
  4. ^ a b c d e Making sense of “lower” and “upper” stem-group Euarthropoda, with comments on the strict use of the name Arthropoda von Siebold, 1848
  5. ^ a b The Anomalocaris Homepage | Species Accounts IV - Kerygmachela kierkegaardi & Pambdelurion whittingtoni
  6. ^ a b c Sophisticated digestive systems in early arthropods
  7. ^ A suspension-feeding anomalocarid from the Early Cambrian
  8. ^ Origin and evolution of the panarthropod head – A palaeobiological and developmental perspective
  9. ^ Brain and eyes of Kerygmachela reveal protocerebral ancestry of the panarthropod head
  10. ^ Smith, Martin R.; Ortega-Hernández, Javier (2014). “Hallucigenia's onychophoran-like claws and the case for Tactopoda”. Nature 514 (7522): 363–366. Bibcode 2014Natur.514..363S. doi:10.1038/nature13576. PMID 25132546. http://dro.dur.ac.uk/19108/1/19108.pdf. 
  11. ^ The taphonomy and affinities of the problematic fossil Myoscolex from the Lower Cambrian Emu Bay Shale of South Australia