汎節足動物

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汎節足動物
生息年代: カンブリア紀現世
Aysheaia2.jpg
Macrocheira kaempferi.jpg
葉足動物であるアイシュアイアの復元模型(上)と節足動物であるタカアシガニ(下)
分類
: 動物界 Animalia
亜界 : 真正後生動物亜界 Eumetazoa
階級なし : 前口動物 Protostomia
上門 : 脱皮動物上門 Ecdysozoa
階級なし : 汎節足動物 Panarthropoda
学名
Panarthropoda
Nielsen, 1995
英名
Panarthropod
下位分類群

汎節足動物(はんせっそくどうぶつ、Panarthropoda)とは、脱皮動物のうち現存する有爪動物緩歩動物節足動物の3動物門から構成される分類群である[1]。またこれらの最後の共通祖先から派生したとされる絶滅分類群、いわゆる葉足動物をも含む[2]。この分類群の単系統性は神経解剖学[3]分子系統学[4]ミトゲノム解析[5][6])・古生物学[7][8]など多方面の知見から支持される[9]

概要[編集]

現生脱皮動物のうち、有爪動物カギムシ)、緩歩動物クマムシ)、節足動物の3群は単系統群になると考えられており、これを汎節足動物と呼ぶ。これらの最後の共通祖先、およびそれぞれのステムグループ(初期脇道系統)に属すると思われる古生物群、いわゆる葉足動物もこの群に含まれる[2]。これらの動物は、原則として脱皮を行い、体節制はしご形神経系を持ち、先端に爪のある付属肢は1体節の両腹側につき1対ずつある[1][8][10]

汎節足動物の体節制先節は「0」で示され、前大脳性・中大脳性・後大脳性の体節と付属肢はそれぞれP(赤)・D(黄)T(緑)で示される。

変動の経緯[編集]

前口動物
冠輪動物

Haeckel Spirobranchia.jpg腕足動物Haeckel Gamochonia.jpg軟体動物Annelida collage.png環形動物など


脱皮動物

Priapulus caudatus.jpg鰓曳動物など



Soybean cyst nematode and egg SEM.jpg線形動物など


汎節足動物

Velvet worm.jpg有爪動物SEM image of Milnesium tardigradum in active state - journal.pone.0045682.g001-2.png緩歩動物Arthropoda.jpg節足動物など




前口動物における汎節足動物の系統的位置。

古典的な動物学では、環形動物節足動物はともに体節制に基づいたはしご形神経系付属肢を持つことから、体節動物Articulata)と呼ばれる1つの系統群を成すと考えられていた。この考えにおいて、節足動物と環形動物の両者と共通する特徴を持つとされ、この2つの中間に位置づけられていた舌形動物有爪動物緩歩動物側節足動物(Pararthropoda)である[11][12]。しかし、主に分子系統学の知見から、環形動物は節足動物よりも軟体動物腕足動物などに近縁で、冠輪動物と呼ばれる系統群に含まれると考えられるようになった[13]。同様に節足動物は線形動物鰓曳動物などとともに脱皮動物の系統に含まれるとする説が有力になった[14][13][15]

側節足動物とされた動物群の位置付けも変化した。舌形動物精子の構造と分子系統学の両面から、系統的に節足動物に含まれ、とりわけ甲殻類鰓尾類に近縁であると考えられている[12][15][16][17]。一方で、有爪動物緩歩動物はそれぞれ、節足動物に近縁な独立の動物門とされている[5][12]。その結果、側節足動物は多系統となり、便宜的に用いられるだけになっている[11]

内部系統[編集]

節足動物のような神経節をもつ緩歩動物の神経系。
節足動物のように複数の脳神経節からなる有爪動物

提唱された汎節足動物の3つの内部系統仮説は以下の通り。緩歩動物節足動物に近いとする説(Tactopodaを構成する)[7][6]有爪動物を節足動物に近いとする説(Antennopodaを構成する)、もしくは緩歩動物と有爪動物が単系統群(Lobopodia[注釈 1][18])となり、節足動物はその姉妹群になるとする説[19]という3つの系統仮説がある[18]

汎節足動物

有爪動物門


Tactopoda

緩歩動物門



節足動物門




汎節足動物

緩歩動物門


Antennopoda

有爪動物門



節足動物門




汎節足動物

節足動物門


Lobopodia[注釈 1]

緩歩動物門



有爪動物門




Tactopoda説は、節足動物の脇道系統における葉足動物は緩歩動物らしい形質をもつ種類があるという古生物学的証拠[7]と、節足動物と緩歩動物におけるミトコンドリアDNA遺伝子配列[6]に裏付けられる。また、両者の神経索は有爪動物に見当たらない神経節をもつ。これは有爪動物の系統で退化した汎節足動物の祖先形質、もしくは収斂進化の結果ではないかという見解もあったが、神経解剖学的解析にTactopodaの派生形質として有力視される[20]。Antennopoda説は、節足動物と有爪動物における特殊化した頭部前端の付属肢触角など)・複数体節からなる頭部と脳神経節などの共有形質に基づいた[21]が、いずれの相同性も後に発生学と神経解剖学的見解に否定的であると評価される[22]。緩歩動物と有爪動物においては節足動物に見当たらない葉足などの共有形質が認められるが、それは側系統群である葉足動物から受け続いた汎節足動物の祖先形質に過ぎない[7][2]

日本動物学会によると、2018年においてAntennopoda説が有力とされている[23]が、汎節足動物の内部系統関係は議論的である[18][20]Tactopoda説はミトコンドリアDNA[6]古生物学[7][8]神経解剖学[22]など多方面の見解に示唆されるが、分子系統学的見解は一致な結果は出さず、Antennopoda説[5][4][24]もしくはLobopodia説[5][25]に偏る向きがある[18]。また、緩歩動物が節足動物の内部系統に位置付けられ[5]、更に汎節足動物は非単系統群で、緩歩動物が線形動物姉妹群とされるなど、ロングブランチアトラクションなどによる誤った系統関係として疑問視される解析結果もいくつかある[1][10][18][20]

葉足動物と現生汎節足動物の関係性[編集]

汎節足動物
*

(諸説あり)



*

(諸説あり)



*

Antennacanthopodiaなど



有爪動物(カギムシ)





*

(諸説あり)



緩歩動物(クマムシ)




*

メガディクティオンJianshanopodiaなど



*

Gilled lobopodians側系統群




アノマロカリス類



節足動物






様々な葉足動物(*)と現生汎節足動物(太字)の系統関係。

絶滅した汎節足動物である葉足動物は、有爪動物に似通う外見をもち(クチクラが環形の筋に細分される柔軟な体と葉足など)、かつては全てが原始的な有爪動物扱いとされてきた[26][27][2]。しかし節足動物緩歩動物らしい形質をもつ葉足動物(メガディクティオンケリグマケラなど)が発見される以降、有爪動物だけでなく、節足動物と緩歩動物も側系統群の葉足動物から派生していることが示唆される[28][29][2]。従って、かつて有爪動物的とされてきた葉足動物の多くの特徴は、単なる汎節足動物の祖先形質に過ぎず[30]、葉足動物と有爪動物の系統関係への再検討がなされるように至った。

2010年代現在、アノマロカリス類をも含んだ節足動物に至る系統に近い葉足動物は、メガディクティオンJianshanopodia などシベリオン科の種類[31][32][33][8][34][35][36][30][37]、およびパンブデルリオンケリグマケラなどgilled lobopodians(鰓のある葉足動物)と呼ばれる種類[28][29][8][34][2][35][36][30][37]が挙げられる。有爪動物に至る系統に近い葉足動物としてAntennacanthopodia が広く認められる[8][34][36][30]。緩歩動物に至る系統に近い葉足動物はいくつか挙げられる[8][34][36]が、確実でない[2]。なお、Xenusionアイシュアイアハルキゲニアパウキポディアオニコディクティオンなど、かつて有爪動物らしいと考えられてきた他の多くの葉足動物の位置付けは未だに論争的で、種類や文献によっては有爪動物に至る系統に近い(アイシュアイア以外の多くの種類)[8][34][2]、緩歩動物に至る系統に近い(アイシュアイア、オニコディクティオン)[36][30]、節足動物に至る系統に近い(アイシュアイア、オニコディクティオン、Xenusion など[8][36]、または独立した別系統の汎節足動物(ハルキゲニア、パウキポディアなど)[36][30]などの説に分かれている。

注釈[編集]

  1. ^ a b ここでの「Lobopodia」は有爪動物と緩歩動物からなる単系統群の名として用いられており、通常のLobopodia(葉足動物)の用法とは異なる。詳細は葉足動物を参照。

参考文献[編集]

  • 公益社団法人日本動物学会『動物学の百科事典』丸善出版、2018年9月28日。ISBN 978-4621303092

出典[編集]

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