甲殻類

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甲殻類
生息年代: 511–0 Ma
カンブリア紀現世
Crustacea.jpg
様々な甲殻類
分類
: 動物Animalia
: 節足動物Arthropoda
階級なし : 大顎類 Mandibulata
汎甲殻類 Pancrustacea
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
学名
Crustacea
Brünnich, 1772[1]
和名
甲殻亜門[2]
下位分類群

甲殻類(こうかくるい、Crustacean)は、節足動物を大まかに分ける分類群の一つ、甲殻亜門(こうかくあもん、Crustacea)に分類される節足動物の総称である。

エビカニオキアミフジツボミジンコなどを含むグループである。深海から海岸河川湿地まで、あらゆる水環境に分布するが、主にで多様化している。陸上の生活に完全に適応しているのはワラジムシ類とダンゴムシ類など僅かである。

系統関係については、21世紀現在、汎甲殻類説が最も有力視されている。すなわち甲殻類は六脚類と共に単系統群の汎甲殻類を成し、六脚類は側系統群の甲殻類から分岐しているとされる[4]

形態[編集]

体は複数の体節(somites)からなり、前端は先節と直後5つの体節の癒合でできている頭部(head または cephalon)で、残りの胴部の体節は多くが前後で胸部(thorax)と腹部(abdomen、軟甲類の場合は pleon)としてまとめられるが、その構成は系統によって様々である。多くが併せて十数節ほどであるが、少ないものでは数節(鰓尾類)、多いものでは数十節ほど及ばし、胸部と腹部の区分が見られないものもある(ムカデエビ[4]。頭部と胸部全体、または頭部と胸部の一部の体節は見かけ上まとまって、頭胸部(cephalothorax)を構成することがある。頭部ないし頭胸部は背面から伸びた甲羅状の構造があり、背甲(carapace)と呼ばれる。これによって頭部と胸部、あるいは全体を覆っているものが多いが、全くこれを欠くものもある。

様々な甲殻類のニ叉型付属肢(en:内肢、ex:外肢、ep:外葉)

体の各体節には基本として1対の付属肢関節肢)があり、付属肢の基本形は外肢(exopod)と内肢(endopod)に分かれた二叉型(biramus)。さらに付属肢の基部の節に外葉(exite、epipod)、内葉(endite)という付属体がつく場合もある[5]。外葉は副肢ともよばれる。これらの構造は多様な機能に合わせ変形したり退化している[5]

ヨーロッパザリガニ大顎(a)、第1小顎(b)、第2小顎(c)、および第1-3顎脚(d-f)

頭部には2対の触角があり、前後それぞれ第1触角(first antenna、antennule)および第2触角(second antenna、antenna)と呼ばれる。第1触角は基本として単枝型であるが、軟甲類ムカデエビでは複数の糸状突起をもち、二叉型や三叉型のように見える。通常、第1触角は第2触角に比べて退化的であるが、カイアシ類とムカデエビの場合はむしろ第1触角の方が発達で、第2触角は異常に小さく目立てない[6]。口には1対の大顎(mandible)、2対の小顎(maxilla)の3対の口器がある。また、基部の1肢節のみからなる六脚類多足類の大顎とは異なり、甲殻類は多くが大顎髭(mandibular palp)という肢状の部位を大顎に残される[7]

胸部の付属肢(胸肢、thoracopod)は主に歩行用および遊泳用に使われ、胸部前方の附属肢が顎脚(maxilliped)として直前の顎とともに口器に参加する場合もある[8]。外肢や外葉は退化したりになっていることがある[5]。腹部はほとんどの場合では付属肢を欠き、軟甲類においては胸部のものとは形態が異なった腹肢(pleopod)と尾肢(uropod)をもつ(そのため、軟甲類の「腹部」は他の甲殻類の腹部に相同でなく、単なる「特化した胸部の後半部」ではないかという説もある)[9]。腹部末端の尾節(telson)もしくは肛門節(anal somite)と呼ばれる部分には尾叉や尾鞭(caudal furca、caudal ramus)などと称する構造があることが多い[9]

フクロムシのメス成体(左)とそのノープリウス幼生(右)

寄生性の種類では付属肢や体節が失われていたり、極端な場合はフクロムシシタムシのように節足動物に見えない姿のものがある。

甲殻類は既知最小級と最大級の現生節足動物を同時に含んだ分類群であり、体の大きさはヒメヤドリエビが全長0.09 mmから、タカアシガニの足を広げて3mまでの広い範囲にわたる[10]

生態[編集]

甲殻類の生息環境はを中心としている。鰓脚類は大部分が陸水産であるが、それ以外の甲殻類はほとんどが海産である。海中に於いてはプランクトン性のものから、底性、潜行性とさまざまなものが、極地や深海の熱泉を含むあらゆる環境に生息している。陸上であれだけ優勢な昆虫類が海産種をほとんど持たない理由として、往々に甲殻類が多くのニッチを占めていることが挙げられる。

淡水では鰓脚類、十脚類エビカニ)など分類群は限られるが、多くの種があり、河川、湖、池から小さな水路、あるいは地下水にまでさまざまな場所に生息する。海から切り離されて淡水となった湖には、海産の群の特殊なものが出現する場合があり、海跡動物と呼ばれる。

陸に生息するものは更に種類が少なく、カニ類、ヤドカリ類と等脚類ワラジムシヒメフナムシダンゴムシ)、端脚類ヨコエビ)、カイアシ類貝虫類などの少数の種が知られている。土壌生物として繁栄しており、一般に土壌中のバイオマスとしては上位を占め、しばしば優占する[10]

殆どの甲殻類は鰓呼吸を行うため水は必須であり陸生の甲殻類も鰓呼吸のために水分を蓄える仕組みを持つ。ワラジムシダンゴムシは白体(偽気管)で空気呼吸が可能であり鰓呼吸を必要としない。

十脚類では他の動物と共生生活をするものも知られる。カニ、ヤドカリとイソギンチャクハゼテッポウエビなどが有名である[11]

人によく知られているのは遊泳性や歩行性のものだが、固着性寄生性のものも多い。食性は肉食のものから草食デトリタス食、寄生性まで多岐にわたる。

幼生は3対の付属肢(第1触角・第2触角・大顎)のみを持つノープリウス幼生(Nauplius)で、変態を行い、後方から徐々に体節を追加して成体になる。より発生の進んだ形で孵化するものや、成体に近い姿で生まれるものもある。繁殖時には卵が孵化するまでメスの育児嚢や腹脚等に付着させるものが多い。また孵化後もしばらく親が保護する習性を持つものが等脚類などに知られている。カリブ海では真社会性テッポウエビが発見されている(以上、朝倉(2003)等から)。

歴史[編集]

古生代カンブリア紀から知られており、以降多くの化石種が知られている。バージェス動物群カナダスピスワプティアなどが甲殻類であるとの説はあったが、後に否定的とされる[12]。現行の分類群では貝虫類と鰓脚類の化石がカンブリア紀まで遡る[13]貝虫類のものは殻が微化石としてよく出るので研究もよく行われ、現在知られている種数が、現生種より化石種の方が多いほどである。

分類[編集]

現生甲殻類の主な分類群は、貝虫類(Ostracoda)・ヒゲエビ類(Mystacocarida)・鰓尾類Branchiura)・シタムシ類(Pentastomida)・カイアシ類Copepoda)・ヒメヤドリエビ類Tantulocarida)・鞘甲類Thecostraca)・軟甲類Malacostraca)・鰓脚類Branchiopoda)・カシラエビ類Cephalocarida)・ムカデエビ類Remipedia)という11群が挙げられており、それぞれもしくは亜綱扱いとされる。化石群まで範囲を広げれば、嚢頭類Thylacocephala)とCyclida類という甲殻類と考えられる分類群もあるが、これらは甲殻類であることを示唆する根強い証拠や、前述の現生群との類縁関係は長らく統一した見解を与えられていない[14][15][16][17][18][19][20]

系統関係[編集]

節足動物

鋏角類

大顎類

多足類

汎甲殻類
貧甲殻類

貝虫類*

ヒゲエビ類*

ウオヤドリエビ類

鰓尾類*

シタムシ類*

Altocrustacea
多甲殻類

軟甲類

鞘甲類*

カイアシ類*

異エビ類

カシラエビ類

Athalassocarida

鰓脚類

Labiocarida

ムカデエビ類

六脚類

節足動物における汎甲殻類の系統位置と内部系統関係。青い枠以内の分類群(六脚類以外の汎甲殻類)は側系統群の甲殻類に属しており、「*」付きのものは、かつて顎脚類に分類された群である。諸説のあるものは、ここで複数分岐としてまとめられる。ヒメヤドリエビ類はほとんどの研究に解析対象とされないため、ここでまとめられない。

甲殻類の節足動物における系統位置、およびその下位分類は分子系統学分岐分類学によって大きく書き替えられた。20世紀以前では後に別系統であると判明した三葉虫節口類をも含め[21]、20世紀では鋏角類などに類縁とされる(Schizoramia説)場合もあった[22]。しかし21世紀以降の分析から、現生節足動物の中で甲殻類は六脚類に最も近縁であることと、多くの小型甲殻類を含め、長く流用されてきた顎脚類Maxillopoda)は多系統群であることが広く認められるようになった[4][3]シタムシ類はかつては節足動物でない独立の動物(舌形動物門)扱いとされてきたが、後に分子系統解析と精子の構造によって鰓尾類に近縁の甲殻類であると判明し[23][24]ウオヤドリエビ類[3]Ichthyostraca)としてまとめられた。[9]

かつて、昆虫などを含んだ六脚類は、多足類に近縁と考えられてきた[4]。しかし分子系統学神経解剖学による見解は、甲殻類のほうが六脚類に近縁であることを強く示唆している。甲殻類と六脚類は、併せて汎甲殻類Pancrustacea)を構成し、その中で六脚類は側系統群の甲殻類から派生しているとされる[25][26][27][28][9]

こうした甲殻類は、下位分類の再編成、特に顎脚類の解体によって独立した幾つかの分類群については、文献によって様々なの系統仮説が提唱される(汎甲殻類#構成を参照)[9]が、貝虫ヒゲエビ・鰓尾類・シタムシは単系統群貧甲殻類[3] Oligostraca)をなし、残り全ての汎甲殻類(Altocrustacea)と姉妹群になる系統関係が広く認められる[9]。その他の汎甲殻類については、議論の余地があるものの、カイアシ類鞘甲類軟甲類が単系統群(多甲殻類[3] Multicrustacea)をなし、鰓脚類カシラエビ類ムカデエビ類・六脚類からなる単系統群(異エビ類[3] Allotriocarida)がその姉妹群であるとされる傾向がある[9]。また、六脚類に最も近縁な甲殻類としてムカデエビは有力な候補と見なされる(共にLabiocaridaをなす)[29][7][9][4]

ヒメヤドリエビ類については、鞘甲類との類縁関係が支持される。また、ヒメヤドリエビ類が鞘甲亜綱の内部系統に含まれ、蔓脚類(広義のフジツボ)と単系統群になる可能性も挙げられる[30]

貧甲殻上綱(オリゴストラカ上綱) w:Oligostraca|Oligostraca[編集]

貝形虫綱 w:Ostracoda|Ostracoda[編集]

(綱なし)ヒゲエビ亜綱 w:Mystacocarida|Mystacocarida[編集]

ウオヤドリエビ綱 :en:Ichthyostraca|Ichthyostraca[編集]

チョウ目 (Argulus sp.)

多甲殻上綱(マルチクラスタケア上綱) w:Multicrustacea|Multicrustacea[編集]

六幼生綱(六齢ノープリウス綱) w:Hexanauplia|Hexanauplia[編集]

無柄目(Chthamalus stellatus

軟甲綱 w:Malacostraca|Malacostraca[編集]

クーマ目 (Diastylis rathkei)
タナイス目 (Tanaisus lilljeborgi)
端脚目 (Leucothoe incisa)
十脚目 (Liocarcinus marmoreus)
ムカデエビ目Speleonectes tanumekes

鰓脚綱 w:Branchiopoda|Branchiopoda[編集]

カシラエビ綱 w:Cephalocarida|Cephalocarida[編集]

ムカデエビ綱 w:Remipedia|Remipedia[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ Shane T. Ahyong, James K. Lowry, Miguel Alonso, Roger N. Bamber, Geoffrey A. Boxshall, Peter Castro, Sarah Gerken, Gordan S. Karaman, Joseph W. Goy, Diana S. Jones, Kenneth Meland, D. Christopher Rogers, Jörundur Svavarsson (2011). “Subphylum Crustacea Brünnich, 1772. In: Zhang, Z.-Q. (Ed.) Animal biodiversity: An outline of higher-level classification and survey of taxonomic richness”. Zootaxa, Volume 3148, Magnolia Press, Pages 165-191.
  2. ^ 大塚攻・駒井智幸「甲殻亜門」石川良輔編『節足動物の多様性と系統』〈バイオディバーシティ・シリーズ〉6、岩槻邦男・馬渡峻輔監修、裳華房、2008年、172-203頁。
  3. ^ a b c d e f g h i 大塚攻、田中隼人「顎脚類(甲殻類)の分類と系統に関する研究の最近の動向」『タクサ:日本動物分類学会誌』第48巻、日本動物分類学会、2020年、 49–62、 doi:10.19004/taxa.48.0_49
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  5. ^ a b c Boxshall, G. A. (2009年). “Exopodites , Epipodites and Gills in Crustaceans” (英語). www.semanticscholar.org. 2020年10月19日閲覧。
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  7. ^ a b Schwentner, Martin; Combosch, David J.; Nelson, Joey Pakes; Giribet, Gonzalo (2017-06-19). “A Phylogenomic Solution to the Origin of Insects by Resolving Crustacean-Hexapod Relationships” (English). Current Biology 27 (12): 1818–1824.e5. doi:10.1016/j.cub.2017.05.040. ISSN 0960-9822. PMID 28602656. https://www.cell.com/current-biology/abstract/S0960-9822(17)30576-6. 
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参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]