中国の空母建造計画

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中国の空母建造計画 (Chinese aircraft carrier programme) とは中華人民共和国で進められている航空母艦建造の計画である。

2016年現在、就役中の「遼寧」の他、通常動力型空母2隻を建造中、2020年以降原子力空母2隻を建造予定とされる[1]

歴史[編集]

建造計画[編集]

本項では、中国の空母建造計画、および経緯について記す。

遼寧[編集]

就航した遼寧(2012年9月)

中国は1998年にウクライナから購入した未完成の空母「ヴァリャーグ」を大連の造船所へと運び入れた。中国では、将来の国産空母建造のための研究材料とし、2002年から「ヴァリャーグ」の研究・調査が始められ、2005年には調査は完了した[要出典]という分析がある。また「ヴァリャーグ」の修復工事も行われ、2011年8月からは試験航海も実施されたとする分析が伝えられている。この空母の名前は「遼寧」となった。[2][3][4][5]

中国海軍初の空母「遼寧」は2012年9月25日、大連港を出港し事実上就役した、と中国メディアが伝えた[6]

2016年12月、中国メディアは空母「遼寧」の艦隊が、渤海で初の実弾演習を実施したと伝えた[7]。また防衛省は「遼寧」が駆逐艦などと艦隊を組み、東シナ海中部の海域を東進しているのを確認したと発表した[8]

国産空母[編集]

大連で建造中の空母[編集]

2016年1月、中国国防省は中国初の国産空母が遼寧省大連市で建造されていることを公式発表した。排水量5万トン、通常動力装置を採用し、中国国産の艦載機を搭載することも明かされた[9]。 2016年10月、中国国防省は大連で建造中の国産空母について、船体の主要部分が完成したことを発表した。これにより、中国初の国産空母が2017年にも進水する可能性が高まった[10]

上海で建造中の空母[編集]

国産としては2隻目となる空母が、上海の江南造船所で2015年3月より建造中とされる。なお、艦載機の発着方式について、大連で建造中の1隻目がスキージャンプ式であるのに対し、2隻目はカタパルトを予定しているとされる[11][12]

原子力空母[編集]

ロシアから設計図を入手したとされる、ウリヤノフスク級原子力空母の設計を元に、6万トン以上の原子力空母を、2020年以降2隻建造予定とされる[13]

艦載機[編集]

遼寧に着艦するJ-15

中国は空母に搭載する艦載機として、国産のJ-15(殲-15)を開発した。2017年1月、遼寧が遠洋航海中にJ-15の発着艦訓練を行った[14]。 また、早期警戒機も国産のY-9の派生型が、初の国産空母に搭載される可能性が高いことが報じられた[15]

下記の航空機の運用が見込まれている。

空母艦隊[編集]

空母が作戦行動を行う際は、駆逐艦巡洋艦潜水艦などで構成される空母艦隊が必要となる[注 1]。 中国もアメリカ海軍空母打撃群に対抗し、2030年頃までに空母4隻からなる艦隊を持つ構想があるとされる[16]

空母の建造と並行し、各艦艇も大量に量産されると見られる。米誌『ナショナル・インタレスト』は、中国海軍は2030年に空母4隻、潜水艦99隻、駆逐艦・護衛艦(コルベット)102隻、フリゲート26隻、揚陸艦73隻、ミサイル艇111隻、合計415隻を保有し、艦艇数では世界一になると予想した[17]

遼寧艦隊[編集]

2016年12月24日、東シナ海を空母遼寧率いる艦隊が航行し、防衛省はその陣容を下記のとおり発表した[18]。(艦級は防衛省発表のまま記載)

以上の合計8隻[注 2]。 なお、公式発表はされていないが、潜水艦も1~2隻同行したと見られる[20]

各国の反応[編集]

2011年、中国国防省が「遼寧」の建造を公式発表した。本項ではそれ以降の各国の反応について記す。(あいうえお順)

アメリカ[編集]

2014年1月、米国防省は「遼寧」視察を中国に要請し、同年4月ヘーゲル国防長官が、外国人としては初となる「遼寧」の乗艦・視察を行った。同行した米当局者は「この新戦力の空母について、透明性を高めようとしている(中国の)努力が感じられた」と述べた[21]

横須賀を母港とする米空母「ロナルド・レーガン

2016年2月、横須賀に2隻目の空母を配備する必要性について、アメリカ連邦議会で議論されたことをJBpressが報じた。これによると、中国の国産空母の量産にあわせ、国外(横須賀)に母港がある第7艦隊所属の「前方展開空母」を1隻から2隻に増やすことが議論された。また1個空母打撃群が増える可能性もあり、母港は空母の整備能力などの実績から横須賀が有力視される一方、海軍軍人や軍属、その家族等の増員による許容範囲の観点などから、オーストラリアフィリピングアムなども候補に挙がったとされる[22]

米海軍の元幹部、カール・シュスターハワイ・パシフィック大学教授は、中国が将来4隻の空母による艦隊構築を目指していると予想した上で、「中国には空母戦力の基盤となる経験豊富な海軍飛行士や空母乗員の部隊がない」と指摘。また「それを一から築き上げることは、ほとんどの人員を2年の徴兵に頼る部隊にとっては難しい」とし、中国の空母が脅威となるのはまだ先のことだ、との見解を示した[16]

インド[編集]

インドは海洋進出を活発化する中国への牽制で、海軍力を大幅に増強予定で、空母は3隻体制を目指している[23]

2013年、初の国産空母となる「ヴィクラント」が進水し、2018年就役予定である[24]。就役後は、イギリスより購入した老朽艦「ヴィラート」と代替予定。また2014年には、ロシアから購入・改装した「ヴィクラマーディティヤ」が就役した。3隻目は、原子力空母を将来建造予定とされる[25]

2015年12月、カーター国防長官は、インドのパリカル国防相と会談し、インドが進める航空母艦やジェットエンジンの開発に関し、技術協力を進める方針を発表、また「安全保障上のパートナーとしてインドが台頭することを歓迎する」と述べ、インドの国産空母の設計・建造に協力する考えを示した[26]

台湾[編集]

2011年、中国の空母建造、試験航行の公式発表を受け、台湾軍は超音速対艦ミサイル雄風III型」の大量配備を進めていることを、台湾紙「聯合報」が報じた。同紙は、中国の空母などの軍備増強に対抗し、「雄風III型」と大陸沿海を攻撃できる「雄風IIE型」の大量生産、およびキッド級ミサイル駆逐艦への「雄風III型」の配備を検討するよう馬英九政権が指示したことを、台湾国民党林郁方が述べたとしている。また林郁方は、雄風配備と合わせ「依然として最も有力な武器は潜水艦」だとし、潜水艦保有の努力を続ける必要があるとした[27]。 米華字サイト多維新聞は林郁方の話として、台湾では中国の空母所有に早い段階から対応を進めており、米国製ハープーン対艦ミサイルも2015年までに配備する予定であることを報じた[28]

台湾国産の高速コルベット沱江中国語版」が2015年3月に就役した。排水量約500トンの小型艦だが、船体はステルス設計で、雄風II型と雄風III型対艦ミサイルを各8基搭載。高速で接近し敵艦に攻撃を与えることから、中国空母を意識した「空母キラー」の異名をもつとされる。台湾政府は同艦の量産を計画している[29]

中国国内[編集]

国民の「空母熱」は高く、広東省南方日報系のニュースサイトが、「中国は空母を造る必要があるか」とアンケートを行ったところ、92%が「必要」と答えた[30]

中国国営の英字紙グローバル・タイムズは、2016年12月に行われた遼寧艦隊の遠洋訓練に合わせ掲載した論説で、中国の空母艦隊が米国沖や米国が関心を持つ地域に進出すれば「米国が一方的に中国に圧力をかける状況は変化する」とし、中国は国産空母の建造を急ぐ必要があるとの見方を示した[16]

日本[編集]

石破茂防衛相は、2011年8月「一国家の海軍が空母を持つのは正常なこと」と発言、空母をうまく運用できている国は世界で米国だけであるとし、空母艦隊を組むのは容易なことではなく、実践経験も必要となることから「日本は中国の空母発展を、日本の安全に対する脅威とみるべきではない」と発言した[31]

ベトナム[編集]

ベトナムは中国の空母や、南沙諸島領有権問題に対抗し、ロシア製のキロ型潜水艦を6隻購入を計画し[32]、2010年にロシアと契約を交わした[33]。当初2013年までにすべて引き渡される予定であったが遅延が生じ、2016年時点で5隻が就役し、6隻目は2017年就役予定[注 3]

2011年、ベトナムとインドが連携して中国の空母を牽制する可能性について報じられた。中国英字紙チャイナデイリーは、ベトナムのグエン・ヴァン・ヒエン海軍司令官がインドを訪問し、インド海軍軍艦によるニャチャンへの駐留を要請し、インドも積極的な態度を示したと報じた[34]。 しかし、2016年には、ベトナム外務省が「第3国に対抗するため誰かと結託する意向はない」とし、外国政府がベトナム領内に軍事基地を建設することは許さない、との公式見解を示した[35][注 4]

関連項目[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 災害派遣などでは空母が単艦で運用されることもある。また、仏海軍空母は、本格的な艦隊を伴わなわずにアフガニスタンリビアISIL空爆などに派遣された。
  2. ^ 翌25日には、小型フリゲート1隻、補給艦1隻が艦隊を離れ、合計6隻で南シナ海へ向けて南東進した[19]
  3. ^ キロ型潜水艦#同型艦一覧#ベトナム参照
  4. ^ 事実、2016年にはベトナムのカムラン湾に、米海軍、海上自衛隊、中国海軍の軍艦が寄航している(詳細はカムラン湾を参照)

脚注[編集]

  1. ^ China Has Plans For Five Carriers - Aviation Week(2011年11月1日配信、2016年12月26日閲覧)
  2. ^ 中国初の空母「ワリヤーグ」が訓練用にしか使えない理由 - Japan Business Press(2011年8月31日配信、2012年2月27日閲覧)
  3. ^ 中国の空母は“鉄の棺おけ”、米軍事専門家が指摘―台湾メディア - Record China(2011年10月21日配信、2012年2月27日閲覧)
  4. ^ China Watch: SEC on the China Case, Fear the Aircraft Carrier? - Wall Street Journal(2011年6月3日配信、2012年2月27日閲覧)
  5. ^ First Photos of Chinese Aircraft Carrier Sea Trials - Wall Street Journal(2011年8月18日配信、2012年2月27日閲覧)
  6. ^ 時事通信「初の空母「遼寧」が就役=国威発揚、周辺国に警戒も-中国」[1]
  7. ^ 中国空母「遼寧」艦隊、初の実弾演習 渤海で - 日本経済新聞(2016年12月16日配信、2016年12月25日閲覧)
  8. ^ 空母「遼寧」など艦隊 東シナ海で初確認 - 毎日新聞(2016年12月25日配信、2016年12月25日閲覧)
  9. ^ 空母2隻目を建造と中国国防省が公式発表 国産の艦載機を搭載 - 産経ニュース(2016年1月2日配信、2016年12月25日閲覧)
  10. ^ 中国初の国産空母「船体が完成」 報道官発表 - 産経ニュース(2016年10月27日配信、2016年12月25日閲覧)
  11. ^ 中国、上海でも空母建造か 国産2隻目 サイトで「中国軍の金一南少将」公開 - 産経ニュース(2016年12月26日配信、2017年1月12日閲覧)
  12. ^ 潜入した上海の小島。最貧だった島民は、「精品」で活気に満ちていた - 朝日新聞グローブ(2009年10月5日配信、2017年1月12日閲覧)
  13. ^ China Has Plans For Five Carriers - Aviation Week(2011年11月1日配信、2016年12月26日閲覧)
  14. ^ 中国空母「遼寧」、南シナ海で訓練 戦闘機の発着艦など - 朝日新聞デジタル(2017年1月3日公開、2017年1月16閲覧)
  15. ^ 最新鋭の早期警戒管制機、年末完成の空母に搭載か―中国 - recordchina(2016年9月11日公開、2017年1月16閲覧)
  16. ^ a b c 中国空母「遼寧」、太平洋を航行 軍事力拡大を誇示 - CNN(2016年12月28日配信、2017年1月17日閲覧)
  17. ^ 中国の空母が就役、駆逐艦も増加へ=専門家 - 中国網(2016年7月4日配信、2017年1月17日閲覧)
  18. ^ 中国海軍艦艇等の動向について(12月24日確認分)- 防衛省(2016年12月25日配信、2017年1月17日閲覧)
  19. ^ 中国海軍艦艇等の動向について(12月25日確認分) - 防衛省(2016年12月25日配信、2017年1月17日閲覧)
  20. ^ いよいよ太平洋に進出してきた中国空母艦隊(P4閲覧) - JBpress(2016年12月29日配信、2017年1月17日閲覧)
  21. ^ 中国の空母「遼寧」をアメリカのヘーゲル国防長官が視察 軍事力の透明性をアピール - The Huffington Post(2014年4月8日配信、2017年1月14日閲覧)
  22. ^ 紛糾は必至、横須賀に2隻目の空母を配備したい米国 - JBpress(2016年2月11日配信、2017年1月17日閲覧)
  23. ^ インド、海軍を大幅増強 中国の海洋進出にらむ 艦船4割増・3空母態勢に 27年までに - 日本経済新聞(2015年9月21日配信、2017年1月12日閲覧)
  24. ^ インド、初の国産空母が進水 中国をけん制 - 日本経済新聞(2013年8月13日配信、2017年1月12日閲覧)
  25. ^ Navy’s wish list: 6 nuke subs, N-powered carrier - The Tribune(2015年5月7日配信、2017年1月12日閲覧)
  26. ^ 中国に対抗か? 米とインドの国防相、空母技術協力で一致 カーター氏「安全保障パートナーとしてインドの台頭歓迎」 - 産経ニュース(2015年12月11日配信、2017年1月14日閲覧)
  27. ^ 台湾軍、対艦ミサイル大量配備 大陸の空母に対抗 - 人民網(2011年5月12日配信、2017年1月17日閲覧)
  28. ^ 中国の空母に対抗、台湾の「雄風3型」対艦ミサイル―米華字メディア - recordchina(2011年8月12日配信、2017年1月17日閲覧)
  29. ^ 中国大陸に対抗する台湾の「空母キラー」、基隆で一般公開 就役後初 - livedoorNEWS(2016年11月26日配信、2017年1月12日閲覧)
  30. ^ 経済成長が促す「抑止力」の正当性 - 朝日新聞グローブ(2009年10月5日配信、2017年1月12日閲覧)
  31. ^ 日本元防衛相:中国空母を脅威とみるべきではない - 人民網日本語版(2011年8月23日配信、2017年1月14日閲覧)
  32. ^ 中国の空母出現…周辺国の海軍力強化に火がつく - 中央日報(2011年10月4日配信、2017年1月12日閲覧)
  33. ^ 「キロ級潜水艦」、3番艦がロシアからベトナムに到着・・・2016年までに計6隻(2015年2月2日配信、2017年1月17日閲覧)
  34. ^ ベトナムとインド、連携して中国空母をけん制か―韓国メディア - recordchina(2011年8月10日配信、2017年1月17日閲覧)
  35. ^ ベトナム、自国での外国軍事基地出現の可能性を除外 - sputniknews(2016年10月13日配信、2017年1月17日閲覧)