昆明級駆逐艦

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昆明級駆逐艦 (052D型)
CNS Kunming (DDG-172).jpg
艦級概観
艦種 防空ミサイル駆逐艦
艦名 中華人民共和国の省都
前級 蘭州級(052C型)
次級 055型
性能諸元
排水量 満載:7,000トン近く[1]
全長 156 m[1]
全幅 18 m[1]
吃水 6 m
機関 CODOG方式
陝西-MTU 20V956 TB92
ディーゼルエンジン
(6 MW/8,000 hp)
2基
QC-280ガスタービンエンジン
(28 MW/38,000 hp)
2基
スクリュープロペラ 2軸
速力 最大30ノット
航続距離 4,500海里 (15ノット巡航時)
乗員 280名
兵装 H/PJ-38 70口径130mm単装速射砲 1基
H/PJ-12 30mmCIWS 1基
5860-2006型 VLS(32+32セル)
HHQ-9 SAMSUMYJ-18A SSM
を発射可能
2基
HHQ-10 近SAM24連装発射機 1基
18連装多用途ロケット砲 4基
324mm短魚雷3連装発射管 2基
艦載機 Ka-28 / Z-9対潜ヘリコプター 1機
C4I JSIDLS戦術データ・リンク
戦術情報処理装置
レーダー 346A型 多機能型 1式
517B型 対空捜索用 1基
364型 低空警戒・対水上用 1基
366型 SSM照準用 1基
ソナー MGK-335 艦首装備式[2] 1基
曳航式 1基
可変深度式 1基

昆明級駆逐艦(クンミンきゅうくちくかん、: Kunming-class destroyer)は、中国人民解放軍海軍が配備を進めているミサイル駆逐艦の艦級。人民解放軍海軍での名称は052D型駆逐艦: 052D型驱逐舰)、NATOコードネーム旅洋-III型: Luyang-III class[3]

設計[編集]

設計面では、多くの点で、先行する052C型駆逐艦(蘭州級)が踏襲されており、外形的にも類似点が多い。船型は同様の中央船楼型で、メインセンサーとなるフェーズドアレイレーダーの固定式アンテナ4面を固定装備するために巨大な艦橋構造物を備える点も同様である。ただしステルス性強化のため、上部構造物には傾斜がつけられるとともに高さはやや抑えられ、内火艇の揚降装置も艦内に収容されたほか、煙突には排気の赤外線輻射を抑制する装備が設置されているとされている[4]

主機関も同様のCODOG方式で、ディーゼルエンジン2基とガスタービンエンジン2基で2軸の推進器を駆動する。巡航機としてはMTUフリードリヒスハーフェン社製MTU 20V956 TB92 V型20気筒ディーゼルエンジンが搭載される。一方、高速機として搭載されるガスタービンエンジンに関しては、ウクライナのゾーリャ・マシュプロイェクト社のUGT-25000山寨化したQC-280とされている。ウクライナ製UGT-25000(DA80)は、052A型駆逐艦(旅滬型)2番艦「青島」で導入されて以後、中国水上戦闘艦のガスタービン主機として広く用いられてきた。またQC-280に関しては、052B型駆逐艦(広州級)2番艦「武漢」において、同艦搭載のDN80のうち片方をこれに換装しての実用試験が行われ、ソマリア沖海賊対策派遣を含む多様な環境に適応できる安定性と信頼性が実証されたとされている[4]

装備[編集]

C4ISR[編集]

中国海軍では、既に052C型および航空母艦遼寧」搭載の348型レーダーでフェーズド・アレイ方式を導入していたが、これは排熱処理と消費電力に問題があり、特殊な放熱装置を装備して、曲面状のカバーが採用されていた。これに対し、本型装備のアクティブ・フェーズドアレイ・アンテナにおいては平面状のカバーとなっており、これらの問題が解決された可能性が指摘されている[4]。また下記の052DL型では[注 1]、航空運用能力の強化とともに、電子装備の一部も変更された[7]。艦中央部に搭載されていた517B型対空レーダーはアンテナ面積が広がった新型の対空レーダーに換装されたため、ステルス機に対する捕捉能力は向上していると推測されている[8]

また本型においては、JSIDLS(Joint Service Integrated Data Link System, 全军综合数据链系统)と呼称される最新の戦術データ・リンクに対応するとされている。これは北大西洋条約機構リンク 16に匹敵し、従来のHN-900(リンク 11相当)よりも飛躍的に強化された性能を備えているとされている[9][10]。なお052C型においても、やはりリンク 16相当とされるJY10Gが搭載されていた[11]

武器システム[編集]

艦隊防空ミサイル・システムとしては、052C型と同系列のHHQ-9が搭載される。ただしその垂直発射機(VLS)としては、054A型フリゲート(江凱-II型)搭載のものを発展させた国家軍用標准GJB 5860-2006型と呼ばれる、新しい艦載ミサイルVLSの共通規格に則った初めての機種が採用されており、JB 5860-2006型においては大中小の3種類のモジュールが規定され、大型モジュールは全長9000mm、中型モジュールは全長7000mm、小型モジュールは全長3000mmで、それぞれ直径は850mmとされている。これはHHQ-9以外にも、新型の長射程艦対艦ミサイル(SSM)や対潜ミサイル(SUM)、対地巡航ミサイルの運用にも対応した汎用型となっている[4]アメリカ海軍で標準的に用いられているMk.41のモジュール全高は7.6mとされていることから、GJB 5860-2006型ではより大型のミサイルを収容可能となる[12]

一方、主砲としては、052C型のH/PJ-87 55口径100mm単装速射砲に代えて、新開発のH/PJ-38 70口径130mm単装速射砲が採用された。これは鄭州713研究所により開発されたものであるが、同口径のロシアAK-130連装砲の技術も導入されているとされている。またCIWSについては052C型と同じ30mm口径のH/PJ-12(730型)が搭載されたが、後部上部構造物上のものはHHQ-10近接防空ミサイル発射機に変更された[4]

艦載機[編集]

艦載ヘリコプターとしては、国産のZ-9Cまたはロシア製のKa-28哨戒ヘリコプターを1機搭載する。しかしZ-9Cは搭載量・航続距離ともに限定的で、Ka-28は使い勝手が悪かったことから、より大型・高性能なZ-20の哨戒ヘリコプター化が模索されるようになり、2020年より運用試験に入った。これにあわせて、本型では、25番艦以降では船体を延長し、格納庫ヘリコプター甲板を拡張した052DL型に移行した[注 1][13]。2018年7月、ニュースサイトJane's360は衛星写真にて江南造船廠で建造されていた14番艦のフライトデッキがストレッチされ、従来艦と比べて全長が4mほど長くなっていることを確認したと報じた[14]

比較表[編集]

中国海軍の駆逐艦の比較
051B型(深圳)
近代化改修後
052A型(旅滬型)
近代化改修後
ソヴレメンヌイ級(現代級)
近代化改修後
船体 満載排水量 6,600 t 5,700 t 8,060 t
全長 153 m 148 m 156.37 m
全幅 16.5 m 16.0 m 17.19 m
主機 方式 CODOG 蒸気タービン
出力 55,000 shp 48,600 shp 99,500 shp
速力 30 kt 31.5 kt 32 kt
兵装 砲熕 56口径100mm連装砲×1基 70口径130mm連装砲×2基
30mmCIWS×2基 30mmCIWS×4基
ミサイル VLS×32セル
HHQ-16
HHQ-7 8連装発射機×1基 VLS×32セル
(HHQ-16,YU-8)
YJ-12A 4連装発射筒×4基 YJ-83 4連装発射×4基 YJ-12A 4連装発射機×2基
252mm6連装対潜ロケット砲×2基
水雷 3連装短魚雷発射管×2基(Yu-7
艦載機 Z-9C/Ka-28×2機 Z-9C×2機 Ka-28×2機
同型艦数 1隻 2隻 1隻(3隻改修予定)
055型 052D型(昆明級) 052C型(蘭州級) 051C型(瀋陽級) 052B型(広州級)
船体 満載排水量 12,000 - 13,000 t 7,500 t 7,000 t近く 7,100 t 6,600 t
全長 182.6 m 156 m 154 m 155 m 154 m
全幅 20.9 m 18 m 17 m 16.5 m
主機 方式 COGAG CODOG
出力 152,000 shp 76,000 hp 48,600 shp
速力 30 kt 29 kt 30 kt 29 kt
兵装 砲熕 70口径130mm単装砲×1基 55口径100mm単装砲×1基
30mmCIWS×1基 30mmCIWS×2基
ミサイル 5860-2006型VLS×112セル
HHQ-9,CJ-10,YJ-18
5860-2006型VLS×64セル
(HHQ-9,CY-5,YJ-18)
VLS×48セル
(HHQ-9A)
B-203A型VLS×48セル
リフ-M
単装発射機×2基
9M317
HHQ-10 21連装発射機×1基 HHQ-10 24連装発射機×1基
18連装多用途ロケット砲×4基 YJ-62 4連装発射筒×2基 YJ-83 4連装発射筒×2基 YJ-83 4連装発射筒×4基
水雷 3連装短魚雷発射管×2基(Yu-7)
艦載機 Z-18英語版×2機 Z-9C/Ka-28×1機 ヘリコプター甲板のみ Z-9C/Ka-28×1機
同型艦数 2隻(艤装中3隻,建造中12隻) 15隻(10隻建造中) 6隻 2隻 2隻

同型艦一覧[編集]

# 艦名 建造所 進水 就役 配備先
172 昆明
(Kunming)
江南造船(集団)[15] 2012年
8月29日[15]
2014年
3月21日[15]
南海艦隊[15]
173 長沙
(Changsha)
2012年
12月28日[15]
2015年
8月12日[15]
174 合肥
(Hefei)
2013年
7月1日[15]
2015年
12月12日[15]
175 銀川
(Yinchuan)
2014年
3月30日[15]
2016年
7月12日[15]
117 西寧
(Xining)
2014年
8月26日[15]
2017年
1月22日[15][16]
北海艦隊[15][16]
154 廈門
(Xiamen)
2014年
12月30日[15]
2017年
6月10日[16]
東海艦隊[17]
118[18] ウルムチ[18]
(Ürümqi)
2015年
7月7日[15]
2018年
1月
北海艦隊
119[18] 貴陽[18]
(Guiyang)
大連船舶重工集団[15] 2015年
11月28日[15]
2019年
2月22日[19]
155[18] 南京[18]
(Nanjing)
江南造船(集団)[15] 2015年
12月28日[15]
2018年
4月10日
東海艦隊
131[20] 太原[20]
(Taiyuan)
2016年
7月28日[15]
2018年
11月29日
120 成都[21]
(Chengdu)
大連船舶重工集団[15] 2016年
8月3日[15]
2019年
11月20日
北海艦隊
161 フフホト
(Hohhot)
江南造船(集団)[15] 2016年
12月26日[15]
2019年
1月12日
南海艦隊
121 チチハル[22]
(Qiqihar)
大連船舶重工集団[23] 2017年
6月26日[23]
2020年
8月14日
北海艦隊
122 唐山
(Tangshan)
江南造船(集団) 2018年
7月7日
2020年
8月14日
156 淄博
(Zibo)
2018年
8月14日
2020年
1月12日
東海艦隊
132 蘇州
(Suzhou)
2018年
12月19日
2021年
162 南寧
(Nanning)
2019年
2月23日
南海艦隊
157 淮南
(Huainan)
2019年
4月15日
東海艦隊
163 桂林
(Guilin)
大連船舶重工集団 2019年
5月10日
南海艦隊
123 2019年
5月10日
北海艦隊
133 江南造船(集団) 2019年
8月28日
東海艦隊
164 2019年
9月26日
南海艦隊
165 紹興
(Shaoxing)
大連船舶重工集団 2019年
12月26日
134 江南造船(集団) 2019年
12月28日
東海艦隊
124 無錫
(Wuxi)
大連船舶重工集団 2020年
8月30日
北海艦隊

登場作品[編集]

テレビドラマ[編集]

ザ・ラストシップ
シーズン3における敵艦として架空艦「海龍」「河南」などの同型艦が4隻登場。敵対する主人公一行が乗艦する架空のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦ネイサン・ジェームズ」と戦闘を繰り広げる。作中では、 アーレイ・バーク級駆逐艦のコピー艦であると解説されている。
登場するのは、アーレイ・バーク級駆逐艦にCG処理を施したものである。

漫画[編集]

空母いぶき
「銀川」と連載当時は未就役だった「太原」「南京」が登場。架空の中国海軍空母広東」を中心とする北海艦隊機動部隊に所属している。

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ a b 2017年8月頃、軍事博物館にて052型の新しい模型が公開された[5]。当初は052DGもしくは052Eとも呼称されていた[6]

出典[編集]

  1. ^ a b c 新型导弹驱逐舰合肥舰入列海军”. 网易新闻 (2015年12月13日). 2015年12月31日閲覧。
  2. ^ Navyrecognition.com. “Type 052D Kunming Class Destroyer China Chinese Navy PLAN Guided Missile Destroyer Luyang III 052D型驅逐艦 昆明 datasheet pictures photos video specifications” (英語). 2014年4月23日閲覧。
  3. ^ 海人社 2015, p. 30.
  4. ^ a b c d e 小原 2013.
  5. ^ 中国網 (2018年8月4日). “中国の052E型駆逐艦のCG画像を公開”. 2018年12月26日閲覧。
  6. ^ 新浪网 (2018年12月23日). “中国第16艘052D舰下水 大连船厂却创造一尴尬纪录”. 2018年12月26日閲覧。
  7. ^ 新浪网 (2018年12月23日). “我军这艘052D舰下水3年仍未入役 同批次舰已返厂升级”. 2018年12月26日閲覧。
  8. ^ 新版052D舰上的搜索雷达为何从"晾衣架"变"苍蝇拍"|雷达|舰艇_新浪军事_新浪网”. mil.news.sina.com.cn. 2020年10月30日閲覧。
  9. ^ 我海军已装备全军综合数据链 应对更严酷作战环境”. 2013年11月10日閲覧。
  10. ^ 总参某信息化研究所:一切为打赢未来信息化战争” (2012年4月). 2013年11月10日閲覧。
  11. ^ 陸易「中国軍艦のコンバット・システム」『世界の艦船』第748号、海人社、2011年10月、 94-97頁、 NAID 40018965309
  12. ^ 中国網 (2012年9月4日). “最新型駆逐艦052D 世界最強の垂直発射システムを搭載”. 2014年3月9日閲覧。
  13. ^ 小原 2020.
  14. ^ Andrew Tate (2018年7月31日). “China launches first stretched Type 052D destroyer”. Jane's 360. IHS Markit. 2018年8月2日閲覧。
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x Saunders 2017, p. 144.
  16. ^ a b c 艦船知識雑誌社 2018.
  17. ^ Ridzwan Rahmat (2017年7月21日). “China commissions sixth Type 052D-class destroyer into East Sea fleet”. Jane's 360. IHS Markit. 2017年11月30日閲覧。
  18. ^ a b c d e f More Chinese Type 052D destroyers being readied war” (英語). China Topix(在米華僑向け英字サイト). YIBADA Group (2017年1月24日). 2017年12月17日閲覧。
  19. ^ Andrew Tate (2019年3月5日). “Type 052D destroyer and Type 054A frigate enter service with PLAN”. Jane's 360. IHS Markit. 2019年3月6日閲覧。
  20. ^ a b 今年中国将有3艘052D驱逐舰服役,明年或将有4艘入役(サイト運営者の搜狐が、内容に責任を負わない記事)” (中国語). 搜狐网(中国まとめサイト). 搜狐公司. 2017年12月17日閲覧。
  21. ^ 中国最新型導弾駆逐艦下水, 可能被命名為”成都艦”!(サイト運営者の翱翔新聞が、内容に責任を負わない記事)” (中国語). 翱翔新聞(無名中国まとめサイト、URLのセキュリティ未チェック). 2017年12月17日閲覧。
  22. ^ 【号外】第13艘052D型驱逐舰“齐齐哈尔舰”诞生了(サイト運営者の今日熱点が、内容に責任を負わない記事)” (中国語). 今日熱点(無名中国まとめサイト、URLのセキュリティ未チェック). 2017年12月17日閲覧。
  23. ^ a b Ridzwan Rahmat (2017年6月28日). “China launches 13th Type 052D destroyer”. Jane's 360. IHS Markit. 2017年7月1日閲覧。

参考文献[編集]

  • 海人社, 編纂.「写真特集 今日の中国軍艦」『世界の艦船』第816号、海人社、2015年5月、 38-41頁、 NAID 40020406561
  • 艦船知識雑誌社, 編纂.「2017年中国海軍装備発展回顧」『艦船知識』第461号、艦船知識雑誌社、2018年2月、 62-73頁、 ISSN 1000-7148
  • 小原, 凡司「052D型DDG (世界の新型水上戦闘艦ラインナップ)」『世界の艦船』第782号、海人社、2013年8月、 98-99頁、 NAID 40019721131
  • 小原, 凡司「大洋の覇権を目指す中国海軍 その現況と将来 (特集 増強急ピッチ! 中国海軍)」『世界の艦船』第917号、海人社、2020年2月、 70-77頁、 NAID 40022100548
  • Saunders, Stephen (2017). Jane's Fighting Ships 2017-2018. IHS Markit. ISBN 978-0710632319 

関連項目[編集]

  • ウィキメディア・コモンズには、昆明級駆逐艦に関するカテゴリがあります。