蘭州級駆逐艦

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蘭州級駆逐艦 (052C型)
CNS Haikou (DDG-171) in Rim of the Pacific (RIMPAC) Exercise 2014.jpg
艦級概観
艦種 防空ミサイル駆逐艦
艦名 中華人民共和国の省都
就役期間 2004年 - 現在
前級 広州級駆逐艦(052B型)
次級 昆明級駆逐艦(052D型)
性能諸元
排水量 満載:7,000トン近く
全長 154 m
全幅 17 m
吃水 6 m
機関 CODOG方式
陝西-MTU 20V956 TB92ディーゼルエンジン(4,420 bhp) 2基
DA80ガスタービンエンジン(24,300 shp) 2基
スクリュープロペラ 2軸
速力 最大29ノット
航続距離 4,500海里 (15kt巡航時)
乗員 280人
兵装 55口径100mm単装速射砲 1基
H/PJ-12 30mmCIWS 2基
HHQ-9A SAMVLS (6セル) 8基
YJ-62 SSM 4連装発射機 2基
324mm3連装短魚雷発射管
(Yu-7短魚雷用)
2基
艦載機 Ka-28 / Z-9対潜ヘリコプター 1機
FCS 344型 主砲用 1基
MR-331 SSM用 1基
347G型 CIWS用 2基
C4I SNTI-240衛星通信装置
HN-900戦術データ・リンク
ZKB/ZBJ戦術情報処理装置
レーダー 346型 多機能型 1式
517H-1型英語版 対空捜索用 1基
364型 低空警戒/対水上用 1基
ソナー SJD-8/9 艦首装備型 1基
電子戦 NRJ-6 電波探知妨害装置
18連装デコイ発射機 4基

蘭州級駆逐艦(ランチョウきゅうくちくかん、: Lanzhou-class destroyer)は、中国人民解放軍海軍ミサイル駆逐艦の艦級。人民解放軍海軍での名称は052C型駆逐艦: 052C型驱逐舰)、NATOコードネーム旅洋-II型: Luyang-II class[1][2]

基本的には、先行して建造された052B型の設計をもとに、国産のHHQ-9艦隊防空ミサイル・システムを搭載したものであり、特にアクティブ・フェーズド・アレイ(AESA)アンテナを艦橋構造物の4周に貼り付けた外見から、「中華イージス」(中華神盾)とも通称される[2][3]

来歴[編集]

1995年第三次台湾海峡危機の際に、アメリカ海軍の圧倒的な能力を見せつけられた人民解放軍海軍は、国産駆逐艦の性能限界を痛感した。これを受けて、1999年から2000年にかけてロシア製の956E型駆逐艦(ソヴレメンヌイ級)2隻を緊急導入(2005年より956EM型2隻を追加配備)する[1]とともに、空母整備計画も視野に、優れた対空戦能力を有するミサイル駆逐艦の整備が計画されるに至ったと見られている[4]

1990年代中期のDDG整備計画着手直後は、多艦級の少数建造方針が採択されており、本級の建造もこの一環となっている。まず、956E型の就役開始と同年の1999年、956E型と同系列の中距離艦対空ミサイル・システムを搭載した052B型駆逐艦(広州級)が起工された[1]。これと並行して、アメリカ海軍アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦を高く評価した人民解放軍海軍は、これに範をとった国産艦の研究開発に着手したものと考えられている。これは、イージス関連情報に関する諜報活動も含めた国家的プロジェクトとして進められた。これによって開発されたのが本級であり、まず2002年から2隻が建造され、2004年から2005年にかけて就役した[1][4]

この2隻をプロトタイプとして、徹底的に性能・運用試験を実施し、これによって得られた不具合対策を連続的に適用するというスパイラルモデルによる開発が進められたものと考えられている。そして2009年より、この開発成果を踏まえて更に4隻が追加建造され、これらは2012年より順次に就役を開始した。また2011年からは、全面的な発展型である052D型駆逐艦の建造が開始されており、以後の整備はこちらに移行している[4][1]

設計[編集]

船体と主機関については、おおむね、先行して建造された052B型駆逐艦(旅洋-I型)が踏襲されている。船型は中央船楼型、船楼と主船体でナックル・ラインを形成している。艦首部にブルワークが設けられているのも同様だが、VLSを保護する必要から、052B型よりも延長されている。また艦橋構造物は、4周にアクティブ・フェーズド・アレイ(AESA)アンテナを貼り付ける必要から1層高くなっている。アンテナの配置の必要上、正横方向と後方に向けた窓がなく、これを補うため艦橋上に潜望鏡が設けられている[5]

機関構成は052B型と同様と考えられており、巡航機としてV型20気筒MTU 20V956 TB92(陝西柴油機重工有限公司によるライセンス生産機)、高速機としてウクライナ製のUGT-25000シリーズのガスタービンエンジン(DA80)を組み合わせたCODOG方式とされる[1]。また機関区画も、パラレル配置を採用していた052B型と同様と見られている[1][5]

装備[編集]

上記の経緯より、本級の戦闘システムは、概ねアーレイ・バーク級に範をとったものとされている。ただし本艦の主任設計師は本艦がアメリカ海軍のイージス艦より劣る面があると話している。[6]

C4ISR[編集]

2004年7月の海軍工作会議で、全プラットフォーム搭載のセンサ情報をネットワークで共有し、艦隊全体で脅威に対処するという「海軍装備綜合集成」計画が作成された。これに応じて開発された戦術情報処理装置がZKB/ZBJシリーズである。開発は2006年までに完了し、同年2月の海軍工作総括会議で「全ての作戦艦艇に当該システムを装備」と全軍に発令された。本級の初期建造艦では、この方針に基づいて開発されたH/ZKB戦術情報処理装置が搭載された。これは「海軍編隊作戦指揮システム」と称されており、一説にはZKJ-5をベースとして、西側のリンク 16に準じたJIDS統合情報伝達システムやTJN-906高速ブロードバンド・データリンク・システム、統合データリンク・システム艦載I型などを統合したモジュール化システムとされている。そして建造再開後の後期建造艦ではH/ZBJ-1が搭載されたとされており、こちらは海軍編隊作戦/戦術型自動化指揮システム(海軍編隊戦役/戦術型自動化指揮系統)と称される[7]

主たるセンサとしては、4面固定式のアクティブ・フェーズドアレイ・アンテナを採用した多機能レーダーが搭載されている。このアンテナは上記の通りに艦橋構造物の4周に貼り付けられており、2層分の甲板高さを占めている。装備要領はアーレイ・バーク級と同様であるが、装備高さ自体はやや低く、また後方の構造物との干渉から、後方2面は視界の制限を受けているとも言われている[5]。レーダーの名称については、プロトタイプとしての346型および量産機としての348型という説もあったが、実際にはいずれも区別なく346型とされている[1][8]。NATOコードネームは「ドラゴンアイ」である[2]。またこれを補完して、低空警戒/対水上捜索用の364型レーダーが前檣上に、また長距離捜索用の517H-1型レーダー英語版が後檣上に備えられている。ソナーは、フランス製DUBV-23山寨版とされるSJD-8/9を艦首装備式に搭載する[1]

武器システム[編集]

上記の経緯より、本級の最大の特徴が、HHQ-9A(海紅旗9A)艦隊防空ミサイル・システムの搭載である。発射機としては、6セルの円筒形VLSを用いており、前甲板に6基、後部上部構造物上に2基を備えている。これは人民解放軍海軍で初のVLSであるが、セル下部から高圧ガスでミサイルを打ち出した後に空中でロケット・モーターに点火するという、コールドローンチ方式を採用している。発射されたミサイルは、中間指令誘導による補正を受けつつ慣性誘導で飛翔し、TVM方式で目標に接近する。また終末航程ではアクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)誘導方式も用いられる。最大射程は120 km以上とされる(200 kmとの説もある)[8]

Anti-ship missile launchers on CNS Haikou (DDG-171)

また艦対艦ミサイルも、新型のYJ-62とされて、4連装発射機を2基、後檣とヘリコプター格納庫の間に装備している。これはターボジェットエンジンによって最大射程400キロメートル以上を発揮できる[8]。火器管制レーダーは、052B型でYJ-83用として搭載されたのと同じロシア製のMR-331「ミネラルME」(NATO名「バンド・スタンド」)とされており、艦橋上に1基備えている[1]

砲熕兵器は052B型のものが踏襲されており、主砲としてはフランスのクルーゾー・ロワール社製100mmコンパクト砲の山寨版とされる55口径100mm単装速射砲(H/PJ-87)を艦首甲板に、CIWSとしては30mmガトリング砲を用いた730型(H/PJ-12)を前後に1基ずつ備えている[5][8]。火器管制レーダーとしては、主砲用には344型レーダーを前檣直前に、またCIWS用としては347G型レーダー(あるいは発展型であるTR-47C)をそれぞれの砲側に備えている。なお344型レーダーとMR-331は、いずれも砲射撃指揮にもSSM管制にも用いることができるといわれている[1]

対潜兵器としてはYu-7短魚雷のための3連装短魚雷発射管を両舷に備えているほか、後部上部構造物の両舷に2基ずつ設置された18連装デコイ発射機も、対潜ロケット砲としての性格を備えている[1]

艦載機[編集]

052B型と同様、後部上部構造物には中型ヘリコプター(カモフKa-28またはZ-9C)1機分のハンガーが設けられており、その直後の艦尾甲板はヘリコプター甲板とされている[1]

なお、ハンガーは052B型ではほぼ中央(若干左舷寄り)に設けられていたのに対し、本級ではVLSの装備位置の関係から左舷側ぎりぎりまで寄せられており、逆にヘリコプター管制室は右舷側ぎりぎりに配置された[9]

中国人民解放軍海軍の駆逐艦
055型 052D型(昆明級) 052C型(蘭州級) 051C型(瀋陽級) 052B型(広州級)
満載排水量 12,000 ~ 13,000 t 7,500 t 7,000 t近く 7,100 t 6,600 t
船体規模 全長 182.6m 156 m 154 m 155 m 154 m
全幅 20.9m 18 m 17 m 16.5 m
主機 機関 ガスタービン ディーゼル,ガスタービン
方式 COGAG CODOG
出力 152,000 shp 16,000 bhp(ディーゼル)
76,000 hp(ガスタービン)
8,8400 bhp(ディーゼル)
48,6000 shp(ガスタービン)
n/a(ディーゼル)
48,6000 shp(ガスタービン)
10,420 bhp(ディーゼル)
48,6000 shp(ガスタービン)
速力 30 kt 29 kt 30 kt 29 kt
兵装 砲熕 130mm単装速射砲×1基 55口径100mm単装速射砲×1基
30mmCIWS×1基 30mmCIWS×2基
ミサイル 5860-2006型VLS×112セル
HHQ-9CJ-10YJ-18
5860-2006型VLS×64セル
(HHQ-9、CY-5、YJ-18)
VLS×48セル
(HHQ-9A)
B-203A VLS×48セル
リフ-M
9M317単装発射機×2基
HHQ-1021連装発射機×1基
CS/ARI 55mmロケット発射器 18連装多用途ロケット砲
YJ-62 4連装発射筒×2基 YJ-83 4連装発射筒×2基 YJ-83 4連装発射筒×4基
水雷 3連装短魚雷発射管×2基(Yu-7
ヘリ 搭載容量 2機 1機 ヘリコプター甲板のみ 1機
搭載機 Z-18英語版 Z-9C/Ka-28 Z-9C/Ka-28
同型艦数 1隻(3隻建造中) 12隻(7隻計画中) 6隻 2隻 2隻


同型艦[編集]

一覧表[編集]

建造は上海江南造船所で行われている。

# 艦名 造船所 進水 就役 配備先
170 蘭州中国語版/兰州
ランヂョウ/Lanzhou
上海江南造船廠 2003年
4月29日
2004年
10月18日
南海艦隊
171 海口中国語版/海口
ハイコウ/Haikou
2003年
10月30日
2005年
12月26日
150 長春中国語版/长春
チャンチュン/Changchun
2010年
10月28日
2013年
1月31日
東海艦隊
151 鄭州中国語版/郑州
ヂェンヂョウ/Zhengzhou
2011年
7月20日
2013年
12月26日
152 済南中国語版/济南
チーナン/Jinan
2012年
1月
2014年
12月22日
153 西安中国語版/西安
シーアン/Xian
2012年
6月16日
2015年
2月9日

運用史[編集]

2012年10月22日には、海上自衛隊は午後5時ごろに「海口」が沖縄本島の南約470キロを沖縄方面に向けて北上したことを確認した。蘭州型が日本近海で確認されたのはこれが初めてである。

2018年9月30日、南シナ海アメリカ海軍アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦ディケーター」が、「公海航行自由原則維持のための作戦」(FONOP:Freedom Of Navigation Operation)の一環として、南沙諸島ガベン礁ジョンソン南礁の12カイリ(約22キロ)以内を通過した際「蘭州」が後方より異常接近し、「ディケーター」の航行優先権を無視して進路妨害したため「ディケーター」の緊急回避行動で接触は免れたが、アメリカ海軍情報では41メートル以内であったと後日発表非難した[要出典][10]

登場作品[編集]

漫画[編集]

空母いぶき
架空艦「広東」が所属する北海艦隊空母部隊の僚艦として「西安」が登場している。

脚注[編集]

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注釈[編集]

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 小原, 凡司「空母/水上艦部隊の現況と今後 (特集 中国海軍)」『世界の艦船』第774号、海人社、2013年3月、 80-85頁、 NAID 40019570960
  • 海人社, 編纂.「052C型駆逐艦 (注目の中国新型艦艇)」『世界の艦船』第647号、海人社、2005年9月、 82-83頁、 NAID 40006794994
  • 海人社, 編纂.「水上戦闘艦 (特集・中国海軍の新型艦艇) -- (注目の中国新型艦艇)」『世界の艦船』第686号、海人社、2008年2月、 88-93頁、 NAID 40015771005
  • 海人社, 編纂.「写真特集 今日の中国軍艦」『世界の艦船』第816号、海人社、2015年5月、 31頁、 NAID 40020406561
  • 香田, 洋二「艦隊防空能力 (特集 中国海軍 2015)」『世界の艦船』第816号、海人社、2015年5月、 88-91頁、 NAID 40020406573
  • 多田, 智彦「中国軍艦の技術レベルをチェックする (特集 中国の現代軍艦)」『世界の艦船』第799号、海人社、2014年6月、 74-79頁、 NAID 40020064121
  • 陸, 易「中国軍艦のコンバット・システム (現代軍艦のコンバット・システム)」『世界の艦船』第748号、海人社、2011年10月、 94-97頁、 NAID 40018965309
  • 陸, 易「中国 (主要国の艦載防空システム)」『世界の艦船』第748号、海人社、2018年12月、 94-97頁、 NAID 40021712982
  • Wertheim, Eric (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545. 

関連項目[編集]

  • ウィキメディア・コモンズには、蘭州級駆逐艦に関するカテゴリがあります。