アレスティング・ギア

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アレスティング・ギア(着陸制動装置/着艦制動装置)は航空機を短い滑走距離で制動するために使われる。CATOBAR空母STOBAR空母においては必須のシステムであるが、陸上基地においても緊急着陸用や遠征軍の前線飛行場において使用される例がある。基本的な構成は航空機に取り付けられたアレスター・フックを滑走路(飛行甲板)に張られたアレスティング・ワイヤーに引っ掛け、航空機の持つ運動エネルギーをワイヤーが繋がれた油気圧システムで吸収し、短距離で減速させる。

世界で初めて艦船の飛行甲板に張られたワイヤーを航空機のフックで引っ掛けて着艦に成功したのは1911年のことであるが、このとき制動に用いられたのはワイヤーに繋がれた土嚢であった。アメリカ海軍ニミッツ級原子力空母においてはMk-7 mod3航空機回収装置(MK-7 AIRCRAFT RECOVERY EQUIPMENT)が設置され、130ノットで進入する5万ポンドの航空機を344フィートで制止させる。アメリカ海軍は現在、AAG(ADVANCED ARRESTING GEAR:先進着艦制動装置)の開発を進めており、ジェラルド・R・フォード級原子力空母より装備される。これは油圧に換えて電磁気と水圧で制動を行うもので、人員とメンテナンスコストが大きく削減される。また、既成艦であるニミッツ級原子力空母のMk-7を更新する計画もある。

航空機のフックとワイヤーを用いた着陸制動装置は、オーバーランへの対策として陸上基地や軍民共用飛行場にも設置される場合がある。

着艦制動装置の構成[編集]

クロスデッキペンダント
日本では一般にアレスティング・ワイヤーと呼ばれている飛行甲板に張られたワイヤー部分である。両端には容易に接続、解除が可能なカップリングが設けられており、リールを経てアレスターエンジンと結び付けられたパーチェスケーブルに接続される。外したペンダントのように両端に金具がついたワイヤーが飛行甲板を交差(クロスデッキ)していることからこう呼ばれる。直径が1インチから1 1/3インチの柔軟なスチールケーブルで、100回から125回の着艦で交換される。交換にかかる時間は2、3分である。
パーチェスケーブル
航空機が着艦するとアレスターエンジンがそのエネルギーを吸収しつつ繰り出される(Pay out)部分のケーブルである。制動のために支払う(Pay out)のでPurchase(購入)ケーブルと呼ばれる。パーチェスケーブルとクロスデッキペンダントでは、交換可能なクロスデッキペンダントのほうがわずかに低い破断限界を持つように(パーチェスケーブルより先に千切れるように)作られている。
アレスターエンジン
パーチェスケーブルから複数のリールを介して接続される油気圧システムで、Mk-7 mod3の場合、航空機の着艦に際しては繰り出されるパーチェスケーブルがシリンダーにラムを押し込むことで3秒で運動量を吸収する。通常、対応する航空機の重量は5万ポンドが上限だが、7万ポンドまで設定が可能、逆に最低重量は1万5,000ポンドとなる。全長50フィート、重量は43トンあり、4,750万フィート-ポンド(64.4MJ)のエネルギーを吸収することが可能である。