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トマホーク (ミサイル)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
トマホーク(ブロック IV)
戦艦ミズーリ」から発射されるトマホーク
潜水艦から発射されるトマホーク

トマホーク (BGM-109 Tomahawk) は、アメリカ合衆国で開発された巡航ミサイル[1][2]。当初は全てのバージョンがBGM-109と命名されていたが、1986年頃から、艦上発射型はRGM-109、潜水艦発射型はUGM-109と称されるようになった[2]

来歴

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STAM計画の発足

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1955年、アメリカ海軍は、初の艦対地ミサイルとしてレギュラス巡航ミサイルを配備した[3]。しかしこれは弾道ミサイル技術が未成熟だったための応急的な核兵器運搬手段という性格が強く、航空母艦艦上機の性能向上や原子力潜水艦の登場、そしてポラリス潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発によって、急速に姿を消していった[3][4]。その後、艦載巡航ミサイルというコンセプトが顧みられることは少なかったが、1970年に海軍分析センター(CNA)が潜没状態で発射できる潜水艦発射巡航ミサイルの有用性を指摘したことで、再び注目を受けることになった[5][6]

当時、海軍では、潜水艦に搭載していた対潜ミサイルであるサブロック核ミサイルであるために使える状況が限られるという問題に直面していた[7]。非核兵器であるSTAM(Submarine tactical missile)によってサブロックを代替することが検討されるようになり、1969年3月には、サブロックの通常弾頭版の開発を打ち切ってSTAM計画を推進することが決定された[7]。1970年10月にはアメリカ海軍作戦部長によって検討委員会が招集されており、11月28日に同委員会が提出した報告書では、漸進策としてハープーンを水密カプセルに収容して潜水艦に搭載する案が提示されるとともに[5][6]、長射程のSTAMミサイルを活用しての広域制圧という構想が示された[7]。当初、STAMミサイルはMk.46短魚雷を弾頭とする構想だったが[8]、このように構想が深化するにつれて小型の核弾頭の搭載も検討されるようになり、また軍艦を撃破するため最低1,000ポンドの弾頭が求められるようになっていた[7]。1971年までにSTAMミサイルはACM(advanced cruise missile)と称されるようになっており[7]、水密カプセル収容型ハープーンと並行して計画が進行していた[5]

しかしSTAMミサイルは直径30インチ×全長300インチにまで大型化し、従来の魚雷発射管からは発射できず、専用の発射管が必要とされていた[7]。当時構想されていた大型原潜(advanced performance high-speed nuclear attack submarine, APHNAS)であればこのような大径発射管も設置可能ではあったが、1972年にはAPHNAS計画は打ち切られた[9]

SLCM計画の発足

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1972年1月、レアード国防長官調査・技術担当国防次官 (DDREに送付した覚書に基づき、1972会計年度において、戦略兵器としての巡航ミサイル(strategic cruise missile, SCM)の計画が発足することになった[5][6]。海軍作戦部長は、水密カプセル収容型ハープーンの計画を優先するよう命じたが、同年5月に第一次戦略兵器制限条約(SALT-I)が調印された数週間後、レアード国防長官が戦略兵器のために議会に追加13億ドルの予算を要求したことで、SCM計画が強力に推進されることとなった[5]

レアード国防長官は巡航ミサイルを推進する意図を持っていたわけではなかったが、海軍は、巡航ミサイルの開発推進により、比較的低コストで戦略兵器と戦術兵器の両方を整備できると説得した[5]。またSALT-Iでは既存のICBMやSLBMが法的な制限対象となったため、この条約に制約されない核兵器運搬手段を開発することにより核戦略上の柔軟性を確保できるというメリットもあった[5][6][10]

これらの変遷を経て、1972年6月2日、潜水艦発射巡航ミサイルSubmarine Launched Cruising Missile, SLCM)計画が正式に発足し、後には同じ略称のままで海上発射巡航ミサイル(Sea Launched Cruising Missile)と改称された[2]。1972年中盤の時点で、海軍は5つの巡航ミサイルの設計を俎上に載せており、うち3種類は直径19–36 in (480–910 mm)・重量1,850–8,350 lb (840–3,790 kg)の垂直発射型ミサイル、残り2種類は直径19インチの水密カプセル収容型ミサイルであった[5]。その後、1973年1月の時点では、ポセイドンSLBMの発射筒に巡航ミサイル3発を収容する設計5案と、水密カプセル収容型ミサイル5案が俎上に載せられていた[5]

GD案の採択

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1972年のAPHNAS計画の中止とともに、海軍作戦部長ズムウォルト大将は戦略巡航ミサイルの戦術版開発を命じていた[9]。戦略用途と戦術用途のミサイルが統合されたこともあり、11月にはSLCMを通常の魚雷発射管から発射可能とすることが要望されるようになり、これによって4案が棄却された[5]。この結果、ミサイルは直径21 in (530 mm)・長さ246 in (6,200 mm)に制約され、また重量も、既存の潜水艦の魚雷発射管室の設備を勘案して、4,200 lb (1,900 kg)に制約されることになった[5]。これらの検討を経て、1972年12月、5案について設計契約が発注された[5]

1973年12月、国防副長官が海軍に対し、SLCM計画において比較試験を行うよう指示したのを受けて、1974年1月、ジェネラル・ダイナミクス(GD)社のコンベア部門(YBG-109)とLTV社のチャンス・ヴォート部門(YBG-110)が最終候補に選定された[11]。試験においてLTV案は失敗を重ねた上にコストも超過していたのに対し、GD案はいずれも成功を記録していた[11]。1976年3月17日、海軍はGD社の設計を採用することを決定した[11]。なお比較試験前の1975年9月、SLCM計画によるミサイルはトマホーク(Tomahawk)と命名されていた[2][11]

ALCM計画との関連

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1966・67年、アメリカ空軍から委託を受けた国防分析研究所およびランド研究所、そして国防科学委員会作業部会は、クエイル空中発射式デコイ英語版の後継となるSCUD(Subsonic Cruise Unarmed Decoy)およびその武装版であるSCAD(Subsonic Cruise Aircraft Decoy)の開発を提言した[12]。そして1973年12月、SCADから派生する形で、空中発射巡航ミサイル(ALCM)計画が発足した[13]

このように、海軍のSLCM計画と空軍のALCM計画は別個に発足したものではあるが、コストやリスクの低減のため、共通化が志向されることになった[2]。まず技術的な交流が進められ、ALCM計画からはターボファンエンジンと高エネルギー燃料、SLCM計画からはTERCOM誘導システムが提供されることになり、1973年12月19日には計画決定文書が作成され、1974年2月にDSARC(国防戦略・航空宇宙研究委員会)の承認を受けた[5]。当初、空軍のALCM計画への熱意が低調だったこともあり、計画そのものの統合も検討され、1975年には、議会はSLCM計画の資金は維持しつつ、ALCM計画の全予算を削除するという一幕もあった[13]。1977年には、トマホークをSLCMだけでなくALCMとしても採用すれば約3億ドル節約できると試算されていた[13]。しかし議会はSLCM計画とALCM計画の共通点を過大評価しており、危機感を抱いた空軍はALCM計画に本腰を入れることとした[13]。GD社が提案した空中発射型トマホークも有力候補として俎上に残されたが、1980年3月25日、ボーイング社のAGM-86BがALCMとして選定された[14]

トマホークの配備開始

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1977年1月6日、DSARCは、空軍のALCM計画および海軍のSLCM計画(核搭載型および対艦型トマホーク)の全規模技術開発(Full-Scale Engineering Development, FSED)を承認するとともに、SLCM計画から派生する形で、戦域核兵器としての地上発射巡航ミサイル(GLCM)の開発を勧告した[15]。これを受けて、2月1日にはGD社に対しミサイルの本格開発が発注された[2]

1978年2月21日には初の潜水艦からの発射試験、同年3月16日に初の模擬任務、1979年9月14日には初の垂直発射、1980年3月19日には初の艦上発射が実施された[2]。1982年半ばまでに90回の試験飛行と発射が行われ、このうち失敗は13回、部分的な成功に留まったのも4回のみであった[2]

最初のモデルであるブロックIには、核弾頭搭載・対地攻撃用のTLAM-N(TLAM-Aとも)と、通常弾頭搭載・対艦攻撃用のTASMがあり、それぞれ1984年6月および1983年11月に初期作戦能力(IOC)を達成した[2]。またこれらから派生した地上発射型トマホーク(GLCM)も、1983年12月にIOCを達成した[16]。ただし中距離核戦力全廃条約(INF条約)を受けてGLCMは廃棄されることになり、組み立て途中だった67発分の部品はSLCMに転用された[17]

改良型の登場

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アメリカ海軍は、誘導性能を向上させた通常弾頭搭載・対地攻撃用のブロックIIの開発も推進しており、1977年1月31日に模擬目標に対する実証試験に成功したものの、本格的な技術開発が開始されたのは1981年1月になってからであった[2]。まず単弾頭モデルであるTLAM-Cが実用化され、1981年7月には潜水艦から発射されたのち259海里(480km)離れた目標への攻撃に成功、1986年3月にIOCを達成した[2]。また1988年8月には、クラスター弾頭モデルであるTLAM-DもIOCを達成した[2]

続くブロックIIIは射程延伸と衛星航法(GPS)の導入を図ったモデルで、1988年12月13日にマクドネル・ダグラス社に対し開発契約が発注された[2]。開発は急速に進展し、1991年2月より試験を開始した[2]。1992年1月21日には低率初期生産が承認され、7月にはフルレート生産が承認されるとともに、既存のブロックIIミサイルのブロックIIIへのアップグレードも発注された[2]。1993年3月より納入を開始、2か月後に就役し、1995年9月には初の実戦投入としてセルビアの目標に対し発射された[2]

2004年より配備を開始したブロックIV(TLAM-E; 戦術トマホーク(TACTOM)とも)では[18][注 1]通信衛星を介した無線通信Tomahawk Strike Network, TSN)に対応し、発射後の目標再設定が可能になった[20]。そしてこれを基に、航法・通信装置などをアップグレードしたのがブロックVで、2021年より配備を開始した[18]。ブロックVの更なる発展型として、終末誘導装置を搭載して対艦攻撃に対応したブロックVa(海上攻撃型トマホーク, MST)と、弾頭を改良したブロックVb(Joint Multiple Effects Warhead System, JMEWS)が開発されている[18]

設計

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ミサイル本体

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基本構造

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ミサイル本体は、先端が丸みを帯びた(艦上発射型)または尖った形状の(潜水艦発射型)細長い円筒形で、尾部が先細りになっている[2]。また尾部には固体ロケットブースターが装着される[2]。ミサイル内部は、誘導部、前部胴体、中央胴体、後部胴体、推進部の5つのセクションに分かれている[2]。後方3つのセクションは全型式に共通である[2]

胴体中央部には一対の細長い矩形翼があり、側面のスロットに収納されている[2]。発射時にはスロットドアが開き、翼が前方へ展開するとドアが閉じて空力的にクリーンな胴体形状を確保する[2]。後部には十字状に配置された4枚の空気圧作動式クロップドデルタフィンがあり、発射まで折り畳まれている[2]。その前方には格納式の吸気口が設けられており、ミサイルが発射されて飛行状態になると展開される[2]

なおブロックIVでは、後翼を3枚に減らしたほか、重量軽減に伴って、魚雷発射管からの射出に非対応となった[19]。ただし後に、魚雷発射管からの射出にも対応するように改良された[19]

誘導装置

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レギュラスのような1950年代の巡航ミサイルが早期に姿を消したのに対し、トマホークが長く使われている背景には、ミサイルの誘導技術の進歩がある[21]。例えば1958年から1970年にかけて、慣性航法装置(INS)の誤差(ドリフト)は、毎時0.03度から0.005度に改善された[21]。ただしこのように精度が改善したとはいえ、射程が長く飛翔時間が長い巡航ミサイルの場合、航法を完全にINSのみで行うことは困難であり、他の誘導方式と複合させる必要がある[22]

ブロックIのうち、TLAM-Nでは地形等高線照合(TERCOM)によってINSを補正する方式とされ、TAINS(TERCOM-Aided Inertial Navigation System)と称された[1][2]。ブロックIIではTERCOMに加えてDSMAC(Digital Scene Matching Area Correlator)も用いられるようになった[1][2]平均誤差半径(CEP)は、TLAM-Nでは80メートルだったのに対し、TLAM-C/Dでは6 - 10メートルに改善したといわれる[2]。またブロックIIIからはDSMACをバージョンアップするとともに、GPSによる衛星航法も導入された[1][2]。そしてブロックIVでは通信衛星を介した極超短波(UHF)の無線通信[19]Tomahawk Strike Network, TSN)に対応し[20]、15の事前プログラムされた代替目標のいずれかを攻撃するか、またはミサイルを任意のGPS目標座標へ再誘導することが可能となった[18]。また搭載カメラによる映像を送信することで、戦闘損害評価(BDA)英語版にも活用することができる[18]

一方、対艦攻撃用のTASMではアクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)方式による終末誘導を行っており[2]ハープーンと同じDSQ-28誘導装置を搭載した[1]。また電波探知装置Passive Identification/Direction-finding Equipment, PI/DE)も搭載された[2]。最大5つのウェイポイントを用いた高高度(最大450m)または低高度の飛行経路を実行可能であった[2]。目標の大まかな位置が判明している場合は4種類の探索パターンが利用可能で、ミサイルは内蔵のシーカー(公称探知距離300海里/555 km)またはPI/DEシステムを用いて目標の探知・識別を行うことができた[2]。戦術オプションには、シースキミング飛行やポップアップ式の高角度急降下攻撃が含まれた[2]。初回攻撃で目標を捕捉できなかった場合、より強力なECCM能力を備えた再攻撃モードが作動した[2]。ただしTASMにはTSNのような通信機能がなかったこともあって、誤って民間船を攻撃してしまうリスクや、ミサイル発射後・飛翔中に敵艦が目標海域から出てしまった場合に無駄弾となるリスクが指摘されており、TASMの早期退役の一因となった[23]

TASMは1994年には運用終了となったが[23]、その後も、対艦攻撃用の終末誘導装置のニーズは存在し続けた[注 2]。ブロックIVとして検討されていたTMMM向けにFLIRまたはミリ波レーダーを用いたイメージング・シーカーが開発され[1]、前者は戦術トマホークにおいて装備化されたともいわれる[25]。そしてブロックVa(MST)では終末誘導装置が搭載された[18]

弾頭部

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トマホークミサイルによる曳火攻撃の様子。1986年撮影

ブロックIのうち、TLAM-Nでは最大核出力200キロトンの核弾頭であるW80が搭載された[1][2]。一方、TASMでは、ブルパップB空対地ミサイルから流用された1,000ポンド(454 kg)のWDU-25/B半徹甲弾頭が搭載された[1][2][19]

ブロックIIのうち、TLAM-CではTASMの1,000ポンド(454 kg) 半徹甲弾頭が踏襲された[2]。一方、TLAM-Dでは、飛行場や部隊集中地点などの「軟目標」の攻撃を想定してクラスター弾頭が搭載され、合計166個のBLU-97/B子弾を24個のパッケージとして収容した[1][2]。サブ弾頭パッケージは、最大3つの目標に連続して分散させることが可能であり、その後、ミサイルはデコイとして飛行を継続するか、4番目の目標にダイブ突入することもできた[2]

ブロックIIIでは、ミサイルの射程延伸の要請から燃料容量を増加させるため、弾頭重量が削減されることになり、700ポンド(317.5 kg)のWDU-36/B弾頭が搭載された[1][2]。チタン製の弾殻にPBXN 107爆薬を装填しており[1][2]、破壊力はWDU-25/Bと同等である[19]。またプログラム可能な遅延信管(FMU-14/B)を備えており、貫通能力を向上させた[1][2]

推進装置

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巡航段階での推進装置(サステナー)としては、ウィリアムズ F107ターボファンエンジンが用いられ、ブロックIでは推力4.5 kN(600 lb)のF107-WR-400が搭載されていた[1][2]。ブロックII以降では推力5.2 kN(700 lb)のF107-WR-402が採用され、ブロックIII以降では燃費が3パーセント改善した[1][2][注 3]。またブロックIV以降では、発展型のF415-400が搭載されている[18]。中央胴体セクションには燃料タンクが設けられ、JP-10英語版ジェット燃料を収容する[2]。ブロックIII以降では燃料容量が50パーセント増加した[1]

発射後の初期加速に用いられる固体ロケットブースターはアトランティック・リサーチ社製またはユナイテッド・テクノロジーズ社製で、艦上発射型ではMk.106、潜水艦発射型ではMk.111である[2]。12秒間にわたり2,700 kgf (26 kN)の推力を発生する[2]

要目一覧

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ブロック 型式名 全長 直径 翼幅 重量 弾頭 速度 射程 誘導方式
I TLAM-N 5.55 m (ミサイルのみ)[2]
6.25 m (ブースタ込み)[2]
51.72 cm[2] 2.62 m[2] 1,202 kg (ミサイルのみ)[2]
1,452 kg (ブースタ込み)[2]
W80核弾頭[2] Mach 0.75 (255.218 m/s)[2] 1,350海里 (2,500 km)[2] INS+TERCOM[2]
TASM WDU-25/B (弾頭重量454 kg) 250海里 (460 km)[2] INS+ARH[2]
II TLAM-C 700海里 (1,300 km)[2] INS+TERCOM+DSMAC[2]
TLAM-D クラスター弾頭
III TLAM-C WDU-36/B (弾頭重量340 kg)[19] 900海里 (1,670 km)[19] INS+TERCOM+DSMAC+GPS[2]
TLAM-D クラスター弾頭[19] 700海里 (1,300 km)[19]
IV TLAM-E n/a WDU-36/B (弾頭重量340 kg)[19] 900海里 (1,670 km)[19][注 4] INS+TERCOM+DSMAC+GPS+指令[19]

システム構成

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発射装置

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トマホークを発射する戦艦ウィスコンシン」(湾岸戦争時)
ミサイル駆逐艦ステザム」から発射されるトマホーク

トマホークは水上艦と潜水艦の両方で運用される[2]魚雷発射管から発射する場合、直径53cm(21インチ)、装填時重量1,900kgのステンレス鋼製テフロンコーティングMk.45カプセルに収容される[2]。水上艦における発射機としては、専用の装甲ボックスランチャー(ABL)もあるが、後には汎用のMk.41 VLSが主流になった[2]

GLCMでは4発搭載可能な発射台付き車両(TEL)が採用された[16]。4基のTELと2基の射撃管制センター(LCC)で小隊が構成された[16]。INF条約を受けてGLCMは破棄されたものの、2019年8月2日に同条約が失効すると再びトマホークの地上発射化が志向され、2022年12月にはトマホークを搭載可能なMRCタイフォンアメリカ陸軍に納入された[26]

艦上・地上装置

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TLAMの陸上攻撃ミッションの計画は非常に複雑であり、ミサイルが敵の防空システムや地形、建物などの障害物を回避するルートを三次元で策定する必要がある[27]。ミサイルには前方監視センサーがないため、飛行経路全体を事前に設定しなければならない[27]。通常、攻撃計画の策定は、太平洋・大西洋艦隊司令部に併設されたTMPS(Theater Mission Planning System: 戦域ミッション計画システム)によって陸上で行われるが、航空母艦など旗艦に設置されたAPS(Afloat Planning System: 洋上計画システム)でも行うことができる[2][27]

TMPS・APSで策定された攻撃計画をミサイル本体に転送するとともに、実際の発射作業を管制するのが攻撃管制装置である。当初はAN/SWG-2/3 TWCS(Tomahawk Weapon Control System)が用いられていたが、扱えるデータ容量の不足が問題になり[27]、2000年より、後継となるAN/SWG-4 ATWCS(Advanced Tomahawk Weapon Control System)の運用が開始された[2]。また2004年には、衛星通信に対応した戦術トマホークの導入にあわせて、AN/SWG-5 TTWCS(Tactical Tomahawk Weapons Control System)が配備された[28]

配備状況

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ブロックI

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対地核攻撃型のTLAM-N、対艦攻撃型のTASM、地上発射型のGLCM(BGM-109G Gryphon)、の3つのバリエーションがある[29]

TLAM-N

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アメリカ海軍は当初758発のTLAM-Nを購入予定だったが、最終的には367発しか生産されず、32発分はTLAM-Cに転換された[2]

1991年ジョージ・H・W・ブッシュ大統領は中距離核戦力全廃条約に基づきTLAM-Nを海軍艦艇及び潜水艦から撤去することを発表。2010年バラク・オバマ政権は核態勢の見直し(NPR: Nuclear Posture Review)で予備役保管の状態にあったTLAM-Nの廃止を決定し、2013年に廃棄された[29][30][31]

TLAM-NとGLCMの退役に伴い、トマホークは核運用能力を喪失した[30]

TASM

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TASMは593発を調達予定だったが、1994年に運用を終了し、既存のミサイルはブロックIVに転換された[1][2]

GLCM

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米国は322発のGLCMを95基の4連装TELに搭載し西ヨーロッパに配備した。しかしINF 条約に基づき、TLAM-Nと同様に1991年までに、展示保管用の8基を除いて全て廃棄された[32][33][34][35]

ブロックII

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1970年代後半、アメリカ海軍はより命中精度の高い巡航ミサイルを要求し、TLAM-C(Conventional)とTLAM-D(Dispenser)の2つのバージョンが開発された[36]。TLAM-Cは1986年、TLAM-Dは1988年に実戦配備された[2]。公式記録では湾岸戦争で27発のTLAM-Dを含む300発以上のブロックIIが発射され、85%の命中率を達成した[29]

ブロックIII

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ブロックIIIは、新造のほか、既存のブロックIIミサイルを定期点検の機会を利用してアップグレードする形でも整備された。ブロックIIと同様にTLAM-CとTLAM-Dの2つのサブタイプがある。

ブロックIV

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1994年ヒューズ・エアクラフト(現レイセオン)社は、ブロック Ⅲのアップグレードの開発に着手。水上および地上の全ての目標に対応するTMMEと防護強化された目標に対応するTHTPの2つの型を計画するが、コストが高額であることが判明し1996年に中止された。

1998年、新たな開発に着手。中止された計画の反省として、ミサイルは生産段階におけるコストを削減し、ブロック Ⅲの半分のコストで調達することが目指された。残存する他のバリエーションはブロック Ⅳにアップグレードされた。軽量化に伴う構造強度の低下により、潜水艦発射型は魚雷発射管からの発射ができなくなり、VLSから発射されることになった。2007年、魚雷発射管より発射できるタイプもテストされ、イギリス海軍はこれを導入し、トラファルガー級原子力潜水艦やアスチュート級原子力潜水艦で運用されている。ブロック Ⅳは衛星通信システムを搭載し、衛星通信を介したデータリンクで飛行中に事前に登録された最大15の座標、又はGPSで指示される新たな座標に目標を変更すること、ミサイルの前方監視カメラ映像を送信しリアルタイムで爆撃損害評価をすること等を可能とした。射程は 900 海里または 1,600 km で、1,000 ポンドの単体弾頭を搭載している[29]

ブロックV

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ブロックVは、トマホークシリーズの最新発展型である。ブロックIVの機能向上型であるブロックV、対地・対艦攻撃兼用であるVa、能力を強化した対地型のVbの3つのバリエーションがある。

海軍力を著しく増強し、接近阻止・領域拒否(A2/AD)に対応した長距離対艦ミサイルの開発に取り組んでいる中国人民解放軍海軍を念頭に置いた水上艦艇攻撃力強化の一環として開発が行われ、ブロック Ⅴは2021年にアメリカ海軍に納入された。全てのブロック Ⅳはブロック Ⅴにアップグレードされるが、残存するブロック Ⅲは撤去される予定である[37]

ブロックV

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更新された航法/衛星通信システム、対妨害機能を強化したGPSを備え命中精度が向上したほか、データリンクも強化された[38]

ブロックVa

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海上を航行する移動目標・艦艇を攻撃することを目的とした対艦攻撃型(MST: Maritime Strike Tomahawk)である(Vb形との相違は弾頭のみで、実質的には対地・対艦兼用型とも)[37]。アメリカ海軍では2021年に量産発注が行われた[39]。日本でも2023年に導入予定[37]

ブロックVb

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統合多重効果弾頭システム(JMEWS:Joint Multiple Effects Warhead System)を搭載し、防護壁等で防護された施設を貫通し破壊することを目的とした対地型である。2023年に導入予定。JMEWSはトマホークBlock IVを対地攻撃に使うため開発された貫徹力の強い弾頭を装備したもので、先端部分がコンクリートなどの遮蔽物を貫通し、目標内部で多数の子爆弾が爆発する[37][40]

運用史

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アメリカ合衆国

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海軍

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  • 1991年の湾岸戦争で、潜水艦から12発、水上艦から276発、計288発のトマホークが発射された[41]。1991年1月17日にスプルーアンス級駆逐艦「ポール・F・フォスター」 が最初のミサイルを発射、その後ロサンゼルス級原子力潜水艦ピッツバーグ」と「ルイビル」が続いた[42][43]
  • 1993年1月17日、イラクが国連の軍縮査察団への協力を拒否したことを受け、バグダッド郊外の核関連施設ザーファラニエ工場に向けて46発のトマホークを発射した。1発のミサイルがアル・ラシード・ホテル付近に着弾し、民間人2名が死亡した[44]


トマホークの発射数
戦争・作戦 対象国(アメリカの敵国) 年月 発射数
湾岸戦争 イラクの旗 イラク 1991/01/17 288発
1993年1月イラク攻撃 イラクの旗 イラク 1993/01/17 46発
1993年6月イラク攻撃 イラクの旗 イラク 1993/06/26 23発
ボスニア空爆 ユーゴスラビアの旗 ユーゴスラビア 1995/09/10 13発
1996年イラク攻撃 イラクの旗 イラク 1996/09/03 44発
1998年アフガニスタン・スーダン攻撃 アフガニスタン・イスラム首長国の旗 アフガニスタン
スーダンの旗 スーダン
1998/08/20 79発
砂漠の狐作戦 イラクの旗 イラク 1998/12/16 325発
アライド・フォース作戦 ユーゴスラビアの旗 ユーゴスラビア 1999/03/24 218発
アメリカのアフガニスタン侵攻 アフガニスタン・イスラム首長国の旗 アフガニスタン 2001/10/07 50発
2003年イラク攻撃 イラクの旗 イラク 2003/03/20 802発
ソマリア介入 ソマリアの旗 イスラム法廷会議 2008/03/03 2発
イエメン内戦 アルカーイダの旗 アルカーイダ 2009/12/17 2発
2011年リビア内戦 大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国の旗 リビア 2011/03/19 124発
生来の決意作戦 ISIL(イスラーム国)の旗 ISIL 2014/09/23 47発
イエメン内戦 フーシの旗 フーシ 2016/10/13 5発
シャイラト空軍基地攻撃 シリアの旗 シリア 2017/04/06 59発
2018年シリア攻撃 シリアの旗 シリア 2018/04/13 66発
2024年のイエメンへのミサイル攻撃 フーシの旗 フーシ 2024/01/12 103発

潜水艦魚雷発射管から発射可能という制約のもと開発されたことで、トマホークは極めてコンパクトなサイズとなり、アメリカ海軍の水上戦闘艦のかなりの部分と、スタージョン級以後のすべての攻撃型原子力潜水艦に搭載されるようになるほど普及した。また、湾岸戦争で初めて使用されて以降、シリア内戦ウクライナ戦争までの間は、世界においても、大国によって大量に使用され、かつ実戦経験のある巡航ミサイルの存在としてはほぼ希少であり、巡航ミサイルの代名詞的存在であった。

イギリス

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1995年アメリカ政府はイギリス海軍の核攻撃潜水艦のために65発のトマホークをイギリスに輸出することに同意した。最初のミサイルは1998年11月に取得され、イギリス海軍の潜水艦から試験発射が行われた。アスチュート級原子力潜水艦を含むすべてのイギリス海軍の潜水艦はトマホークの発射能力が付与された[68][69][70]

1999年コソボ紛争では、スウィフトショア級攻撃原潜スプレンディッド」が、イギリスの潜水艦として初めて実戦においてトマホークを発射した。

2004年4月、イギリスとアメリカ両政府は、イギリスがブロック Ⅳ(タクティカル・トマホーク)を64発購入することで合意した[71]2008年3月27日、当初の予定より3ヶ月早く運用を開始した[72]。さらに2014年7月、アメリカ政府は追加となるブッロクⅣを65発イギリスに売却することを承認した[73]

2022年6月、イギリスはアメリカ政府と2億6500万ポンドの契約を締結し、トマホークミサイルをブロックⅤに改修すると発表。改修開始は2024年を予定している[74]

カナダ

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2020年にカナダ海軍が発表したインフォグラフィックによると、計画中のフリゲート(CSC計画艦)にトマホークミサイルを搭載する予定である[75]

オーストラリア

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2021年9月、オーストラリアモリソン首相は、オーストラリアがホバート級駆逐艦に搭載するためトマホークを購入することを発表した[76]。2023年3月、米国国務省は、推定8億9,500万ドル相当の最大200発のブロックVと最大20発のブロックIVをオーストラリアに売却することを承認した[77]。2024年12月10日、ホバート級駆逐艦ブリスベンが初の実射試験に成功し、オーストラリアはトマホークを導入・実射した世界で3番目の国となった[78]

オランダ

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2022年、オランダ海軍は長距離精密打撃能力の取得計画を発表し[79]、能力を付与する艦艇として デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲートワルラス級潜水艦を挙げた。ミサイルの種類は公表されなかったが、両艦ともにアメリカのミサイル発射システムを装備していることからトマホークが有力とされた[80][81]。2023年4月、オランダ国防省はトマホークミサイルの調達を発表した[82]。2025年3月、フリゲート「デ・ロイテル」がオランダ軍艦で初の実射試験に成功した[83]。一方、潜水艦搭載型については魚雷発射管から発射するタイプの生産が終了しているため、計画を断念する見込みと報じられている[84]

日本のトマホーク導入

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トマホークの導入をめぐる議論

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2004年の16大綱中期防衛力整備計画 (2005)』策定時に、海上自衛隊は先制攻撃のためにトマホークの取得を要求していた[85][86]ほか、新大綱策定のために防衛庁に設置された「防衛力の在り方検討会議」でまとめられた論点整理において、弾道ミサイルに対処するための敵基地攻撃について「引き続き米軍に委ねつつ、日本も侵略事態の未然防止のため、能力の保有を検討する」として、ハープーン ブロックII軽空母と共に、トマホークの導入が検討対象に入っていた[87]

2013年、日本政府は25大綱『中期防衛力整備計画 (2014)』に敵基地攻撃能力を含む「弾道ミサイル発射手段等に対する対応能力」の検討が盛り込まれたことを受けてアメリカ政府にトマホークの購入を非公式に打診したが、アメリカ政府から「売却しない」との方針が伝えられ実現しなかった[88]。2022年10月28日付の読売新聞によれば、当時のオバマ政権は中国や韓国の反発への懸念や、日本の機密情報の保全に対して不信感があったため、日本へのトマホークの販売に難色を示したとされる[89]

2020年10月13日、自由民主党国防議員連盟は「敵基地反撃能力(ミサイル阻止能力)のアセット」をテーマに勉強会を実施し、村川豊海上幕僚長からヒアリングを行った。村川元海幕長は「現状、5年以内の脅威としてとらえるならば、現在保有している装備品を活用すべきであり、トマホークの導入が有効であると考える」と発言し、「イージス艦等に発射装置を付加すれば使用可能であり、からなら北京佐世保からであれば、更に南の広域までを射程範囲とすることができる。発射装置のVLSは弾の充填状況を外見から判断できないため、どこにどれだけ充填しているか知られることはない。大量の武器を運ぶことが可能であり、遠くから攻撃できる艦艇をミサイルプラットフォームとして敵基地攻撃能力を有することは実現可能で合理的な選択である」と提言していた[90]。また、同年10月16日には杉本正彦元海上幕僚長からもヒアリングを行っており、杉本元海幕長も村川元海幕長と同様に「VLSとトマホークによって、抑止力を向上させることが重要である」としていた[91]

トマホークの導入決定

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2022年10月28日付の産経新聞は、日本政府反撃能力として使用することも念頭に開発を進めている国産の「12式地対艦誘導弾能力向上型」の運用開始が前倒しを図っても2026年度(令和8年度)以降となることから[88]、トマホークの導入を検討し、アメリカ政府に打診したと報じた[88]。中国の台頭など以前とは情勢が異なることから、アメリカ政府は日本の反撃能力保有に理解を示しているため、実現する可能性があるとしている[88]。また、同日付の朝日新聞によれば、防衛省は国産ミサイルの長射程化を進めているが、本格的に運用を始めるまで時間がかかると判断し、実績のあるトマホークの導入に動いたとされ、トマホークが搭載できるように海上自衛隊のイージス艦の改修を検討していると報じている[92]。ほか、同日付の読売新聞は、トマホークの導入は2022年8月に就任した浜田靖一防衛相が決断してアメリカ側との交渉を進め、アメリカ国防総省は同盟国との協力などで抑止力を高める「統合抑止」を重視する立場からおおむね了承し、アメリカ政府内で最終調整が行われている段階であり、日本政府は海上自衛隊のイージス艦の迎撃ミサイル用の垂直発射装置を改修してトマホークを搭載することを想定していると報じている[89]。同新聞によれば、アメリカ政府が日本へのトマホークの売却に前向きな姿勢を見せているのは、安全保障関連法特定秘密保護法などの制定により日本へのアメリカ政府の信頼度が高まったことや、バイデン政権が日本の打撃力向上に期待を寄せていることが挙げられている[89]

2022年10月29日付の読売新聞は、日本政府は長射程ミサイルを発射可能な潜水艦の保有に向け、技術的課題を検証する「実験艦」を新造する方向で調整に入ったと報じた。次期防衛大綱に開発方針を盛り込む方針であり、実験艦は2024年度に設計に着手し、数年かけて建造する計画だとされる。トマホークの搭載を視野に入れており、ミサイル発射方式は、胴体からの垂直発射と、魚雷発射管からの水平方向への発射の両案を検討する。地上目標を攻撃可能な長射程ミサイルの発射機材は車両や水上艦、航空機を念頭に置いていたが、相手に反撃を警戒させ、抑止力を高めるには、より秘匿性の高い潜水艦を選択肢に加える必要があると判断したとされ、実験艦での試験後、10年以内に実用艦の導入を最終判断するという[93]

2022年12月16日に閣議決定された防衛力整備計画において、トマホークの導入は「米国製のトマホークを始めとする外国製スタンド・オフ・ミサイルの着実な導入を実施・継続する」と明記されたほか、新聞報道にあった長射程ミサイルを発射可能な潜水艦の保有も「スタンド・オフ・ミサイルの運用能力向上を目的として、潜水艦に搭載可能な垂直ミサイル発射システム(VLS)、輸送機搭載システム等を開発・整備する」「水中優勢獲得のための能力強化として、潜水艦(SS)に垂直ミサイル発射システム(VLS)を搭載し、スタンド・オフ・ミサイルを搭載可能とする垂直発射型ミサイル搭載潜水艦の取得を目指し開発する」と明記された[94]。その後、防衛装備庁は2023年3月13日に「潜水艦用垂直誘導弾発射システムに関する技術検討役務」を公告した[95]

2023年10月5日、事前の予定より一年前倒しでトマホークの調達を行うことで日米防衛相が一致した[96][97]。最新鋭のトマホークを計400発導入予定だったが、このうち200発を既に米軍が運用している従来型に変更し、配備を早める。性能はほぼ同等で、十分な機能を有していると判断した[98]

2023年11月17日、米国政府は日本へのトマホーク売却を承認し、議会に通知した。400発のトマホーク・ミサイル、14基の戦術トマホーク・ウェポン・コントロール・システム、サポート機器などが含まれる[99][100]。2024年1月18日、防衛省はアメリカ政府とトマホーク購入契約を締結した。ミサイル取得費が1694億円、イージス艦に搭載する関連機材費が847億円であり、2025年度から27年度にかけて順次納入される[101]

海上自衛隊元潜水艦隊司令官の小林正男元海将は潜水艦からの巡航ミサイル発射方式について、魚雷管発射方式では万が一敵潜水艦等が出現した場合に備えて反撃用の魚雷を2発、最低でも1発は保有しておく必要があるため、発射できる巡航ミサイルの弾数は4発か5発に限定される。通常弾頭でこの弾数ではあまりにも少ないため複数回の発射が必要となるが、巡航ミサイル発射の際に魚雷発射管から海水を排水して次の巡航ミサイルを装填するのに相当の時間がかかることや、敵の対潜哨戒機等により再度の巡航ミサイル発射時の炎や大量の煙を探知される危険があると指摘し、魚雷管発射方式に否定的である。そのため小林元海将は垂直発射管方式を推しており、潜水艦に巡航ミサイルを同時に6発程度格納できる大型垂直発射管を3基か4基装備して、ある程度有効な数の巡航ミサイル(18発から24発)を同時に発射すれば、速やかに現場海域を離れることが可能であると指摘している。また、垂直発射管であれば射程や速力などに新たな要求が生じて搭載ミサイルのサイズが拡大しても、サイズ変更に対応可能であるとしている[102]

2025年9月14日、時事通信社は防衛省が海上自衛隊のイージス艦であるちょうかいについて、2026年夏までにアメリカでトマホークの実射試験を行う方針を固めたと報じた[103]

運用国

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トマホークの運用国

現在の運用国

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アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
イギリスの旗 イギリス

調達予定国

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オーストラリアの旗 オーストラリア
日本の旗 日本
オランダの旗 オランダ

採用検討国

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カナダの旗 カナダ

登場作品

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映画

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シン・ゴジラ
終盤の「ヤシオリ作戦」を支援する架空のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ヒューイ」に搭載されたものが、ゴジラの動きを封じるため、グラントウキョウなどの東京駅周辺の高層ビル群に向けて発射される。
沈黙の戦艦
アイオワ級戦艦ミズーリ」を乗っ取ったテロリストたちが、搭載されていた核弾頭搭載型トマホークをブラック・マーケットに売り飛ばそうとする。終盤では、主人公のケイシー・ライバックたちに計画を邪魔されたことで堪忍袋の緒が切れたテロリストのリーダーによって、核弾頭搭載型2発がホノルルに向けて発射されてしまう。
トップガン マーヴェリック
タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦から多数が発射され、敵空軍基地を先制破壊する。
バトルシップ
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ジョン・ポール・ジョーンズ」に搭載されたものが、エイリアンの侵略兵器に対して使用される。エイリアンの電波妨害によってレーダーGPSが使えなくなったため、まっすぐ飛翔させることしかできなくなったが、津波ブイによって判明した目標の位置から未来位置を予測することで命中させることに成功する。
ミッドナイト・イーグル
核爆弾に近づく某国工作員たちを殲滅するため、日本国政府からの要請で、日本海にいる架空のロサンゼルス級原子力潜水艦「セント・バージニア」に搭載されたものが、日本アルプスに向けて発射される。
トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン

アニメ・漫画

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こちら葛飾区亀有公園前派出所
TVスペシャル「大ハード!両津勘吉は二度死ぬ」にて、ドルフィン刑事が使用する。
ジパング
第二次世界大戦時へタイムスリップした架空のイージス護衛艦みらい」の搭載兵器として、BGM-109Bが登場。空母ワスプ」と大和型戦艦大和」に対して使用される。
戦海の剣-死闘-
自衛隊反乱分子によってジャックされた海上自衛隊の架空潜水艦「くろしお」の搭載兵器として登場。空母「剣」や日本各地のコンビナート都市に対して使用される。
タイドライン・ブルー
架空の戦略型原子力潜水艦「ユリシーズ」の搭載兵器として登場。ヤビツに対する攻撃に使用される。
沈黙の艦隊
第150話にて、架空のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「サン・シャントン」に搭載されたものが、日本の野党「鏡水会」党首と会談するため北極海に浮上する、原子力潜水艦「やまと」に対して使用するため、Mk.13に装填される。なお、実際のタイコンデロガ級はMk.13を装備しておらず、また、Mk.13でトマホークを運用することはできない。
実写版では「やまと」の搭載兵器として潜水艦発射型トマホークが登場。原作におけるハープーンの役割を担っており、これが通常弾頭か核弾頭なのかが重要な要素となる。
東のエデン
あたご型護衛艦の搭載兵器として登場。「60発のミサイル事件」において、あたご型4隻から日本の主要政令都市に向けて合計60発が発射されるが、航空自衛隊地対空誘導弾ペトリオットF-15Jによる迎撃で全弾撃墜された。
魔法少女まどか☆マギカ
TV放送版第11話・劇場版後編にて、暁美ほむらが使用する[注 5]
まりかセヴン
第14話で在日米軍が怪獣ガライバに対して相模湾から発射し、同時に出撃させた大量のMQ-1 プレデターとの併用で物量攻撃を仕掛けるが、岩石のような硬い皮膚を持つガライバには効かず反って怒らせてしまう。最終的には田子ノ浦の発案で怒ったことにより急激に上がった体温を湖で急激に冷やされ、皮膚が脆くなったところを第2陣で撃破した。
ルパン三世』シリーズ
ルパン三世 ルパンVS複製人間
洋上を低空で飛行し、無数のICBMやALCMと共にマモーの本拠地へ撃ち込まれる。
ルパン三世 ナポレオンの辞書を奪え
ルパン一味を攻撃するCIA多国籍軍が使用する。作中では、次元大介が性能について解説する場面があり、軍艦だけでなく車両に搭載されたランチャーからも発射されている。

小説

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『ミッドナイトイーグル』
上記の映画『ミッドナイト・イーグル』の原作小説。架空型「BGM-109X」が登場。核兵器を搭載したまま日本アルプスに墜落した架空の米軍爆撃機「B-3Aミッドナイトイーグル」に近づく工作員たちを殲滅するため、日本国政府からの要請で、日本海にいるロサンゼルス級原子力潜水艦SSN-721 シカゴ」に搭載されたものが発射される。
ルーントルーパーズ 自衛隊漂流戦記
異世界へ飛ばされた架空のイージス護衛艦いぶき」に搭載されていた極秘兵器として、タクティカル・トマホークが登場。内陸にある魔法陣地への攻撃に使用される。

ゲーム

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Modern Warships
プレイヤーが使用できる武装として登場。
バトルフィールド4
司令官モードのコマンドとして、指定座標にトマホークを発射できる。
ペルソナ4
クマのペルソナ「キントキドウジ」が掲げている。本編中で武器として使用することは無いが、アニメ版や格闘ゲームでは攻撃に使用する。

脚注

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注釈

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  1. ^ 当初、ブロックIVとしてはTBIP(Tomahawk Baseline Improvement Program)が計画されており、対艦攻撃にも対応したTMMM(Tomahawk Multi-Mission Missile)と硬目標攻撃を想定したTHTP(Tomahawk Hard Target Penetrator)の2つのサブタイプが開発される予定だったが、コスト高騰が見込まれたために1996年に開発中止となり、1998年に代替案として戦術トマホーク計画が立ち上げられたという経緯があった[19]
  2. ^ 2015年、水上戦担当副部長ピート・ファンタ少将は、海軍が新型の対艦ミサイルを製造するのかという質問に対して、「トマホークに対艦能力を持たせる必要性を我々はまだ感じており、以前はトマホークの射程にセンサーが追いつかなかったため計画中止となったが、現在は解決されている」と述べている[24]
  3. ^ 多田 2022では、-402が採用されたのはブロックIIIの中でもTLAM-Cのみであるとしている[19]
  4. ^ 通常用いられる飛翔高度15-30メートルの場合の数値であり、高度2万フィート(6,100メートル)で飛翔する場合は1,600海里(3,000 km)に延伸するといわれる[19]
  5. ^ 『魔法少女まどか☆マギカ公式ガイドブック you are not alone.』 P.112-113より。ただし、実際のランチャーの形状は実物とは異なる。

出典

[編集]
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  13. ^ a b c d Werrell 1985, pp. 156–164.
  14. ^ Werrell 1985, pp. 178–187.
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  17. ^ Larson 1990, p. 12.
  18. ^ a b c d e f g PEO (U&W) 2021.
  19. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 多田 2022, pp. 54–56.
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参考文献

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関連項目

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外部リンク

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