あしたの風
『あしたの風』(あしたのかぜ)は、壺井栄による日本の短編小説。また、これを表題作とした短編小説集。
本作を原作として、2度テレビドラマ化された。
概説[編集]
短編としての『あしたの風』は戦後に入ってすぐの時期において『小学五年生』(小学館刊)に掲載されたとされる児童文学ジャンルの短編小説である。将来の姿を悲観することなく「現在」に地に足をつけて生きる母子の姿を描き出した作品。のち、1958年に新潮社より本作を表題作とした短編集の単行本が出版された。
なお、後にNHKにて制作された「連続テレビ小説」(後述)は、原作そのもののボリュームの不足から、短編集に同時収録されていた同作者による複数作の短編を元に、脚本家である山下与志一らの手によってストーリーラインおよびテーマそのものが再構成されたため、内容が大幅に改変されたものになったとされる。
あらすじ[編集]
戦災母子家庭で育つ夏子は、最近、雨が降ると機嫌が悪くなることが多かった。なぜなら、それまで履いていた長靴を弟に譲ってしまったため、夏子の履く長靴がなかったためであった。夏子の家は貧しいので、そう簡単には新しい長靴を買うわけにはいけない。夏子も事情は分かっているし、他にも長靴を持てない子もいるのだが、それでも新しい長靴が欲しいと言って、母を困らせてしまう。
ある朝、新しい長靴が玄関に置かれていた。夏子のためにと、お母さんが新しい長靴を買ってくれたのだった。大喜びの夏子は、今度は雨の日が待ち遠しくなる。そして、しとしと雨の降る日、夏子は胸を張り新しい長靴を履いて学校に向かった。しかし学校で授業を受けている間に、せっかく買ってもらった夏子の長靴はなくなってしまう。誇らしげな夏子を妬んで誰かが長靴を隠して捨ててしまったのか、それとも、勝手に履いて帰ってしまったのか。夏子はびしょぬれになりながら、校内くまなく必死になって探すが、長靴は見つからない。もう誰もいない運動場で、強くなる雨の中、ずぶ濡れになり泣き続ける夏子に、迎えにやって来たお母さんは優しく呼びかける。
長靴を失くした事を泣きじゃくって詫びる夏子を、母はにこやかに笑いながら靴屋に連れて行く。母は夏子のために、靴屋に頭を必死に下げて、もう一度同じ長靴を都合してもらおうとする。裸足の夏子の姿に、事情を慮った靴屋は嫌な顔一つせず、もう一度同じ長靴を都合してくれた。帰り道、余計なお金を使わす事を詫びて心配する夏子に、母は「娘(夏子)にあしたまで泣いた顔をさせるのはしのびない」から気にしなくていいと諭して「あしたはあしたの風が吹く」とにっこり笑うのであった。
テレビドラマ[編集]
1961年・単発[編集]
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出演者[編集]
ほか
スタッフ[編集]
- 脚本:西沢裕子
- 演出:藤原杉雄
1962年・朝ドラ[編集]
あしたの風 | |
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ジャンル | ドラマ |
原作 | 壺井栄 |
脚本 | 山下与志一 |
出演者 |
渡辺富美子 増田順司 ほか |
ナレーター | 竹内三郎 |
時代設定 | 昭和20年代 |
製作 | |
制作 | NHK |
放送 | |
放送国・地域 | ![]() |
放送期間 | 1962年4月2日 - 1963年3月30日 |
放送時間 | 月曜 - 土曜8:15~8:30 |
放送枠 | 連続テレビ小説 |
放送分 | 15分 |
番組年表 | |
前作 | 娘と私 |
次作 | あかつき |
NHK連続テレビ小説の第2作で、1962年4月2日から翌1963年3月30日まで放送された[1]。
原作は上記の通り短編および短編集であるが、同作者による同傾向のテーマを持つ中短編小説を複数作組み合わせ、脚本を筆頭にテレビドラマスタッフ側で物語を再構成し、番組独自の展開を行った結果、“家族制度”を追及した作品として知られることとなった。
NHKには最終話のみ現存する。
この作品から8:15開始の15分バージョンとなった。15分バージョンはこれ以後定着するようになった。8:15開始は2009年度下半期の『ウェルかめ』まで48年間続く。また再放送はこの作品から12時台となったが、当時は12:40~12:55と、現在より5分早かった。12:40開始は1965年度の『たまゆら』まで続く。
また、放送曜日が本作から月曜日から土曜日までの週6日の放送となった(前作『娘と私』は月曜日から金曜日までの週5日の放送だった)。週6日の放送は2019年下半期の『スカーレット』まで58年間続く[注 1]。
主演の渡辺富美子は初代「朝ドラのヒロイン」かつ、2023年現在も存命の歴代・朝ドラ作品で最も古い作品の主演俳優である。
キャスト[編集]
- 安江 - 渡辺富美子
- 夫・文吉 - 増田順司
- 姪・音枝 - 小畑絹子
- 孤児・文吉 - 長島光男
- アカネ - 川口知子
- アカネの母・なつ子 - 浅茅しのぶ
- 俊三 - 矢野宣
- 小織 - 青山紀子
- 松枝 - 三戸部スエ
- 哲夫 - 大塚周夫
- その他 - 織田政雄、磯村みどり、七尾伶子、幸田弘子、中村雅子、戸田皓久、荒木道子、原泉、伊藤弘子、坂本長利、勝亦富美夫
ほか
スタッフ[編集]
- 原作 - 壺井栄[1](「風」「右文覚え書」「母のない子と子のない母と」「あしたの風」「雑居家族」より)
- 脚本 - 山下与志一[1]
- 音楽 - 斉藤高順
- 演出 - 中山三雄
- 語り - 竹内三郎アナウンサー
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ a b c 日本放送協会 編『NHK年鑑'63』日本放送出版協会、1963年10月10日、131頁。NDLJP:2474360/79 。
外部リンク[編集]
- 『あしたの風』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
- 『あしたの風』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
- 朝ドラ100 作品紹介 - NHKアーカイブス
- 連続テレビ小説 あしたの風 - NHK放送史
- 連続テレビ小説「あしたの風」 - NHKドラマ
NHK 連続テレビ小説 | ||
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前番組 | 番組名 | 次番組 |
娘と私
(1961年度) |
あしたの風
(1962年度) |
あかつき
(1963年度) |
NHK 月 - 土8:15 - 8:30枠 | ||
あしたの風(本放送)
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あかつき
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|
NHK 月 - 土12:40 - 12:55枠 | ||
あしたの風(再放送)
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あかつき
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