沢村栄治賞

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賞の由来となった沢村栄治

沢村栄治賞(さわむらえいじしょう)は、日本プロ野球における特別賞の一つ。通称「沢村賞」。

概要

戦前のプロ野球黎明期において豪速球投手として名を馳せた、巨人軍沢村栄治の栄誉と功績を称えて、雑誌『熱球』が企画して1947年昭和22年)に私的表彰を始めたことに端を発し、後に特別賞として公の賞に認定された。なお、沢村賞は公式の表彰に準ずる特別賞であり、最優秀投手賞は公式表彰項目の一つとして別に存在する。1950年(昭和25年)の2リーグ分立後は長い間セ・リーグのみに対象が限定されていたが、1989年平成元年)からパ・リーグにも対象が拡大された(パ・リーグで初めて受賞した投手は1990年野茂英雄)。

1981年(昭和56年)までは選考基準もなく記者投票で選出されており、1982年(昭和57年)からは、選考基準が作成されかつ元プロ野球投手から構成される「沢村賞選考委員会」による選出となった。この背景には、1981年に、投手五冠を達成した江川卓が落選して西本聖が選出された際、スポーツニッポンに江川担当の番記者が書いた「沢村賞の人格に江川は値せず」が影響している。この時江川は、「“沢村賞の人格に値せず”ってのが出ましたから……ほぉ~人格も入るんだとふてくされていましたからね。人格含まれるんだってよ……最初から書いておけよみたいな……」とコメントしている[1]

現在は、選考基準の項目をどれだけ満たしているかを参考にして、沢村賞選考委員会の審議により、毎年12球団の中から原則1名が選出される。賞金は300万円。選考基準項目を多く満たした投手ほど受賞に有利であるが、選考委員の恣意的要素も否定できず[2][3]、基準項目はあくまで参考に過ぎない。

メジャーリーグサイ・ヤング賞を真似て作られた賞とする文献も存在するが[4]、その歴史はサイ・ヤング賞(1956年制定)より古い。

選考委員は原則5名で、歴代受賞者及びパ・リーグで先発投手として活躍した元選手(1989年以降)が起用され、現職の日本プロ野球監督・コーチングスタッフからは起用されない。2010年度以降の選考委員会の委員は土橋正幸(委員長)、堀内恒夫平松政次村田兆治北別府学[5]

選考基準

選考対象はその年における先発完投型の投手で、選考基準は以下の7項目。

歴代受賞者

















  




選考委員(先頭は座長)
1947 別所昭 南海 55 47 30 .612 448 1/3 191 1.86
1948 中尾碩志 巨人 47 25 27 .692 343 187 1.84
1949 藤本英雄 巨人 39 29 24 .774 288 137 1.94
1950 真田重男 松竹 61 28 39 .765 395 2/3 191 3.05
1951 杉下茂 名古屋 58 15 28 .683 290 1/3 147 2.35
1952 杉下茂 名古屋 61 25 32 .696 355 2/3 160 2.33
1953 大友工 巨人 43 22 27 .818 281 1/3 173 1.85
1954 杉下茂 中日 63 27 32 .727 395 1/3 273 1.39
1955 別所毅彦[6] 巨人 50 17 23 .742 312 152 1.33
1956 金田正一 国鉄 68 24 25 .556 367 1/3 316 1.74
1957 金田正一 国鉄 61 25 28 .636 353 306 1.63
1958 金田正一 国鉄 56 22 31 .689 332 1/3 311 1.30
1959 村山実 大阪 54 19 18 .643 295 1/3 294 1.19
1960 堀本律雄 巨人 69 26 29 .617 364 2/3 210 2.00
1961 権藤博 中日 69 32 35 .648 429 1/3 310 1.70
1962 小山正明 阪神 47 26 27 .711 352 2/3 270 1.66
1963 伊藤芳明 巨人 39 18 19 .704 236 1/3 166 1.90
1964 G・バッキー 阪神 46 24 29 .763 353 1/3 200 1.89
1965 村山実 阪神 39 26 25 .658 307 2/3 205 1.96
1966 村山実 阪神 38 24 24 .727 290 1/3 207 1.55
堀内恒夫 巨人 33 14 16 .889 181 117 1.39
1967 小川健太郎 中日 55 16 29 .707 279 2/3 178 2.51
1968 江夏豊 阪神 49 26 25 .676 329 401 2.13
1969 高橋一三 巨人 45 19 22 .815 256 221 2.21
1970 平松政次 大洋 51 23 25 .568 332 2/3 182 1.95
1971 該当者なし
1972 堀内恒夫 巨人 48 26 26 .743 312 203 2.91
1973 高橋一三 巨人 45 24 23 .639 306 1/3 238 2.21
1974 星野仙一 中日 49 7 15 .625 188 137 2.87
1975 外木場義郎 広島 41 17 20 .606 287 193 2.95
1976 池谷公二郎 広島 51 18 20 .571 290 1/3 207 3.26
1977 小林繁 巨人 42 11 18 .692 216 1/3 155 2.92
1978 松岡弘 ヤクルト 43 11 16 .593 199 1/3 119 3.75
1979 小林繁 阪神 37 17 22 .710 273 2/3 200 2.89
1980 該当者なし
1981 西本聖 巨人 34 14 18 .600 257 2/3 126 2.58
1982 北別府学 広島 36 19 20 .714 267 1/3 184 2.43
1983 遠藤一彦 大洋 36 16 18 .667 238 1/3 186 2.87
1984 該当者なし
1985 小松辰雄 中日 33 14 17 .680 210 1/3 172 2.65
1986 北別府学 広島 30 17 18 .818 230 123 2.43
1987 桑田真澄 巨人 28 14 15 .714 207 2/3 151 2.17 別所毅彦、杉下茂、金田正一、堀本律雄、村山実(欠席)
1988 大野豊 広島 24 14 13 .650 185 183 1.70 別所毅彦、杉下茂、金田正一(欠席)、堀本律雄、小山正明
1989 斎藤雅樹 巨人 30 21 20 .741 245 182 1.62 別所毅彦、杉下茂、金田正一、堀本律雄、小山正明、稲尾和久米田哲也
1990 野茂英雄 近鉄 29 21 18 .692 235 287 2.91 別所毅彦、杉下茂、堀本律雄、稲尾和久、米田哲也
1991 佐々岡真司 広島 33 13 17 .654 240 213 2.44 別所毅彦、杉下茂、稲尾和久、米田哲也、堀内恒夫
1992 石井丈裕 西武 27 8 15 .833 148 1/3 123 1.94 別所毅彦、杉下茂、稲尾和久、堀内恒夫(欠席)、山田久志
1993 今中慎二 中日 31 14 17 .708 249 247 2.20
1994 山本昌広 中日 29 14 19 .704 214 148 3.49 別所毅彦、稲尾和久、土橋正幸、平松政次(欠席)、星野仙一
1995 斎藤雅樹 巨人 28 16 18 .643 213 187 2.70 別所毅彦、稲尾和久、土橋正幸、平松政次、星野仙一
1996 斎藤雅樹 巨人 25 8 16 .800 187 158 2.36 別所毅彦、稲尾和久、土橋正幸、平松政次、藤田元司
1997 西口文也 西武 32 10 15 .750 207 2/3 192 3.12 別所毅彦、稲尾和久、土橋正幸、平松政次、藤田元司
1998 川崎憲次郎 ヤクルト 29 9 17 .630 204 1/3 94 3.04 別所毅彦、稲尾和久、土橋正幸、平松政次(欠席)、藤田元司
1999 上原浩治 巨人 25 12 20 .833 197 2/3 179 2.09
2000 該当者なし 藤田元司(欠席)、稲尾和久(座長代理)、土橋正幸、平松政次、堀内恒夫
2001 松坂大輔 西武 33 12 15 .500 240 1/3 214 3.60 藤田元司、稲尾和久、土橋正幸、平松政次、堀内恒夫
2002 上原浩治 巨人 26 8 17 .773 204 182 2.60
2003 井川慶 阪神 29 8 20 .800 206 179 2.80 藤田元司、稲尾和久、平松政次、土橋正幸、堀内恒夫
斉藤和巳 ダイエー 26 5 20 .870 194 160 2.83
2004 川上憲伸 中日 27 5 17 .708 192 1/3 176 3.32
2005 杉内俊哉 ソフトバンク 26 8 18 .818 196 2/3 218 2.11 藤田元司、稲尾和久、土橋正幸、平松政次、斎藤雅樹
2006 斉藤和巳 ソフトバンク 26 8 18 .783 201 205 1.75 稲尾和久、土橋正幸、平松政次、斎藤雅樹(欠席)
2007 ダルビッシュ有 日本ハム 26 12 15 .750 207 2/3 210 1.82 土橋正幸、稲尾和久(欠席)、平松政次、堀内恒夫、大野豊
2008 岩隈久志 楽天 28 5 21 .840 201 2/3 159 1.87 土橋正幸、平松政次、堀内恒夫、大野豊、村田兆治
2009 涌井秀章 西武 27 11 16 .727 211 2/3 199 2.30 土橋正幸、平松政次、堀内恒夫、大野豊、村田兆治
2010 前田健太 広島 28 6 15 .652 215 2/3 174 2.21 土橋正幸(欠席)、平松政次、堀内恒夫(座長代理)、村田兆治、北別府学
2011 田中将大 楽天 27 14 19 .792 226 1/3 241 1.27 土橋正幸、平松政次、堀内恒夫、村田兆治、北別府学
  • 太字はリーグ1位
  • 斜字は選考基準を満たしていない項目
  • 太斜字はリーグ1位だが選考基準を満たしていない項目
最多選出回数:3回
杉下茂、金田正一、村山実、斎藤雅樹
※斎藤の選出はいずれも対象が両リーグとなってからである。
最多連続選出:3年連続
金田正一(1956年~1958年)
選考基準を全項目満たした投手 
北別府学(1982年)、江川卓(1982年)、桑田真澄(1987年)、斎藤雅樹(1989年)、佐々岡真司(1991年)、今中慎二(1993年)、ダルビッシュ有(2007年、2008年、2011年)、涌井秀章(2009年)、田中将大(2011年)
※選考基準ができた1982年以降の投手に限る。この中で全項目を満たしながら受賞できなかったのは1982年の江川と2008年、2011年のダルビッシュのみである。

脚注

  1. ^ TBSテレビ「20世紀スポーツ名勝負 ライバル伝説…光と影」
  2. ^ 1990年、斎藤と野茂の争いとなった際、「1試合平均奪三振数10.99、二ケタ奪三振試合数21のプロ野球新記録をマークした野茂が『沢村さんのイメージにもふさわしい投手』(別所座長)」(1990年10月23日読売新聞朝刊)とされて野茂に決まったが、1992年や1994年は、奪三振の基準に遠く及ばなかった石井・山本昌が基準をより多く満たした投手を制して受賞している。
  3. ^ 1994年、稲尾「防御率で該当者がいないので、印象度で桑田」・星野「勝ち星を優先して山本昌」・土橋「奪三振で伊良部」・平松(委任状)「該当者なし。どうしてもというなら、桑田」と分かれ、最終的にその年は「勝ち星」か「奪三振」を優先しようということになり、最後は別所座長に一任され山本昌に決まった(読売新聞1994年10月25日朝刊)。
  4. ^ 一例として玉木正之著『プロ野球大辞典』(新潮文庫、1990年)に「沢村賞という投手に与えられるタイトルですら、アメリカのサイ・ヤング賞にならったものだ。」(P209)という記述がある。
  5. ^ 大沢親分に代わり…山本氏、北別府氏が就任 スポーツニッポン2010年10月22日
  6. ^ 「昭」から改名。

関連項目