アメリカ合衆国51番目の州

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アメリカ合衆国51星旗。51番目の州が加入したときのためにデザインされた。

アメリカ合衆国51番目の州(アメリカがっしゅうこく51ばんめのしゅう、: 51st state of the United States of America)は、アメリカ合衆国の政治において、現在ある50に加えて候補と考えられる領土・地域を呼ぶ時の言葉である。時には真面目な政治状況の中で使われるが、米国の影響下にあるか、またはあると考えられる国において、その影響力が過剰であること喩えた皮肉として使われることも多い。

概説

実現の可能性が高いのはプエルトリコで、2012年、州昇格に関する国民投票が行なわれ賛成票多数だった。

ヨーロッパカナダオーストラリア日本などの国では、その国が経済・消費文化・政治・外交・軍事面で米国に従属ないし過剰な配慮をしていると見ている人々が、それぞれの母国を批判的に言うときに「51番目の州」という言葉を使うことがある(新自由主義軍事同盟・「年次改革要望書」など)。

アラスカ州ハワイ州が加盟した1959年より以前は、「49番目の州」という言い方が使われた。「51番目の州の人」 (51st stater) は、米国の型や文化を模倣する米国には住んでいない人や、特に媚米派政治家を軽蔑的に揶揄して呼ぶ言葉である。

法的手続き

アメリカ合衆国憲法第4条第4節では、州相互の関係・州と連邦との関係を規定しており、アメリカ合衆国議会は新しい州の加盟を承認する権限がある。各州はお互いの立法府と司法府の法律に対して「十分な信頼と信用」を与えることを要求されており、一般的に法的な契約、結婚および刑法の判断の認識にまで及んでいる。各州は、やはり憲法第4条第4節で「あらゆる州に連邦形態の政府を保障する」ことを規定しているように、連邦政府によって軍隊による防衛と民間防衛体制を保障されている。新しい州は北西部条例で確立された先例と手続きによって合衆国への加盟を認められる。1802年の権限付与法で定められた先例に従って、加盟の必要条件としてその州ごとの権限付与法が議会の承認を得なければならない。この法は、それまでの領土(準州)の住人が統治機構を形作ることを認め、州となるまでに適合していなければならない要求事項を定めている。プエルトリココロンビア特別区を州に昇格させようという努力の歴史があり、さらに今はもうかなり昔のことになったが、以前のハワイとアラスカの領土を州に昇格させることに成功した歴史がある。連邦の領土である、または領土であった限られた人口の地域を州に昇格するために連邦政府議会のあるいは各州が示した政治的な執心が、半世紀以上も抑制されてきたことは注目に値する。

国内の候補

コロンビア特別区

コロンビア特別区(首都ワシントンD.C.)は、その成り立ちとの関連で、アメリカ合衆国の本土で唯一、州を構成していない。連邦政府直轄地域である。

コロンビア特別区はしばしば州への昇格の可能性があると言われている。第5代マディソン大統領はその論文「ザ・フェデラリスト第43篇」の中で、アメリカ合衆国憲法にある「連邦政府を置く場所」という語が意味するところについて考察した。マディソンは潜在的な利害の対立が予想されること、および「地域のための地方議会」の必要性については論じているが[1]、コロンビア特別区の連邦議会代表権の問題には触れていない。当時、(議会関係者の多く住む)コロンビア特別区に完全な投票権を与えるのは、議会自身に議会での票を与えるようなものであり、市民を犠牲にして議会の力を増すことになると考える者もいた。しかし特別区の人口はすでに約60万人に達し、ワイオミング1州よりも大きく、他のいくつかの州にも匹敵しているため、投票権を与えよとの声が増えている。

下部に「代表なき課税」と書かれたワシントン.D.C.のナンバープレート

州昇格候補の中でもコロンビア特別区の住人は最もその昇格を支持する傾向にあるが、このことは憲法の改正を必要としている可能性がある。この動きを支持する特別区の住人は、アメリカ独立戦争の時の標語「代表なくして課税なし」を持ち出して、議会での代表権が無いことを訴えている。この標語は特別区で新しく発行される車のナンバープレートにも刻印されており、自動車を登録する者はこのデザインのナンバープレートか特別区のウェブサイト・アドレスが刻印されたデザインのものから選択することになる。第42代大統領ビル・クリントンの任期の終わり頃に、大統領専用車にもこの標語付きナンバープレートが取り付けられたが、次の第43代大統領ジョージ・W・ブッシュは就任とともに直ちにこれを取り外させている。

この運動は少数党であるコロンビア特別区州制党が行っている。その後地域の緑の党と合併してコロンビア特別区州制・緑の党となった。この運動で最近の成功事例は、1978年に連邦議会がコロンビア特別区投票権修正条項を通過させたことである。2年後の1980年、地元市民が新しい州の憲法制定会議を招集する音頭を取った。1982年、新憲法が批准され州名はニューコロンビアと呼ばれることになった。しかし、1985年、連邦議会で通ったコロンビア特別区投票権修正条項を7年以内に各州が批准することになっていたが、批准した州の数が必要数に達しなかったために廃案となり、州昇格の動きは挫折した。

州昇格の問題は特別区の政治的人口動態のために、今でも非常に議論の多い政治課題となっている。特別区はこれまで一貫して民主党を支持してきた経緯があるため、州に昇格すれば現在は与野党が伯仲している上院に2名の民主党議員を半ば無条件に追加することになりかねないからである。

もう一つの選択肢は、連邦政府がコロンビア特別区をそっくりそのまま旧領主のメリーランド州に還付するという方法である。これはコロンビア特別区の住民に合衆国の州の住民であることによる恩恵が受けられるようにするための現実的な案で、メリーランド州がかつて首都建設のためにその地の一部を連邦政府に対して割譲した経緯を踏まえたものだが、この方法ではコロンビア特別区が51番目の州に昇格することを犠牲とせざるを得ない。

プエルトリコ

プエルトリコ新進歩党が使う51星旗

プエルトリコの州昇格に関する国民投票は4度行われており、投票ごとに州昇格支持票が増加し、2012年11月6日の投票で可決に至るが、連邦議会の承認など、まだクリアすべきハードルがある。しかし、島の住人は圧倒的にヒスパニック文化を保持しておりスペイン語を話していることから、英語話者が多数を占める大国に入る機会を妨げており、一部には完全独立を求める者がいる。プエルトリコが州になった場合、人口では全51州中27番目で合衆国の下院議員数は6名となる。2000年国勢調査での人口は392万7776人である。現在はケンタッキー州が26番目で420万6074人、オレゴン州が27番目で370万0758人である。

地域 人口(人) 面積 (km²) 備考
プエルトリコ 399万4259 9101.0 2007年7月推計
アメリカ領ヴァージン諸島 11万2000 346.4 2007年7月推計

その他の領土・旧領土

他の候補でやや可能性が低いのがグアム島とアメリカ領ヴァージン諸島であり、どちらも自治的未編入領域である。北マリアナ諸島はプエルトリコ同様コモンウェルスであり、アメリカ領サモアは非自治的未編入領域である。ヴァージン諸島がプエルトリコと一緒に一つの州として加盟してはどうかという提案もある(両者を併せてプルスヴィ共和国とする提案もある)。また太平洋のアメリカ領や元アメリカ領の統合については、1960年代の「グレーター・ハワイ」構想もある。グアムと北マリアナ諸島は、独立国でありながらアメリカと自由連合盟約を結ぶ関係にあるパラオミクロネシア連邦マーシャル諸島の3国と共に一つの州として認められる可能性もある。この場合の人口は50万6040人でワイオミング州よりやや少なく、面積は2561平方キロメートルで、全米最小のロードアイランド州よりやや小さい。アメリカ領サモアは上記の州の一部になる可能性もあるし、ハワイ州の1郡になる可能性もある。

地域 人口(人) 面積 (km²) 備考
パラオ 1万9907 458 2005年7月推計
北マリアナ諸島 8万0801 477 2005年7月推計
マーシャル諸島 6万1963 180 2005年7月推計
グアム 17万0000 544 2006年7月推計
ミクロネシア連邦 10万8500 702 2006年7月推計
アメリカ領サモア 6万4869 199 2006年7月推計

州の分離

現在の州の中から新しい州を創設することは、その州議会の承認があれば現憲法下で可能である。実際に、以下のような事例があった。

分離にいたらなかった、もしくは構想中のものは以下のとおり。

  • 1965年6月4日カリフォルニア州議会でテハチャピ山地を境にして州を2つに分ける議案に投票が行われた。提案者は州上院議員のリチャード・ドルウィグ(民主党、サンマテオ郡)で、議案は人口の多い南部7郡と他の51郡を分けるものだった。議案は27対12で可決された。この案を有効にするためには、州下院、住民投票、および合衆国議会での承認を必要とした。ドルウィグが予測したように、この法案は州議会の委員会を通らなかった[2]
  • ニューヨーク市をニューヨーク州から独立させる提案があった。これはニューヨーク州北部(ニューヨーク市を除くニューヨーク州の大半)の分離要求のやりとりから派生したものであった。ロングアイランドが独立した州になると考えた者もいた。
  • ニューヨーク州と同様な環境で、シカゴイリノイ州から独立する提案があった。これはシカゴ都市圏だけで人口が州の過半数を占めていたからである。この提案の変化形がミルウォーキーからゲーリーまでの帯状の地域で、いわゆるシウォーキーと呼ばれるものである。
  • 歴史を見ると、オレゴン州南部とカリフォルニア州北部がそれぞれ現在の州から脱退して、新しい一つの州「ジェファーソン州」を作る可能性があった。ジェファーソン州が出来ていれば49番目の州で、アラスカ州とハワイ州はそれぞれ繰り下がって、50番目と51番目になったかもしれない。
  • 1996年、1999年および2005年にリンカーン州という名の51番目の州を作る動きがあった。この州はワシントン州東部とアイダホ・ペンハンドルを合わせるものだった。
  • 1784年、現在のテネシー州東部の住人がフランクリン州という名の新しい州としてその地域を組織する投票を行い、アメリカ合衆国議会に連邦加盟の請願を行った。しかし議会はその請願に反応しなかった。ノースカロライナ州はかってテネシー全体を領有化する主張を行っていたが、一旦連邦政府にその処遇を預けていた。ここへきてノースカロライナ州が再び領有権を主張したため、フランクリン政府は崩壊した。1790年、ノースカロライナ州は再度フランクリンを含むオハイオ川南岸領土の領有権を放棄し連邦政府に戻した。同領土は後に連邦への加入を認められテネシー州となった。
  • 似たようなことがミシガン州アッパー半島で幾度か起こった。ここではスペリオル州という州を作るために、時には隣接するウィスコンシン州の一部の郡やマキノー海峡を隔てたロウアー半島北部の一部の郡と共に分離を望んだ。

国外の「51番目の州」

アメリカ合衆国との文化的な類似性や密接な同盟関係のために、冗談半分で51番目の州と呼ばれる国がある。またアメリカの州になることをある程度の支持と真面目さで運動した国もある。

南北アメリカ

カナダ

カナダでは、「51番目の州」(あるいは「メイプルリーフ(カエデの葉っぱ)州」)は、ある政治的な処置が採られる場合にカナダの運命は「51番目の州」になることだと示唆するようなやり方で使われる感情的なきっかけを与える言葉である。

「51番目の州」になるということは通常、アメリカ合衆国と強い連帯感を持つことや共同してことにあたる政策を採用する時の潜在的な結果として(例えば1988年のカナダ-アメリカ自由貿易協定や、現在議論中の共同防衛拠点の創出)、あるいはケベック州独立運動の問題を解決するための提案を採用しない時の潜在的な結果として(例えば1992年のシャーロットタウン合意や、1999年のクラリティ法)、引き合いに出されている。

この言葉はたいてい、地域の政治的議論、論客の文章あるいは私的な会話の中で使われている。公的な場で政治家によって使われることは稀であるが、カナダの歴史の中のある時代に、政党が同じような意味合いで使ったことがある。例えば、1988年のカナダ連邦選挙で、自由貿易に反対するカナダ自由党は、カナダ進歩保守党の戦略家が自由貿易協定の採用の時に机の上の北アメリカの地図からゆっくりとカナダ-アメリカの国境線を消している広告を打った。しかし、数日のうちに進歩保守党は、アナウンサーの歌うような声で「ここに線を引いている」と言わせて、境界線が引き直されたことを強調する広告を打って反応した。1988年の自由貿易協定は道具で「あった」ことに注意を要する。その後、1993年の北アメリカ自由貿易協定(NAFTA)が通過し、シャーロットタウン合意が議会を通過しない中で、今日まで個別の議論の中で主張されていたようなアメリカによるカナダの併合は起こっていない。

カナダの少数の非主流派集団が積極的にカナダのアメリカによる併合を唱えているが、主流派の注意を引くところまで至っていない。

アメリカの中でカナダを対象に「51番目の州」という言葉を使うときは、その使われる文脈により肯定的にも否定的に使われ得る。ある状況ではこの言葉がカナダとアメリカの類似性と密接な関係に焦点を当てるという見方で使われる。しかし、多くの場合は侮蔑的な意味合いで使われる。18世紀終わり頃の連合規約では、カナダのアメリカ合衆国への加入を前もって承認していた[3]

アルバータ州

カナダのアルバータ州は同国のテキサスと呼ばれることがある。この2つの州は社会的な価値観(どちらも社会的に保守的である)や経済の基盤(共に両国の石油産業の中心である)において似通ったところがある。多くのアルバータ州住人がカナダ政府の州に対する政策に不満を表明している。特に国のエネルギー政策と雇用機会の均等化政策である。カナダ政府がアルバータ州の莫大な石油備蓄から金を搾取して国の他の地域にばら撒いていると非難する者もいる。カナダの雑誌ウエスタン・スタンダードから出版された2005年8月の世論調査によると、回答者の42%はアルバータ州がカナダから外に出る選択肢を探索すべきだとしている[4]。この回答の中には、アルバータ州単独で脱退する場合、他の西部の州と共に脱退する場合およびアメリカ合衆国に加わる場合を選択肢としてあげている。

ガイアナ

南米のガイアナとアメリカを統合した場合の組織、ガイアナUSA[5]がある。その主張の根拠は、ガイアナが旧イギリス植民地(英領ギアナ)の英語圏であり、現代でもガイアナがアメリカと強い結びつきがあることである。なお、ガイアナの10万人の市民はアメリカでも市民権をもっており、35万人のガイアナ人がアメリカに住む。これはガイアナ人口の半分に相当する。

ヨーロッパ

イギリス

アメリカとイギリスの関係(英米同盟。そもそもアメリカ合衆国が元を正せばイギリスの植民地だった)を考えると、イギリスの評論家にいわせれば、イギリスはアメリカの「事実上の」51番目の州であると示唆されている。イギリスが合衆国に加盟すれば[6]、合衆国の中でも最も富裕で人口の多い州となる。それ故に最も政治的な影響力を行使できると言う者もいる。ただし、ほとんどのイギリス人もアメリカ人もこれは起こりえないとも思っている。しかし、それが実際に起こったとすれば、イギリスが共和国になるか、あるいはアメリカがその憲法第4条第4節「アメリカ合衆国はこの連合の中にある各州に共和的形態の政府を保証する」という規定を改訂することになる。この種の噂は伝統的なもので、第二次世界大戦末期の1944年ブレトン・ウッズでの借款交渉より帰国したケインズは取り巻きの記者からイギリスはアメリカの49番目の州になるという噂は本当かと尋ねられると、即座に「そんな幸運はないよ」と答えたという (「49番目の州」という言い方が使われたのは当時まだ48州だったため。アラスカハワイが連邦に参加していなかった)。

文化的には、様々なアメリカのテレビ番組の人気が上がっており、映画、ファッションまた文学も然りである。経済的には、スーパーマーケットファーストフード小売店がアメリカから輸出されて、年長者の多い社会で古い小さな事業には大きな影響を及ぼすと思われるが、一般大衆にとっては便利さが増すであろう。映画「51番目の州」(アメリカでの公開では「フォーミュラ51」)では、アメリカからイギリスへ犯罪が流入すると仮定している。特に薬物密売やギャングである。政治的には、イギリス帝国の衰退とアメリカの影響力の増大が表裏一体となって進み、第二次世界大戦中にアメリカの援助を得たことで、イギリスが植民地を失い海軍の優越性も失われたことに擬えられる。イギリスが世界に影響力を保持しようとして新しい帝国(アメリカ)の力にすり寄ろうとしていると考える人はほとんどいない。

第二次世界大戦から今日に至るまでイギリスにアメリカ空軍海軍および他の軍事機関や諜報機関が駐留しており、特に冷戦時代にこれらが増強されたことは、アメリカの影響力の明確な証拠と取られている。アメリカ空軍にとって、イギリスは世界における「戦略的な位置」として特に重要である。

イギリスの主権が失われる可能性と、米英関係の中での互恵主義の明らかな欠如に関連して、政治的な権利についての批判がある。イギリスは朝鮮戦争の時にアメリカを支援したが、スエズ紛争の際にはアメリカの支援を得られなかった。このような批判は、アメリカが共産圏諸国を扱うやり方について特に広まっていった。ベトナム戦争のときのアメリカに対する言葉の上の支援は、公式の軍事的な介入が無かったにも拘わらず抗議運動の対象となった。ロナルド・レーガン大統領の時代のアメリカは、イギリスが起こしたアルゼンチンに対するフォークランド紛争の際に、密かにマーガレット・サッチャーのイギリス政府を支援した。これは米州相互援助条約の制限を超えるものであった。(しかし、アルゼンチンが紛争を起こした当事者であったので、直接武力行使しても条約を犯すことにはならなかった。また北大西洋条約によって、アメリカはイギリスに対する責任があった)イギリスは冷戦の終結後もアメリカの強力な同盟者であり、レーガンとサッチャーの時代に続いて、ジョージ・W・ブッシュによる2003年のイラク侵攻については、トニー・ブレア英国首相が強く支持することで裏付けられた。ブッシュ・ブレア両首脳が会する時の友好的な雰囲気がそれを示していた。テロリズムに対抗し、情報を共有し合うためにUKUSAコミュニティが創られた。

イギリス国内では、イギリスが欧州連合 (EU) から脱退して北アメリカ自由貿易協定 (NAFTA) に加わる可能性について、限られた範囲ではあるが議論がある[7]。しかし、イギリスは貿易額の60%以上を占めるEUとの結びつきを、NAFTAとの比較の中で再度交渉しなければならない。NAFTAの中で最大のアメリカとは、イギリスが15%を輸出し8.7%を輸入している。しかし、多くの評論家によれば、新首相となったゴードン・ブラウンはイラク問題に対するイギリスの支持を引き上げようと願っており、トニー・ブレアのようにアメリカの影響を受けないだろうと考えている。

アルバニア

アルバニアは、その姿勢が強いアメリカ肯定の立場を採っているために51番目の州と言われることがある。ジョージ・W・ブッシュ大統領が2007年にヨーロッパ歴訪を行った時、ティラナの市長で対立する社会党の指導者でもあるエディ・ラマは、「アルバニアはヨーロッパで最も、たぶん世界でも一番アメリカを持ち上げる国である...アメリカの大統領にたいしてこれほど尊敬と友好的な持てなしをする国が他にあるだろうか。ミシガン州でもこれほどの歓迎は得られないだろう。」と語った。元国務長官ジェイムズ・ベーカーが1991年に訪問したとき、アメリカの51番目の州を宣言するための国民投票を行う動きすらあった[8]

シチリア島(イタリア)

1944年に党員数4万人と言われたシチリア島の再建党が、シチリアはアメリカ合衆国に加盟すべきと主張した[9]。この党はイタリア・ファシズムの没落後に行動した幾つかのシチリア分離主義者運動の一つであった。

アジア

日本

日本は、第二次世界大戦後日米安全保障条約日米地位協定に基づき、領土内に多数のアメリカ軍在日米軍)が駐留していることや、経済的に日本が米国系の外資企業による強い影響下にあること、21世紀に入るまで米国債の最大の購入者(=アメリカの最大の債権者)であったなど非常に結びつきが強いこと、文化的にも戦後アメリカ文化の影響を強く受けるようになったことなどから「51番目の州」と揶揄されることがある。自民党による、売国的とも言える親米的政策も影響している[10]

状況としてはイギリスの場合に似ているが、一部の評論家からは「現状のままだとアメリカの属国として一方的に搾取されるばかりだが、アメリカの州になれば選挙などで一定の影響力を行使できるため、いっそ正式にアメリカの州となったほうがまし」とする意見がある[11]

ただ、日本は面積的にはアメリカ合衆国の大きめの州(モンタナ州など)に相当するが、1億2000万を超える人口(アメリカ全人口の約4割)を抱えている。これは単独の州としては極端に多くなる(アメリカ合衆国の州の中で最大の人口を擁し、日本と同等以上の面積を占めるカリフォルニア州でさえ、人口は4000万弱と日本の1/3ほどしかない)数字であり、現在進められている道州制案で分割すると仮定してようやく釣り合う規模である。また文化も言語も主要人種も異なる国同士でもあり、日本がアメリカの一部になればアメリカ側も相当の変革を余儀なくされる。イギリスと同様、ほぼ全ての日本人は日本がアメリカの51番目の州になることは有り得ないと考えており、この種の発言は皮肉や冗談あるいは感情的な発言としてしか取られていない(最高指導者とは別に天皇が権威として存在するという問題も、立憲君主制を取るイギリスと共通する。この場合はハワイ王国が消滅させられハワイ州になった当時同様、天皇制を廃する必要がある)。

2016年2月17日自由民主党所属の参議院議員である丸山和也憲法審査会で、「日本が米国の51番目の州になれば、集団的自衛権は全く問題にならないし、拉致問題も起こらなかった」[12]と発言し、物議をかもした。

台湾

第二次世界大戦の後で、サンフランシスコ平和条約台北条約が締結され、アメリカを代表とする連合国は元のフォルモサ(台湾)の管理責任があることを国際的に認められた。

その後も台湾の法的また政治的位置付けについて議論や意見の相違が生まれており、フォルモサ政府の下で機能していることについて、国際連合の加盟国の国際的な認識をさらに求める独立した、あるいは擬似的な独立国であるとする専門家もいる。

台湾で最近[いつ?]行われた世論調査では、台湾の将来について尋ねる質問に対し、15%はアメリカの51番目の州になるよう努めるべきと回答した[要出典]。サンフランシスコ平和条約も台北条約も、連合軍が引き上げた後に誰が台湾を統治するかを定めていなかった。なお、中華人民共和国はどちらの条約にも署名していない。

アフガニスタンおよびイラク

イラク戦争後のイラク政府がアメリカの傀儡であると考える人々によってこの主張がなされている。アフガニスタンについても同じような観測がなされている。

イスラエル

ユダヤ系の有力者達のロビー活動(イスラエル・ロビー)によってイスラエルが毎年アメリカから資金や防衛的な支援を受けているために、多くのウェブサイトでイスラエルは51番目の州と主張したり、あるいはジョークのネタに使っている。コメンテーターのリチャード・リーヴズもこの伝である[13]

オセアニア

オーストラリア

オーストラリアはアメリカの外交政策に似た形を採っているために、51番目の州と言われることがある。この言葉はオーストラリアの中だけで使われている。第二次世界大戦以降、オーストラリアはアメリカが始めた戦争にほとんどすべて関わってきた。朝鮮戦争、ベトナム戦争そしてイラク戦争である。1996年から11年間にわたって首相を務めた自由党ジョン・ハワードは自ら「米国の副保安官」を自認していた。 しかし、自由党は2007年の総選挙で現職首相ジョン・ハワードの落選とともに敗北し、代わって政府の親米外交政策を批判してきた労働党が与党の座に着いた。後任はケビン・ラッド首相であり、今後は政策が転換される可能性がある。

アフリカ

リベリア

リベリアの国旗

リベリア南北戦争中、解放奴隷の黒人をアメリカからアフリカに移住させて建国された国で、歴史的にもアメリカと関わりが深い国である。よって政治や文化面などでもアメリカの影響力が強く、またアメリカの著名人などから因んだ首都など地名などがあり、国旗も星条旗に酷似している。その為か、しばしばアメリカの51番目の州などと言われる事もある。リベリア国民の多くは、自身はアメリカとは兄弟でもあると言う認識をしている人も多く、非公式だが、リベリアはアメリカの51番目の州状態の国だと考えている人も多い。1989年の内戦勃発以後、アメリカの軍事介入を強く求めていたが、アメリカはリベリアに介入しなかった。アメリカの一つの州となって、リベリアを助けるべきだとの声もあった。

組織の「51番目の州」

アメリカに籍を置く組織(NGOなど)はしばしば、他所に小さな支所を置いている。これらの支所がその組織の「51番目の州」と言われることがある。

  • 民主党全国委員会は予備選挙のために各州をまとめている。海外にいる約700万人のアメリカ人に予備選挙を呼びかける海外民主党という組織もある。民主党全国委員会の立場では海外民主党はしばしば「51番目の州」と考えられている。

大衆文化の中での「51番目の州」

脚注

  1. ^ http://www.constitution.org/fed/federa43.htm
  2. ^ "California Senate acts to cut state in two in districting fight," Syracuse Herald-Journal, June 5, 1965, p1
  3. ^ http://www.law.ou.edu/ushistory/artconf.shtml
  4. ^ http://www.westernstandard.ca/website/index.cfm?page=article&article_id=928
  5. ^ http://www.guyanausa.org/
  6. ^ http://www.bbc.co.uk/dna/actionnetwork/A11400355
  7. ^ Why Britain Should Join NAFTA - Brief Article”. 2008年5月27日閲覧。
  8. ^ http://www.iht.com/articles/2007/06/08/frontpage/albania.php "Pro-U.S. Albania set to roll out the red carpet for Bush", Craig S. Smith, 8 June 2007,International ヘラルド・トリビューン
  9. ^ Finkelstein, Monte S. (1998). Separatism, the Allies and the Mafia: The Struggle for Sicilian Independence, 1943-1948. Bethlehem, PA: Lehigh University Press. pp. 78. ISBN 0-934223-51-3 
  10. ^ 自民党は結党に当たり、中央情報局からの財政支援を受けていた。また首相・岸信介、読売新聞を興した正力松太郎など政財界の重鎮達、右翼の大物笹川良一児玉誉士夫などが中央情報局に買収されていた
  11. ^ 日米問題研究会『日本がもしアメリカ51番目の州になったら』現代書林、2005年)など。なお、阿川尚之「日本が合衆国51番目の州になれば...」『諸君』30(10): 80-93(1998年10月)は、日本が51番目の州になった場合のシミュレーションを米国連邦法の観点から検討している。
  12. ^ 自民・丸山議員「黒人奴隷、米大統領に」…謝罪 YOMIURI ONLINE、2016年2月18日閲覧
  13. ^ http://www.uexpress.com/richardreeves/?uc_full_date=20051021

関連項目