ウォッチメン

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ウォッチメン』(Watchmen)は、アラン・ムーア原作、デイブ・ギボンズ作画による、12巻のアメリカン・コミックである。最初のシリーズは1986年から1987年にわたり、DCコミックから月刊誌として出版され、後にグラフィックノベルとして一冊にまとめられた。

ザック・スナイダーが監督する実写映画は全米では2009年3月6日に、日本では3月28日に松竹・東急系で公開された。映倫によってR-15指定を受けている。

概要[編集]

フランク・ミラーの『バットマン: ダークナイト・リターンズ』やアート・スピーゲルマンの『マウス』と共に、『ウォッチメン』はアメリカン・コミックの分野における道標的作品であり、1950年代以降はアメリカン・コミックから失われていた成人読者を、再びこのジャンルに呼び戻した作品であると見なされている。

ドン・マークスタインは以下のように記している[1]。「『マルタの鷹』が推理小説において行い、『シェーン』が西部劇において行ったことを、『ウォッチメン』はコミックで行った。ジャンルの読者が期待した点においても予期しなかった点においても、あらゆる点で豊かな読書体験を提供する読物として、本作以前にはフィクションの低級な形式と見なされていたコミックという出自を、本作は超越した。」

『ウォッチメン』はカービー賞アイズナー賞を受賞し、更に1988年にはヒューゴー賞の特別部門に選ばれ、同賞を受賞した唯一の漫画作品となった。2005年には、『タイム』誌によって1923年以降に発表された長編小説ベスト100に選ばれた。

日本では、1998年にメディアワークスより、石川裕人、秋友克也、沖恭一郎、海法紀光による訳書『WATCHMEN』が刊行されたものの、品切れ以後は長らく絶版状態であったが、2009年2月28日に小学館プロダクションより再刊された。

タイトル[編集]

『ウォッチメン』のタイトルは、ユウェナリスの風刺詩第6歌『女性への警告』からの抜粋に由来する。

noui consilia et ueteres quaecumque monetis amici,
"pone seram, cohibe".
sed quis custodiet ipsos custodes
cauta est et ab illis incipit uxor

この引用の逐語訳が、ムーアの『ウォッチメン』に込められた主題を暗示している。

I hear always the admonishment of my friends:
"Bolt her in, and constrain her!"
But who will watch the watchmen?
The wife arranges accordingly, and begins with them

私は我が友の忠告を常に聞く。
「彼女に閂を掛け、拘束せよ!」
しかし、誰が見張りを見張るのか?
妻は手筈を整えて、彼らと事を始める

構成[編集]

『ウォッチメン』ではスーパーヒーローが実在するもう一つの歴史を舞台に、道徳・哲学・大衆文化・歴史・芸術・自然科学に関わる冒険活劇と犯罪ドラマが展開される。

『ウォッチメン』は12の章から構成され、第1章は矢印のような血痕が付着したスーパーヒーロー「コメディアン」のスマイル・バッジの極端なクローズアップから始まる。この血痕の形のイメージは物語を通じて何度も繰り返され、第2章以降は11時49分から始まり深夜0時0分に至る、終末時計を彷彿とさせる時計の文字盤から始まる。各章のタイトルは章の終りで示される引用文からの抜粋であり、この引用文ではその章での出来事が暗示される。

最終章を除く各章には、各キャラクターの背景設定や、彼らによって『ウォッチメン』世界が受けた影響を様々な側面から記述するエッセイや文書、つまり作中内資料とも言うべきものが含まれている。これらの文書は引退したスーパーヒーローの自伝・新聞記事・インタビュー・警察と精神科医の報告書・その他の記事からの抜粋という形式をとっており、『ウォッチメン』世界の詳細を知るのに有効であると共に、世界観にリアリティを与えている。

経緯[編集]

1985年に、DCコミックはチャールトン・コミックから一連のキャラクターの権利を取得した[2]。当時、本書の原作者アラン・ムーアは、かつて1980年代初頭に『ミラクルマン』のシリーズで彼が行ったように、自らの手で改革可能な手付かずのキャラクターを登場させたストーリーの執筆を考えていた。アーチーの前身MLJコミックのマイティ・クルセイダーシリーズがこの計画に使用できるかもしれないとムーアは考えており、星条旗をモチーフにしたコスチュームを身にまとった愛国ヒーローで、FBIの諜報員でもあるザ・シールドの死体が港湾で発見される事から始まる殺人ミステリーのプロットを温めていた。読者に見覚えのあるキャラクターを使うことで、「読者がこれらのキャラクター達にリアリティを感じ、大きな驚きと衝撃を受け」さえすれば、最終的に使用するキャラクター達は誰であろうと構わないとムーアは思っていた[3]。ムーアはこの着想を用いてチャールトンのキャラクターを登場させた企画書『Who Killed the Peacemaker』(『誰がピースメーカーを殺したか』)を作り上げ[4]、DCの編集長ディック・ジョルダーノにいきなり送り付けた[2]。ジョルダーノはこの企画を採用したが、チャールトンのキャラクターを使用するという案には反対した。「金のかかったキャラクター達が、死んだり役立たずにされて終わってしまう事に、DCは気付いたんだ」と、ムーアは述べている。ジョルダーノはその代わりに、オリジナルキャラクターを使用して企画を作り直すようムーアを説得した[5]。最初ムーアはオリジナルのキャラクターでは読者の感動は引き起こせないと考えていたが、後に考えを改めた。ムーアはこう述べる。「結局、私が代用となるキャラクターを充分に描写すれば、彼らはある意味で見慣れた存在となり、彼らの外見はある種のスーパーヒーロー一般を思い起こさせる物となる事に気付いた。そして、それはうまくいった」[3]

過去の作品でムーアと組んだ事のある作画家のデイブ・ギボンズは、ムーアがある読み切り作品の構想に取り組んでいる事を聞き付けた。自分も参加したいと述べたギボンズに、ムーアはストーリーの概略を送った[6]。ギボンズはジョルダーノにムーアが企画したシリーズの作画を手掛けたいと伝えた。ジョルダーノはギボンズにムーアの意向はどうかと尋ね、ギボンズがムーアも自分の作画を望んでいると答えた事で、ギボンズは作画家の地位を得た[7]。カラリストのジョン・ヒギンズの風変わりな作風を好んでいたギボンズは、ヒギンズをこの企画に誘い入れた。ヒギンズはギボンズの近所に住んでおり、二人は「(作画について)語り合ったり、海を越えて手紙を送りあうよりは親密な近所づきあいをしていた」[4]。ジョルダーノが監修者としての地位に留まる一方で、レン・ウェインが編集者として加わった。ウェインとジョルダーノの両者は企画から距離を置き、やがて企画を離れた。ジョルダーノは後にこう述べている。「そもそも、アラン・ムーアの校正ができる奴がいるかね?」[2]

企画の開始許可を得たムーアとギボンズは、ギボンズの自宅でキャラクターの創造と、物語内の詳細な社会環境の構築、着想の元となるアイデアについての議論を行った[5]。二人が特に影響を受けたのは、『MAD』誌における『スーパーマン』のパロディ『スーパーデューパーマン』である。ムーアはこう述べている。「我々はスーパーデューパーマンの180度反対を目指した――喜劇的ではなく、劇的な」[5]。ムーアとギボンズは、「全く新しい世界で生きる、懐かしいお馴染みのスーパーヒーロー達」の物語を考え出した[8]。ムーアの述べるところによれば、彼が意図したのは「ある程度の重厚さと密度を備えた何か。言わば、スーパーヒーロー版『白鯨』だ」[9]。ムーアは登場人物の名前と説明を思い付いたが、その外見の詳細はギボンズに任せた。ギボンズは敢えてその場でキャラクターのデザインはせず、代わりに「手の空いた時にそれをやった。(中略)おそらくスケッチだけで2、3週間は掛かった」[4]。ギボンズは彼のキャラクター達を描き易いようにデザインした。ロールシャッハが一番お気に入りのキャラクターだったと、ギボンズは語っている。その理由は、「描かねばならないのは帽子だけだ。帽子さえ描ければ君にもロールシャッハは描ける。後はただ顔の輪郭を描いて黒インクの染みを何滴か垂らせば、それでロールシャッハの出来上がりだ」[10]

DCの読み切り作品『キャメロット3000』が原因で直面していた出版延期を避けようと、ムーアはすぐさま原作の執筆に着手した[11]。ムーアの述べる所によれば、第1話の原作を執筆していた時に、「私は6話分のプロットしか考えていなかった。我々は12話の作品を契約していたというのに!」。ムーアが考えた解決策は、物語の本筋と登場人物の過去の出来事を、各話で交互に扱うという物であった[12]。ムーアはギボンズに対して非常に詳細な原作を執筆した。ギボンズは回想している。「『ウォッチメン』第1話の原作は、行間のぎっしり詰まったタイプ原稿で101ページはあったと思う。各コマの説明の間に空行はなくて、各ページの間にさえ空行がなかった」[13]。原作を受け取ると、ギボンズはすぐに原稿にページ数を書き込んだ。「もし床に原稿を落としたりしたら、正しい順番に並べなおすのに2日はかかるだろうからね」。作中のセリフとキャプションや具体的な場面描写には、マーカーで印が付けられた。「マーカーで線を引く箇所を見極めるだけでも、ちょっとした一仕事だったよ」[13]。ムーアは詳細な原作を渡していたが、各コマの説明はしばしば「これは君の作画には向かないかもしれない。一番上手くいくやり方でやってくれ」という注意書きで終わっていた。それにも関わらず、ギボンズはムーアの指示を忠実に実行した[14]。ギボンズは『ウォッチメン』世界の視覚化にあたっては自ら能動的に取り組み、ムーア自身も後になるまで気付かなかったような、背景の細かい描写を多数挿入した[9]。ムーアは調査中の疑問や各話に含まれる引用文について尋ねるため、時おり漫画原作者仲間であるニール・ゲイマンと連絡を取った[12]

その意思にも関わらず、1986年11月に、ムーアは制作の遅れを認めざるを得なくなった。第5話がニューススタンドに並んでいる時に、ムーアはまだ第9話の原作を書いていた[13]。ギボンズは制作の遅れの最大の原因は、彼がムーアの原稿を受け取る時の「細切れの受け取り方」だったと述べている。ギボンズによれば制作チームのペースは第4話あたりから遅れがちになり、これ以降、徐々にギボンズはムーアから、「一度に数ページ分の原作しか渡されなくなった。3ページ分の原作をアランから受け取って作画し、それが終わりかけると、アランに電話して言う。『エサをくれ!』するとアランが次の2~3ページ分か、ひょっとしたら1ページ分、時によっては6ページ分の原作を送ってくる」[15]。締め切りが迫ると、ムーアはタクシーで50マイルを飛ばしてギボンズに原稿を届けた。後半の各話では、ギボンズは時間の節約のために妻と息子にワク線を引くのを手伝わせた[12]。オジマンディアスがロールシャッハの奇襲を防ぐ場面では、ギボンズがセリフを1ページに収め切れなかったため、ムーアはやむなくオジマンディアスによるナレーションを削った[16]

制作が終りに近付いた頃に、ムーアはこの作品が『アウター・リミッツ』の一エピソード「ゆがめられた世界統一」(原題:The Architects of Fear)に似通った物となりつつある事に気付いた[12]。ムーアとウェインは結末の変更について論争し、ムーアが勝利を収めたものの、最終話ではこのエピソードが本作に影響を与えている事を暗に認めている[14]


登場人物[編集]

ウォッチメンの主要登場人物は、1980年代初頭にDCがチャールトン・コミックから取得した一連のスーパーヒーローが原型となっている。原作者アラン・ムーアは主要人物を6通りの「反社会性」を表現するキャラクターとして創造し、そのいずれが最も道徳的に理解可能であるかの決定は読者に委ねている[9]

クライムバスターズ[編集]

コメディアン/エドワード・モーガン・ブレイク(The Comedian, Edward Morgan Blake)
合衆国の諜報部員として、キーン条例制定後も活動を認可されていたヒーロー。デビュー当時は暗黒街のギャングと殴り合っていたが、太平洋戦争、ベトナム戦争に従軍したことから政府に雇われ、イランアメリカ大使館人質事件などを瞬く間に解決するなど、各種工作を行っていた。本編中で明言はされていないがウォーターゲート事件を追跡していた記者を殺害し、ケネディ大統領を暗殺したのはコメディアンだと示唆されている。物語の冒頭で死亡するが、極めて重要なキャラクターである。
自らの暴力衝動を満たす為にヒーローとなるような過激で粗暴な人物である一方、信仰心が強く、神に許しを請うなどという矛盾した面も持ち、それ故に20世紀という時代のパロディとなることを選んだ。コバックス(ロールシャッハ)からは賞賛され、ヴェイト(オジマンディアス)からは狂気の時代に生きる知恵者、オスターマン(DR.マンハッタン)さえも興味深い人物と評した。かつて初代シルクスペクターことサリーをレイプしようとした事があり、この件によってローリーからは敵視されている。
当初は薄い布の道化師風コスチュームで活動し、任務中に負傷して以来、星条旗をアレンジした革製のボディアーマーを使用。顔はドミノマスクで隠していたが、ベトナムで顔面に傷を負ってからは革製の全頭マスクを着用するようになった。戦争従軍以降は主に銃火器を駆使して戦闘を行っている。
また、コスチューム変更後はスマイリーマークのバッジを愛用しており、コメディアンの血に汚れたスマイリーは、『ウォッチメン』という作品のシンボルとしても知られている。
コメディアンの原型となっているのは、チャールトン・コミックに登場する、平和の為なら暴力も厭わないという主義を持つスーパーヒーロー、ピースメーカー(Peacemaker)であり、更にマーベル・コミックのCIA諜報員ヒーローのニック・フューリーNick Fury)の要素が加えられている。ムーアとギボンズは、コメディアンを「巨体と怪力を与えられたジョージ・ゴードン・リディ的なキャラクター」と考えていた。[3]
ロールシャッハ/ウォルター・ジョゼフ・コバックス(Rorschach, Walter Joseph Kovacs)
違法に活動を続けている唯一のヒーロー。その行動は暴力的であり、少なくとも2件の殺人容疑が掛けられており、正当防衛の殺人が他にも5件はあるとされている。娼婦の息子として生まれ母親からは虐待を、周囲からは苛めを受けて育ったが、相手の少年二人に重傷を負わせたことで事態が発覚し、更生施設に入所することになる。出所後は縫製工場に勤務するようになるが、施設にいる間に憎悪していた母が殺害されてしまい、行き場を失った怒りをぶつける矛先として犯罪との戦いを開始した。直接のきっかけはキティ・ジェノヴィーズ事件である。
デビュー当初は比較的に理性を保っており、ドライバーグ(ナイトオウル)と協力してマフィアと戦っていたが、これは「ロールシャッハになったと思い込んでいるだけのコバックス」によるものだったと本人は語る。1975年に発生した少女誘拐事件へと介入した際、犯人が少女を殺害して犬に喰わせた事を知って人間に絶望した。狂気に陥り、コバックスから「ロールシャッハ」となった。
こうした経緯から、彼は世界それ自体を無意味と認識し、全てを善悪の二つで割り切る事で、辛うじて受け入れている。行方知れずの父親が愛国者であったことから、彼もまた右翼主義者であり、右翼系新聞『ニューフロンティアーズマン』を愛読。幼い頃の体験から性的行為を嫌う一方、幼い子供が泣くことだけは、どうしても我慢できない。良くも悪くも己の正義感に異常なまでに忠実で、その在り方はニーチェの提唱した精神的「超人」であるという。
トレンチコートソフト帽、白地に黒い模様がランダムに流動しているロールシャッハ・テストのような全頭マスクを着用。誘拐事件以降、コートのボタンと肩ベルトは引き千切られており、その精神の不安定さを表している。武器を持ち歩くことはないが、ガス圧でフックを発射するワイヤーガン(ダニエルの開発したもの)を携帯しており、これを攻撃に用いることがある。また常に手記を携帯しており、捜査状況や自警活動の内容を逐一記録している。
ムーアはスティーブ・ディッコの創造したミスターA(Mr. A)をロールシャッハの原型にした。鋼鉄のマスクに背広とフェドーラ帽を身に付けたミスターAは、自分の倫理観に過酷なまでに忠実なクライムファイター(=犯罪者退治専門のヒーロー)であり、彼が現場に残していく「善」の白と「悪」の黒に二分されたカードは、いかなる倫理的に灰色の領域も許さないというその信念を象徴している。「このスティーブ・ディッコの典型的なキャラクター――変な名前を持ち、「K」で始まる名字を持ち、奇妙なデザインのマスクを被っている――を再現しよう」と試みたとムーアは語っている[17]。ディッコがチャールトンで創造したキャラクターのクエスチョン(Question)も、ロールシャッハのモデルとして使われている。[3]コミック史研究家のブラッドフォード・W・ライトは、ロールシャッハの世界観とは「彼の名の由来となったインクの染みを用いた心理学テストの様に、黒と白は様々な形を取っても、決して灰色に交じり合う事がない」物だと述べている。ロールシャッハにとって世界は偶然に支配された場所であり、ライトによればこの世界観がロールシャッハに「『モラルの欠落した世界』へ思うがままに『自らデザインした模様を書き殴らせて』いる」理由だという[18]。ムーアは、第4話で彼の妥協に対する拒絶が彼に物語の結末を生きて迎えさせないであろう事に気付くまで、ロールシャッハの死を予想していなかった[9]
この作品の狂言回しキーパーソン的な役割を担い、読者の間では最も人気の高いキャラクターである。
Dr.マンハッタン/ジョナサン・オスターマン、ジョン(Doctor Manhattan, Jonathan "Jon" Osterman)
核実験に巻き込まれて全身を分解された後、自力で再構成して復活した世界唯一の超人。あらゆる原子を操作できる能力を持ち、自分の体験した過去・現在・未来の事象を同時に認識することが可能。 キーン条例制定後もベトナム戦争を勝利に導いた功績に加え、ソ連に対する抑止力、国防の要として活動が許可された。その技術によってアメリカの文明は大きく発展しており、完全無公害の電気自動車をはじめ、数々の新技術(現代を凌ぐほどの)が存在しており、これは他のヒーローの所持品などにも影響を及ぼしている(ロールシャッハのマスク、ナイトオウルの飛行船など)。
その一方、あまりにも特異な能力の影響を受けて、彼は徐々に人間性を喪失し、独自の価値観を構築していくようになるが、その事を周囲の人間には理解されていない為、孤立を深めている。結果、かつての恋人と別れ、現在はローリー(2代目シルクスペクター)と交際中だが、彼女との仲も悪化しつつある。
全身が水色をしており体毛・頭髪は一本もない。額に水素原子をモチーフにしたマークを描いている。デビュー当初は黒いボディスーツを着用していたが、年月を経るにつれて面積が減少。レオタード状、パンツ、ビキニパンツとなり、最終的には全裸となる。これは彼の人間性の喪失を示唆しているのだという。
Dr.マンハッタンの原型はチャールトンのキャプテン・アトム(Captain Atom)である。キャプテン・アトムはロケットの爆発事故で原子分解された事からスーパーパワーを手に入れたヒーローで、自分の持つ核エネルギーを周囲の人間に警告する原子マークのコスチュームを着用している。ムーアの原案では、キャプテン・アトムは核戦争の恐怖を体現するキャラクターであった[3]。しかしながら、ムーアはDr.マンハッタンに対しては、彼がキャプテン・アトムで考えていた時以上の、「量子力学的スーパーヒーロー」の要素を付け加えた。当時の他のスーパーヒーローが彼らのオリジンに対する科学考証を欠いていたのに対し、ムーアはDr.マンハッタンの構築に当たっては、原子核物理学量子力学に関する考証を試みた。ムーアは量子力学的宇宙に生きる登場人物は、遠近法的な視点で時間を知覚しないし、それは彼の人間関係の受け取り方に影響を及ぼすであろうと考えた。また、ムーアは『スタートレック』のスポックの様な無感情型キャラを創造するのは避けたいと望み、Dr,マンハッタンは「人間的な習慣」を残しており、そこから徐々に人間性を失っていくキャラクターにしようとした[9]。かつてギボンズは全身青色のキャラター、ローグ・トルーパー(Rogue Trooper)を創造した事があり、Dr.マンハッタンの皮膚の色調にはそのモチーフを色合いを違えて再利用しようと提案した。ムーアはその提案を採用し、ギボンズはコミックの色彩設計の中でDr.マンハッタンが取り分けユニークなキャラクターになったと語っている[19]。ムーアはDCが全裸の登場人物を許可するかどうか確信が持てず、Dr.マンハッタンの描写には苦心した事を回想している[20]。ギボンズはマンハッタンの全裸を上品に作画する事を試み、正面を描くタイミングを慎重に選択し、読者がすぐにはそれと気付かないような、ギリシャ彫刻風の、「慎み深い」男性器を彼に与えた[21]
1989年にサム・ハムが執筆した未採用の映画脚本では、ヴェイトの最終目的は過去のオスターマンを殺害し、Dr.マンハッタンの出現を防ぐことにあった。Dr,マンハッタンがヴェイトを殺害した時に歴史は変更され、オスターマンはDr,マンハッタンに変貌しない事になる[22][23]
ナイトオウル2世/ダニエル・ドライバーグ、ダン(Nite Owl II, Daniel "Dan" Dreiberg)
銀行家であった父の遺産で装備を整え、初代が引退すると同時に名前を襲名、デビューしたヒーロー。子供の頃から騎士物語やヒーローに憧れていたという。ステルス機能に加えて火炎放射器やミサイル、機関砲を搭載した飛行船オウルシップ・アーチー(作中世界では最も一般的な飛行移動手段である)、小型レーザー、ホバーバイク、各種防護服などを有している。キーン条例制定と共に引退し、現在はメイソンと語らう以外に楽しみを見出せないでいた。未だ情熱を抱き、それを押さえ込んでいた為にインポテンツでもあった。引退した現在でも、コバックス(ロールシャッハ)との間には奇妙な友情関係が続いている。
フクロウをモチーフにしたコスチュームとケープ、暗視ゴーグルを着用。ベルトには様々な装備品が収納されたポーチが備わっており、またリモコンを使ってアーチーを遠隔操作することなども可能。
ギボンズはドライバーグを「自分の趣味に過度に没頭する、漫画マニアの少年」だと考えていた[24]。ナイトオウル2世はチャールトンのブルービートル(Blue_Beetle_(Ted_Kord))ことテッド・コードを元にしたキャラクターである。コードは先代ブルービートルであるダン・ギャレットの遺志を受け継ぎ、二代目ブルービートルとして、昆虫型の飛行船を乗り回し、自ら発明した武器を手に戦うヒーローだった。正体が新人警官である先代のダン・ギャレットは、初代ナイトオウルであるホリス・メイソンのモデルにもなっている[3]。リチャード・レイノルズは自著『Super Heroes: A Modern Mythology』において、チャールトンへの由来にも関わらず、ナイトオウルの行動様式にはDCキャラクターのバットマンとより大きな共通点が見られると述べている[25]。ジェフ・クロックによれば、ドライバーグの普段の姿は「中年に達した性的不能のクラーク・ケントを連想させる」[26]
オジマンディアス/エイドリアン・ヴェイト(Ozymandias, Adrian Veidt)
大企業ヴェイト社の若き社長。卓越した頭脳を持ち、世界で最も賢い男と呼ばれる。また優れたアスリートでもあり、その身体能力は至近距離で発射された銃弾を素手で受け止めるのが可能なほど。かつてはアレキサンダー大王に憧れてユーラシア大陸を放浪し、やがて彼が失敗した事を悟ると今度はラムセス2世に学んだ。ヒーローネームの「オジマンディアス」は、ラムセス2世のギリシャ語名にちなんだものである。いくら犯罪と戦ったところで核戦争がおきたらどうしようもないという事実を、かつてブレイク(コメディアン)によって気付かされた事がある。キーン条例制定以前に人気を保ったまま引退した為、ヒーローの中では唯一、市民から賞賛されている人物でもあり、その知名度を活かしてヴェイト社を世界的企業にまで成長させた。
南極に巨大な秘密基地「カルバック」を保有している他、Dr.マンハッタンの発明品を実用化し、様々な研究へと投資することでアメリカを発展させている。この成果でもある遺伝子操作で生み出された猫科の動物ブバスティスを伴っており、これは現役時代には存在していなかったのだが、オジマンディアスのアニメなどでは共に活躍しているなど、彼のトレードマークとして認識されている。
金色のヘッドバンド、マント、胸飾りのついたチュニックというコスチュームを着用。現役時代はドミノマスクで顔を隠していたが、引退後にコスチュームを着る際には素顔のままである。
オジマンディアスはチャールトンのサンダーボルトことピーター・キャノン(Peter Cannon)を直接モデルにしている。ヒマラヤのラマ僧院で育てられたピーター・キャノンは古代の賢者の秘術を授けられたキャラクターであり、脳の全領域を使用することで肉体と精神を完全に活用できるようになったというその設定に、ムーアは感銘を受けていた[3]。「ヴェイトの最悪の罪の一つは、ある意味で残りの人類を見下し嘲笑していることなんだ」とギボンズは述べる[27]。2008年にヴェイトは『フォーブス』誌が選ぶ「架空の大富豪ベスト15」の第10位にランクインした[28]
二代目シルクスペクター/ローレル・ジェーン・ジュスペクツィク、ローリー(Silk Spectre II, Laurel Jane "Laurie" Juspeczyk)
初代シルクスペクターことサリーの娘であり、彼女によってヒーローとしての英才教育を施され、成長すると共にシルクスペクターの名を継いだ。しかしローリーはヒーロー活動に対して「親に押し付けられた」と反発しており、また母がブレイクを憎んでいない事に対して怒りを抱き続けている。引退した現在はオスターマン(DR.マンハッタン)の恋人として同棲中だが、彼の価値観を受け入れる事ができず、関係は悪化。その一方、自分を気遣ってくれるダニエルに心魅かれつつある。
黒色のボンデージのようなコスチュームに、透き通った黄色の上着、ハイヒールを着用する。
映画版においてはコスチュームが大きく異なり、黄色と黒のボンデージ風スーツに、長手袋、ロングブーツ。現役時代は、髪型もポニーテールに変えている。
彼女とDr.マンハッタンの関係は、キャプテン・アトムとその恋人ナイトシェイド(Nightshade)の関係に似ているが、他の主要人物とは異なり、シルクスペクターはチャールトンに特定のモデルキャラクターを持っていない。登場人物の中に女性ヒーローの必要性を感じたムーアは、ブラックカナリア(Black Canary)やファントムレディ(Phantom Lady)の様なアメリカンコミックのヒロインから着想を得てシルクスペクターを描いた[3]IGNで紹介されている2003年に書かれたデビッド・ヘイターによる映画『ウォッチメン』草稿では、ローリーの姓はジュピターであり、コードネームはスリングショットであった[29]

ミニッツメン[編集]

ナイトオウル1世/ホリス・メイソン(Nite Owl I, Hollis Mason)
1930年代に登場した最初期のヒーロー。正義感から警察官となり、コミックブック『スーパーマン』の影響を受けてヒーローとなった。後にフーデッド・ジャスティス、初代シルクスペクター、コメディアン、キャプテン・メトロポリス、ダラー・ビル、モスマン、シルエットらと共にチーム「ミニッツメン」の創立メンバーとなる。1960年代に「左フックだけではどうしようもない時代」だと悟って引退し、現在は自動車修理工場を経営している。彼の自伝『仮面の下で』は作中世界におけるヒーローについての、極めて重要な資料となっている。
現役時代は手足を自由にした革鎧と鎖帷子のコスチュームを着用。顔はドミノマスクで隠していた。コスチュームを作成する過程で様々な試行錯誤を繰り返しており、端的にウォッチメン世界のヒーローが如何に現実的で滑稽な存在かを象徴する人物でもある。
初代シルクスペクター/サリー・ジュピター(Silk Spectre, Sally Jupiter)
サリーは初めてヒーローの商業的価値を見出した女性であり、「ミニッツメン」の一員である。ブレイク(コメディアン)によるレイプ未遂や自身の結婚を機に引退し、娘にヒーローとしての英才教育を施し、彼女を二代目としてデビューさせた。引退した現在はカリフォルニアに移住し、静養中。過去の思い出に浸って生きており、またブレイクをどうしても憎めないのだという。往年の名女優などと並ぶ、かつてのセックスシンボルでもあり、現在でもまだファンがいるほどの人気を誇っていたようだ。
現役時代はローリーと同様、黄色と黒を基調としたコスチュームを着用していた。デビュー当初は化学知識によって作った爆弾を使っていたが、誤って火傷を負って以来、素手で戦うようになる。この火傷を隠すために片腕だけの長手袋を装着するようになると、事情を知らない市民からはよりエロティックだと評判になった。
フーデッド・ジャスティス(The Hooded Justice
1930年代、コミックブック『スーパーマン』の第一号発売とほぼ同時期に登場した、世界最初のヒーロー。「ミニッツメン」の一員。カップルを襲った暴漢を撃退する事でデビューし、更にスーパーマーケットを襲った強盗団をたった一人で鎮圧した事で「フードを被った正義」として一躍有名人なり、ヒーローブームを生み出す事になる。1950年代の共産主義者狩りの際、政府からの身分開示要請を拒否して失踪した。その正体は、HJ失踪と同時期に殺害されたサーカスの怪力男ロルフ・ミュラー。ただし偽名であった為、本名は不明。彼は移民系ドイツ人であり、反共産主義者。第二次世界大戦以前にはナチスを賞賛する発言もしていたという。コメディアンによるレイプ事件を阻止した事から、恨みを抱いていたコメディアンによって射殺された。実はゲイで極度のサディストでもあったらしく、キャプテン・メトロポリスとは恋人同士であったようだ。しかし彼の暴力的傾向から倦怠期に陥り、やがて破局した。
黒い全頭型のフードを被り、首にロープを巻き、赤いケープを纏っていた。デザインのモチーフは昔の処刑人か、或いはKKKではないかと思われる。
キャプテン・メトロポリス/ネルソン・ガードナー(Captain Metropolis, Nelson Gardner)
「ミニッツメン」の一員であり、その発起人。アメリカ軍海兵隊に所属していた経験から、より戦術的、戦略的な方法で犯罪と戦うべきだと考え、ヒーローの組織化を模索していた。「ミニッツメン」以降もその考えは変わらなかったようで、1966年には新世代のヒーローを集め「クライムバスターズ」というチームの結成を計画するも、失敗に終わった。カナダ空軍の訓練を受けつつ長年に渡ってヒーロー活動を継続するも、1974年に交通事故で死亡。
髪と口元の露出するマスクを着用。赤い航空服のようなコスチュームと、青いケープを纏っていた。
ダラー・ビル(The Dollar Bill
1940年、25才でデビューした愛国ヒーロー。「ミニッツメン」の一員。カンザスの花形運動選手であり、極めて純粋な善人であった為か、大手銀行のお抱えヒーローとして雇われる。しかしデザインを重視した実用性皆無のコスチュームだった為、1946年に銀行強盗を退治しようとした所、マントが回転ドアに挟まって動けなくなり、銀行強盗に至近距離から射殺されてしまった。
口元の露出する全頭マスクを着用。星条旗を思わせる青いスーツ、赤いマント、白い星といったコスチューム。胸には大きくドルマークが描かれている。
モスマン/バイロン・ルイス(The Mothman, Byron Lewis)
蛾のような格好をし、大口径の拳銃を駆使して戦うクライムファイター。「ミニッツメン」の一員。大富豪の御曹司であったが、ヒーローブームを知って暇潰しにヒーローとなった。私生活ではプレイボーイであったが、精神的にどこか不安定な所があり、1950年代の共産主義者狩りの際に行われた厳しい取調べでアルコール中毒へと陥ってしまう。その後、メイン州の精神病院に入院した。
蛾をモチーフにした派手な色彩のコスチュームを着用。背中には巨大な羽が備わっており、これで短距離ならば滑空することが可能だった。
シルエット/ウルスラ・ザント(The Silhouette, Ursula Zandt)
女性ヒーロー。「ミニッツメン」の一員。オーストリアの上流階級の出身で、ナチスの迫害から逃れてアメリカに移住。その出自から、フーデッド・ジャスティスとは仲が悪かった。チャイルドポルノの製作者を摘発するなどの活躍をしていたが、1946年にレズビアンであった事が発覚し、「ミニッツメン」のイメージを守る為にチームから放逐されると同時に引退。しかし6週間後、自宅をかつての宿敵リクイデイターに襲撃され、恋人もろとも殺害された。
胸元のあいた、黒いスーツのようなコスチュームを着用。腰には赤い帯を巻いていた。

ヴィラン[編集]

モーロック・ザ・ミスティック/エドガー・ジャコビ(Moloch The Mystic, Edgar William Jacobi)
かつての有名なヴィラン。
17歳でステージ・マジシャンとしてデビューした後、瞬く間に暗黒街の顔役にまでのし上がった。様々な悪事を働き、ヒーロー達とも幾度と無く対決したが、やがてドラッグや詐欺、売春クラブ経営などの平凡な犯罪者に落ちぶれていった。Dr.マンハッタンとも対決したが、最終的にはコメディアンによって逮捕され、懲役刑となる。出所後は犯罪から手を引き、「次元開発社」に勤務。定年退職した今は、小さなアパートでひっそりと暮らしているが、末期ガンを患っているという。
ステージ衣装のようなタキシードを着用。通常の人間に比べて、若干ながら耳が尖っている。
スクリーミング・スカル
40年代に暗躍したヴィラン。
初代ナイトオウルらと対決したが、最終的に逮捕され、刑務所で服役中に改心。宗教の道へと進み、結婚して子供を二人もうけた。現在はホリス・メイソンの近所に暮らしており、彼とは住所と電話番号を交換している。
骸骨の覆面とフードを着用していた。
キャプテン・アクシス
40年代に暗躍したヴィラン。
ナチスドイツのスパイであったらしいが、詳細は不明。ミニッツメンと対決し、最終的には初代ナイトオウルによって逮捕された模様。
胸に大きく鉤十字の入ったドイツの軍服を着用。原作では片眼鏡、映画版ではガスマスクを装備している。
スペースマン
40年代に登場したヴィラン。
詳細は不明。宇宙服のようなコスチュームを着込み、光線銃(との事だが、本物か否かは不明)を用いてミニッツメンと対決した。
モブスター
40年代に登場したヴィラン。
詳細は不明。様々なマスクを被った部下を、多数引き連れていた事は判明している。
往年のギャングスターのようなコスチュームであり、ドミノマスクを被っている。
キャプテン・カーネイジ
60年代に登場したヴィラン。
マゾヒストであり、ヒーローに殴ってもらうため、宝石店強盗などの犯罪を繰り返していた。最終的にはロールシャッハによってエレベーター・シャフトに投げ落とされたが、その生死は不明。
原作では会話中にしか登場しない為、コスチュームは不明。
トワイライト・レディ
60年代に登場した犯罪女王。
違法な売春やポルノなど性風俗関係の犯罪を繰り返しており、ナイトオウルII世との間にはロマンスもあったようだが、最終的に逮捕された。
SMの女王様めいたコスチュームと、バタフライマスクを着用。武器として鞭を装備している。
アンダー・ボス
60年代に登場した有名なギャング。ロールシャッハの宿敵。
下水道に拠点を構えていたようだが、ロールシャッハらによって壊滅。逮捕された。
ジミー・ザ・ギミック
60年代に登場したヴィラン。ロールシャッハの宿敵。
キング・オブ・スキン
60年代に登場したヴィラン。ロールシャッハの宿敵。

シンシン刑務所[編集]

ビッグフィギュア(Big figure, Big figure)
60年代に活動していた、有名な大物ギャング。
巨大な組織を持っていた事が示唆されているが、ロールシャッハおよびナイトオウルの活躍によって組織は壊滅し、彼もまた逮捕された。現在は終身刑となってシンシン刑務所に服役中だが囚人達を配下とし、比較的自由に振舞っている。
内心ではロールシャッハへの復讐を計画しており、そしてロールシャッハことウォルター・コバックスが逮捕、シンシン刑務所に収監された為、囚人の暴動を引き起こすことで復讐を実行に移したのだが……。
特段コスチュームなどは着用しておらず、本編でも囚人服を着用した姿しか登場しない。小人症を患っているらしく、通常の人間の半分ほどの背丈しかない。

ニューヨーク市警[編集]

スティーブ・ファイン
刑事。
ジョー・ボークン
刑事。スティーブの同僚。

ジーラ・フラット実験場[編集]

ジェイニー・スレーター
DR.マンハッタンの元恋人。
ミルトン・グラス
DR.マンハッタンの元上司
ウォリー・ウィーバー
DR.マンハッタンの元同僚。

ノヴァ・エクスプレス[編集]

ダグ・ロス
記者。

ニュー・フロンティアズマン[編集]

ヘクター・ゴッドフリー
編集長。
シーモア
編集者。

失踪者[編集]

マックス・ジュア
劇作家。
ハイラ・マニシュ
シュールリアリズム画家。
ロバート・デズテェインズ
超能力者。

アメリカ合衆国政府[編集]

リチャード・ニクソン
弟37代合衆国大統領。
ジェラルド・フォード
合衆国副大統領。
ヘンリー・キッシンジャー
合衆国国務長官。
ゴードン・リディ
大統領側近。

街の人々[編集]

バーナード
ニューススタンドの店主。
バーニィ
コミック『黒の船』を読む少年。
マルコム・ロング
ロールシャッハ担当の精神科医。
グロリア・ロング
マルコム医師の妻。
ハッピー・ハリー
場末の酒場のオーナー。
ジョーイ
プロメシアン・タクシーの運転手。
アライン
ジョーイの恋人。
マイロ
プロメシアン・タクシーのマネージャー。
ゴルディアン・ノット社の作業員
マイロの兄。
ダーフ
ストリートギャングのリーダー。

その他[編集]

ローレンス・シュクスナイダー
初代シルク・スペクターの元マネージャーで元夫。

ストーリー[編集]

1985年10月、ニューヨーク市民エドワード・ブレイクが殺害された。ウォルター・コバックス(ロールシャッハ)が、この事件を調査した結果、ブレイクが長年にわたり合衆国政府の特務機関員として活動していたヒーロー、コメディアンであったことが判明。ブレイク殺害はヒーロー狩りの第一段階だという仮説を立てたコバックスは、かつての相棒ダン・ドライバーグ(ナイトオウル二世)、大企業の社長であるエイドリアン・ヴェイト(オジマンディアス)、軍事研究所に暮らすジョン・オスターマン(Dr.マンハッタン)、その恋人であるローレル・ジェーン・ジュスペクツィク(二代目シルクスペクター)ら、他の4人のスーパーヒーローに警告を発してまわり、ブレイクの墓前で報復を誓う。

1977年に可決された覆面着用者による自警活動を禁止する、事実上のヒーロー廃止法であるキーン条例により、ヴェイト、ジュスペクツィク、ドライバーグは、犯罪者との戦いから退いて久しい。オスターマンは犯罪者との戦いからは退いているが、豊富な従軍経験によってエージェントとしての活動を許されていたブレイクと同様、その超人的頭脳と能力を独占したい合衆国政府により特務機関員として引退を免除されていた。またヴェイトは1975年に自発的に引退して自分の正体を公表し、その名声と知能を利用して莫大な個人資産を築き上げている。その一方でロールシャッハにアイデンティティを侵されたコバックスは、キーン条例を無視して非合法のヴィジランテ(自警団)活動を続けている。

『ウォッチメン』の世界は暗く暴力的であり、アメリカ合衆国とソビエト連邦は全面核戦争の瀬戸際にある。1959年の核物理学実験の事故により超人的な能力を持つDr.マンハッタンに変貌したオスターマンの存在で戦略的優位を得た合衆国は、ベトナム戦争を筆頭とする一連の紛争でソ連を打ち負かした。この戦力の不均衡によって世界的な緊張が高まりつつあり、核戦争への予感から、アメリカ社会には未来に対する宿命論的な諦観が広まっている。日々の生活に現れる、「メルトダウン」キャンディーから広島原爆投下に影響されたカップルの影絵の落書き放射性降下物シェルターの標識を付けられた多くの建物などにより、この諦観が象徴される。

オスターマンの人間性からの乖離を観察していたヴェイトは、軍拡競争と核汚染によって1990年代までに全世界的な破滅が到来するだろうという仮説を、早くも1966年には打ち立てていた。破滅を回避するための綿密な計画の一部としてキーン条例前に引退し財を築いたヴェイトは、過去にオスターマンと関わった2ダース以上の人間が有害な放射線によるを発病させているという情報を流し、オスターマンが癌の原因を彼自身と結び付けるように報道を操作することで、オスターマンを孤立させる事に成功。これらの癌についての疑いが公に暴露され、オスターマンは自分自身の人生を振り返るために火星へとテレポートする。オスターマンの失踪を好機と見たソビエトはアフガニスタンに侵攻し、世界情勢は悪化の一途を辿っていった。

またコバックスによって計画が暴露される事を警戒したヴェイトは、自らの暗殺事件を偽装する事で、コバックスのヒーロー狩りという誤った推測を後押しする。更には彼に、かつての悪役であるモーロック殺害の罪を着せて逮捕に追い込んだ。刑務所の中でコバックスは、襲撃してきた囚人に油を被せて殺傷。精神科医に自らの誕生経緯を語り「世界に意味なんてない」と言い放つ。そして油を浴びた囚人の死をきっかけに、刑務所で暴動が発生。コバックスに復讐しようと試みたギャング達を返り討ちにし、悠々と彼は牢屋から歩み出るのであった。

そしてコバックスの逮捕が、結果的にドライバーグが一連の事件を「ヒーロー狩り」と判断する原因となっていた。ナイトオウルとして復活した彼は、ジュスペクツィクと共にコバックスを刑務所から脱走させ、更には自宅を襲撃した警官隊からも逃れて調査を続行する。そしてジュスペクツィクはオスターマンによって火星へとテレポートさせられ、彼との対話の中で自分がかつて母を傷つけた男、ブレイクの娘である事を悟った。激昂する彼女に対しオスターマンは、そのような数奇な経緯によって誕生した彼女、ひいては地球上のに全人類を熱力学的奇跡であると評価。価値を見出した生命を守るべく、地球への帰還を決意する。

だが、世界の状況は刻一刻と悪化していた。新聞では連日のようにヒーローへの批判、核戦争の危険性などが書き立てられており、そういった影は社会に暮らす人々にも浸透していき、その日常にも亀裂が入っていく。刑務所から「梟の格好をした男」がコバックスを脱走させたと知った不良グループによって、初代ナイトオウルは惨殺されてしまう。そしてコバックスの狂気にあてられた精神科医、道端の新聞売りとコミックを立ち読みする少年、ブレイク殺害を追っていた刑事たちなど、今まで物語の端役として登場していた人物達がニューヨークの十字路に偶然集結した時、突然の爆発が彼らを襲った。

一方、核戦争勃発が数日以内に迫る中、事件の黒幕がヴェイトであると突き止めたコバックス、ドライバーグ、火星からテレポートしたジュスペクツィク、オスターマンは南極の隠れ家に潜むヴェイトと対決する。しかし、彼らに計画を食い止められる前にヴェイトは計画の最終段階を実行していた。遺伝子操作により生み出された巨大な怪物を、テレポーテーション装置を使ってニューヨーク市の中心部へ送り込み、その際に生じた爆発とサイキック・ショックウェーブにより、市民の半数を殺害したのだ。そしてサイキック・フラッシュの中には、全世界に怪物を宇宙人による侵略の第一段階と結び付けさせるためのイメージが埋め込まれていた。外世界からの侵略の脅威に直面したアメリカとソビエトは戦争から手を引き、この明白な、そして共通の脅威に対抗するために電撃的に和解する。世界に平和が訪れたのだ。

ブレイクはこの計画に接近しすぎたために、ヴェイト自身の手によって殺害されたのだった。ヴェイトは計画の秘密を守るために、計画の全貌を知らない多数の協力者や、腹心の部下をも抹殺していた。ヴェイト、ドライバーグ、ジュスペクツィク、コバックス、オスターマンのみが、総ての真実を知っている。ドライバーグ、ジュスペクツィク、オスターマンは、ヴェイトの計画を暴露して米ソ間の緊張が再び高まることを懸念し、世界の平和を護るためとしてこの事実を隠匿する事に同意する。しかし、コバックスは「世界が滅んでも絶対に妥協はしない」とこれを拒絶。オスターマンによって消滅させられた。そして「最後には私が正しかったのだ」と言うヴェイトに対して「最後など存在しない」と言い残し、オスターマンは新たに価値を見出した生命を作るべく、永久に地球を去る。

その後、世界平和が実現し、社会は日常を取り戻していた。母と和解したジュスペクツィクは、ドライバーグと二人で再びヒーロー活動を始める決心を固める。そして右翼雑誌『ニュー・フロンティアーズマン』誌の編集者は、編集長から穴埋め記事を作るように言われ、クランク・ファイルに手を伸ばす。実は南極でヴェイトと対峙する前に、コバックスは彼の抱いた疑惑を日記にまとめ、愛読していた『ニュー・フロンティアーズマン』誌に投稿していたのだ。その編集者はコバックスの日記を使うべきかどうか迷っており、編集長から恫喝され、「後はお前に任せたからな」という台詞で物語は終わる。

そして次のページでは十二時を示した、すなわち核戦争までの『残り時間』がゼロになった、あるいは核戦争の『可能性』がゼロになった、世界終末時計が、象徴的に描かれる。

書籍情報[編集]

脚注[編集]

  1. ^ http://www.toonopedia.com/watchmen.htm
  2. ^ a b c Eury, Michael; Giordano, Dick. Dick Giordano: Changing Comics, One Day at a Time. TwoMorrows Publishing, 2003. ISBN 1893905276, p124
  3. ^ a b c d e f g h Cooke, Jon B. "Alan Moore discusses the Charlton-Watchmen Connection". Comic Book Artist. August 2000. 2008年10月参照
  4. ^ a b c "A Portal to Another Dimension". The Comics Journal. July 1987.
  5. ^ a b c Jensen, Jeff. "Watchmen: An Oral History (2 of 6)". Entertainment Weekly. Oct 21, 2005. 2006年5月28日参照.
  6. ^ "Watching the Watchmen." TitanBooks.com. 2008. 2008年10月15日参照
  7. ^ Eury, Michael; Giordano, Dick. Dick Giordano: Changing Comics, One Day at a Time. TwoMorrows Publishing, 2003. ISBN 1893905276, p110
  8. ^ Kavanagh, Barry. "The Alan Moore Interview: Watchmen characters". Blather.net. October 17, 2000. 2008年10月14日参照
  9. ^ a b c d e Eno, Vincent; El Csawza. "Vincent Eno and El Csawza meet comics megastar Alan Moore". Strange Things Are Happening. May/June 1988.
  10. ^ "Illustrating Watchmen". WatchmenComicMovie.com. October 23, 2008. 2008年10月28日参照
  11. ^ Heintjes, Tom. "Alan Moore On (Just About) Everything". The Comics Journal. March 1986.
  12. ^ a b c d Jensen, Jeff. "Watchmen: An Oral History (3 of 6)". Entertainment Weekly. Oct 21, 2005. 2008年10月8日参照
  13. ^ a b c Stewart, Bhob. "Synchronicity and Symmetry". The Comics Journal. July 1987.
  14. ^ a b Amaya, Erik. "Len Wein: Watching the Watchmen". Comic Book Resources. September 30, 2008. 2008年10月3日参照
  15. ^ Stewart, Bhob. "Dave Gibbons: Pebbles in a Landscape". The Comics Journal. July 1987
  16. ^ Young, Thom. "Watching the Watchmen with Dave Gibbons: An Interview". Comics Bulletin. 2008. 2008年12月12日参照.
  17. ^ Stewart, Bhob. "Synchronicity and Symmetry". The Comics Journal. July 1987.
  18. ^ Wright, Bradford W. Comic Book Nation: The Transformation of Youth Culture in America. Johns Hopkins, 2001. ISBN 0-8018-7450-5, p272-73
  19. ^ "Watchmen Secrets Revealed". WatchmenComicMovie.com. November 3, 2008. 2008年11月5日参照
  20. ^ "A Portal to Another Dimension". The Comics Journal. July 1987.
  21. ^ Kallies, Christy. "Under the Hood: Dave Gibbons". SequentialTart.com. July 1999. 2008年10月12日参照
  22. ^ Daniel Manu (2008-10-16). "Alan Moore endorsed Watchmen Movie... in 1987". Television Without Pity. 2008年10月25日参照
  23. ^ Hughes, David (2002-04-22). "Who Watches the Watchmen? – How The Greatest Graphic Novel of Them All Confounded Hollywood". The Greatest Sci-Fi Movies Never Made. Chicago Review Press; updated and expanded edition Titan Books (2008). ISBN 1556524498; reissue ISBN 978-1845767556.
  24. ^ Gibbons, "Watchmen Round Table: Moore & Gibbons" in David Anthony Kraft's Comics Interview (1988), p. 47
  25. ^ Reynolds, Richard. Super Heroes: A Modern Mythology. B. T. Batsford Ltd, 1992. ISBN 0-7134-6560-3, p. 32
  26. ^ Klock, Geoff. How to Read Superhero Comics and Why. Continuum, 2002. ISBN 0-8264-1419-2, p. 66
  27. ^ "Talking With Dave Gibbons". WatchmenComicMovie.com. October 16, 2008. 2008年10月28日参照
  28. ^ Ewalt, David M. "The Forbes Fictional 15 No. 10 Veidt, Adrian". Forbes.com. December 18, 2008. 2009年1月17日参照
  29. ^ Stax. "The Stax Report: Script Review of Watchmen." IGN. September 9, 2004. 2009年3月5日参照

外部リンク[編集]