スポック

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スポックミスター・スポックSpock / Mr. Spock)は、『スタートレック』シリーズの登場人物である。演じたのは、映画シリーズ第3作第4作監督も務めたレナード・ニモイ映画シリーズ第11作以降では、この作品以降の世界のスポックをザカリー・クイントが演じており、ニモイも第10作目以前の世界のスポック[1]として出演している。

キャラクター[編集]

ヴァルカン人(地球人とのハーフ)のエンタープライズ号技術主任兼副長。その後、同艦長を経て、連邦艦隊退役後は父サレクと同じ大使の道に進む。さらにその後、ロミュランとヴァルカンの再統合運動をしていたが、ある事件をきっかけに過去にタイムワープ、その宇宙でヴァルカン星が失われたため、残されたヴァルカン民族再建のため働いている。

当初は厳格なヴァルカン人として振る舞い、地球人とのハーフであることや感情を指摘されることを嫌悪し拒絶していたが、カーク、マッコイらとの交流と経験を通じて、自分の人間性を肯定的に扱えるように成長し、人間が使うような詭弁や嘘を操る事もできるようになった。彼とは対照的に行動的なカーク、感情的なマッコイとは友情で結ばれ、任務におけるカークからの信頼は厚い。マッコイとは軽口を叩き合う関係である。

ヴァルカン人は感情を完全に抑制し表情に出さず、また正当防衛以外では他人に手をあげない非暴力主義者だと設定されている[2]。だが、パイロット版や第1シーズンにおいては設定が固まっておらず、スポックの喜怒哀楽や自分から暴力を振るうシーンが見られた。また、スポックに限らず、他のヴァルカン人でも時折、感情を表に出してしまう描写がある。(詳細はヴァルカン人を参照。)

口癖は「船長、それは非論理的です」、「魅惑的だ(片眉を上げながら)」[3]など。また、ヴァルカン式挨拶(ヴァルカン・サリュート)である「長寿と繁栄を(片手をあげて、第二第三指および第四第五指をそれぞれ着けた状態で、双方の間隔を空けて)」[4]を劇中で最初に行ったのもスポックである[5]

艦隊での認識番号はS179276ST。TOSでの階級は海軍少佐で、職務は一等航海士兼科学主任[6]。司令官用の金色の制服ではなく、科学・医療部門用の青の制服を着用する。[7]劇場版第1作と第2作の間[8]に艦長(大佐)に昇進していたが、その数十年後の設定である『新スタートレック』にはヴァルカン大使として登場した。

賞罰はバルカン星科学名誉勲章、武勇勲章、宇宙艦隊司令官賞2回授賞[9]

生い立ち[編集]

2230年にヴァルカン人の外交官のサレクを父に、地球人の科学者のアマンダを母とし、ヴァルカン星でヴァルカン人として育った。その出生は度々迫害の原因になり、自分の居場所を求める辛い少年時代を送ったようである。ヴァルカン科学者の最高権威であるヴァルカン科学アカデミーに合格するが、ハーフの自分への差別意識と排他性に反発して、史上初めてアカデミー入りを辞退したヴァルカン人となり、連邦艦隊を自分の居場所と定めて入隊した。この事件はその後、父サレクとの長い確執の原因となった。

他に肉親として異母兄のサイボックがいる。

歴代シリーズでの活躍[編集]

宇宙艦隊配属まで[編集]

2230年バルカン人の父・外交官のサレクと地球人の母・科学者のアマンダ・グレイソンとの間に生まれた(但しTOS第2話「光るめだま」では祖先が地球の女性と結婚したとも発言しており、初期には設定が固まっていなかったと見られる)。幼少時代をバルカン星で過ごし、バルカン人として育てられたため、感情表現を抑えることや論理を優先する考え方など、振る舞いは一見バルカン人そのものである。内面ではハーフであることへのコンプレックスがあったと見え、自らの地球人的な性向を否定する局面が随所で見られた。バルカンに婚約者がいたものの、彼女が破談を望んだ結果、彼女の代理人として指名されたカークと決闘する羽目に陥った事がある。その際、死亡したと思っていたカークの無事を知り、思わず満面の笑顔で「ジム!」と叫んでしまったが、すぐに我に返った(TOS第34話「バルカン星人の秘密」より)。

宇宙艦隊へ入るにあたり、自分と同じ道を歩むものと決めつけていたサレクに反目し、以後、エンタープライズでの任務中(TOS第44話「惑星オリオンの侵略」)に再会・和解するまで、18年間サレクとは会話しなかった。同エピソードでは父を尊び、母を敬う意外な「孝行息子」ぶりを披露し、侵入者の凶刃に倒れたカークに代わって艦の指揮を執っているとき、心臓病で倒れたサレクを救うために輸血をしてくれとアマンダに頼まれ、「輸血をするなら職務を放棄しなければならない。そんなことをしてお父さんは喜んでくれますか」と苦悩の色を見せた(この窮地は、カークが重傷をおし隠して艦長席に復帰したことで打開された)。子供の頃はセレットという猫ほどの大きさの熊を可愛がっており、5歳の時に友人から地球人との混血と言われ泣いた事がある。

『宇宙大作戦』の時代[編集]

『宇宙大作戦』製作初期には、とがった耳や皮膚の色などの「悪魔的な外見」や、テレビドラマにおいて異星人がレギュラーになった前例がない事などから、局側はレギュラーから外すよう求めた。しかしプロデューサーであるジーン・ロッデンベリーは、人類以外のキャラクターを置くことでエピソードをより発展させられると考え、スポックのキャラクターを残すこととした。

宇宙船エンタープライズ号の副長兼科学主任として、エンタープライズに配属されたのはカークより早く、当時の艦長はクリストファー・パイクだった。

カークたちに対しては彼なりに友情を抱いているらしいが、普段は地球人の感情に基づく言動を「非論理的」と否定している。特に感情的なドクター・マッコイとの意見対立、そしてカークによる調停はストーリーの定番であった。また、理論より実践肌のチャーリー技術主任との関係も微妙なものがあり、ミスター加藤ら他の幹部からも、尊敬されても敬愛されているとは言いがたかった。

とはいえ後に、軍規違反のリスクを冒してでも元上司のパイクをタロス4番星に送り届けるよう計画・実行したり、カークに気の利いた誕生祝いを贈るなど、きわめて人間的な思慮深さが行動の根底にある。

カークの許では副長として絶対的な信頼を得たのはよく知られる通り(小説「ファーストミッション」では、エンタープライズに赴任したばかりのカークに対し、パイクと比較して下に見る傾向にあったと描写されている)。一方、カーク不在の折には自ら指揮を取ることもあったが、その指揮ぶりは理性的すぎ、冷徹すぎ、完璧主義すぎる上に、部下にも理性と冷徹と完璧を要求する傾向が強く、時に非情で横暴に見えることもあり、指揮官としては部下の不評もあった。

第78話で過去にタイムスリップしたスポックはある女性と出会い(タイムスリップの影響で過去のバルカン人同様に感情に支配されていたため)激しい恋に落ちる。後に書かれたオリジナル小説のうち2作品に、この時できたとされる彼の息子ザールが登場するが、あくまで小説内のみでの設定である。

映画シリーズの時代[編集]

映画1作目
エンタープライズでの5年間の調査飛行の後、一端は艦隊を離れ、バルカンで感情を完全に捨て去る境地に至るコリナールの修行に入る。しかしヴィジャーの接近に伴う地球の危機を感知し、艦隊への拘りを捨てきれていない事を自覚、コリナールは達成直前で失敗に終わり、エンタープライズへ駆けつけて艦隊に復帰し、再びカークの許で副長兼科学主任を務める。ヴァルカン人にとって理想的な、完璧な知性を備えたヴィジャーが求めていたものが、実は人間性だった皮肉を笑い、コリナールの修行を打ち切った。
映画2作目
カークの後任として同号の艦長を務めている。ただしカークが同乗するときは、彼を最高指揮官とした。2285年、カーン・ノニエン・シンによるジェネシス装置自爆の際、単身、放射能で汚染されたエンジンルームの中に身を投じて機関を修理、エンタープライズの危機を救ったが、代償に命を落とす。遺体は宇宙葬にされたのち、ジェネシスの発動によって誕生した惑星に降下した。これはニモイが映画2作に出演する時「スポックを死なせること」が条件だったという風説があるが、TOSのDVD内の特典映像でレナードニモイ本人が明確に否定している。
映画3作目
生命を創造するジェネシスの影響で遺体の細胞が再生、子供として蘇生し、さらに惑星ジェネシスの急激な成長スピードの影響を受けて急激に成長。7年ごとのポン・ファーを短時間で数回も経験した。惑星を離れることで急速な成長は治まり、ヴァルカン星のセレヤ山での儀式(ファル・トア・パン)によって、前作の死の直前にレナード・マッコイに託していたカトラ(魂)との再融合を果たした。カトラの救済をカークに依頼したのは父サレクである。
映画4作目
バルカンでのリハビリテーションを経て、20世紀の地球へのタイムトラベルの間にカークらとの人間関係を完全に取り戻した。地球で再会した父サレクは、かつて艦隊への入隊を反対したことを自分の間違いだったと認め、完全に和解した。
映画5作目
2287年、エンタープライズを乗っ取った異母兄サイボックと対面する。サイボックの精神融合によるトラウマの暴露を使った洗脳術を跳ね除け、サイボックに今の自分が自己を確立し居場所を認識していることを語り、カークへの忠誠を守った。
映画6作目
2293年、連邦の特命全権公使として秘密裏にクリンゴン帝国との和平工作を進め、クリンゴンのゴルコン宰相との秘密交渉のエスコートにカークとエンタープライズAを推薦。クリンゴンを強く嫌悪するカークに「ニクソンだけが中国に行けた」と説得を行った。日本語字幕版では「タカ派のニクソンが中国に行った例もある」と意訳されているが、原語では「バルカンの金言に曰く……」と言っている。このミッションの時点で、カークと共に3ヶ月後に退役を控えていた。また、自らの後継者とも目していたヴァルカン人士官のヴァレリスには「論理は賢明であることの始まりだが終わりではない」と、彼らしい含蓄あるアドバイスをしている。その後、ゴルコン宰相謀殺の冤罪でカークとマッコイが流刑になると、エンタープライズA艦長としてその救出および真相究明に全力を尽くすが、その結果愛弟子ヴァレリスの裏切りを暴いて破滅させることとなり、論理と自らの限界を思い知らされた。

『新スタートレック』の時代[編集]

その後は提督への昇進記録はなく、艦隊を辞して父と同じく外交の道に進む。『新スタートレック』では惑星連邦の大使として登場。バルカン人とロミュラン人の再統一を目指してロミュラス星で活動する姿、そしてかつてのカーク以上の独断専行ぶりが描かれた。ベンダイ症候群で苦しんだサレクの死に目には会えなかったが、臨終の場に居合わせたピカードとの精神融合を通して、ロミュラスで亡き父のカトラに触れることができた。

映画11作目の時代[編集]

映画11作目
超新星の影響で惑星ロミュラスが消滅し、ロミュラン人のほとんどが消滅するという事件が「現代(新スタートレックから続く時代)」で起きたことがスポックによって語られる。超新星の影響を阻止しようとしたスポック大使の作戦は失敗し、生き残ったロミュラン人の一派がそれを恨んで、TOSの時代の直前にタイムトラベル。惑星ヴァルカンを消滅させるという復讐が果たされてしまう。その並行宇宙のヴァルカン政府要人は父サレックを含めエンタープライズに救助されるが、母アマンダはヴァルカンと運命を共にしてしまう。
一方、その宇宙の若きスポックは連邦中佐で、パイク艦長の元でエンタープライズ副長の地位にあり、ウフーラとは交際関係。また、コバヤシマル・テストを作成したのも彼である。向こう見ずなカークに当初は批判的で、エンタープライズから氷の惑星に追放するなど過激な対応をすることもあったが、次第に互いを理解し、連携していく。
スポック大使はエンタープライズから追放された若きカークと邂逅、精神融合で事件の全貌を伝え、さらにスコッティとも出会い、カークに若きスポックからエンタープライズの指揮権を取り返すためのアドバイスをすると、この時代にはないトランスワープ理論で改造した転送装置で、ふたりをワープ中のエンタープライズに転送した。事件解決後、若きスポックもスポック大使と邂逅を果たす。スポック大使は若きスポックに、ヴァルカンの再建は自分に任せて艦隊に残るよう要請、カークとの友情の大切さを説き、「幸運を」と言い残した。

映画12作目の時代[編集]

映画12作目
本作の悪役であるハリソン中佐の正体「カーン」なる人物について、若きスポックはスポック・プライムに問い合わせる。スポック・プライムは、カーン・ノニエン・シンはエンタープライズが遭遇した最強・最悪の脅威であり、その打倒に犠牲を払ったと忠告する。ハリソン中佐のテロによりエンタープライズの先代艦長クリストファー・パイクが死亡したばかりか、彼の宇宙戦艦からの攻撃でメインコアが停止したエンタープライズは地球へと墜落する。カークが放射能が充満した機関室に突入してメインコアを修復して船を救ったものの、被曝したカークは命を落としてしまう。激情に駆られたスポックはヴァルカンの掟も冷静さもかなぐり捨てて単身ハリソンを追跡。危うく返り討ちにされかけるが、間一髪でウフーラに救われた。この事件の後、カーンの血清で蘇ったカーク艦長の許、エンタープライズ副長として前例のない5年間の宇宙探査に出発した。

 

ネーミング[編集]

「スポック」というのは本名ではない。正統なバルカン名は地球人には発音できないとされるため、付けられた呼び名である。また苗字は脚本家D・C・フォンタナが、無理にアルファベット表記すると "XTMPRSQZNTWLFB!" である、としている。

演じた俳優と声優[編集]

俳優[編集]

当初、マーティン・ランドーにオファーされていたが、役柄がランドー自身のキャラクターに合わないとして断られ、ニモイにオファーされた。その後ランドーは『スパイ大作戦』のローラン・ハンド役で出演したが、そこでもニモイは出演料などの契約の食い違いで降板したランドーの後を継いで、グレート・パリス役で『スパイ大作戦』に2年間出演した。

日本語版吹き替え[編集]

久松保夫(宇宙大作戦)、瑳川哲朗(映画第1作)ほか。

ディープ・スペース・ナイン(DS9)』第104話「伝説の時空へ」にも再登場するが、これはシスコらが『宇宙大作戦』43話「新種クアドロトリティケール」の過去に行ったという設定で、当時の映像の編集・合成。声は原語版では俳優本人が声を演て、吹き替えではカーク役の矢島とウフーラ役の松島のみオリジナルと同じ。

脚注[編集]

  1. ^ 映画シリーズ第11作『スター・トレック』のエンドロールでは、クイントのスポックと区別するため、ニモイの役は「Spock Prime(スポック・プライム)」となっている。
  2. ^ 「暴力的でないヴァルカン人が肉弾戦に参加するのは不自然だ」というレナード・ニモイの提案によって ヴァルカン・アタック(Vulcan pinch)の設定ができた。よく「Vulcan death pinch」と呼ばれることがあるが、劇中にはそのような技は存在しない。
  3. ^ 英語では「Fascinating.」。
  4. ^ 2009年版『スター・トレック』で若き日のスポックを演じたザカリー・クイントは、役を引き受けた時点ではヴァルカン式挨拶ができなかったため、『HEROES』で共演中だったマシ・オカにコーチしてもらった。
  5. ^ これらの台詞や仕草は、『スタートレックII カーンの逆襲』や『スタートレック:ヴォイジャー』などに登場する他のヴァルカン人たちにも見られる。なお、『FRINGE』の第3シーズンで、オリビアがウィリアム・ベル(レナード・ニモイのキャラクター)に憑依された際、片眉を上げるシーンがある。
  6. ^ 宇宙大作戦』第15話『宇宙軍法会議』より。
  7. ^ 但し、セカンドパイロット版である『光るめだま(原題:Where No Man Has Gone Before)』においては司令部門の金色の制服を着用している。同エピソードでは後の操舵主任となるヒカル・スールーも初登場しているが、物理学者として着任しているため科学部門の青制服である。
  8. ^ スタートレックエンサイクロペディア』によると、劇場版第1作は西暦2271年、同第2作は西暦2286年の出来事とされている。
  9. ^ 宇宙大作戦』第15話『宇宙軍法会議』より。

関連項目[編集]