Mary Sue

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メアリー・スー(Mary Sue)とは、二次創作における用語の1つ。二次創作に登場する、原作キャラクターよりも格段に優秀なオリジナルキャラクターを総称した言葉。

概要[編集]

メアリー・スーは言わば、作り手や受け手の「このような境遇になりたい」という感情が込められたオリジナルキャラクターを指す(このような人になりたい、ではない)[1]。原作のストーリー世界観やキャラクターの性格設定を根本的に破綻させる存在だが、単に場を乱すキャラクター(トラブルメーカートリックスター)とは異なる。他のキャラクターよりも英雄的な活躍をし、自分一人であらゆることをやってのけ、なんでも解決する。その万能性は、物語の終盤でデウス・エクス・マキナとしても機能し得るが、その段階にすら至らず、物語が未完のまま放置されることも少なくない。

「メアリー・スー」という呼称は、二次創作に登場するオリジナルキャラクターの全てを指すものではなく、自己愛的な[2]オリジナルキャラクター[3]に対してのみ使われる。

語源[編集]

メアリー・スーとは、1973年に出版されたファンジン『Menagerie』2号に掲載されたポーラ・スミス(Paula Smith)[4]による『スタートレック』の二次創作小説「A Trekkie's Tale」に登場するオリジナルヒロイン、メアリー・スー大尉(作中の描写によれば「…艦隊で最年少の大尉であり…年はまだ15歳と半年」)の名前から取られた[5][6]。この小説自体、当時のファンたちが書いていた二次創作小説に登場しがちな、非現実的で思春期の少年少女の願望を具現化したようなオリジナルキャラクター(艦隊でも最年少かつ最優秀で、原作に登場するクルーらから尊敬や愛をよせられ、しかも驚くような能力を持ち、死ぬときは劇的に死んで全員が悲しみに包まれる)[5]を揶揄した小説だった。メアリー・スーはその後、自分を投影したオリジナルキャラクター一般や、極度に理想化されたキャラクター、そういうキャラクターが登場するファン・フィクション自体のことも呼ぶようになり[要出典]、二次創作作品に限らず原作に登場する同種のキャラクターに対しても呼ばれる(例えば後述するウェスリー・クラッシャー)ようになるなど適用範囲が拡大した。メアリー・スーが男性キャラクターである場合は「Marty Stu」、「Gary Stu」、「Gary Sue」などという[7]が、日本ではまず用いられない[4]

日本ではドリーム小説との関連性を指摘されることがあるが、必ずしもドリーム小説に登場するオリジナルキャラクターのみと限定されるものではない。

欧米の二次創作の場ではオリジナルキャラクターの登場自体が嫌われ、二次創作小説の投稿を受け付けるサイトでも「Mary Sueお断り」と明記していることがしばしばある。

メアリー・スーの例[編集]

原作改変メアリー
原作に出て来る登場人物が、作り手にとって都合のいい別人に改変されたり、原作の世界と全く別の異世界で活躍したり、人間関係などが違う状況に置かれたりする。例えば原作では恋愛関係にあるキャラクターが消えて、そのオリジナルキャラクターと主人公が恋愛関係にある場合、その主人公も含めキャラクターはメアリー・スーであるといえる。原作のキャラクターとしてではなく、作り手や受け手の願望充足の道具として極端に理想化された状態。しばしば悲劇的過去などオリジナルキャラクターのメアリ・スーと同じ特徴が加わっている。
例としては二次創作のパロディ作品や、やおいなどのカップリング、ドリーム小説のクロスオーバー作品やトリップ系の作品、極端に言えば二次創作全般に通じる型。
恋愛対象メアリー
作者及びメアリー・スーの恋愛対象として理想化された既存の登場人物のこと。二次創作ではないが、少年漫画ラブコメディ作品やいわゆるハーレムアニメに登場するヒロインがそれに類似している。乙女ゲームに関しても言うことができる。俗に言う「萌え」の対象となるキャラクターであり、二次創作のカップリングにも通じる型である。
男性メアリー
基本的には男性版メアリ・スーのこと。「マーティー・ストゥー(Marty Stu)」「ゲイリー・ストゥー(Gary Stu)」「ゲイリー・スー(Gary Sue)」などと呼称される。女性キャラクターの場合と同等に問題視されることが多い。
作者登場
作者本人が作者として登場するパターン。推理小説などに多い。
メアリー・スーの極端で露骨な例。二次創作の場では特にメアリーの性質が現れるため、欧米のファン・フィクションサイトでは嫌われる。
アンチ・メアリー
メアリ・スーとは逆に極端に醜かったり原作に登場するキャラクターよりも格段に無能だったりするオリジナルキャラクター。当然原作のキャラクターからは嫌われる。一種のギャグ。
悪役メアリー
アンチ・メアリーからの派生。ただしギャグではなく原作の敵役に成り代わり、原作の敵や主人公側までをも倒す最強のキャラクター。
その圧倒的な強さから原作の世界観を崩壊させる。たいてい暗い過去や自殺願望を持ったキャラクターとして描かれ、話の途中で改心し主人公の味方になるパターンもある。しかし改心などせず暇、退屈、面白そうだからなどの理由で主人公・敵側につくこともある。ライバルキャラクターのように主人公と対等な力関係や、友情関係などはほとんどない。陰鬱・陰惨なストーリー展開がなされる。
家族メアリー
原作に言及のない家族の一員として登場するオリジナルキャラクター。
欧米のファンフィクションではこの傾向が特に強く、たいてい作者の名前がついており、家族とされる原作のキャラクターと恋に落ちることもある(近親相姦)。

日本国内外での評価[編集]

メジャー作品では『新スタートレック』のキャラクターである、ウェスリー・クラッシャーが、原作者の名前を使っているため、最悪のメアリー・スーだと言われることもある[8][9][10](そのせいか、ウェスリーの劇中での出番は意外に少なく、第四シーズンで完全に降板した)。なお女性のメアリー・スーはセクシーでかわいらしいという特徴があり、主に恋愛対象型や原作改竄型のメアリーであることが多い一方、男性のメアリー・スーの性格は女性とは対照的に軟派あるいは気が強く、不良っぽいファッション・ヘアスタイルをしていることが多く、タイプも悪役型メアリーが多いとする指摘も海外ではある。

なお、あるキャラクターがファンや作者から過度な感情移入、自己投影をされている、他のキャラクターとはまた違う愛着を持たれている、といったことだけではそのキャラクターはメアリー・スーではない。そういった感情から新たに作られたり、原作キャラクターが変貌させられた存在がメアリー・スーだからである。なお、Mary Sue テスト : FAQ[11]によれば「自己投影がダメだと言っているのではない。全然自己が投影されていないのに、それが自己投影だと思ってしまっているところが問題なのだ。それは「自己の投影」ではなく、「自己の願望の投影」ではないのか?本気で小説の主人公に自己を投影させるなら、他人には決して見せたくない部分を書け。「自分のこういうところを皆に見てほしい」と思っていることは書くな」とのこと。

脚注[編集]

  1. ^ 「iwatamの個人サーバ」における「Mary Sueテスト」
  2. ^ なお、ここで言う「自己愛」はあくまでも実際の人間から物語のキャラクターに対しての態度や扱いを指すため、キャラクター自身が自画自賛・自己愛的であってもそれはメアリー・スーではない。
  3. ^ 下の原作改変メアリーにおける改変された原作のキャラクターを含む。
  4. ^ a b http://tinyangel.jog.client.jp/Misc/MarySue.html
  5. ^ a b Smith, Paula, A TREKKIE'S TALE, http://books.google.com/books?id=V81wCQ_4BiwC&pg=PA15&lpg=PA15&dq=a+trekkie's+tale+paula+smith&source=web&ots=yTmGDQRgTu&sig=VYd5H1K66REshTlrSw1MNd4QLak 
  6. ^ SF Citations for OED: Mary Sue”. 2006年5月20日閲覧。
  7. ^ http://missy.reimer.com/library/marysue.html
  8. ^ Pat Pflieger, 150 Years Of Mary Sue. Presented at the American Culture Association conference, March 31, 1999, San Diego, CA. Webpage found 2008-10-16.
  9. ^ Pat Pflieger (2001). TOO GOOD TO BE TRUE: 150 YEARS OF MARY SUE. 3. Presented at the American Culture Association conference. http://interalia.org/filestore/single_pages/MARYSUE.HTM 2007年1月15日閲覧。. 
  10. ^ Wil Wheaton. “Star Trek: The Next Generation: Justice”. TV Squad. 2008年11月18日閲覧。
  11. ^ http://iwatam-server.sakura.ne.jp/column/marysue/faq.html

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]