ラーズ・アル・グール

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ラーズ・アル・グールRa's al Ghul)は、アメリカンコミック『バットマン』に登場する悪役の一人。本名不詳。

人物[編集]

原作コミック[編集]

1971年登場。メジャーな悪役の中では後発の部類に入る。名は「悪魔の頭」のアラビア語より。デニス・オニール、ニール・アダムスという、70年代のシリアスな作風のバットマンを製作した作家チームにより創造された。
環境テロリスト集団デーモン、および実行部隊リーグ・オブ・アサシンのリーダー。秘泉ラザラス・ピットを利用することで、数世紀を生き永らえてきた不死身の魔人である。地球環境の完全な調和が目的で、人類をそのための障害と見なし、大量殺戮を計画する。科学医学錬金術に造詣が深く、剣の達人でもある。左右がはねた髪型に、あごの左右に生やした髭、緑系統のマントが特徴。
初登場時、バットマンの正体を推理によって看破した。常にバットマンを「探偵Detective)」と呼び、彼の高い能力を見込んで後継者にしようと幾度も画策。悪党たちを連携させ、多発犯罪を引き起こし、人間社会を守ることに絶望させようとしたり、致命的なウィルスクレンチをばら撒くなど、その犯罪のスケールは随一である。またJLAメンバー暴走時のために、バットマンが密かに調べていたメンバーの弱点を盗み出し操った。その後バットマンのこうした計画はメンバーに暴露され、彼のチーム内での立場を悪くもしている。
6、7世紀に遊牧民の子としてアラビアで生まれた。医者となり、ソーラという妻を持つ。ラザラス・ピットを発見し、ある王子をそれで蘇生させるが、その王子に妻を殺された上、王に罪を負わされ死刑にされかける。脱出後、ウィルスを用いて王族を殺害、自らの部族を率いて都市を壊滅させる。その後、各地を巡りながら知恵と富を蓄え、テロ組織デーモンを設立した。近年、実の娘ナイッサに殺害されたが、自らの死すら、娘たちの後継者意識を呼び覚ます計略として用いていた節がある。その遺体は復活しないようにバットマン監視のもと火葬にされた。が、アメリカンコミックの世界では、設定変更、死者蘇生は珍しいことではないため、再登場も囁かれている。

関連人物[編集]

  • ウブー(Ubu)
ラーズのボディーガード。組織で最も腕の立つ者に与えられる称号。頭を剃ったものが多い。バットマンを破ったことのある敵の一人、ベインも一時これを勤めており、ラーズは彼を後継者にしようとしていた。『バットマン・ビギンズ』に登場したラーズの影武者たちはデザイン的にはウブーに近い。
  • ナイッサ(Nyssa Raatko)
18世紀にロシアで生まれたラーズの長女。母親に育てられ、自力で父親を突き止め、ラーズの部下となるが、決別。それを不服としたラーズの差し金で、第二次世界大戦中に強制収容所送りになり、家族を失い、復讐を誓う。タリアを洗脳し、ラーズを殺害した。しかし、それさえもラーズの後継者を求める意思には勝てず、結局タリアと共にデーモンを率いることとなる。
後の『OneYearLater』の時期には元バットガールであるカサンドラ・ケインに殺害され、リーグ・オブ・アサシンを奪われる。
  • タリア(Talia al Ghul/Talia Head)
ラーズに先行して登場した娘。バットマンと恋に落ちるが、父の呪縛、バットマンの使命感もあり破局。破局後は、スーパーマンの宿敵レックス・ルーサーの合衆国大統領就任時、彼の会社ルーサーコープのCPOに就任(経済界から大統領は距離を取らねばならないためスカウトされたもの)。だが、後にウェイン財団に売却。陰ながらバットマンに協力していた。後に実姉ナイッサに洗脳され、彼女と共にラーズに代わりデーモンを率いる。ナイッサが死んだ後は、リーグ・オブ・アサシンを除く組織の後継者となった。長らく後継者として鍛えられたこともあり、格闘能力も高い。
ブルースとの間に息子をもうけているが、ブルースはこのことを知らない。一時設定変更のあおりを受け、その存在を抹消されていたが、近年ダミアン・ウェイン(Damian Wayne)の名で登場(未来を描いた作品では、成長した後イブン・アル・ズファッシュ(Ibn al Xu'ffasch)の名で呼ばれている。これは「コウモリの息子」の意味である)。
ダークナイト ライジングにも登場。ラーズの遺志とバットマンへの復讐に燃え、ベインと共にゴッサムシティ壊滅を目論むが、バットマンの捨て身の行動で阻止された。
  • ヘレティック(The Heretic)…2012年6月"Batman and Robin 12"初登場
名の意味は「異教徒」。ブルースがタリアの理想を理解する事を拒み、ダミアンはロビンとなりタリアの「息子を新たなバットマンにする」計画はぱあになる。タリアはダミアンのクローン:ヘレティックを産みだしバットマンにしようとする。ヘレティックはタリアの命令を待たずダミアンを殺し、「観察力・理解力・演繹力は十分自分にある。自分こそがバットマンでゴッサムは自らの物だ」と主張。タリアはヘレティックの首を切り落とし、体を爆弾でゴッサム・タワーもろとも爆破する。

用語[編集]

  • ラザラス・ピット
地球の磁場などにより自然発生する一種のホットスポットで、細胞の活性化効果(若返り)をもたらす泉。浸かった後に、一時的な精神異常をきたす副作用がある。泉一つにつき一度しか使用できず、また数に限りがあるため、ラーズ及び血縁者しか使用を許されない。リドラーは、自らの病気を治療する目的でこれを勝手に使用し、組織の追撃を受けた。
また死者の再生も可能で、特殊な能力を備える事もあるが、この場合だと大幅に人格に変容をきたしてしまう危険性がある。ラーズと取引を行ったミスター・フリーズは、愛妻であるノーラを生き返らせる為に使用したが、炎を自由に扱う猛々しく凶暴な能力者、ラザーラ(Lazara)に変貌してしまい、皮肉にも愛する夫である筈のフリーズを憎む対象としてしか見なさなくなってしまう。2代目ロビンことジェイソンも、ジョーカーに爆殺された後、これによって蘇ったが、精神が醜く歪んでしまい、犯罪のみならずバットマンやナイトウイング、現在のロビンをも憎悪する凶悪なバウンティハンター、2代目レッド・フードとなってしまった。

実写映画[編集]

『バットマン ビギンズ』[編集]

世界の秩序を回復しようとするテロ集団、「影の同盟(League of Shadows)」の首領として登場。ヒマラヤ奥地の本部に潜む。メンバーは厳しい戦闘訓練を受けた、忍者部隊である。何処の言葉か分からない言語を話す。高僧のような風格で、剣の達人。ブルースの反逆により、アジト壊滅と運命を共にした。
作品進行当初にラーズ・アル・グールとされた人物(後に影武者と判明)を演じたのは渡辺謙。バットマン映画の敵役は常に大物俳優が演じるため、公開前は非常に注目されたが、とても短い役であった。なお奇妙な言語は、渡辺が響きを重視して考案したものである。なお渡辺は洋画出演の際は日本語吹き替えも兼任することが多いが、本作では担当しておらず、本作のビデオ版では大川透、日本テレビ版では緒方文興がそれぞれ充てている。
本作、もう一人の重要人物がヘンリー・デュカード(Henri Ducard)である。ラーズの下「影の同盟」を指揮する。世界を放浪していたブルースをスカウトし、体術、戦闘術を指南した師にあたる。アジト壊滅の際、ブルースによって救われていたが、後にブルースがウェイン邸で開いていたパーティーに真の黒幕(影武者を代替わりさせることで不死を演出していた)即ち本物のラーズ・アル・グールとして現れる。世界の腐敗を憂い、文明社会に大打撃を与えるべく、ゴッサム・シティを数十年前から腐敗都市となるよう裏で画策していたことを語り、ブルースを圧倒する。さらに「これからウェイン邸に火を放ち、お前を殺す。招待客を巻き込みたくないなら適当な悪口でも言って追い出せ」と脅迫し、ブルースは酔って暴言を吐く芝居をして客を帰らせるが、直後にデュカードの部下がブルースを殴って気絶させる。そしてウェイン邸に放火するがアルフレッドの機転によってブルースは助かった。精神ガスを水道に混入させ、指向性マイクロ波放射装置でそれを気化させ、街中をパニックに陥れる。最後はバットマンに敗れ、死を受け入れたかのような表情をしながら墜落するモノレールと運命を共にした。この時バットマンは命を助けたデュカードから恩を仇で返され、故郷のゴッサム・シティを弄ばれた恨みから当時既に犯罪者であっても殺人を犯さぬとルールを決めていたにもかかわらず、「お前を殺す気はない、だが救う気もない」と言い放ってから、自分はモノレールから脱出するが、デュカードは確実に死ぬと計算した上で放置した。ヘンリー・デュカードを演じたのはリーアム・ニーソン
なお、ヘンリー・デュカードは元はコミックの登場人物であり、アニメ版にも登場している。ティム・バートン版の『バットマン』(第一作)の脚本家サム・ハムにより創造されたパリの刑事。かつてブルースを鍛えた道徳観念の薄い人物で、三代目ロビンも指導したことがある。

『ダークナイト ライジング』[編集]

本作ではラーズの過去とその遺志を継ぐ者が登場し、ゴッサムを破滅へと追い込む事になる。またラーズ本人ではないが、奈落へ落とされたブルースの前に幻覚として現れ、その際自身を「不死身」と称していた。

テレビアニメ[編集]

『バットマン』シリーズ[編集]

原作初登場時のエピソードをなぞる形で、娘タリアと共に登場した。ただタリアは常に父親に忠実であり、原作ほどの葛藤はしていない。なお本シリーズにおいてはレイシュ・アル・グルと呼ばれている。
声優はデビッド・ワーナー。日本語版は田中正彦。タリアはヘレン・スレイターが担当。日本語版は沢海陽子(『スーパーマン』ゲスト登場時はオリビア・ハッセー 。日本語版は浅川悠)が演じた。

『バットマン・ザ・フューチャー』[編集]

死亡したはずのレイシュが登場。タリアの肉体を乗っ取ることで再生したものである。

『スーパーマン』[編集]

ラザラス・ピットの泉に漬かっても若返ることが出来なくなった影響で老化が進み、死を待つ状態になってしまう。
生き延びる為、スーパーマンのパワーを奪おうと企む。

『バットマン:ブレイブ&ボールド』[編集]

本作でもレイシュ・アル・グールという名で登場。
タリア・ウブーらを率いて暗躍するが、タリアに対しては「優秀だが、女を後継者にすることはできない」と公言するなどかなり冷淡。一方のタリアは父の後を継ぐことを目標としているが、父に反逆しようとまでは思っていない。