新交通システム

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新交通システム(しんこうつうシステム)とは、日本における都市型の中量軌道輸送システムのうち[1]、路面交通の影響を受けないなど従来とは異なる交通システム全般を指す概念である[† 1]。具体例としてAGT(Automated Guideway Transit 自動案内軌条式旅客輸送システム)/APM(Automated People Mover 全自動無人運転車両)・モノレールHSSTガイドウェイバスなどの形態を指す[2]。ただし狭義には日本におけるAGTそのものを指す用例も多く[3][4][5][† 2]、概念の混乱が生じている。

本稿では併せて、フランスで開発されたAGTに近いシステムであるVALや、世界の空港内移動路線についても触れる。

新交通システムの概要[編集]

日本における新交通システムの概念はAGTモノレールHSSTスカイレールガイドウェイバス、次世代型路面電車(LRT)・リニア地下鉄動く歩道・従来とは異なるバス運行システムなどもさすが[6]、決まった定義はない。

路線の一般道などとの立体交差・自動運転・無人運転のシステムが多く、このうちAGTとモノレールが現在最も普及している。AGTは1981年神戸ポートアイランドで初めて無人運転の営業路線として導入された(神戸新交通ポートアイランド線)。新交通システム・都市モノレール等の事業者は、補助金交付などの関係から第三セクター鉄道会社あるいは地方公営企業交通局)といった公的組織が多く、純民間企業による路線は、モノレールの東京モノレール羽田空港線舞浜リゾートラインディズニーリゾートラインの2路線と、AGTの山万ユーカリが丘線西武山口線の2路線、スカイレールのみである。新交通システムは、法規上鉄道事業法の「鉄道(案内軌条式鉄道)」または軌道法の「軌道(案内軌条式)」となるが、いずれか一方の法規に基づいている場合のほか、道路占用や開発事業(主に港湾地区)に係る補助金などの関係で両方の法規が混在している場合も少なくない。また、都市計画法の定める都市施設では、新交通システムは都市計画道路のうちの「特殊街路」に分類される。

ガイドウェイバスは、ガイドウェイで案内されて走行する専用軌道区間についてのみ軌道法が適用され、路線バスとして一般道路を走行する区間は道路運送法道路交通法などが適用される。また、いわゆる都市モノレールや、HSST(リニモ)、スカイレール(法的には懸垂式モノレール)も軌道として軌道法による特許を受けている。

多くの新交通システムは日本万国博覧会沖縄国際海洋博覧会神戸ポートアイランド博覧会国際科学技術博覧会バンクーバー国際交通博覧会'88さいたま博覧会横浜博覧会国際花と緑の博覧会2005年日本国際博覧会等の博覧会で試験的に運行されたり、博覧会に合わせて開業される路線もあり博覧会と新交通システムの関係は密接につながっている。博覧会での運行は実用化に向けた試金石でもありその後の実用化に少なからず影響を与える。現在、運行されている新交通システムの原型はその大半が以前に開催された博覧会で運行されたもので、博覧会での運行結果が芳しくなかったものは実用化に至らないことが多い。営業路線として実用化していないものに電波磁気誘導式のバスシステムIMTSがある。

各地で開業30年前後の路線において車両更新が問題となっている。高架のため車両を軽量化しているため一般の鉄道車両より寿命が短く今後の課題となっている。

新交通システム一覧[編集]

ここではAGT・HSSTガイドウェイバススカイレールを採用した鉄道会社を掲載している。

事業者名 路線名 愛称 鉄道
軌道
の別
営業
キロ
(km)
開業年 運転方式 走行方式 備考
埼玉新都市交通 伊奈線 ニューシャトル 鉄道 12.7 1983年 ワンマン AGT
(側方案内式)
西武鉄道 山口線 レオライナー 鉄道 2.8 1985年 ワンマン AGT
(側方案内式)
新交通システムで初めて
VVVFインバータ制御を採用
山万 ユーカリが丘線 鉄道 4.1 1982年 ワンマン AGT
(中央案内式)
東京都交通局 日暮里・舎人ライナー 軌道 9.8 2008年 無人 AGT
(側方案内式)
ゆりかもめ 東京臨海新交通臨海線 ゆりかもめ 鉄道 6.8 1995年 無人 AGT
(側方案内式)
軌道 7.9
横浜シーサイドライン 金沢シーサイドライン シーサイドライン 軌道 10.6 1989年 無人 AGT
(側方案内式)
桃花台新交通 桃花台線 ピーチライナー 軌道 7.4 1991年 ワンマン AGT
(中央案内式)
2006年事業廃止
愛知高速交通 東部丘陵線 リニモ 鉄道 8.9 2005年 無人 磁気浮上式鉄道
HSST
名古屋ガイドウェイバス ガイドウェイバス志段味線 ゆとりーとライン 軌道 6.5 2001年 ワンマン ガイドウェイバス
(側方案内式)
大阪市交通局 南港ポートタウン線 ニュートラム 鉄道 3.3 1981年 無人 AGT
(側方案内式)
軌道 4.6
神戸新交通 ポートアイランド線 ポートライナー 鉄道 3.0 1981年 無人 AGT
(両側案内式)
日本初の実用路線
軌道 7.8
六甲アイランド線 六甲ライナー 鉄道 1.5 1990年 無人 AGT
(側方案内式)
軌道 3.0
スカイレールサービス 広島短距離交通瀬野線 スカイレールみどり坂線 軌道 1.3 1998年 無人 スカイレール
広島高速交通 広島新交通1号線 アストラムライン 鉄道 0.3 1994年 ワンマン AGT
(側方案内式)
軌道 18.1

経営状況[編集]

新交通システムを採用した路線の経営状況は下記の通りである。▲は赤字を示す。

事業者名 会計年度 純損益 利益剰余金 出典 備考
埼玉新都市交通 2014年度 約4億1,700万円 約7億4,500万円 [1]
西武鉄道 2013年度 約108億6,600万円 約1,040億8,000万円 [2] (PDF) 新交通システム以外の路線の経営状況と合算されている
日暮里・舎人ライナー 2013年度 ▲約13億4,100万円 ▲約117億6,800万円 [3] 東京都交通局は新交通システム以外の路線も経営しているが、ここでは日暮里・舎人ライナー単独での経営状況を掲載
ゆりかもめ 2013年度 約12億0,019万円 約45億1,065万円 [4] (PDF)
横浜シーサイドライン 2014年度 約6億0,925万円 ▲約67億0,368万円 [5] (PDF)
愛知高速交通 2014年度 ▲約13億0,058万円 ▲約13億0,263万円 [6] (PDF)
名古屋ガイドウェイバス 2014年度 約500万円 ▲約37億6,000万円 [7] (PDF)
大阪市交通局 2013年度 約333億8,643万円 約334億8,171万円 [8] 新交通システム以外の路線の経営状況と合算されている
神戸新交通 2014年度 約6億7,914万円 ▲約201億9,243万円 [9] (PDF)
スカイレールサービス 2012年度 ▲約363万 約3,311万円 [7]
広島高速交通 2014年度 約3億4,938万円 ▲約109億2,711万円 [10]

以上のように、建設費用や維持費用[† 3]がかかり大幅な赤字が出る場合が多い。よって、最近では、建設費用や維持費用が安くバリアフリーで環境に優しいLRT(次世代型路面電車)を導入する例が増えている。

自動案内軌条式旅客輸送システム[編集]

名称[編集]

日本では案内軌条を使った自動走行の中量旅客輸送システム(自動案内軌条式旅客輸送システム)をAGT(Automated Guideway Transit)と呼んでいるが、三菱重工業では空港向けの車両を特にAPM (Automated People Mover)(全自動無人運転車両英語版[8] 、そのシステム全体をAPMシステム(全自動無人運転車両システム)と呼んでいる[9][10]。 世界にも類似の交通システムがあり、AGTやAPMなどの呼称が使われることがあるが、APMはモノレール式のものも含み、AGTとAPMは同一ではない。フランスではAGTと類似のシステムをVALと呼んでいる。シンガポールでは三菱重工製のAPM(クリスタルムーバー)やボンバルディアInnovia APM 100を使用したシステムを「ライト・レール・トランジット(LRT)」と呼んでいる。日本では「新交通システム」がAGTを指すことも多い。

AGTの概要[編集]

2008年開業の日本最新のAGT、東京日暮里・舎人ライナー
日本初のAGT営業路線、神戸ポートライナー

AGT(Automated Guideway Transit)とは、自動運転により専用軌道を案内軌条に従って走行する中量輸送の旅客輸送システムである。案内軌条に併設された側部の給電線より給電しモーターで走行する。したがって架線がないため沿線の景観を損ねにくいが、電源供給が側部になるため踏切は作れず、高架橋か地下トンネルの完全立体交差となる。また、大量輸送鉄道(都市高速鉄道)のような高速運転には適していない。

AGTの共通的な特徴として以下が挙げられる。

  • 電気動力による走行
  • ゴムタイヤ車輪付き小型軽量車両による連結運転
  • 高架ガイドウェイを設置
  • 急曲線・急勾配に支障がない
  • 自動(無人)運転が可能である
  • 列車の運行管理はコンピュータにより一箇所で集中管理
  • 最大輸送力は5000-15000人/h程度
  • 高架構造物の荷重制限のため定員乗車を規定[要出典]

車輪にゴムタイヤを使用する方式が多く、走行による外部への騒音振動が少なく、摩擦力の大きさを活かした急勾配路線も可能となるため、過密な都市内や幹線道路上に建設することも可能である。またバス同様に急加速急減速が可能なので短い駅間距離でも対応可能である。

また、技術的にも無人運転を前提に開発されたことから、無人運転の導入が容易で労務コストの低減や、その近未来的なイメージが大都市近郊の自治体などに注目され、一般の鉄道よりも簡易な公共交通機関として、郊外や港湾地域に造成されたニュータウンオフィス街などの通勤・通学の足として建設が進んだ。現在では日本以外でも多く採用され、世界の大規模空港内の無人運転の旅客輸送システムとしても活躍している。

AGTの仕様[編集]

ゴムタイヤで走行することから走行音が小さく、似たような交通機関として扱われるモノレールよりもさらに1両当たりの車両寸法が小さいのが特徴であり、車両の基本仕様は、最大幅を2400mm(走行装置の最大幅は2160mm)、最大高さを軌道面から3300mm、車体長を約8000mmとしており、車両重量は、満車時で18t以下、車輪の車軸に掛かる軸重は9t以下としている。走行用の車輪を車端側に2つ配置としており、2つの車輪の軸距(ホイールベース)は車輪の中心から5000mm、車端から車輪の中心までの距離は1300mmとしている。1両につきドアが1 - 2つ程度で、軌道・車両を含めた総合的な軽量化が可能で建設費が抑えられ[† 4]、小型軽量というメリットから長大橋梁が存在する区間での採用例もあり、ホームドアの設置や無人運転が前提として設計される路線も多い。軌間(左右の走行輪の中心間隔)は1700mmが一般に採用されているが、山万ユーカリが丘線では1800mm、埼玉新都市交通では1650mmが採用されている。

車両の構造[編集]
横浜新都市交通1000形で採用されている2軸4輪ステアリング方式の走行装置(台車)、案内輪が車輪の車端側に配置されている。
横浜新都市交通2000形で採用されている4案内輪車軸ボギー方式の走行装置(台車)、案内輪が車輪の両側に配置されている。

構成技術の根幹部分は鉄道の電車と同じだが、ゴムタイヤを使用しているため、走行装置や動力伝達機構などには自動車の技術が使用されている。冷房装置は、車両床下に室外機ユニットを、車端上部に室内機ユニットを搭載している。車両性能は、駅間距離が短いため最高速度は60km/h程度であり、鉄道やモノレールと比べて低いが、加速性能は3.5km/h/secと少し高い。なお、三菱重工業によりこれまでの倍の120km/hの新交通システムが開発中である[11]

車体の材質は、初期の頃は普通鋼が使用されていたが、最近では、車体の腐食防止や軽量化を図るために、ステンレス合金アルミニウム合金が使用されている。

台車は、平行リンク式の軸箱支持装置を持つダイヤフラム式の空気バネ付きのユニット台車またはボギー台車が採用されている。制御システムは、2両にある電動機を1台の制御装置で制御する2両単位方式が多く、また曲線での走行をスムーズにするため、1台のモーターで車輪を差動歯車を介して駆動させる他に、走行車輪を案内軌条によって転向させる案内操向装置を装備しており、中央案内式では、1軸ボギー台車とし鉄道車両のボギー台車と同じく、その中心を軸として旋回させる方式を採用しており、側方案内方式では、左右の走行車輪の車端側に2個の案内車輪を配置して、案内車輪の変位を案内棒・ロッド・前後進切替装置などの案内操向装置を介して、自動車と同じようなナックルを設けた走行車輪に伝達され、走行車輪を操向(ステアリング)させる2軸4輪ステアリング方式と、案内操向装置と車輪の車軸とを一体化させた1軸ボギー台車とし、左右の走行車輪の両側に4個の案内車輪を配置して、その案内車輪の変位を、台車に装着された案内操向装置を介して直接台車に伝達することで、台車全体を旋回させる4案内輪車軸ボギー方式[† 5]などが採用されている[12]

ゴムタイヤは、走行車輪・案内車輪に使用されており、初期の頃は、走行車輪にはウレタン充填スチールコードラジアルタイヤ、案内車輪には硬質ウレタン充填タイヤと呼ばれるノーパンクタイヤが採用されていたが、最近の走行車輪のゴムタイヤには、ウレタンの代わりに窒素ガスを充填し、パンク対策として中子式の補助輪を内蔵したチューブレスのラジアルゴムタイヤを採用しており、乗り心地の向上と騒音低下が図られている。また、走行車輪のタイヤは重い車体を支えるため、単体で130kgの重量がある。しかし、鉄輪に比して摩耗の早いゴムタイヤは利用者に比例した維持費を必要とし[† 6]、軌道保守についてもコンクリート走行面の整備となるため微細な調整ができず、経年劣化による乗り心地悪化なども発生している。

互換性において、既存の一般的な鉄道にはない弱点が見られる。車両や信号、軌道に使用されている部品類が代替の出来ないシステム固有の物である場合が多く、他社製品とは互換性が無く市場原理が働かないので消耗品や交換部品の費用が下がらず、運行経費を押し上げる一因となっている。これにより製造会社にとっては安値で受注して消耗品や交換部品で稼ぐビジネスモデルが成り立ち、うまみのある安定した収益源になっている。

電気制御とブレーキ[編集]

電気方式は直流と三相交流があり、電車線(トロリ線)はアルミまたはステンレス製の剛体式であり、案内軌条の上部に平行して設置されている。直流は電圧が750Vで複線式[† 7]、三相交流は電圧が600Vで周波数は50Hzまたは60Hzであり3線式となっている。両者とも車両下部の側面に、舟体・アーム・スプリングで構成された集電器[† 8]が1枚の盤に取付けて案内操向装置に装着されており、それを介して車内に給電されている。車両の制御方式には、初期の頃は、直流ではチョッパ制御、三相交流ではサイリスタ位相制御[† 9]で直流モーターを制御する方式であったが、最近では、両者ともVVVFインバータ制御が主流となっており、後者で電気方式が三相交流の場合では、コンバータ装置とVVVFインバータ装置を1つのユニットにまとめた、主変換装置(CI)により、コンバータで直流に変換した後、VVVFインバータで三相交流に変換して誘導(交流)モーターを制御する方式が採用されている。また、車両のブレーキ方式には、最近の電車で採用されている、回生ブレーキ併用の電気指令式空気ブレーキを装備している。モーターの装架または動力を伝達する方式は、車体装架直角カルダン駆動方式を採用しており、モーターからの動力を自在継手と差動歯車を介して車輪に伝達されている。車両基地での検修作業において電車線が無い車庫内で車両を移動させる際には、天井に配置された電源ケーブルを主栓と呼ばれるプラグを介して車両に接続して給電を行って移動させている。

軌道と駅[編集]
AGTの軌道 (ポートライナー)

走行軌道(ガイドウェイ)は、下部には、車両側の走行車輪が走行する走行路、左右両側には、車両側の案内車輪が走行するHまたはI形鋼による案内軌条が走行軌道に沿って設置されており、左右両側の案内軌条の間隔は2900mm、案内軌条の中心高さは走行面から300mmとしている。一般的に直線部ではPC(Prestressed Concrete)製、急曲線部は鋼製箱桁が採用されており、ゴムタイヤが走行する走行路はエポキシ系樹脂でコーティングされている。曲線半径は25mまで可能であり、勾配はゴムタイヤの高い摩擦係数を利用して勾配率は最大で60‰[† 10]まで可能であり、駅での停車区間では10‰以下、車両の停留・解結を行う区間では5‰以下としている。また、道路上に高架ガイドウェイを建設する場合には、消防法の規制や車道の往復2車線の円滑な通行を確保するため、道路幅は歩道を含め約22m以上が条件とされている。

駅は島式ホームが原則で、風雨を防ぐのと共に駅の無人化と乗降の安全確保のため、ホームにはフルスクリーンタイプのホームドアが設置されているのが普通である[† 11]。また、中央指令所で常に監視カメラにより各駅のホームや構内を監視しており、異常があれば、中央指令所から列車を停車させて係員を派遣することができるほか、各駅の販売機・改札機・エスカレータ・エレベータを駅と中央指令所の監視装置で監視して、異常があれば警報が表示される。

列車検知と運行管理[編集]

列車検知は、従来の鉄道の軌道回路が使用できないため、列車検知装置(TD)を採用している。これは、列車からチェックインとチェックアウトの信号を受信するとともに、走行路に敷設された誘導ループ線により列車の位置を検知する方式であり、誘導ループ線は自動列車制御装置(ATC)の信号も流すことができるので、ATC/TDループ線と呼ばれている。路線の閉塞にはATCを使用しており[† 12]、自動運転されている路線では、自動列車運転装置(ATO)による無人運転で列車が運行されており、ATCを目標速度の設定及び保安確保のために使用している、この場合では、駅の手前や構内にATO地上子が軌道面に設置しており、停止目標までの距離を車上側のATO装置が認識して列車を停止目標で停止させるほか、正常な位置に列車が停車したことを列車が駅に送信することで、ドアの開閉の合図などの情報を駅側と列車側の間で双方向伝送を行うことで、ホームドアと列車のドアの開閉を行う。走行路の間には、車両と駅や中央指令所との間で情報を送受信するためのケーブルが入った、ATOデータ伝送ループ線が設置されており、車両側の情報を駅や中央指令所に送るほか、中央指令所からの情報や緊急時の出発抑止などを車両側に送っている。

列車運行管理は、中央指令所でコンピューターが列車の動きを把握し、列車ダイヤを元に自動制御するが、異常時には指令員の手動で制御できるようになっている。また、列車の運転制御や状態監視に使用する主要機器類は、装置の故障などで誤った運転情報を表示するなどで列車の運転に支障が出ないように、すべて多重系でフェールセーフ構造としており、安全を確保しているほか、電力・電路・信号保安・通信の各設備・自動運転などのシステムを統括して管理を行う総合管理システムからの各データを中央指令所に伝達することにより、列車の状態を監視して、必要に応じて的確な指示も出すことができる。

AGTの歴史[編集]

AGTの構想は1960年代、アメリカ大都市での自動車交通の行き詰まりに始まる。大都市 (特にダウンタウン) での道路渋滞が慢性化するようになり、自動車に代わる交通機関の整備を迫られた。1968年にアメリカ合衆国住宅都市開発省によってアメリカ合衆国住宅都市開発省報告書英語版が発表され、これを契機に1970年代に世界中で当時向上しつつあった電子制御技術を積極的に導入して活発に開発が進められた。

対策としてサンフランシスコエリアでは1972年BARTが開業した。

さらに、徒歩・鉄道・バスと言った従来の交通システムの隙間を埋めるシステムの必要性が叫ばれた。このため、連邦政府の運輸省都市交通局(UMTA)では民間企業に補助金を与え、PRTPersonal Rapid Transit)と呼ばれる「目的地直行型輸送システム」を計画・開発させることになった。

PRTシステムの特徴としては1.公共交通機関であること。2.専用ガイドウェイを持つこと。3.目的地に直行できること。4.車両定員は3人 - 6人で無人運転とする、などがあり、これに対し各社が様々な提案を出し、1972年、ワシントンD.C.で「トランスポ'72」と呼ばれる交通博覧会が行われ、実車によるデモンストレーションが行なわれた。この時には、空気浮上リニアモーター駆動や懸垂型モノレールなど多種多様のシステムが提案されたが、技術上の問題などから直流電動機によるゴムタイヤ方式の車両を使用したシステムに集約されていった。なお、当初の構想では小規模な輸送力のためのものであったが、高架橋などの建設費から採算性を勘案し、単位輸送力は当初の構想よりも大きな物となってしまった[13]

日本では「ニュータウン」と呼ばれる大規模住宅開発地から最寄りの鉄道駅への交通アクセスが課題とされてきた。ピーク時の輸送量はバスでは飽和状態であるが従来の鉄道には過小でしかもデータイム時との需要差が極端に開き、このため鉄道を敷設しても採算に乗らないといった問題があった。このためアメリカでのPRTの動向に着目し、安価に建設ができる中量軌道システムを開発する気運が高まり、鉄道車両メーカーと商社の共同による開発が行なわれることとなった。

日本で初めてAGTが導入されたのは、1972年、谷津遊園千葉県習志野市)の園内周回コースで試用を開始したVONAで、その後1975年に開催された沖縄国際海洋博覧会の観客輸送用のKRT (KOBELCO Rapid Transit)(沖縄県の鉄道の項目も参照)と続いた。

本格的に実用化された、つまり日本初の恒久的な実用路線は、1981年に開業した神戸市ポートライナーである。

初期にはAGTの方式が乱立し、大きく分けると案内軌条が走行路中央にある中央案内軌条式と、走行路側方にある側方案内軌条式があったが、中央案内軌条式を採用したのは、山万ユーカリが丘線桃花台新交通桃花台線(2006年10月1日付で廃止)だけで、それ以外は側方案内軌条式を採用している。1983年に当時の建設省運輸省の指導でAGTの統一規格「標準型新交通システム」が策定され、それ以降はこの規格に基づいて計画・建設されている。この規格では、車両は自動制御で、ゴムタイヤを使用し、側方に設けられた案内軌条に沿って走行することとしている。

日本では1990年代前半にはいくつもの路線が開業したが、その後は、他の新交通システム(LRTBRTなど)に対する助成制度ができたことから、そちらへ移行している。

VAL[編集]

リール地下鉄のVAL208
VALの切り替えポイントでは路線中央部にも案内軌条を備える

フランスではVAL[† 13]と呼ばれるAGTに近いシステムを開発・運用している。VALは元々最初に開業した路線(: Villeneuve d'Ascq à Lille)の頭字語とされていたが、後に他都市でも導入されたことから、Véhicule Automatique Léger[† 14]軽量自動車両)の頭字語と改められた。元はマトラ社が開発していた(現在はシーメンス)。

VALは地下鉄道および高架鉄道走行を考慮して設計されている[† 15]。つまり、VALはミニ地下鉄の一種と見なすこともできる[† 16]。VALはリールトゥールーズレンヌで開業しており、路線の大半は地下線であり、事実上もミニ地下鉄となっている[† 17]。パリ・オルリー空港や台湾に導入されているVALは高架方式となっている。

VALは1984年にリールで開業した当初、次世代フランスの都市交通の主力と見なされていた。1980年代前半のフランス政府の都市交通政策の構想では、地方の中核都市には基本的にVAL(ミニ地下鉄)を導入し、人口・財力がやや劣る地方の中小都市にはトラム(路面電鉄)を導入するということになっていた。1984年にリールにVAL、1985年にナントに路面電鉄がそれぞれ開業し、VALと路面電鉄とのデモンストレーションとなった。財力・人口の豊かな地方都市の多くは当初VALの導入を予定していた。しかしながら、2007年現在でVAL導入計画を持っていた都市の多くは路面電鉄導入に方針転換をした。路面電鉄の方が建設費が安く、同じ予算で数倍もの路線網を建設できることから、路面電鉄の方が人気が高まった。特に、1989年の地方選挙でVAL導入がほぼ決まりかけていたストラスブール市で路面電鉄派の女性市長が当選し、1994年に路面電鉄を導入したことからフランスでは路面電鉄ブームが起き、VAL導入は下火となった。

2007年8月現在、フランス国内でVALの新規導入計画はトゥールーズの2号線の新設と他都市の既存路線の延伸計画のみであり、新規にVAL導入を検討している都市はない。そのため、フランス国内のVAL導入事例はリール・トゥールーズ・レンヌの3都市とパリ・オルリー空港アクセス線(オルリーヴァル)、シャルル・ド・ゴール空港内のみにとどまる見込みである。

世界の自動案内軌条式旅客輸送システム路線一覧(日本除く)[編集]

国名 都市名(事業者名) 路線名 営業キロ 開業年
シンガポール シンガポール(SMRT LRTブキ・パンジャン線 7.8km 1999年
シンガポール(SBS Transit LRTセンカン線 10.7km 2003年
LRTプンゴル線 10.3km 2005年
中華民国 台北市台北捷運 文山線(VAL) 10.5km 1996年
内湖線 14.8km 2009年
大韓民国 釜山広域市釜山交通公社 4号線 12.7km 2011年
議政府市仁川交通公社 議政府軽電鉄(VAL) 11.1km 2012年
中華人民共和国 マカオ 澳門軽軌鉄路 17km 2014年(予定)
広州市 珠江新城新交通システム線 3.88km 2010年
フランス リール メトロ(VAL) 29km 1984年
パリ郊外(オルリー空港アクセス) オルリーヴァル(VAL) 7.3km 1991年
トゥールーズ メトロ(VAL) 12.3km 1993年
レンヌ 9.4km 2002年
イタリア トリノ トリノ・メトロ(VAL) 13.2km 2006年
アメリカ合衆国 マイアミ メトロムーバ英語版 7.1km 1986年
モーガンタウン モーガンタウンPRT 13.2km 1975年

空港内移動路線[編集]

関西国際空港
チャンギ国際空港
シャルル・ド・ゴール国際空港
マイアミ国際空港

世界の大型空港でも、ターミナル間などの移動用にAGT (APM) の導入が20世紀末以降増えている。多くの場合空港敷地内の移動手段であるため総延長距離が短く料金もかからないことが多い。

アジア[編集]

ヨーロッパ[編集]

アメリカ[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ ただし広義には、既存交通手段ではない交通システム一般(動く歩道なども含む)を指して新交通システムと呼ぶことがある。
    5.新交通システム(国土交通省:昭和49年度運輸白書第3章第2節)より。
  2. ^ 日本にはAGT/APMシステムを指す適切な訳語がそれほど普及していないので、代わりに「新交通システム」の使用も多い。
  3. ^ 維持費用がかかる一因として交換部品や定期交換の必要なタイヤなどの消耗品でさえも他社製品と互換性が無く、量産効果が期待できず、独占供給に近いため、市場原理が働きにくく、供給会社の希望販売価格に近い価格で供給される事が挙げられる。また、ゴムタイヤは鉄車輪よりも転がり抵抗が大きく、単位輸送量毎の消費電力が大きく、鉄車輪よりも交換周期が短い事も経費を押し上げる一因である。
  4. ^ 東京大学生産技術研究所による建設費の比較では、新交通システムは約100億円/km、モノレールは約120億円/km、ミニ地下鉄は約220億円/km。
  5. ^ 、この方式では、複雑な機構である案内操向装置のステアリング機構や前後進切換装置などが不要となり、台車の部品点数がほぼ半減して、メンテナンス性の向上などが図られる。さらに最近の車両には、台車と車体との間が固定されており、台車に装着された案内操向装置と車輪の車軸との間で、案内操向装置により車輪の車軸が旋回することで、車輪を自由に回転させる仕組みとなっている。
  6. ^ ゴムタイヤは走行により摩耗するため、ゴムタイヤの完全交換は2年程度で行われる。さらに、鉄輪よりも転がり抵抗が大きいため、単位輸送量毎の消費電力多い。また、ゴムタイヤの摩耗は動台車(動力台車)の方が従台車(付随台車)よりも摩耗量が多く、ゆりかもめでは、まず、1年使用された後に従台車のタイヤを新しいゴムタイヤに交換し、従台車で使用されていたゴムタイヤは動台車に使用されていたタイヤと交換されて、1年使用された後に、また同じようにタイヤを交換する「タイヤのローテーション」を行うことで交換周期でのタイヤの摩耗の均一化を図っている。
  7. ^ プラスの線とマイナスの線。
  8. ^ 各々がスプリングにより独立して可動するような構造となっている
  9. ^ 3相全ブリッジサイリスタ位相制御と呼ばれている。
  10. ^ 止むを得えない場合では90‰まで可能。
  11. ^ 埼玉新都市交通の場合は、駅に新幹線の高架線を挟んだ相対式のホームがあり、また、ホームにはホームドアは設置されていない。
  12. ^ 西武山口線(レオライナー)には、閉塞に閉塞用の地上信号機と保安装置に自動列車停止装置(ATS)を使用している。
  13. ^ フランス語発音: [val] ヴァル
  14. ^ フランス語発音: [veikyl otɔmatik leʒe] ヴェイキュロトマティクレジェ
  15. ^ 日本の標準的なAGT方式は高架の走行に特化し地下線に不向きと言われる(設備上トンネル断面積が通常鉄道より大きくなる)。
  16. ^ フランスの地下鉄はゴムタイヤ式が主流であり、VALはこの小型・自動運転版と言うことができる。
  17. ^ これら3都市の路線呼称も「メトロ」であり、フランスの交通統計などでもそのように分類されている。システム名である「VAL」は地下鉄の車両・路線の技術を指す呼称と見なされるので、旅客案内上は用いられない。
  18. ^ 2013年9月27日運行終了。
    シャトルシステムに代わり、新たな連絡通路を供用開始! - 成田国際空港(2013年9月13日

出典[編集]

  1. ^ 都市の中量輸送システムとは、従来型のバス・路面電鉄と都市高速鉄道との中間の路線輸送量を持つ輸送システムを指す。
  2. ^ 新交通システムってなに
  3. ^ デジタル大辞泉 AGT 2013年7月23日閲覧
  4. ^ デジタル大辞泉 新交通システム 2013年7月23日閲覧
  5. ^ 世界大百科事典 第2版 新交通システム 2013年7月23日閲覧
  6. ^ 世界大百科事典 第2版 新交通システム
  7. ^ 平成25年6月13日 官報(号外123号) 80頁
  8. ^ APM(Automated People Mover:全自動無人運転車両)
  9. ^ Press Information:ブラジル・サンパウロ地下鉄6号線の全自動無人運転鉄道システムを建設へ
  10. ^ 三菱重工:新交通システムのマーケットを飛躍的に拡大
  11. ^ 三菱重工|新交通システムのマーケットを飛躍的に拡大
  12. ^ 久保田 博「鉄道工学ハンドブック」グランプリ出版 1995年 P335 p336 ISBN 4-87687-163-9
  13. ^ 佐藤信之「モノレールと新交通システム」グランプリ出版 2004年 P128 ISBN 4-87687-266-X
  14. ^ Bombardier Transportation – London Gatwick Airport

関連項目[編集]

外部リンク[編集]