乗合タクシー
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乗合タクシー(のりあいタクシー、英語: Share Taxi)とは、タクシー事業において不特定多数の乗客を輸送する公共交通機関として乗合営業を行う運行形態。多人数を運ぶため一般のタクシーより大型の車両を用いることが多い。
歴史[編集]
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アメリカの西海岸で、不況時に失業者達が日銭を稼ぐため、ジットニー(英:Jitney)と呼ばれるT型フォード等を利用して始めたことに由来すると言われる(現在でも北アメリカではDollar vanと呼ばれる個人事業によるバスの運行が行われている)。
その後、モータリゼーションと共に世界中に波及した。アジアの一部の国では2サイクルエンジンの三輪トラックの荷台を改造した乗合タクシーが走っている。
日本の乗合タクシー[編集]
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日本国内において乗合タクシー事業を営むには道路運送法の定めがあり、営業する場合は国土交通省の許可が必要となる。タクシーは道路運送法の規定により一度に1人または1グループの乗客を乗せることしかできず、たとえ他のグループの承諾を得たとしても一回に不特定多数の乗客を乗せることは禁じられている。無許可で乗合タクシーを行うこと(白タク行為)は違法となる。
乗合タクシーの運転手は、普通二種免許以上の運転免許の所持が必要である。
深夜に別の交通機関がなくなる地域や、過疎地など路線バスの機能が充分に発揮できない(大型自動車を用いて一定の運行頻度を保って事業を行うことが難しい)場所などで主に運行されている。
タクシー事業者が行っており、タクシー車両を用いるためこの名前がついているが、所定のダイヤと停車地に従って運行しており、利用者にとってタクシーというより路線バスに近い感覚での利用となる。このため、実態は乗合タクシーでもタクシー会社委託のコミュニティバス路線として扱われることも少なくない。
使用される車種は、ワンボックスカー(ジャンボタクシー)などが多いが、利用者数が少ない場合は一般的なセダン型タクシーを使うこともある。路線バスとは異なり、立席利用など座席定員を超える乗客を乗せることはできないため、乗客を乗せきれない場合に続行便を手配する事業者もある。
路線バスが車両故障などで運転に使用できる車両がない場合、その代行として乗合タクシーが運行される場合がある。
運行形態[編集]


日本における運行形態としては、一例として以下のようなものがある。
- 都市 - 空港間の運行
- 深夜・早朝運行
- 交通空白地帯での運行
- 交通空白地帯の解消及び、高齢者などの交通弱者の公共施設等への移送手段の確保として運行されるもの。地方自治体がタクシー(ハイヤー)事業者に委託する場合が多く、対外的にコミュニティバスと紹介される実例も少なくない。
- 過疎地域では、路線バスの減便・廃止の代替として運行される。都市部でも、東京都葛飾区(さくら)や千葉県柏市(かしわ乗合ジャンボタクシー・カシワニクル)など、行政サービスの一環として、鉄道・バス路線のない地域で運行されることがある。小型バスでも供給過剰となるような輸送量しか見込めない場合のほか、狭隘路で路線バス用車両の乗り入れが困難な地域を運行する場合もある。
- コミュニティバスに比べて乗車定員が少ないことから、利用に条件(自治体の住民のみ、自家用車や運転免許証の有無、高齢者・障害者など)などの利用制限があるものもある。一例として、福岡県八女市の「八女市予約型乗合タクシー」、福岡県朝倉市の「あいのりタクシー」など。
- フィーダー型
- 本線系統の路線から支線として過疎路線が分岐する区間が存在するバス会社で、路線それ自体は存続させて「過疎路線が分岐するバス停」にそれまでバスが発車していた時間にタクシーを待機させ、そこから先はタクシー車両での運転(この場合、バスがタクシーになるだけで運賃はバスのものが引き継がれる)となる例も存在する。[要出典]
定時定路線[編集]
- 路線バスと同様に、運行日・運行時刻・路線・停留所を定めて運行するもの。一部区間または全区間がフリー乗降制となっていることもある。
デマンド型[編集]
- 利用者からの事前予約があった場合に運行するもの。路線バスと同様に運行ルートが定められているもの、指定した乗降場所に限られるもの(路線不定期運行)、乗降場所が利用者の自宅と駅・公共施設などに限られるもの、指定された地域の範囲内でのみ利用可で範囲内であれば任意の場所で乗降できるもの(区域運行)などがある。
- 同一日・同一時間帯の同一区域で複数の利用者がいる場合、そのすべての利用者の乗降扱いを一度に行う。そのため乗車する時間は大まかな時間帯しか指定できず、時間に余裕を持って利用する必要がある。また、不特定多数の乗客を同時に乗せるため「乗合」となる。
- 予約は電話やインターネットなどで行う。利用する場合はその運行地域に在住している住民で、事前に運行する事業者もしくは自治体の担当部署に利用登録をする必要があるものが多い。一方で、誰でも利用登録なしで電話やインターネットでの予約だけで利用できる市町村の路線もある。
その他の例[編集]
- マイカー規制のある地区(尾瀬など)への足として運行されることもある。
小口貨物輸送[編集]
鉄道駅 - 公営競技場間での運行[編集]
- 鉄道駅から公営競技場(競馬場・競輪場・競艇場・オートレース場)まで着座して移動したい人向けの乗合タクシーもある。[要出典]
- なお、公営競技場などでよく見かけるが、乗合タクシーの営業許可がないのに、同じ方面へ向かう客を運転手の独自判断で相乗り運行させる営業法があるが、これは「乗合行為」あるいは業界の俗語で「つめこみ」などと呼ばれる違法営業であり、正規の乗合タクシーではない。
日本国外の乗合タクシー[編集]


東南アジア[編集]
フィリピンでは、ジープ型の乗合タクシーであるジープニー(ジプニー)が運行されている[2]。このほか3輪のタクシーであるトライシクルも多く運行されており、これらの交通手段の運賃がすこぶる安いこともあり、ベトナムなどに比べてオートバイの普及率が低い理由の一つとなっている[2]。
インドネシアでは乗合タクシー「アンコット(Angkot)」が市民に広く利用されている。日本製の軽自動車など小型車からワンボックスまで様々な車種があり、料金も異なる。インドネシアではタクシー事業は認可制であり、正式に認可された事業者は黄色いナンバープレートを付けている。
西アジア[編集]
トルコでは、ドルムシュと呼ばれる乗合タクシーが運行されている。
旧共産圏[編集]
旧ソビエト連邦圏諸国では、マルシュルートカと呼ばれる乗合タクシーが運行されている。
脚注[編集]
- ^ “貨客混載:タクシーが荷物も宅配 北海道・旭川で全国初”. 毎日新聞. (2017年11月1日)
- ^ a b 三菱東京UFJ銀行国際業務部『アジア進出ハンドブック』149頁、東洋経済新報社、2012年。