トランジットモール

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ポートランド市のトランジットモール

トランジットモールTransit mall)とは、自家用自動車の通行を制限し、バス路面電車LRTタクシーなどの公共交通機関[注釈 1]だけが優先的に通行できる形態の歩車共存道路を指す[1]

欧州[注釈 2]では都市中心域の歩行者空間(広場)に公共交通機関が進入し共存する形態がしばしば見られるが、北米においてはこれを参考にしながらも、主に公共交通機関への依存度が高い低所得者層を呼び込むことにより、中心市街地を活性化させる施策の一つとして導入された[1]

概要[編集]

1962年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス市において、ニコレット通りのニコレット・モールがアメリカで2番目のモール(歩行者専用道路)としてバス・タクシーのみ乗り入れで計画され、1967年から実施されたのが世界最初であるが、これをきっかけに各地でモールが導入されていく。 バッファロー, セントルイス、ボルチモア、ミルウォーキー、ポートランド、タコマ カラマゾーなど、50市近くにのぼっている。

なお、トランジット·モール形式のものとしてはシカゴ·ステイトストリートモール フィアのチェスナットストリートモール、デンバーの16番街モール、マイアミビーチのリンカーン通り、それにポートランドの平行する5番街, 6番街の2本の通り、タコマのコマース通り·パシフィック通りなど、10都市程度にとどまっている。

90年代以降には自動車を排除した歩行者モールやトランジット·モールのうち、いくつかは廃止され一般の道路に戻されている。例えばシカゴのステイトストリートモールが96年に、フィラデルフィアのチェスナットストリートモールが00年に廃止され、通常の自動車が通行する道路に復帰している。また成功例とされるポートランドの5番街とブロードウェイの2本のトランジット·モールも、一部区間が一般車に開放されている。まだ存続されているモールの幾つかは、改廃に向けての議論がされているとの情報もある。


日本では、1999年3月15日 - 3月28日浜松市遠州鉄道と共にオムニバスタウン施策の一環として試験的に運用したのが最初である。しかし、これは静岡県警との交渉が長引いたことなどが起因し、PR不足や短い実施期間が災いとなり、効果があまり得られず本格実施に至らなかった。

北米の導入事例[編集]

日本国内の導入事例[編集]

既に実施されている地域[編集]

導入が予定・検討されている地域[編集]

松山市の道後温泉駅前で進む工事

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 公共交通機関を意味する「トランジットTransit)」は北米英語であり、したがって「トランジットモール」も北米における概念・言葉である。
  2. ^ 欧州では、北米の「トランジットモール」に相当する概念は無い。

出典[編集]

  1. ^ a b 窪田陽一 2009, p. 196.
  2. ^ ☆金沢商店街物語
  3. ^ 姫路観光優しくおもてなし 城望む駅北側、歩行者空間に
  4. ^ 姫路駅周辺整備/播磨の玄関にふさわしく
  5. ^ 福井市:中心市街地活性化に向けたトランジットモール等社会実験独立行政法人環境再生保全機構(pdfファイル)
  6. ^ 歩行者と路面電車の空間整備について~トランジットモールの導入に向けて~国土交通省 LRT等利用促進施策検討委員会(pdfファイル)
  7. ^ 大通りにぎわいまつりの結果 -宇都宮市公式webサイト

参考文献[編集]

  • 窪田陽一『道路が一番わかる』(初版)技術評論社〈しくみ図解〉、2009年11月25日。ISBN 978-4-7741-4005-6 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]