日本の地下鉄

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日本の地下鉄(にほんのちかてつ)は、日本における地下鉄について解説する。

  1. 主に地下を走る鉄道路線(地上の高低差を避けるためにトンネルを用いた各種路線を除く) - 広義。防災や設備面での定義。
  2. 主に大都市内の地下を通り、「地下鉄」と称して地方公共団体等が事業を行っている鉄道路線網(狭義。日本で一般利用者が認識している「地下鉄」の定義)
  3. 上記 2. の路線に、「交通網整備計画」の策定で盛り込まれた地下鉄でない鉄道路線を主体とする鉄道網を持つ鉄道事業者の地下路線(東急田園都市線渋谷 - 二子玉川間(旧新玉川線)、京急本線泉岳寺 - 品川間、西武有楽町線小竹向原 - 練馬間など)を加えたもの(行政上での地下鉄の定義、都市計画法に定める都市施設の一つである「都市高速鉄道」として)

以上のような定義があるが、ここでは、主に 2. の一般利用者が認識している「地下鉄」の定義に基づいて記述する。以下においては断りがない限り、日本地下鉄協会に加盟し、同協会が「日本の地下鉄」として認識している事業者[1] 並びにその路線について記す。

概要[編集]

貨物線では、1915年大正4年)に東京駅東京中央郵便局(現JPタワー)と間、約0.2km地下駅:2駅)に開通した逓信省郵便物搬送用地下軌道(正式名称不明)[注 1]が最初である。

旅客線では、1925年(大正14年)に開通した宮城電気鉄道(現・JR仙石線)の仙台駅東七番丁駅との間、約0.4 km(地下駅:1駅)に始まる。

1927年(昭和2年)に開通した東京地下鉄道(現・東京メトロ銀座線)の浅草駅 - 上野駅間(約2.2 km)は、4つの地下駅を擁し、日本初の「本格的な」旅客用の地下鉄と言われる。

公営地下鉄は現在、東京都のほか、政令指定都市20の内、大阪市名古屋市横浜市札幌市京都市神戸市福岡市仙台市の8市にあり、通勤・通学など日常用から観光用途まで広く一般に利用されている。三大都市圏においてはサービス面では地上線と大きく変わらないが、地下を通ることで用地収容が困難な地区まで入り込んだ路線網を築いている。特に東京都区部と大阪市においては、都心の主要な移動手段として地上の交通(私鉄在来線・自動車・バス・タクシーほか)を凌駕するほどの地位にある。一方、地方圏の札幌・福岡・仙台(地方中枢都市)においては、地上の在来線を超えるほどの運行頻度によって都市内交通の中心的存在となっている。

降水量が多く、大都市が沖積平野を中心に発達する日本(参照)において地下鉄を建設するには、地下水が豊富な軟弱地盤を掘り進み、多発する地震にも耐え得る強度を持った地下トンネル地下駅を建設する必要がある[2]。そのため、高度な土木技術が必要であり、かつ、建設費もかなりの高額になってしまい、経営は非常に厳しい。

歴史[編集]

黎明期[編集]

東京[編集]

浅草上野間開業時に用いられた1000形電車
勃興
日本に地下鉄を敷設する計画は、1906年明治39年)に東京地下電気鉄道が高輪-浅草間及び銀座-新宿間の免許を申請したのが初見である。これは実際に建設することを目的にしたというよりも、欧米の地下鉄敷設状況を知り、先行して鉄道免許を取得しようとしたものであり、また東京市の反対もあり却下されてしまった。
その中の1915年(大正4年)、東京駅の地下を走行する郵便物貨物専用の地下鉄が開通している。
建設を前提としての免許申請は1917年早川徳次によって申請されたものである。1914年ロンドンの地下鉄を見学した早川は東京への地下鉄導入の必要性を痛感、東京軽便地下鉄道を設立し、高輪 - 浅草及び車坂上野) - 南千住間で軽便鉄道法による敷設免許を申請した。計画によれば総延長15.3キロ、軌間は1372ミリ、電気は第三軌条式である。
この免許申請を受け、他の地下鉄も免許出願が相次いだ。1918年、武蔵野電気鉄道が上目黒-有楽町間を、1919年には東京高速鉄道(初代の会社で、現在の小田急電鉄の前身に当たり、後述の現在の銀座線渋谷 - 新橋間を開業した会社とは異なる)は日比谷-渋谷霞ヶ関-新宿、日比谷-池袋、日比谷-上野間を、東京鉄道は五反田-向島、渋谷-南千住、原宿-巣鴨、新宿-洲崎目白-池袋間で申請が出願されている。
これらの申請に対し1919年11月17日に東京地下軽便鉄道に、1920年3月17日には、将来東京市が買収する可能性を提示した上で下記区間の免許が交付された。
  • 東京軽便地下鉄道:15.3キロ(高輪南町 - 浅草公園広小路、車坂町 - 南千住町)
  • 武蔵電気鉄道:8.0キロ(目黒 - 有楽町)
  • 東京高速鉄道:14.1キロ(内藤新宿 - 大塚)
  • 東京鉄道:33.4キロ(目黒 - 押上、池袋 - 洲崎、巣鴨 - 万世橋)
東京地下鉄道による初の地下鉄
東京市より免許交付を受けた早川は、1920年に「東京地下鉄道株式会社」(初代)を設立、1919年に軽便鉄道法から地方鉄道法に従い計画軌間も1435ミリへと変更した。そして地質調査を進めた結果、1923年に新橋 - 上野間の工事施行認可を受ける。しかし同年9月1日に発生した大正関東地震関東大震災)の影響で施行区間を上野-浅草に変更し、1925年9月27日に着工された。
東京地下鉄道によるオープンカット工法を採用した深度1.5メートルの路下式地下鉄は、着工から2年後の1927年12月30日に開業した。車両は1000型と呼ばれる全鋼製車両であり、日本初のドア・エンジンを採用した。安全面ではニューヨークの地下鉄同様、打子式の自動列車停止装置を採用、また安全畳垣も装備している。
1930年1月1日には万世橋、1931年11月21日には神田までと順調に伸延され、1934年6月21日には新橋までの路線が完成した。
東京高速鉄道の参入と営団への統合
一方、東京市より免許を譲り受けた「東京高速鉄道株式会社」(前述の会社とは異なり、1934年設立の二代目。大倉財閥系だが実態は東京横浜電鉄五島慶太が掌握していた。)により、東京に2本目の地下鉄建設工事が1935年に開始された。着工区間は渋谷 - 新橋であり、1938年11月18日最初の青山六丁目(現表参道駅) - 虎ノ門が開通したのを皮切りに、1939年までに渋谷 - 新橋間の6.3キロを営業供用した。1940年には先行する「地下」と線路がつながり、渋谷 - 浅草間の直通運転が開始され、現在の銀座線の形が完成した。
第二次世界大戦の予感が国民経済に影響を与え始めた1930年代、交通機関の間に適当な競争関係、分担関係を確立させるための交通統制の必要性が提言されるようになった。また空襲被害を受けた際の防空壕としての用途も考慮され、1941年3月7日に帝都高速度交通営団法を制定、同年7月4日に特殊法人の「帝都高速度交通営団」(営団地下鉄、現東京地下鉄株式会社(通称「東京メトロ」))が設立、「地下」「高速」の2社が営団に統合された。空襲の際には地下鉄が唯一の交通機関になることから、防空上の要請から資金と資材が許す限り推進することと定められたが、現実には戦時経済下での建設はほとんど進まなかった。

大阪[編集]

保存されている開業時の車両・100形

大阪の地下鉄は東京の民間主導と対照的に、大阪市(大阪市電気局、現大阪市交通局)が事業主体になって計画が推進された。1920年に大阪市が地下鉄網の調査を委託し、その報告書が提出された4年後の1926年に下記路線が「大阪都市計画高速度交通機関路線」として認可された。

  • 1号線:江坂 - 梅田 - 難波 - 大国町 - 天王寺 - 我孫子(19.9キロ)
  • 2号線:森小路 - 天六 - 梅田 - 天神橋 - 天王寺(13.7キロ)
  • 3号線:大国町 - 玉出(3.7キロ)
  • 4号線:築港 - 花園橋 - 大今里 - 平野(17.1キロ)

上記計画に基づき、1930年に第一期事業として梅田 - 天王寺間の工事を開始した。資金調達で受益者負担制度を採用したこの路線は1933年5月20日に梅田 - 心斎橋間が開業した。打子式の自動列車停止装置を備え、安全畳垣も備えたのは東京と同じであるが、駅設備において自然換気でなく送風装置を使用したこと、ホームまでエスカレーターが設置されていたこと、そして何よりも天井が高く将来の12両運行(当時の車両の大きさ、それでも東京より一回りほど大型である)を見越した長さのプラットホームが特徴である。

大阪では、戦時下でも大国町で1号線と分岐する3号線の建設が進められた。それでも鋼材を使用しない無筋コンクリートアーチ構造を採用するなどの工法上の工夫も加え、1942年5月10日には大国町 - 花園町間の1.3キロを完成させている。しかしその後は鋼材のみならずセメントの入手も困難となり、トンネルの上部を石積アーチ式にするなどの苦心の工法が採用されたが、その後工事は凍結された。

その他の都市[編集]

東京・大阪以外では純然たる地下鉄の建設は行われていないが、同じ時期に建設された私鉄の中には一部区間を地下線として開業したものがいくつかある。

年表[編集]

画像外部リンク
逓信省地下隧道(正式名称不明)
東京中央郵便局の新築落成と本邦最初の地下鉄道[3]
郵便物運搬用電車(東京鉄道郵便局)[4]
東京中央郵便局地下電車発着場(1933年)[4]
宮城電気鉄道仙台駅の地下ホーム(1920年代撮影)

第二次世界大戦の終戦時まで。

第二次世界大戦後[編集]

終戦時の日本の地下鉄は東京が14.3キロ、大阪が8.8キロという状況であった。空襲で壊滅的な被害を受けた両都市は人口が激減した。

東京[編集]

東京大空襲により人口が激減した東京では、末広町 - 稲荷町間が乗客減少を理由に一時運行停止になるほどであった。

戦後の混乱が収まるにつれて、東京では1946年に新たな高速鉄道網を下記の通り決定した。

  • 1号線:武蔵小山 - 板橋一丁目(23.9キロ)
  • 2号線:祐天寺 - 北千住(23.8キロ)
  • 3号線:大橋 - 雷門(16.1キロ)
  • 4号線:富士見町 - 向原町(22.3キロ)
  • 5号線:中野 - 東陽町(15.7キロ)

都市計画でいうターナー式を念頭において立案された路線網は1950年代から着工されることになる。最初の着工路線に選ばれたのは4号線(後の丸ノ内線)であり、住宅地と急速に発展した池袋方面への交通網整備と、混雑の著しい山手線中央線を救済する目的が定められた。そして1954年1月29日より順次丸ノ内線が開通することになる。

戦前から都市交通を市営と主張してきた東京市は、戦後東京都と改称してからも営団の解体を主張し、都市交通の一元化を主張していた。そうした中、昭和20年代終盤に営団とは別に都営地下鉄の建設へと目標を転換した。また、政府による統制が緩和されたと判断した郊外私鉄は1948年小田急電鉄を皮切りに西武鉄道を除く全社が1955年までに都心部への乗り入れ路線の申請を出願した。この動きを見た政府は1955年に都市交通審議会が設けられ、翌年にはその答申に従い、郊外私鉄との乗り入れ直通運転を盛り込んだ地下鉄計画が発表された。これにより陸上交通事業調整法で営団による地下鉄一元化を方針転換することになる。以来、東京の地下鉄路線は、営団(現東京メトロ)と東京都交通局の2つの経営体によって整備されることになる。

1956年、東京都は軌道法による免許申請を行い、翌年には営団が保有する1号線が東京都に委譲され、下記内容での計画が策定された。

  • 1号線:品川 - 五反田 - 新橋 - 浅草橋 - 押上(17.3キロ)
  • 2号線:中目黒 - 恵比寿 - 日比谷 - 秋葉原 - 上野 - 北千住(20.9キロ)
  • 3号線:大橋 - 渋谷 - 浅草(16.1キロ)
  • 4号線:荻窪・方南町 - 新宿 - 東京 - 御茶ノ水 - 池袋 - 向原(30.1キロ)
  • 5号線:中野 - 高田馬場 - 飯田橋 - 大手町 - 東陽町(15.8キロ)
  • 5 - 2号線:下板橋 - 巣鴨 - 水道橋 - 大手町

郊外私鉄の相互乗り入れも計画に組み込まれ、1号線は標準軌、架空線式を採用、京急京成が乗り入れることが計画され、同時に1372ミリ軌間の京成は全線で改軌を行い、また京急も品川 - 泉岳寺間の路線を建設することとなった。

都営地下鉄は1号線(現浅草線)から工事が開始され、隅田川横断工事などに難航したが、1960年12月4日の午後に浅草橋 - 押上間が初めて開業した。

一方、営団も翌1961年に、東武鉄道東京急行電鉄の乗り入れを予定して、架空線式を採用した2号線(現日比谷線)を開業、以後の東京の地下鉄は、既存郊外路線との乗り入れを前提にした架空線式が主流になる。

大阪[編集]

大阪では1948年に新たに都市計画が立案され、戦前の1号線から3号線は戦前の計画を踏襲したが、4号線で大阪港 - 放出、5号線で神崎川 - 平野間の東西路線が計画され、都市計画の基本であるペーターゼン式の路線網が計画された。

大阪の場合、東京と異なり堺筋線を除いては戦前の第三軌条式を踏襲したため、車両の共通化の利点はあるものの、既存他社路線との乗り入れが不可能で、高度成長期に梅田や難波など主要ターミナル駅の混雑を増大させる結果となった。→#集電方式参照。また、地下鉄に乗り入れできない私鉄JR各社が都心部に相次いで自前路線を延伸したために、地下鉄と私鉄JR路線が近接並走して競合状態になる事例も多数発生した。

その他の都市[編集]

1960年代以降のモータリゼーションの発展に伴い、地方都市では専用レーンがない公共交通機関である路線バスが多くなり、大都市では高速かつ大量輸送をおこなえる地下鉄が建設されるようになった。

今後の地下鉄の新規建設[編集]

2015年12月6日仙台市地下鉄東西線が開業したことにより、日本国内で建設事業が進行中の地下鉄新路線(既存路線の延伸工事を除く)が消滅した。これにより、同線が日本最後の地下鉄新路線になるのではないかと予測しているメディアもある[6][7]

なお、計画として存在するものとしては大阪市営地下鉄9号線があるほか、提案されているものとしては東京都が提案した新路線構想がある[8]が、いずれも今のところ事業化はされておらず目途も立っていない。

日本の地下鉄路線[編集]

  • 建設中の未開業区間は外数で( )に示す。
  • 駅数には同一名称の駅を重複計上していない。
公営地下鉄、および、民営・準公営(第三セクター)地下鉄[9]
名称 形態 事業者 路線数 総延長
(km)
駅数 備考
ST Logo.svg 札幌市営地下鉄 公営 札幌市交通局 3 048.0 046 日本唯一のゴムタイヤ式地下鉄
Sendai City Subway Logo.png 仙台市地下鉄 公営 仙台市交通局 2 028.7 029
Saitama Railway Logo.svg 埼玉高速鉄道線 三セ 埼玉高速鉄道 1 014.6 008 総延長の97%が地下区間
PrefSymbol-Tokyo.svg 都営地下鉄 公営 東京都交通局 4 109.0 098 このうち三田線の白金高輪 - 目黒間2.3kmは第二種鉄道事業者
Tokyo Metro logo.svg 東京メトロ 民営 東京地下鉄 9 195.1 141 副都心線と有楽町線との共用区間は重複計上せず
東京臨海高速鉄道ロゴマーク.svg りんかい線 三セ 東京臨海高速鉄道 1 012.2 008  
Tōyō Rapid Railway Logo.png 東葉高速線 三セ 東葉高速鉄道 1 016.2 009  
Yokohama Municipal Subway Logo.svg 横浜市営地下鉄 公営 横浜市交通局 3 053.5 040 1・3号線(ブルーライン)は一体的に運行しているので実質は路線数2
Minatomirai line logo.png みなとみらい線 三セ 横浜高速鉄道 1 004.1 006  
Nagoya-subway1.svg 名古屋市営地下鉄 公営 名古屋市交通局 6 093.2 087 このうち上飯田線全線(0.8 km)は第二種鉄道事業者
Kyoto Municipal Subway Logo.svg 京都市営地下鉄 公営 京都市交通局 2 031.2 031  
Osaka Metro Logo.svg 大阪市営地下鉄 公営 大阪市交通局 8 129.9 100 新規路線・9号線の計画があるが、事業化の目処が立っていない。
ほかに、南港ポートタウン線が営業上、市営地下鉄網に組み入れられ、運賃計算の一体化が行われている。
Kobe Municipal Subway Logo.svg 神戸市営地下鉄 公営 神戸市交通局 4 030.6 025 西神延伸・西神・山手線は一体的に運行しているので実質は路線数2
アストラムライン 三セ 広島高速交通 1 000.3 002 総延長の10%が地下区間
Fukuoka City Subway Logo.svg 福岡市地下鉄 公営 福岡市交通局 3 029.8 (+1.6) 035 (+1) 七隈線が延伸の事業許可取得(延伸区間の開業予定は2020年)。

路線図[編集]

構造[編集]

集電方式[編集]

世界的に地下鉄では主流とされる第三軌条方式(サードレール方式)は、日本では札幌市営地下鉄南北線東京メトロ銀座線丸ノ内線横浜市営地下鉄ブルーライン名古屋市営地下鉄東山線名城線名港線大阪市営地下鉄御堂筋線谷町線四つ橋線中央線千日前線で採用されており、これ以外の路線は剛体架線またはカテナリ吊架式による架線集電方式を採用している。

これは日本では郊外路線との相互直通運転を前提として建設される路線が多いため、既存路線と規格を合わせる必要があることによる。逆に大阪市営地下鉄の御堂筋線と相互直通をする北大阪急行電鉄、中央線と相互直通する近鉄けいはんな線は新規に第三軌条方式で建設された郊外路線である。

地下鉄駅[編集]

日本の地下鉄駅の災害などに備えての対策は、世界的に見ても非常に盛んである。その背景には交通営団時代の地下鉄サリン事件が関係している。

東京では墨田区江東区江戸川区などの海抜がマイナスのいわゆるゼロメートル地帯を走行する、東京メトロ東西線都営地下鉄新宿線などに、防水扉が設けられている。

東海豪雨のときは名古屋市営地下鉄名城線平安通駅が冠水したため、名城線市役所駅 - 砂田橋駅間(当時は砂田橋行)で代行バス運転を行った。そのほかにも、名古屋市営地下鉄鶴舞線の一部駅や名古屋市営地下鉄名港線名古屋港駅では防水扉を設置している。

また、著しく利用客の多い駅では、島式のホームを方向別に千鳥状に分けることによって、利用者の混雑を抑えるところや(例:名古屋市営地下鉄東山線名古屋駅)、新規にホームを新設して方面別に分離する(例:地下鉄銀座線新橋駅)といった対策がとられている。

車両[編集]

車両は古い路線(特に他社との乗り入れを前提に作られた路線)では、地上の鉄道と同様の大型の車両を用いるのが一般的であったが、2000年代以降ではミニ地下鉄が用いられることが増えた。

ミニ地下鉄[編集]

初のミニ地下鉄:大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線
初のミニ地下鉄:大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線
Yokohama City Subway Green Line 10005 Train with a service opening memorial sticker.JPG
最急勾配が58‰:横浜市営地下鉄グリーンライン

ミニ地下鉄とは、一般的な地下鉄のように大量人員輸送を担うシステムと、モノレールバスのような少量人員輸送を担うシステムの中間部分を担うために研究・開発された中量軌道輸送システムの一種であり[10][11][12][13]、日本独自の地下鉄システムである[注 2]

小断面トンネル・小型車体を採用する地下鉄のうち、鉄輪式リニアモーターカー(浮上はせず、鉄車輪で走行)を使用する場合は「リニアメトロ」「リニア地下鉄」などとも呼ばれる。非粘着のリニアモーター駆動のため、最急勾配は60まで許可されており[14]、一般の鉄道で計画される35‰を上回ることが出来る[15]。また、最小曲線半径が50m (R50) 程度と、一般の160m (R160) と比べて急曲線にも対応できるという特徴も持つ[16][注 3]。最新の仙台市地下鉄東西線では、八木山動物公園駅が日本一高い場所にある地下鉄駅(標高136.4m)となっており、途中の青葉山を上るトンネル区間には最急勾配57‰があるが、降雪時にも安定して走行が可能になっている。

日本では1962年(昭和37年)より、鉄道にリニアモーターを使用する研究が始まった[15]。当時、全国に国鉄操車場(ヤード)が約50箇所あったが、ヤードの仕分線において人力で貨車を移動させるライダー要員の省力化を目指し、1967年(昭和42年)には自動的に定位置に移動するリニアモーター駆動方式の仕分線内貨車加減速装置「L2形貨車突放装置」が開発され、さらに「L4形貨車加減速装置」を搭載した貨車「L4カー」が各地のヤードで活躍した[17][18]

2度のオイルショックを経て日本の地下鉄建設費は、狂乱物価とよばれたインフレーションもあって50-80億円/km(1975年頃)から約200億円/km(1980年頃)に上昇し、さらに300-400億円/km(1980年代末)になろうとしていたため費用対効果が悪化した[15]。しかし、ラッシュ時定員を超えて満員電車に乗車させる押し屋が登場するほど都市交通需要は増加しており、またモータリゼーションによる交通戦争大気汚染など都市問題解決に地下鉄は必要な交通手段だった。そのため1976年(昭和51年)に小断面地下鉄にリニアモーター搭載電車を走行させる構想が提言され[18]、1980年代に実用化に向けた本格的な取り組みがなされ[15]1990年(平成2年)開業の大阪市交通局鶴見緑地線(現・長堀鶴見緑地線)で初めて実用化された[注 4]

営業中のリニア地下鉄
名称 路線 開業 車両 全高 全幅 編成定員 最急勾配 最小曲線
Sendai City Subway Logo.png 仙台市地下鉄 東西線 2015年 2000系 3,145 mm 2,494 mm 388人(4両) 57 R 105
PrefSymbol-Tokyo.svg 都営地下鉄 大江戸線 1991年 12-000形 3,145 mm 2,498 mm 780人(8両) 55 ‰ R 100
Yokohama Municipal Subway Logo.svg 横浜市営地下鉄 グリーンライン 2008年 10000形 3,105mm 2,490 mm 380人(4両) 58 ‰
Osaka Metro Logo.svg 大阪市営地下鉄 長堀鶴見緑地線 1990年 70系 3,120 mm 2,490 mm 380人(4両) 50 ‰ R 102
今里筋線 2006年 80系 3,120 mm 2,496 mm 377人(4両) 50 ‰ R 083
Kobe Municipal Subway Logo.svg 神戸市営地下鉄 海岸線 2001年 5000形 3,120 mm 2,490 mm 362人(4両) 50 ‰ R 100
Fukuoka City Subway Logo.svg 福岡市地下鉄 七隈線 2005年 3000系 3,145 mm 2,490 mm 378人(4両) 40 ‰ R 100
参考:車両限界 JR新幹線 4,500 mm 3,400 mm
JR在来線 4,100 mm 3,000 mm
参考:東京メトロ 有楽町線 7000系 4,145 mm 2,800 mm
銀座線 1000系 3,465 mm 2,550 mm
参考:名古屋市営地下鉄 東山線 N1000形 3,440 mm 2,500 mm
参考:京都市営地下鉄 東西線 50系 3,375 mm 2,489 mm
参考:ロンドン地下鉄 ノーザン線 1995形 2,875 mm 2,629 mm

従来の地下鉄に比べてリニア地下鉄は消費電力がやや大きくなる。原因としてリニア誘導モータ特有の損失と、一次側とリアクションプレートとの隙間が多いことが挙げられる。単位重量あたり単位距離あたりの消費電力で比較すると、惰性で走行できる距離(惰行区間)が長いほど消費電力が少なくなるため、駅間距離が長く曲線が緩やかな普通鉄道と比べて従来型地下鉄およびリニア地下鉄は多くなるが、駅間距離が短く、信号停止が多く、急な曲線が多く、さまざまな機材を載せなくてはいけない路面電車と比べると少なくなっている。

都市内交通システムの比較[19][20]
種類 単位重量あたり
単位距離あたり
消費電力
最急勾配
[注 5]
最小曲線 備考
普通鉄道 19.2 Wh/tkm 35 ‰ R 160
地下鉄 32.6 Wh/t・km
リニア地下鉄 35.1 Wh/t・km 60 ‰ R 100
新交通システム 63.9 Wh/t・km[注 6] 道路付属物
路面電車 69.3 Wh/t・km[注 6] 40 ‰[注 7] R 011 併用軌道内は
編成長40m以下
最高速度40km/h以下
LRT 42.9 Wh/t・km

日本の地下鉄の現況[編集]

日本の法規上では、大阪市営地下鉄を除き鉄道事業法に基づいている。

東京の東京メトロ東西線都営地下鉄三田線、大阪の大阪市営地下鉄御堂筋線・中央線、神戸の神戸市営地下鉄西神・山手線、横浜の横浜市営地下鉄ブルーラインなどは、都心から外れた郊外の区間を中心にして広範囲に地上や掘割、高架を走っている場合もある。世界的に見ても、一部路線が地上や高架を走る路線は存在する(河川を跨ぐ前後などにもみられる)。中には高速道路と一体構造で建設されている路線もある。

  • 東京メトロ丸ノ内線は地形の都合もあり、都心でも一部に地上区間が存在する(特に四ツ谷駅では地下鉄がJR中央線の上を走る光景がみられる)。なお、東京メトロ銀座線も同様の理由から、渋谷駅が他の鉄道より高い位置に駅を構える形となっている。
  • 大阪市営地下鉄中央線は開業当初全線が高架で、地下区間が全く存在しなかった。
  • 名古屋市営地下鉄東山線上社駅 - 藤が丘駅間は建設当時、地下方式にする必要がなく高架になっており、東名高速の上を跨いでいる。

一方、地下鉄でない京王新線は都営地下鉄新宿線と、西武有楽町線東京メトロ有楽町線副都心線と連絡している。

近鉄難波線JR東西線京阪中之島線は地下鉄と直通しないが、それ自体がほぼすべて地下を走っているというような場合もある。

日本の大手私鉄のうち、地下線や地下駅、地下鉄などに直通運転するための車両を全く持たないのは南海電気鉄道西日本鉄道の2社のみである。

日本では、地下鉄と地下区間を持つ普通の鉄道との区別が曖昧になっており、狭義では自治体(地方公営企業である交通局)が直接経営している公営交通以外の路線は総て後者に分類される場合がある(乗換案内ジョルダンなど)。すなわち、上述の埼玉高速鉄道横浜高速鉄道、かつての神戸高速鉄道、さらには日本地下鉄協会に加盟していない東京臨海高速鉄道など、路線の大部分が地下区間である路線でも地下鉄とみなされない場合があり、路線検索サイトの対応(私鉄路線か地下鉄路線か)も統一した基準がないのが現状である。一方、東京メトロは元々公営交通(帝都高速度交通営団)であり、各種案内でも「地下鉄○○線」と表記されるなど、自他共に地下鉄として取り扱われることが多く、大手私鉄では例外的に前者に分類されることが多い。

東京都心[編集]

東京都心は山手線内一帯に拠点が散在しているが、地下鉄より早く完成した中央線など、JR線が速達性を持っていて、地下鉄やバスはその補完的な存在となっている[要出典]

  • 銀座線のバイパス路線である半蔵門線は駅間距離を広げて速達性を持たせている。また、都営新宿線の急行、都営浅草線のエアポート快特、副都心線の急行・通勤急行は都心の駅を通過する。東西線の快速・通勤快速は都心では各駅に停車する。
  • 皇居の下を通しても途中駅の造りようがなく、皇居を迂回して周りに広がっている各拠点を通った方が、多くの人が乗って収益が見込める(実際、大きな拠点を外して敷設された路線ほど赤字の傾向がある)。また、地下鉄は基本的に広い道路に沿って造られるが、皇居には広い道路はない。その上、皇居は天皇の住まいであるという観点から、警備上の問題なども有り、皇居の地下に地下鉄を通すことを今まで認められたことは無い。結果として、地下鉄はすべて皇居の下を避けるように周囲に迂回して建設されている(ただし、江戸城の堀の下を通る路線は複数存在する)。

大阪都心[編集]

大阪では、大阪城跡が現在の業務中心地からややはずれた一角にあることと、地下鉄各路線が網の目にむらがあるペーターゼン式であるため、東京のような問題はほとんど無い。各路線は大阪環状線(同記事も参照)の内側では、ほぼ南北の筋と東西の通りに沿って建設され、かつて存在した市営モンロー主義の名残もあり、市内交通の主力になっている。ただし、私鉄やJRとの相互乗り入れが活発でなく、目的地に到着するまでの乗り換え回数が必然的に多くなるという問題がある。

御堂筋線梅田駅の乗降客数は、日本の地下鉄で単一路線の駅としては第1位である(2007年11月13日の梅田駅での乗降客数は460,859人となっている[21])。

名古屋都心[編集]

名古屋では大阪同様、都心部においては碁盤の目状に張り巡らされた大通りの地下に沿って建設された。路線同士の交差部では必ず駅が設けられているのが特徴である。

名古屋市営地下鉄では6路線のうち初期に開業した3路線(東山線・名城線・名港線)が第三軌条、比較的新しい3路線(鶴舞線・桜通線・上飯田線)が 名古屋鉄道等への直通運転を考慮した架空電車線方式を採用しており、うち2路線(鶴舞線・上飯田線)は名古屋鉄道と直通運転を行っている。

他路線の延長としての地下鉄[編集]

JR・私鉄と相互直通または接続している地下鉄路線の中には、既設の地上路線の延長や廃止区間の代替として事実上一体的に作られたものもある。路線としては事実上一体化していても、接続先の会社線で運賃体系が変わり、接続路線・地下鉄にまたがっての利用数者は伸び悩んでいる事例も多い。乗継割引を適用して対処している路線もあるが、根本的な解決には至っていない。

これに類する事例として、神戸高速鉄道の例がある。同社は山陽電鉄本線の神戸都心への延長、阪急神戸本線阪神本線の山陽電鉄本線との接続ならびに神戸電鉄有馬線との連絡のために設立された企業で、自社では運行を一切行わず、地下路線と地下駅施設の保有・管理に特化した運営を行っていた。同社は日本地下鉄協会にも加盟していたが、鉄道事業法の改正にあわせて線路の保有(第三種鉄道事業者)に専念することとなり(阪急・阪神・神鉄が神戸高速線として各駅を管理)、日本地下鉄協会からも脱退した。

この逆で、地下鉄の延長として作られた北大阪急行南北線名鉄豊田線北神急行北神線近鉄けいはんな線埼玉高速鉄道線東葉高速鉄道線などの路線もあるが、運賃体系については同じ問題を抱えている。さらに新線区間では加算運賃や、既設線より割高な運賃体系が適用されていることもある。

日本の地下鉄における優等列車[編集]

基本的に、日本の地下鉄では

  • 道路の下に沿っているうえ、既存の地下鉄や地下街の間を網の目を縫うように掘られるため、結果多くの区間でアップダウンやカーブが激しくなり、高速運転に不向き。
  • 地下鉄は建設費が莫大でさらに近隣の地下の使用状況を考えると、優等列車の待避設備などを設けるだけの予算や場所の捻出が困難。
  • 地下鉄は普通、都市の都心部に建設されるためどの駅も利用者が多く、こまめに停車した方が多くの収益が見込める。また、多くの駅で乗り換え路線が何線かあり旅客の流動性が激しいことから、優等種別の停車駅設定が困難かつ優等種別の存在意義が薄い。

などの理由から、各駅停車のみの運転を行っている路線が多い。他社線と直通運転していて、他社線内では優等種別として運転していても地下鉄線内では各駅に止まる場合も多々ある(東京メトロ半蔵門線など)

地下鉄での優等列車導入は、東京メトロ東西線快速列車が始まりである。ただし地下区間での通過運転は南砂町駅だけであり、緩急運転を行う大半の区間は地上区間である。

日本の地下鉄に於いて、ニューヨーク市地下鉄のように緩急分離運転の可能な複々線で敷設された路線は無く[注 8]、緩急接続・待避が可能な地下駅も限られているため、優等列車の設定のある路線でも地下区間での追い越しを行わない路線も多い。地下区間で待避を行うのは、東急新玉川線(現・田園都市線)急行の桜新町駅での事例が最初(ただし上記定義の (2) には相当しない区間である)。一般に地下鉄と呼ばれる区間では都営地下鉄新宿線瑞江駅東京メトロ副都心線東新宿駅も同様の構造を持つ。

狭義の地下鉄では初となる有料特急として運行される小田急ロマンスカー60000形MSE

このほか特殊な事例として、東京メトロ千代田線有楽町線から小田急小田原線経由箱根登山鉄道線直通による、狭義の地下鉄では初となる有料の特急列車の運行(小田急ロマンスカー#地下鉄への乗り入れを参照)、東京メトロ日比谷線から東急東横線経由みなとみらい線直通による「みなとみらい号」(多客期のみ・運行終了)、大阪市営地下鉄堺筋線から阪急京都本線経由嵐山線直通による臨時特急(阪急京都本線#嵐山線直通臨時列車を参照)の事例がある。いずれも、地下鉄区間から観光地への利便性を図ったものであり、他路線における緩急分離運転とは目的が異なる。

日本の地下鉄における優等列車一覧[編集]

定期列車、かつ地下鉄線内で通過駅を伴う優等種別として案内されている場合について記す。各系統の詳細については当該路線記事を参照のこと。

運行路線 種別 速達運転区間 直通運転 備考
東京メトロ東西線 快速
東葉快速
東陽町駅 - 西船橋駅 JR中央線・総武線各駅停車
東葉高速線
日本初の地下鉄優等列車。東葉快速は1999年運行開始、2014年廃止。
葛西駅妙典駅原木中山駅にて緩急待避を実施(通勤快速も同様)。
通勤快速 浦安駅 - 西船橋駅間 1996年までは快速(通称「C快速」)として運行。
東京メトロ副都心線 急行 和光市駅 - 渋谷駅間(全線) 東武東上線
西武有楽町線池袋線
東急東横線みなとみらい線
東新宿駅で緩急待避を実施。
直通先では種別が変更される。
通勤急行 小竹向原駅 - 渋谷駅間
東京メトロ千代田線 特急ロマンスカー 北千住駅 - 代々木上原駅 小田急小田原線多摩線
箱根登山鉄道線
日本の地下鉄では史上初となる有料の指定席特急。全列車北千住駅発着。
メトロはこね」「メトロさがみ」「メトロホームウェイ」の愛称で運転。
千代田線内での緩急待避なし。
都営地下鉄新宿線 急行 新宿駅 - 本八幡駅(全線) 京王新線京王線高尾線 岩本町駅瑞江駅で緩急待避を実施。
京王線経由京王高尾線直通は土休日のみ。
都営地下鉄浅草線 エアポート快特 泉岳寺駅 - 押上駅 京急本線空港線
京成押上線本線成田空港線
西馬込駅 - 泉岳寺駅間は運行なし。
押上駅で緩急待避を実施。
横浜高速鉄道みなとみらい線 特急
通勤特急
急行
横浜駅 - 元町・中華街駅間(全線) 東急東横線
東京メトロ副都心線
西武有楽町線・池袋線
東武東上線
通勤特急・急行の線内の通過駅は新高島駅のみ。
みなとみらい線内での緩急待避なし。
横浜市営地下鉄ブルーライン 快速 戸塚駅 - 新羽駅 なし 2015年7月18日運行開始。
新羽駅・上永谷駅で緩急待避を実施。(新羽駅は当駅発着の普通に接続)
神戸市営地下鉄西神・山手線 快速 新神戸駅 - 西神中央駅 なし(当時) 1993年運行開始。1995年阪神・淡路大震災後に廃止。
東京メトロ有楽町線 準急 和光市駅 - 池袋駅間 東武東上線
西武有楽町線・池袋線
2008年6月14日運行開始。2010年廃止。

日本の地下鉄の経営状況[編集]

地下鉄は建設費が高額なため、新しく建設された路線は建設費の償却負担が重く、赤字経営となっているのが普通である。それに対して、都市経営の観点から一等地を通る優良路線から建設された側面もあり、古い路線ほど利用客の多いルートを通っている上、インフレの進む前のコストが安い時期に建設されて償却費負担が軽いため、銀座線丸ノ内線御堂筋線東山線などの歴史ある路線はすべて黒字経営である。そのため、こうした古くから営業している償却負担が少なくて利用者の多い優良路線を多数抱え、新線建設が比較的少ない東京地下鉄は黒字経営となっている。

日本の公営地下鉄は、地方自治体経営における交通部門の施策の一つとして、鉄道単体の収支以外に地下鉄建設による環境負荷軽減効果、渋滞緩和効果、地価上昇効果、税の増収効果、住民の便益向上効果などを、総合的に判断して経営されている。

民鉄やJRの経営状況を鉄道事業以外の小売事業やカード事業など母体会社の連結対象となる事業を含めた決算資料で判断しなければ、適正な経営状況を把握できないのと同様、地方自治体の地下鉄事業による総合的な収支の把握は、その連結対象となる経済効果の経済価値を含めて判断しなければならない。

しかし、現状では、地下鉄事業によって波及して発生している経済効果を把握していく適切かつ統一した会計基準がないばかりか、地下鉄事業本体の会計に至っても適切かつ統一した会計基準がない状況である。

例を挙げれば、減価償却費を各自治体が、どのように計上していくかによって決算の数字が大きくブレる可能性がある。また札幌市営地下鉄福岡市地下鉄のように赤字分を市一般会計から補填するかたちで総額のうえで黒字計上としている場合もある。

以下に示すのは、自治体によって公表されている「地下鉄決算」の断片を拾ったデータだが、通常、よく目にする企業会計原則によって出された連結決算とは意味が大きく異なる資料であることを認識して取り扱わなければ地下鉄事業の意義を見誤ることになる。

▲は赤字を示す。

公営地下鉄
名称 会計年度 純損益 累積欠損金※ 出典
札幌市営地下鉄 平成26年度 約60億8,243万円 約2,552億6,677万円 [22]
仙台市地下鉄 平成26年度 約33億0,962万円 約895億7,221万円 [23]
都営地下鉄 平成27年度 約258億5,693万円 約3,275億3,009万円 [24]
横浜市営地下鉄 平成27年度 約83億7,300万円 約1,797億5,500万円 [25]
名古屋市営地下鉄 平成27年度 約113億5,200万円 約2,645億7,700万円 [26]
京都市営地下鉄 平成27年度 約8億4,800万円 約3,093億2,200万円 [27]
大阪市営地下鉄 平成27年度 約373億8,700万円 △約1,186億5,500万円 [28]
神戸市営地下鉄 平成26年度 ▲約51億2,940万円 約847億6,256万円 [29]
福岡市地下鉄 平成26年度 ▲約63億8,944万円 約1,424億8,783万円 [30]

※大阪市営地下鉄は累積剰余金を表す。

民営・準公営(第三セクター)地下鉄(連結決算)
事業者名 会計年度 純損益 利益剰余金合計 出典
東京地下鉄 平成26年度 約523億3,000万円 約3,631億2,800万円 [31]
埼玉高速鉄道 平成26年度 ▲約443億1,935万円 ▲約0億0万円 [32]
横浜高速鉄道 平成26年度 ▲約3億4,010万円 ▲約122億5,064万円 [33]

路線別[編集]

全国の公営地下鉄(東京地下鉄・高速鉄道除く)で黒字の路線は、黒字額が大きい順に示すと以下のようになる。

路線名 会計年度 純利益 出典
大阪市営地下鉄御堂筋線 平成27年度 約360億8,100万円 [34] の1ページ目
名古屋市営地下鉄東山線 平成19年度 約119億6,000万円 [35] の36ページ目
都営地下鉄浅草線 平成27年度 約107億1,610万円 [24] の5ページ目
都営地下鉄新宿線 平成27年度 約105億8,191万円 [24] の5ページ目
横浜市営地下鉄ブルーライン 平成26年度 約65億0,200万円 [25] の9ページ目
都営地下鉄三田線 平成27年度 約58億3,153万円 [24] の5ページ目
大阪市営地下鉄谷町線 平成27年度 約58億0,500万円 [34] の1ページ目
大阪市営地下鉄中央線 平成27年度 約52億7,700万円 [34] の1ページ目
札幌市営地下鉄南北線 平成25年度 約35億8,700万円 [36]
仙台市地下鉄南北線 平成26年度 約33億0,962万円 [23]
名古屋市営地下鉄鶴舞線 平成19年度 約29億5,100万円 [35] の9ページ目
大阪市営地下鉄堺筋線 平成27年度 約21億2,600万円 [34] の1ページ目
神戸市営地下鉄西神・山手線 平成26年度 約11億0,200万円 [29] の10ページ目
京都市営地下鉄烏丸線 平成20年度 約10億3,700万円 [37] の5ページ目
札幌市営地下鉄東西線 平成25年度 約6億1,900万円 [36]
大阪市営地下鉄四つ橋線 平成27年度 約2億4800万円 [34] の1ページ目

以上の16路線が黒字を示している。また、各路線の黒字額は不明だが、平成18年度の福岡市地下鉄空港線福岡市地下鉄箱崎線両線の黒字額は合わせて約39億1,000万円となっている[38]

なお札幌市営地下鉄東豊線においては平成25年度決算上は一般会計からの補助金による営業外収入により黒字決算扱いとなってはいるが、実質的には約32億円弱の赤字が発生しているものと推察される。

逆に、赤字額が大きい路線を順に示すと以下のようになる。

路線名 会計年度 純損失 出典
京都市営地下鉄東西線 平成20年度 約154億5,300万円 [37] の5ページ目
名古屋市営地下鉄桜通線 平成19年度 約129億1,000万円 [35] の9ページ目
神戸市営地下鉄海岸線 平成26年度 約62億3,100万円 [29] の10ページ目
福岡市地下鉄七隈線 平成18年度 約62億0,000万円 [38]
大阪市営地下鉄今里筋線 平成27年度 約42億5,000万円 [34] の1ページ目
大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線 平成27年度 約41億4,200万円 [34] の1ページ目
大阪市営地下鉄千日前線 平成27年度 約28億5,500万円 [34] の1ページ目
都営地下鉄大江戸線 平成27年度 約12億7,261万円 [24] の5ページ目

の順で赤字が大きくなっている。(支出には減価償却費も含むので収入に対する営業支出が多い路線を意味するとは限らない。減価償却=「損失」ではないが、建設された時期の遅い新しい路線ほど減価償却費が多く、損失が大きい傾向にある。代表的な例として大江戸線を例にとると建設費に対する減価償却が損失の大半を占めており、減価償却前のランニングコストだけの段階では黒字経営となっている。)

輸送状況[編集]

日本全国の市営・都営地下鉄と東京地下鉄の各路線の1日平均輸送人員を、下記に表す。数字はすべて、2005年度(平成17年度)と2014年度(平成26年度)の数値(日本地下鉄協会ホームページより)。

事業者名 路線名 一日平均輸送人員
(2005年度/千人)
一日平均輸送人員
(2014年度/千人)
札幌市交通局 全線 570 595
南北線 237 227
東西線 206 223
東豊線 127 145
仙台市交通局 南北線 161 166
東京地下鉄 全線 5,759 6,835
銀座線 1,016 1,059
丸ノ内線 1,067 1,232
日比谷線 1,063 1,133
東西線 1,218 1,365
千代田線 1,050 1,180
有楽町線 779 1,028
半蔵門線 753 961
南北線 382 497
副都心線   501
東京都交通局 全線 2,086 2,505
浅草線 583 670
三田線 513 601
新宿線 593 702
大江戸線 682 879
横浜市交通局 全線   619
ブルーライン 459 514
グリーンライン   129
名古屋市交通局 全線 1,604 1,237
東山線 544 475
名城・名港線 527 376
鶴舞線 278 188
桜通線 227 182
上飯田線 28 16
京都市交通局 全線 356 359
烏丸線 228 230
東西線 128 129
大阪市交通局 全線 2,277 2,915
御堂筋線 1,055 1,135
谷町線 394 502
四つ橋線 224 254
中央線 163 300
千日前線 120 186
堺筋線 233 313
長堀鶴見緑地線 88 161
今里筋線   64
神戸市交通局 全線 303 303
山手・西神線 264 260
海岸線 39 43
福岡市交通局 全線 323 406
空港線 279 318
箱崎線 31
七隈線 44 75

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ a b 地下トンネルは、1908年(明治41年)着工の東京駅の構内区間が1910年明治43年)1月4日に着工、1914年大正3年)12月14日に完成した。さらに新東京中央郵便局局舎敷地までの区間は1915年(大正4年)3月に完成した(ただし新局舎は、1916年(大正5年)2月着工、1917年(大正6年)1月30日完成、同年4月1日業務開始)。当トンネルは幅員4m、高さ2.25mで、上下2線の軌道が敷設され、電気機関車が貨車を牽引した。
    しかし、1937年(昭和12年)10月着工の東京駅拡張工事の進捗に合わせて廃線となり、軌道も撤去された。
    その後、当トンネルを舗装し直して1941年(昭和16年)4月11日より電動牽引車による郵便物搬送が開始された。
    1978年(昭和53年)10月、東京駅発の鉄道郵便の廃止に伴い、当トンネルにおける郵便物搬送は終了した。
    (以上の出典:東京中央郵便局沿革史 日本初の地下電車―郵便物搬送用地下軌道― (PDF)逓信総合博物館 研究紀要 第4号))
    なお、当トンネルの一部は、駅職員専用の「赤煉瓦通路」として現存しているという。
  2. ^ 東京メトロ銀座線、あるいは、名古屋市営地下鉄東山線名城線名港線京都市営地下鉄東西線では、JRや一般の私鉄等の車両と比較して小型な車両を使用しているが、通常のモーターによる走行のためこれらをミニ地下鉄と呼ぶことはない。
  3. ^ 車体サイズがミニ地下鉄とほぼ同等の京都市交通局東西線に乗り入れる京阪京津線は地上区間において最急勾配61‰、最小曲線半径40mが存在する。
  4. ^ 地下鉄ではないが、同様のシステムの鉄道は、1986年カナダバンクーバーに開業した高架鉄道スカイトレインがあり、1988年さいたま博覧会で展示走行した地上線リムトレンがある
  5. ^ 特認されれば、下記の値を上回ることも可能。
  6. ^ a b 可変電圧可変周波数制御 (VVVF) の場合の値。
  7. ^ やむを得ない場合は67‰まで。
  8. ^ 路線が一定区間並行しているなど、擬似的に複々線の形態をなしている路線であれば、東京メトロ銀座線半蔵門線渋谷駅 - 青山一丁目駅間)、有楽町線副都心線池袋駅 - 小竹向原駅間)の例がある。また、昭和初期、欧米の地下鉄から長所を取り入れて作られた大阪市営地下鉄御堂筋線は、御堂筋の東半分に建設され、将来西半分に複線の路線を建設すれば、複々線になり、急行運転が可能なつくりになっていた。

出典[編集]

  1. ^ 日本の地下鉄 - 日本地下鉄協会公式サイト内
  2. ^ 悩み多い国土 "日本"社団法人建設コンサルタンツ協会)
  3. ^ 『歴史写真. 大正6年5月號』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  4. ^ a b 文化庁・文化遺産オンライン
  5. ^ 日本最初の地下鉄道 (PDF)財団法人ゆうちょ財団
  6. ^ 仙台市営東西線は「日本最後の地下鉄」になるか。新路線の今後の建設予定はどこにもなし(旅行総合研究所タビリス 2014年11月20日)
  7. ^ 最後の地下鉄新路線? 仙台「東西線」は何をもたらすか(日刊工業新聞「ニュースイッチ」 2015年12月5日)
  8. ^ 東京に地下鉄2路線 五輪後の新設構想、都が提案へ(産経新聞 2015年7月11日)
  9. ^ 日本の地下鉄(日本地下鉄協会)
  10. ^ 新しい公共交通システム調査 報告書”. 京都市. p. 6-7. 2014年12月4日閲覧。
  11. ^ 環境的視点から見た自動車交通代替交通機関の選定1”. 日本大学都市計画研究室. p. 15-16 (2006年12月). 2014年12月4日閲覧。
  12. ^ LRT 整備前の中心市街地における回遊行動調査* A Questionnaire Survey of Stroll Activity in Central City before Development of Light Rail Transit*”. 大阪産業大学. p. 1 (2006年5月18日). 2014年12月4日閲覧。
  13. ^ 日本の中量軌道システムの海外進出”. 一般法人建設コンサルタンツ協会. p. 28 (2011年7月). 2014年12月5日閲覧。
  14. ^ 東京支社仙台鉄道建設所 (PDF)鉄道・運輸機構だより 2012 Winter p.14)
  15. ^ a b c d SUBWAY 第196号 (PDF) (日本地下鉄協会 2013年2月28日)
  16. ^ 21世紀の都市交通システムを担うリニア地下鉄 (PDF) (日立評論 1999年3月号
  17. ^ リニアモーター方式L4形貨車加減速装置 (PDF) (日立評論 Vol.52 No.12 1970年)
  18. ^ a b リニアメトロ電車の開発時の話 (PDF)日本鉄道技術協会 技術情報誌「JREA」2010年7月号/第53巻07号)
  19. ^ 鉄道の環境負荷測定手法の確立に向けた取り組み (PDF) (日本機械学会誌 Vol.112 No.1093 2009年12月)
  20. ^ 都市鉄道のシステム選択のあり方 (PDF) (一般財団法人 運輸政策研究機構)
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  22. ^ 札幌市 (2014). 平成26年度 高速電車事業会計. http://www.city.sapporo.jp/kansa/f02keka/documents/kosokuzentai.pdf. 
  23. ^ a b 仙台市交通局 (2014). 平成26年度高速鉄道事業会計決算. http://www.kotsu.city.sendai.jp/kigyo/keiei/26subway_kessan.html. 
  24. ^ a b c d e 東京都監査事務局 (2015). 平成27年度東京都高速電車事業会計決算審査意見書. http://www.kansa.metro.tokyo.jp/PDF/05kessankikin/27kouketu/2707kousoku.pdf. 
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  26. ^ 名古屋市交通局事業概要 (2015). 平成27年度の決算見込. http://www.kotsu.city.nagoya.jp/jp/sp/ABOUT/TRP0001813/TRF0010902.pdf. 
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  28. ^ 大阪市交通局 (2015). 平成27年度大阪市交通局決算見込(速報版). http://www.kotsu.city.osaka.lg.jp/library/ct/20160617_kessanmikomi/h27.pdf. 
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参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]