ニューエイジ

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ニューエイジ(New Age)とは、20世紀後半に現れた自己意識運動であり、宗教的・疑似宗教的な潮流である[1]。ニューエイジという言葉は、魚座の時代から水瓶座の時代(Age of Aquarius)の新時代(ニューエイジ)に移行するという占星術の思想に基づいている[1]グノーシス的・超越的な立場を根幹とし、物質的世界によって見えなくなっている神聖な真実を得ることを目指す[1]。ニューエイジ思想の運動は、ニューエイジ・ムーブメント New Age movement・ニューエイジ運動、NAMという[2]

概要[編集]

人間の潜在能力の無限の可能性の強調、宇宙・自然・生命などの大いなるものとのつながり、個人の霊性・精神性の向上の探究、ホリスティックであること(一元論汎神論グローバル化の実現など)、環境保護的であること(ガイア思想、人間は地球の中枢神経系の神経であるという理解など)、両性具有的であること(反対のもの・男女の相補性、陰陽・虹に象徴される)、神秘的であること(あらゆるもの・日常の中に聖なるものを見出す)、地球的であること(愛・あわれみ・平和の推進、世界政府樹立の推進)などを特徴とする思想・実践の潮流で、現代ではサブカルチャーとして広くみられる[3][4]

近代神智学の開祖ブラヴァツキー(1877年)

一般的に、19世紀の心霊主義ニューソート神智学の伝統から派生したもの[5]、グノーシス主義、ロマン主義、神智学が現代的に再編されたものであるとみなされている[1]。内側からやってくるスピリチュアルな真実があると信じそれを称賛するという点において、新しいタイプの神秘主義であり、自分自身が神になるという自己啓発の神秘主義といえる[1]教皇庁によると、ダーウィン進化論の一般的な受容と、自然界の秘められた霊的な力の重視が、ニューエイジ思想のかなりの部分の土台になっている[6]。ユダヤ・キリスト教をゆがんでいると考え、それ以外・それ以前の毒されていない宗教として、東洋の宗教やキリスト教以前の宗教を重視した[7]。教皇庁は、「エソテリック(秘教的)な要素と世俗的な要素の混合」であることがニューエイジの新しさである、と述べている[3]。ニューエイジに導入された個々の要素は、以前からあったものが多い[8]

マイケル・ヨーク (宗教学者)英語版は、人間性心理学を直接の起源の一つとし、ある意味では、ユダヤ系ドイツ人亡命者フレデリック・パールズらが始めた人間性回復運動における自己意識のスピリチュアル化に当たるものであると述べている[1]

神智学協会心霊主義教会英語版といった超物理(メタフィジカル)/オカルト・サブカルチャーの共同体とやや距離を置きつつも連続性がある[5]

ニューエイジは非常に多様かつ広大な現象であり、ゆるやかなネットワークでつながり、非組織的でもある[1]。様々な運動と宗教が複雑に絡み合い、団体には類似したものや明らかな真似もあれば、正反対のものも存在する[1]。自由、本来性、独立などが神聖視され、父権性に抵抗を感じる現代人を惹きつける一方、多くの場合完全に運命論的でもある。このように、運動内に多くの緊張と矛盾、相克を抱えており、ヨークは、「不便なことに、研究者がニューエイジにアプローチする際、適切で包括的な概説は存在しない」「多くの考えがありながら、運動全体について語ることができる者はいない」と述べている[1]。多様な文化に横断して広まっており、音楽、映画、セミナー、ワークショップ、瞑想会、セラピーなど多くの活動・現象があり、決まった形式はなく、参加者たちの関わり方のゆるやかさや均一性のなさから、ニューエイジを「新宗教運動」のように「ニューエイジ運動」と呼ぶことを疑問視する意見もある。一部の宗教団体の思想的源泉になっており、一部の宗教団体は意識的にニューエイジの要素を取り込んでいる[9]

本山美彦は、ニューエイジ・ムーブメントは「新時代運動」ではなく、「維新運動」として理解されるべきものであり、「この運動は、西欧中心史観を反省し、非西欧的な思考と行動様式を取り入れようとしたものである。しかも、非西欧的なものを単純に、神秘主義的に、あるいは、オカルト的に模倣するのではなく、そこに現代科学の目を通して、自分のものにして、旧い西欧を新しい社会に適合できる「現象的、精神的、思想的、社会学的重点移動」を実現させる「信仰的社会的運動」として定義している[2]

背景としては、社会の中心を占めていた諸要素が権威や信用を失って人々が公的な判断を受け入れなくなり、アイデンティティの不安に苛まれるようになり、人間性が崇拝され、宗教が内面化し、自己の神聖化を称揚するようになったことがある。ニューエイジャーは代替的な制度が自身の深い欲求を満たしてくれるよう望んでおり、教皇庁は、ニューエイジの人気は、既存の制度では満たされないことの多かった渇きに応えたことにあると評している。ニューエイジの大部分は現代文化への反動であるが、現代文化の落とし子であるともいえるという[10]

ニューエイジは、日本をはじめとする東アジア地域にも影響が大きく、特に韓国とフィリピンで盛んである[11]。日本では精神世界の名で広まり[12]、その後「スピリチュアル」と呼ばれるものにほぼ受けつがれた。ただし、社会的側面は日本ではほとんど見られない[13]

歴史[編集]

ニューエイジの重要な伝道師だった女優シャーリー・マクレーン(1987年)

元々ニューエイジという言葉は、フランス革命アメリカ独立戦争の時代に、薔薇十字団フリーメイソンによって使われたようである[8]。神智学協会から分派したアリス・ベイリーが著作で用いて、新しい時代を象徴する言葉として使われる一因になった[14]

ウッドストック・フェスティバル
ジョン・デンバー

60年代のカウンターカルチャーをその直接の起源とする。[要出典]ニューエイジの最初の具体的な出来事として、1969年にニューヨーク州のウッドストックで開催された音楽祭ウッドストック・フェスティバルと、ミュージカル「ヘアー」がある[15]。「ヘアー」では「アクエリアス」という曲でニューエイジのテーマが表現された[15]

ロックバンドのビートルズや、アップル創業者スティーブ・ジョブズなども、ヒッピー・ムーブメントにコミットし、米国で活躍したインド人マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーは「超越瞑想」を創始しニューエイジの牽引者の一人となった[16]。人類学者カルロス・カスタネダドラッグを通じて異次元の世界を体験する著作を刊行し、ハーバード大学心理学部教授のラム・ダス英語版ヨーガを紹介した書物『ビー・ヒア・ナウ英語版』(1971)を発表し、「ヒッピーの聖典」として世界的なベストセラーとなった[16]

1976年、シンガーソングライタージョン・デンバーコロラド州スノーマス近郊にニューエイジ・コミューン(New Age Commune、ニューエイジ村)を作り、合気道によって宇宙精神と合致することを目指し、ピラミッドのなかで瞑想を行い、将来自分が大統領になることなどを信じて生活をした[2]。またウィラード・ガーベイもバックミンスター・フラー型のピラミッドを建設し、これはニューエイジ精神を体現すべく設計されたものであった[2]

ニューエイジ思想は、1970年代以降、日本にも流入し、新宗教オカルト・ブーム、また阿含宗桐山靖雄、宗教学者の中沢新一オウム真理教麻原彰晃に影響を与えた[16]

以前は対抗文化に限られていたスピリチュアルな・神秘的な傾向が、主流文化に定着し、医療・科学・芸術・宗教などの広い分野に影響を与えたため、革命的と考えられてきたものもそうみなされなくなっていった[15]。教皇庁は、2007年時点では、ニューエイジの関係者にかつてあった理想主義はみられなくなり、左翼思想とのつながりもなくなり、幻覚剤も以前のように使われていないと述べている[15]

占星術の周期と時代の霊的なシフト[編集]

千年王国思想とニューエイジが結びつくことで、終末思想が伝統的な宗教以外の代替スピリチュアリティにも見られるようになった[17]教皇庁は、ニューエイジに流入した諸要素が個人・社会・世界に根本的な変化が起こるために時は満ちたという思想と結びついている、と述べている[3]。ニューエイジは、グローバルな意識の高まりと、環境破壊への切迫した危機感によって成長した[18]

ニューエイジという言葉は、多くの人々にとって歴史上の重要な転換点を意味しており、占星術師たちは、キリスト教が支配していた魚座の時代から、第三千年期の初めには水瓶座の「新しい時代」に代わると考えた。これは理論ではなく未来像であり、神智学心霊主義人智学、それに先行する秘教的な思想の影響を受けたものである[19]

宗教学者の大田俊寛によると、神智学に始まり1960年代アメリカ合衆国西海岸を中心地にヒッピーと呼ばれた当時の若者の間で流行した思想を受け継ぐもので、旧来の物質文明が終焉を迎え新たな霊的文明が勃興するという、霊的(霊性スピリチュアリティ)革命論・進化論の思想であると述べている[16]霊性を進化させて物質文明から精神文明への転換を起こすことが主唱され、現在の物質文明は破局を迎えるという終末論[16]、人類の意識や霊性が徐々に高まり黄金時代が到来するなど、世界の変容をめぐる様々な思想・未来像が唱えられた[17]パラダイムシフトアセンションとも。

典型的な例が、ホゼ・アグエイアスが1987年に起こると主張した「調和ある収斂(ハーモニック・コンバージェンス)」である[17]

折衷主義[編集]

霊や異次元の存在との交流(交霊チャネリング)、病気や貧困・悪は実在せず、心の病気または幻影であるという考え、カルマ転生の思想といった、西洋オカルティズムや異教主義に東洋の思想を導入し混合した、西洋の非主流の秘教的な思想を受け継いでる[1]。超物理(メタフィジカル)・人間性回復運動(ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメント)・フレデリック・パールズらが始めた人間性心理学なども混ざり合ってできている[5]

古代エジプトのオカルト儀礼、カバラ思想、初期キリスト教時代のグノーシス主義、イスラム教のスーフィズムケルトドルイドの伝承、ケルト・キリスト教、中世錬金術ルネサンスヘルメス主義仏教ヒンドゥー教ヨーガなどが取り込まれており、インドの不二一元論的なヒンドゥーイズムの非人格的な神性の概念と共に、大衆的なバクティの伝統も人気を集めた[20][21][3]

宗教学者のジェレミー・R・キャレットは、伝統を現代に有用なものに翻案し変容しようとする、ポストモダンスピリチュアリティの作用の古典的な表れの一つであると述べている[22]。伝統を政治に左右されながらも伝えられてきた豊かな資源であるとみなし、人種・階級・ジェンダーの問題に役立つものであると考え、「純粋な伝統」という概念は留保しつつ、解釈の多様性を肯定する[22]

参加者と方向性[編集]

方向性としては、超自然の実在を信じその介入を受け入れるオカルト・秘教的側面、人間の努力・個人の成長を重視し個々人の発達による社会と人類の変革を期待するスピリチュアル的側面、社会奉仕と現実的・具体的な仕事を重んじる社会的な側面があり、互いに混じり合っている[23]。教皇庁は、様々な批判や疑問があるが、冷酷・非情な世界をあたたかくより良いものにしようという試みであると評している[24]

ニューエイジの支持者には、人類のスピリチュアルな移行が将来起こると真剣に信じているような信者の中核グループがあり、その中で大きなものが「スピリチュアル探究者」と呼ばれている。中核グループより厚い層として、本当の自分であることを求め、真正性英語版を中心に置く自分探し英語版の一群がある。最大のグループは、単に依頼者(クライアント)と呼ばれる無頓着な消費者であり、中核グループの多くは彼らと連携している。依頼者たちは現世利益や精神的支えを求め、ヨーガホメオパシー、スピリチュアル・エコロジー講座や性的錬金術瞑想などの講座やセラピーに通い、多くはニューエイジ運動に深く関係せず周縁にいる。ここから中核グループに移行する人もいる[1]。ニューエイジ的な物事の信奉者の多くは女性で、指導者にも女性が多い[21]

倫理観と転生思想[編集]

ニューエイジの独特の点として、前向きであることを重視し、障害や否定性を全く認めないことがあげられる[1]。これは現実世界に対し、自身の望みどおりになるよう要求する主張であるともいえる[1]。前向きな思考・姿勢は、たとえ甘い認識に基づいた浅薄な態度であろうとも、高い目標に到達するための手段として支持される[1]。こうした考えは世界の代表的な宗教と最も異なる点であり、伝統的な宗教に見られる天罰原罪などの罪と罰の観念はニューエイジには全く見れらない[1]。善悪の区別はなく、人の行いは覚醒の結果か無知の結果であり、罪があるとされることはなく、そのため許しも必要ない[25]。教皇庁は、ニューエイジでは自己否定を行うことがないため、キリスト教でもないが、仏教でもないと述べている[26]。否定的な気持ちを解決するのが「愛」であるとされるが、これは行いに移すべき愛ではなく、心の持ち方であり、「高波長の波動」であるという[25]

生まれ変わりの思想は東洋で輪廻として伝統的に見られるが、ニューエイジは転生思想を神智学から直接継承している[1]。西洋の生まれ変わりの思想は、東洋の輪廻観よりはるかに楽観的で、生の繰り返しを通して学び、個人が段階的に完成していく過程であるとされた。心霊主義、神智学、人智学同様に、ニューエイジでは生まれ変わりは宇宙の進化への参加であると考えており、潜在能力の完全な開発に向けた段階的上昇であるとしている[27][28]トランスパーソナル心理学にある「高次の自己(ハイヤー・セルフ)」という概念が信じられ、霊的発展はこれと接触することであるとされた[29]。伝統的な宗教では天罰と見做されるような困難との遭遇は、スピリチュアルな成長のためのチャンスであり、地上の人生はスピリチュアル発達のための学びの場である[1]。人間は自分の現実を創造することができるので、自分の人生は、病気でさえ自分で選んだものであるという[29]。夢や瞑想によって前世を知ることができるとされた[28]

生まれ変わりの思想は、ニューエイジではキリスト教伝統の神の裁きに関する教えを超えるものとされ、地獄の概念を不要にした[28]

チャネリングと啓示[編集]

ニューエイジでは心霊主義の影響から、高次の的存在・大聖(神智学で言うマハトマ)・宇宙人・死者などの超越的・常識を超えた存在、通常の精神(自己)に由来しない源泉との交信が可能であると信じられ、その交信、交信による情報の伝達は「チャネリング」と呼ばれた[30][1]。教皇庁は、チャネリングが最も共通の要素としてみられることから、ニューエイジは厳密にはスピリチュアリティではなく、心霊主義の現代版であると述べている[31]

心霊主義のような死後存続の証明よりも、今ここで霊的な成長を助けてくれる「高い知恵」を得ることが興味の対象となっている[1]。チャネリングを行う人はチャネル、チャネラーと呼ばれる。交信対象は、しばしば「エンティティ」と呼ばれ、「存在」とも訳される。宇宙存在、宇宙人とも呼ばれることがあるが、肉体を持っているとは限らないとされる。チャネリングの方法は憑依による口述、自動筆記などがあり、トランス状態で行われる場合や、チャネルが意識のある状態でメッセージを聞き取るような、トランス状態ではないと思われる場合もあり[32]、方法、内実ともに多様である。

根本的なニューエイジ信条の多くは、まずチャネルされたメッセージとして定式化されており、チャネリングはニューエイジ宗教の生成において決定的な重要性を持っていた[32]。オランダの西洋エソテリシズム研究者ヴァウター・ハーネフラーフ英語版は、ほとんどのニューエイジャーは、霊的権威の信頼できる唯一の源泉は「自分自身の内的自己」であるとみなすものの、ニューエイジ運動はかなりの程度において「啓示に基づく宗教」(Offenbarungsreligion)と性格づけることが可能であるとしている[32]

帝京大学の進藤英樹は、ニューエイジ宗教の中心となる啓示の大部分は、チャネルになることを学んだのではない生来のチャネルによって作られており、こうした啓示の場合、チャネリングの過程は、たいてい霊媒の不意を襲うような形で、自然発生的に開始すると指摘している[32]。そして、このようなチャネリングは、多く意図的なチャネリングに発展・移行するが、コントロールできないままのこともある[32]

ニューエイジで支持を集めたチャネルとして、ジェーン・ロバーツ英語版(1929年 – 1984年)、ジュディス・ゼブラ・ナイト英語版(1946年 - )、ケビン・ライアーソン、ジャック・パーセルなどがいる。ニューヨークのコロンビア長老派医療センターの心理学者ヘレン・シチュクマン博士(1909年 - 81年)は、自分の内部から声を聞く様になり、上司のウィリアム・セットフォード博士の勧めでそれをまとめた(作者名は明記されず、シチュクマンは死ぬまで原作者であると認めなかった。)二人の協働で『奇跡の学習コース』という独習過程がまとめられ、人気を呼びニューエイジに大きな影響を与えた[33]。読者を全ての困難に立ち向かわせ心を愛に目覚めさせ、正しいスピリチュアリティに導くという教えが聖書の用語を使って語られている。悪の可能性は否定されており、一元論的で、中心となる信念は8世紀インドのシャンカラの非二元論的アドヴァイタ・ヴェーダーンタに近い[33]。これは現代で最も有名なスピリチュアリティ文書の一つで、ハーネフラーフはコースを「スピリチュアリティのニューエイジ・ネットワークにおいて『聖典』の役割を果たしたということのできる『唯一の書』」と述べている[33]

癒しと代替医療[編集]

超滅瞑想を提唱したインド人導師マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー(1979年)

ニューソートの影響から、悪は心の幻影であると考え、そのため悪は実在せず、病も貧困も根絶できるとしている。人間の脳には無限ともいえる可能性があり、脳は究極的な宇宙エネルギーと関係があり、人間は自分自身を癒すことができるとされている。[34]

個々の病気に対応する対症療法的な現代医療に対し、人間全体を見ると主張し「治療」より「癒し」を重視する代替医療が人気を博し、ホリスティック医療と呼ばれる。身体の癒しにおける心の重要性を説き、心身相関に関して免疫システムとインド由来のチャクラの理論が用いられる。病気は自然に逆らうことが原因であるとされ、自然と「波長」が合えば、健康になり、経済的にも成功が期待できるとされる。死は避けられないものではないというセラピストもいる。[35]

日本の霊術由来のレイキ。

健康増進のために、中国医学の太極拳ヨーガ合気道超越瞑想などの瞑想、生体エネルギー論(エネルギー療法)、ネオ・シャーマニズム英語版バイオフィードバックカイロプラクティックキネシオロジー(運動療法)、虹彩学(イリドロジー英語版虹彩で健康状態を判断しようという民間療法の一種)、ホメオパシー、マッサージロルフィングリフレクソロジーセラピューティック・タッチレイキフェルデンクライスメソッド指圧などのボディワーク、エスリン研究所で発展したゲシュタルト療法エンカウンターグループ交流分析などの心理理論、大規模自己啓発セミナー(LGAT)の一種であるエアハード式セミナー・トレーニング英語版(略称:エスト。後継団体にランドマーク・フォーラムがある)、ヴィジュアリゼーション、栄養療法、サイキック・ヒーリング(超能力治療)、ハーブ療法、クリスタル・メタル・音楽・カラーなどによるヒーリング、前世療法12ステップ・プログラム、様々な自助グループなどが行われた[35][34]。ニューエイジの思想が様々な人間性回復療法に反映され、実践されている。マイケル・ヨークは、これらの技術は「霊的に目覚めた人が否定的なものを想像の産物と捉え、それを取り除けるよう手助けすることを目指している」と述べている[34]

心理学とスピリチュアリティ・オカルトの交差[編集]

ウィリアム・ジェイムズ(左)とユング(右) ウィリアム・ジェイムズ(左)とユング(右)
ウィリアム・ジェイムズ(左)とユング(右)

マリリン・ファーガソンは自著『アクエリアン革命』で、アメリカの心理学者ウィリアム・ジェイムズ、スイスの精神科医カール・グスタフ・ユングといった、意識の拡張と自己超越経験に基づく変容という未来像を作った先駆者たちを扱っている。ジェイムズは宗教は教義ではなく経験と定義し、心の在り方を変えることで自分の運命を作り出すことができると説き、ユングは集合的無意識という概念を考案し、「心理学の神聖化」に貢献した。これは、ニューエイジの思想と実践の重要な要素になっている。心理学とスピリチュアリティの交差は、1960年代末にかけてエスリン研究所で発展した人間性回復運動に強く見られ、東洋の宗教とユングから大きな影響を受けたトランスパーソナル心理学が発展し、自己の「内なる神」の探究、自己を乗り越え、自己であるところの神となることを目指した。そのための至高体験、宇宙と融合するための神秘体験が求められ、瞑想、超心理学的経験、幻覚剤の使用などのセラピーが行われた。[36]

幸福と成功のために自然や宇宙と波長を合わせ、つながり、存在の大いなる連鎖英語版の中、宇宙の中に自分の場を見出すことが重視され、こうして宇宙的な意識を見出すことが救いであるとされた[25][37]。心理療法そのための旅であり、自己救済・意識の統一と覚醒に至るための技術である[29]。神性は自己の内にあると考えられたため、完全な他者である神・外部からやってくる啓示や救いは必要ないと考えられた[29]。(その一方でチャネリングによる啓示は重視されていた。)心は一つであり、全ての心がつながっており、宇宙的存在であるため、人はチャネリングで高次の存在と交信できると考えられた[29]。ニューエイジの指導者やセラピストたちは、宇宙のあらゆる要素の照応を見出すための導きを与えるという[25]。そのための理論はそれぞれ異なっている[25]

占星術タロットといった現代でオカルトと呼ばれるような実践は、ニューエイジを経由して、人間性回復運動と人間性心理学の大きな影響を受けて変容し、占いというだけでなく自己変容の手段となった[5]。そのため現代の占星術師には、運勢を占って行動のアドバイスをするタイプと、依頼者が自己をより深く理解するよう導く疑似セラピストのタイプがあり、ほとんどの占星術はこの2極の間に存在している[5]

環境保護・女性的とされてきた要素の重視[編集]

ニューエイジの典型的なアイコン。イルカ、虹、星

環境保護運動とフェミニズム運動に大きな影響を受け、地球をひとつの有機体として再発見し、地球を広い宇宙的文脈で捉え直そうという動きが起こり、さらに環境と精神面を結び付けようとした[21]。ニューエイジャーたちの思想は、合理性や家父長制、伝統的宗教や物質的秩序、中産階級的価値観といった社会の主流を構成してきたものに基づいておらず、現代への反動として、従来女性的と考えられてきたような、精神、生殖能力、想像力、本能、感覚、感情といった資質・領域が強調され重視されている[21][24]。大地の女神ガイアがキリスト教の父なる神に代わるものとして提示され、これは宇宙に統一をもたらす非人格的なエネルギーであるとされる[7]

重要な拠点[編集]

心理学者William Schutz、エスリン研究所にて(1987年)

ニューエイジを牽引した団体として、フレデリック・パールズがゲシュタルト療法を導入したカリフォルニアのエスリン研究所英語版、1960年代にスコットランド北部フィドホーン英語版に設立され、ディーヴァと呼ぶ不可視の存在のアドバイスを得て農業を行っていたというフィドホーン・サークル(現フィドホーン財団英語版)がある。

資本主義・消費主義との親和性[編集]

伝統的な宗教とは異なった形態を取っており、伝統的な宗教よりはるかに大きな消費現象となっている[1]。多くの支持者は反制度的であり、「宗教的」であるより「スピリチュアル」である英語版こと(SBNR)に価値を置いている[1]。ヨークはニューエイジについて、「スピリチュアルな消費者のスーパーマーケット」であると評しており、自由にスピリチュアルな選択を行うことを肯定し、そうした商品を選択し讃えるといった魅力によって、西洋では伝統宗教を超えた勢力になりつつある[1]

真なるものが自らの内にあるという自己啓発の神秘主義的な考えは、「スピリチュアリティの目的とは選択することである」、という理解に繋がるが、これは消費者自身が何を買うか判断し選択する権利を大きく評価する資本主義社会と関連が深い[1]。ニューエイジの試みの多くは、無批判的であり鈍感と分類されるような面があり、努力のいらない楽しいことに固執するが、ヨークはこれは大きく見れば、現代の消費社会の反映であると指摘している[1]

批判[編集]

ニューエイジに文化を借用され、商売道具として利用され、アイデンティティを脅かされている非西洋・先住民族の側からは、文化の盗用英語版、スピリチュアリティの搾取・濫用であり、身勝手に改造し本物のようにふるまうなど文化を汚染しており、神聖な儀式を盗んで冒涜しているという厳しい批判がある[1][38]。ニューエイジの支持者は、「世界のスピリチュアル文化は今や公有財産であり、誰もが手に入れられるもの」であると反論している[1]

主要な批判として、ニューエイジの個人の自己実現の探究が、実際には真の意味での宗教文化を生み出すことを妨げているという意見がある[39]

浅はかで、独善的で、無批判的で鈍感、現実逃避、自己陶酔であり、ほとんどが紛い物の治療のようなものの寄せ集めに過ぎない、安っぽい偽物、迷信、霊的にキッチュ、騙しやすい人々から金を巻き上げる手段にすぎないなどと批判されている[34]。様々な研究者は、ニューエイジ的スピリチュアリティを、一種のスピリチュアルなナルシシズムまたは疑似神秘主義とみなしており、ニューエイジの重要な支持者デイヴィッド・スパングラー英語版ですら、ニューエイジャーのナルシシズムと世界からの逃避を指摘している[26]。内面にフォーカスすることで政治的関心の領域が狭まっていく傾向があり、この背景に権威主義の危険性があると指摘されている。スパングラーは、「自分の完全な人生を積極的に造り上げるのではなく、新時代を待つことを口実にして、無力感と無責任にひそかに身をゆだねること」をニューエイジの問題の一つとして挙げている[39]

またスパングラーは、「未来と引き換えに行われる過去からの疎外。ただ新しいからというだけの理由で新奇なものを好むこと。…全体性との交わりを引き換えにした、無差別性と識別の欠如。その結果、限界の意義を理解し、尊重することができないこと。…心的現象と知恵の混同、チャネリングとスピリチュアリティの混同、ニューエイジの観点と究極的な真理との混同」などの欠点を列挙している。ただし彼は、こうした欠点は一部のニューエイジャーにしか見れらないと述べている。[26]

人間性回復運動、エスリン研究所、ニューエイジで重視された「自分で自分を変えられる」「自分で自分を作ることができる」という信念は、「自分はなんでもできる」という思考に、そして「望んだ結果は、必ず手に入る」という考えに繋がり、自己変革の手法が商売に展開してビジネスマン向けの自己啓発セミナーが行われた。そして、化粧品の連鎖販売取引を行ったホリディマジックでの人材育成を通して、自己啓発のノウハウ自体がネズミ講の商材ともなっており、これは日本にも上陸している[40]

キリスト教からの批判[編集]

キリスト教の中からニューエイジに対する批判がなされている。

プロテスタントでは、ルーテル教会マリア福音姉妹会の『偽りのメシア運動』、水草修治 著『ニューエイジの罠』、尾形守著『ニューエイジムーブメントの危険』、奥山実著『悪霊を追い出せ!』等による批判があり、ローマ・カトリック教会は教皇庁文化評議会著、教皇庁諸宗教対話評議会による『ニューエイジについてのキリスト教的考察』を出している。西洋文化の支配的な思想と価値観への屈折した反動であるが、彼らの理想主義的な批判は、自らが批判する文化に典型的にみられるものである、と述べている[41]。まだ心の中にしかないものを現実に投影し、知識と意識を過大に評価することにも注意を促している[42]

水草修治は、ニューエイジと聖書的キリスト教の相違は「人間中心」のニューエイジと「神中心」のキリスト教にあるとし、キリスト教は神の栄光をあらわすことを目的としているのに対し、ニューエイジにおいては人間が自己実現することが究極の目的であると指摘している[43]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z York, 井上監訳 2009, pp. 428-434.
  2. ^ a b c d 本山美彦「ネオコンの源流「ニューエイジャー」とピラミッド」經濟論叢177:3、京都大學經濟學會2006
  3. ^ a b c d 教皇庁 2007, p. 28.
  4. ^ ニューエイジ 知恵蔵
  5. ^ a b c d e Lewis, 井上監訳 2009, p. 474.
  6. ^ 教皇庁 2007, p. 17.
  7. ^ a b 教皇庁 2007, p. 51.
  8. ^ a b 教皇庁 2007, p. 16.
  9. ^ 教皇庁 2007, p. 23.
  10. ^ 教皇庁 2007, p. 13.
  11. ^ 教皇庁 2007.
  12. ^ 島薗 2007a, p. 47.
  13. ^ 有元裕美子 著 『スピリチュアル市場の研究: データで読む急拡大マーケットの真実』 東洋経済新報社 2011年
  14. ^ あらためまして「ニューエイジ=アクエリアス(水瓶座)の時代」とは?! 押尾学
  15. ^ a b c d 教皇庁 2007, p. 31.
  16. ^ a b c d e 大田俊寛「高橋克也被告裁判・証言草稿──地下鉄サリン事件20年に際して 2」 2015.03.18 SYNODOS
  17. ^ a b c Wojcik, 冨澤かな訳 2009, pp. 549-550.
  18. ^ 教皇庁 2007, p. 46.
  19. ^ 教皇庁 2007, pp. 27-28.
  20. ^ パートリッジ, 冨澤かな訳 2009, p. 228.
  21. ^ a b c d ワシントン, 白幡節子・門田俊夫訳 1999, pp. 11-12.
  22. ^ a b Carrette, 冨澤かな訳 2009, p. 512.
  23. ^ York, 井上監訳 2009, p. 434.
  24. ^ a b 教皇庁 2007, p. 61.
  25. ^ a b c d e 教皇庁 2007, pp. 33-34.
  26. ^ a b c 教皇庁 2007, pp. 70-71.
  27. ^ 教皇庁 2007, p. 50.
  28. ^ a b c 教皇庁 2007, pp. 36-37.
  29. ^ a b c d e 教皇庁 2007, pp. 49-50.
  30. ^ 羽仁礼 著 『超常現象大事典―永久保存版』 成甲書房、2001年
  31. ^ 教皇庁 2007, p. 32.
  32. ^ a b c d e 進藤英樹 「ニューエイジとエソテリシズム(1)ハーネフラーフの『ニューエイジ宗教と西洋文化』」 帝京大学外国語外国文学論集 (15), 65-98, 2009
  33. ^ a b c Bradby, 宮坂清訳 2009, pp. 484-486.
  34. ^ a b c d York, 井上監訳 2009, pp. 430-431.
  35. ^ a b 教皇庁 2007, pp. 34-36.
  36. ^ 教皇庁 2007, pp. 43-46.
  37. ^ 教皇庁 2007, p. 49.
  38. ^ Lakota Declare War Against “Shamans” & “Plastics” The Peoples Paths
  39. ^ a b 教皇庁 2007, pp. 57-58.
  40. ^ 坂口孝則 ネズミ講が自己啓発と結び付いた最大の理由 自分は何でもできる」と思う人を育て上げる 2016年04月26日 東洋経済
  41. ^ 教皇庁 2007, p. 29.
  42. ^ 教皇庁 2007, p. 55.
  43. ^ 水草(1995) p.57

参考文献[編集]

  • 大田俊寛 『現代オカルトの根源 - 霊性進化論の光と闇』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2013年ISBN 978-4-480-06725-8
  • 水草修治 『ニューエイジの罠』 CLC出版、1995年10月、増補改訂版。ISBN 4-87937-702-3
  • 本山美彦「ネオコンの源流「ニューエイジャー」とピラミッド」PDF:經濟論叢177:3、京都大學經濟學會2006
  • 『現代世界宗教事典—現代の新宗教、セクト、代替スピリチュアリティ』 クリストファー・パートリッジ英語版 編、井上順孝 監訳、井上順孝・井上まどか・冨澤かな・宮坂清 訳、悠書館2009年
    • Michael York 執筆「ニューエイジの伝統」。
    • James R.Lewis 執筆「占星術」。
    • Jeremy R. Carrette 執筆「ポストモダンのスピリチュアリティ」。
    • Daniel Wojcik 執筆「黙示思想と千年王国思想」。
    • クリストファー・パートリッジ 執筆「インドの諸宗教」。
    • Ruth Bradby 執筆「奇跡の学習コース」。
  • ピーター・ワシントン 『神秘主義への扉 現代オカルティズムはどこから来たのか』 白幡節子・門田俊夫 訳、中央公論新社、1999年
  • 教皇庁文化評議会/教皇庁諸宗教対話評議会 『ニューエイジについてのキリスト教的考察』 カトリック中央協議会司教協議会秘書室研究企画 訳、カトリック中央協議会、2007年

関連文献[編集]

  • C+Fコミュニケーションズ編著 『ニューエイジ・ブック 新しい時代を読みとる42のニュー・パラダイム』 日本実業出版社、1987年5月。ISBN 4-89376-001-7
  • シャーリー・マクレーン 『ダンシング・イン・ザ・ライト 永遠の私を探して』 山川紘矢・亜希子訳、地湧社、1987年3月。ISBN 4-88503-050-5

関連項目[編集]

外部リンク[編集]